農地の売却相場の調べ方|農地のままと転用後の差

農地の値段は、宅地のように検索してもなかなか出てこない。公的な平均値が「10アールあたり」で公表されているからです。
全国平均は中田103万1千円、中畑76万3千円(全国農業会議所・令和7年調査)。坪に直すと約3,400円と約2,500円で、31年連続の下落中。市街化調整区域なら中田263万9千円と、およそ2.6倍になります。
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農地の売却相場は10アールあたり103万円と76万円が全国平均
農地の売買価格をまとめた公的な調査は、実質的にひとつしかありません。全国農業会議所の「田畑売買価格等に関する調査」です。昭和31年から毎年続いていて、令和7年調査で70回目。調査時点は令和7年5月1日、公表は令和8年3月19日です(2026年7月31日確認)。全国約1万1,500地区が対象で、集計されたのは11,063地区、集計率は95.9%となっています。
最新の全国平均は次のとおりです。単位は10アール(1,000平方メートル、約302坪、1反)あたり。
| 区分 | 中田 | 中畑 |
|---|---|---|
| 純農業地域(線引きなし市町村)の農用地区域内 | 103万1千円 | 76万3千円 |
| 都市的農業地域の市街化調整区域・農用地区域内 | 263万9千円 | 250万8千円 |
中田・中畑というのは、その地域で収量水準や圃場条件が標準的な水田・畑のこと。上下の等級ではなく、真ん中の条件を指します。そしてこの調査が拾っているのは「自作地を自作地として売る場合」の価格、つまり農地を農地のまま、耕す人に売ったときの金額です。ここが宅地の相場と決定的に違う点になります。
坪単価に直すと、純農業地域の田で約3,400円、畑で約2,500円。市街化調整区域の農用地区域内なら田が約8,700円、畑が約8,300円です。宅地の坪単価とは桁がひとつ違うように見えますが、数字の読み違いではありません。
面積で言い換えると、1反(10アール)の田を農地のまま売って100万円前後、1ヘクタール(10反)でも1,000万円前後というのが全国平均の水準です。ただしこれはあくまで平均で、後述するとおり地域によって8倍以上の開きがあります。自分の田畑の値段としてこの数字をそのまま当てはめると、たいてい外れます。
31年連続で下がり続けている。ピークからは半値以下
農地の相場を見るときに、平均値と同じくらい重要なのが方向です。この調査の見出しは令和7年調査で「純農業地域の農地価格は31年連続で下落」でした。
純農業地域の中田価格は、最高値だった平成6年に200万2千円(10アールあたり)。令和7年は103万1千円で、ピークから48.5%の下落です。中畑は平成6年の137万8千円から76万3千円で44.7%の下落。平成7年以降、31年間ずっと下がり続けています。
都市的農業地域の市街化調整区域はもっと急です。中田は最高値だった平成4年の1,121万3千円から263万9千円へ、中畑は1,122万1千円から250万8千円へ。33年連続の下落で、下落幅は7割を超えています。転用への期待で高値がついていた分、期待がしぼんだときの落ち方も大きかったということです。
直近の1年の変動率は、純農業地域が中田・中畑ともマイナス0.9%、都市的農業地域も中田・中畑ともマイナス0.9%。急落ではなく、毎年1%前後ずつ静かに削れていく形です。
下落の理由も同じ調査が集計しています。純農業地域で最も多いのは「農地の買い手の減少や買い控え」で中田35.4%、中畑41.1%。次いで「後継者不足」が中田25.4%、中畑26.1%、「離農による過疎化」が中田9.6%、中畑11.4%と続きます。値段が下がっているというより、買う人がいないことが値段に出ている、と読むほうが実態に近いはずです。
これは売り時の判断にも効いてきます。年1%の下落なら、5年待っても目減りは5%前後です。一方で、その5年間に固定資産税と管理の手間は毎年出ていきます。待って上がるタイプの資産ではない、という前提から入ったほうが計算を間違えません。
地域ブロック別の相場。北海道と東海で8倍の開き
全国平均だけでは判断材料になりません。同じ調査のブロック別(純農業地域・農用地区域内、10アールあたり)を並べます。
| ブロック | 中田 | 中畑 |
|---|---|---|
| 北海道 | 23万5千円 | 11万2千円 |
| 東北 | 48万5千円 | 29万4千円 |
| 関東 | 137万5千円 | 149万8千円 |
| 東海 | 192万8千円 | 169万8千円 |
| 北信 | 122万8千円 | 86万4千円 |
| 近畿 | 175万6千円 | 122万2千円 |
| 中国 | 65万7千円 | 39万2千円 |
| 四国 | 154万3千円 | 87万1千円 |
| 九州 | 70万8千円 | 49万円 |
| 沖縄 | 83万7千円 | 121万4千円 |
北海道の中田23万5千円と東海の192万8千円では8倍以上の差があります。北海道は1枚あたりの面積が大きく、経営として買いやすい価格で流通していること、東海や近畿は宅地への転用期待が価格に混ざっていることが背景にあります。関東と沖縄では畑のほうが田より高いという逆転も起きています。
都市的農業地域(市街化調整区域・農用地区域内)の中田はさらに開きます。東海505万6千円、中国398万7千円、近畿311万9千円に対し、北海道は41万3千円、九州は144万6千円。同じ「農地」という言葉で括られていても、値段の世界がまったく別だということです。
県別の平均も同じ調査で公表されています。自分の県の数字を見ておくと、全国平均で組んだ資金計画のずれに早く気づけます。
農地のまま売るか、転用してから売るか。差は「区域」で決まる
「農地のままより転用したほうが高い」という話は正しいのですが、順番が逆になりがちです。転用できるかどうかが先に決まっていて、その結果として値段が違っている、という構造です。
値段は3つの層に分かれている
同じ調査の中だけを見ても、農地の価格は層になっています。純農業地域の農用地区域内が中田103万1千円、都市的農業地域の市街化調整区域・農用地区域内が263万9千円で、およそ2.6倍。この差は土の良し悪しではなく、市街地に近いかどうか、将来転用される目があるかどうかの差です。
そしてもう一段上に、市街化区域内の農地があります。市街化区域内の農地を転用する場合は、農業委員会にあらかじめ届出を行えば許可は不要(農林水産省の農地転用許可制度の資料による)。許可の可否を待たずに宅地として売る前提が立つため、宅地の相場に近い値段で動きます。
転用できる農地とできない農地
農地は営農条件と市街化の状況で5つに区分され、転用の可否がほぼ決まっています。
- 農用地区域内農地:市町村の農業振興地域整備計画で農用地区域とされた区域内の農地。転用は原則不許可
- 甲種農地:市街化調整区域内で、農業公共投資後8年以内の農地や高性能農業機械での営農に適した農地。原則不許可
- 第1種農地:生産力の高い農地、おおむね10ヘクタール以上の集団農地など。原則不許可
- 第2種農地:近い将来市街地として発展する環境にある農地など。第3種農地に立地困難な場合等に許可
- 第3種農地:駅や役場がおおむね300メートル以内にあるなど、都市的施設が整備された区域内の農地。原則として許可
つまり、相場表の高い数字を狙って転用しようとしても、農用地区域内や第1種農地であれば入口で止まります。自分の農地がどの区分かは農業委員会で確認できます。値段を調べるより先に、ここを確かめたほうが早いことが多いはずです。
転用が視野に入る区分だった場合でも、転用にかかる費用は売り手の手取りから引かれます。造成や地目変更まで含めた総額の目安は農地転用の費用はいくら?坪数別の総額と誰が払うかで整理しています。売る手順そのものの違いは農地を売る2つの方法|農地のままと転用してからにまとめました。
自分の農地の相場を調べる4つの手順
全国平均やブロック平均は出発点にすぎません。手元の1枚に近づけるには、次の順番で当たると精度が上がります。
1. 実際の取引価格を見る(国土交通省・不動産情報ライブラリ)
国土交通省の不動産情報ライブラリでは、不動産の取引当事者へのアンケートをもとにした取引価格情報が公開されています。検索画面で土地の種類から「農地」を選ぶと、実際に取引された農地の価格を地域を絞って確認できます(国立国会図書館リサーチ・ナビの調べ方案内による)。所在は町・大字レベル、価格は有効数字2桁での提供です。平均ではなく実際に成立した金額を見られるのが強みで、逆に取引そのものが少ない地域では件数が出ないこともあります。
2. 旧市町村単位の平均を見る(市町村別田畑売買価格一覧表)
全国農業会議所の「田畑売買価格等に関する調査結果」には、旧市町村別の一覧表が別冊としてあります。昭和40年から作成されていて、耕作目的と転用目的の両方の田畑売買価格が載っています。ブロック平均より格段に手元に近い数字です。都道府県の農業会議でも県内の調査結果を公表している場合があります。
3. 相続税評価の考え方から当たりをつける
相続税の世界では、農地は純農地・中間農地・市街地周辺農地・市街地農地の4つに分けて評価されます。純農地と中間農地は固定資産税評価額に国税局が定める倍率を掛ける倍率方式、市街地農地は宅地だとした場合の価額から造成費を引く宅地比準方式または倍率方式、市街地周辺農地は市街地農地としての価額の80%です(国税庁のタックスアンサーによる。2026年7月31日確認)。税の評価額と売買価格は別物ですが、自分の農地が「農地として評価される場所」なのか「宅地に近い評価をされる場所」なのかを、無料で判定できます。
4. 実際に買い手を探す立場の査定を取る
統計は売れた案件の平均であって、売れなかった農地は数字に入っていません。最後は、その地域で実際に買い手を探せる相手に値段を出してもらうしかありません。農地を扱えるかどうかは会社によって差が大きいので、1社の返事で結論を出さないほうが安全です。
相場から手取りを逆算する。税金と特別控除
相場がわかっても、そのまま入ってくるわけではありません。農地を譲渡した場合は、他の所得と分離して譲渡所得に所得税と住民税がかかります。
計算は、譲渡による収入金額から取得費と譲渡費用を引き、さらに特別控除額を引いたものが譲渡所得。税率は所得税15%と住民税5%、取得後5年以内の売却(短期譲渡所得)なら所得税30%と住民税9%です(農林水産省の資料による。2026年7月31日確認)。
先祖代々の農地で取得費が不明という場合が多く、そのときの扱いは金額に大きく響きます。個別の税額計算は編集部の範囲を超えるため、税理士か税務署に確認してください。
農地には専用の特別控除がある
農用地区域内の農地については、集積・集約を促す目的で特別控除が用意されています。
- 800万円:農地中間管理事業の推進に関する法律に基づく農用地利用集積等促進計画や、農業委員会のあっせん等により農用地区域内の農地を譲渡した場合。農用地区域内の農地を農地中間管理機構に譲渡した場合も対象
- 1,500万円:農業経営基盤強化促進法に基づき市町村長が通知する農地中間管理機構との買入協議により、農用地区域内の農地を農地中間管理機構に譲渡した場合
- 2,000万円:農業経営基盤強化促進法に基づく地域農業経営基盤強化促進計画の特例により、農用地区域内の農地を農地中間管理機構に譲渡した場合
- 5,000万円:転用目的の譲渡のうち、農地が土地収用法等により買い取られる場合など
全国平均が10アールあたり100万円前後という水準を思い出すと、800万円の控除枠は多くのケースで譲渡益を吸収します。ただし控除は自動では付きません。あっせんを申し出る、買入協議の手続きに乗るといった順番を踏んでいることが前提で、控除で税額がゼロになる場合でも確定申告は必要です。相手を自分で見つけて相対で売ったあとから枠を使う、という後付けはできないと考えておいてください。
もうひとつ、安く売れば税金が減るわけではない点にも注意が必要です。時価の2分の1に満たない低額で譲渡した場合や無償で譲った場合も、時価で売ったものとみなして所得税が課税されます。「親戚にただ同然で渡す」という出口を考えているなら、先に確認しておく項目です。
相場が出ても売れないことがある
この調査が拾っているのは、売買が成立した地区の価格です。買い手が見つからなかった農地は、数字のどこにも現れません。下落要因の1位が「農地の買い手の減少や買い控え」で4割前後を占めていることは、相場表の外側に成立しなかった案件が積み上がっていることも示しています。
買い手が広がる方向の制度変更もありました。農地法第3条の許可要件のうち、取得後の経営面積が一定以上でなければならないという下限面積要件は、令和5年4月1日に撤廃されています(令和4年法律第56号による農地法の改正。2026年7月31日確認)。小さな面積から農業を始めたい人が農地を取得できるようになった一方で、下限面積以外の第3条の要件は残っているため、誰でも買えるようになったわけではありません。
それでも売れない場合、原因は値段ではなく条件側にあることが多いです。農用地区域内で転用の目がない、接道が悪い、水利費や地域の負担がついてくる、区画が細かい、といった要素です。値下げで動く問題と動かない問題を切り分けないまま値段だけ下げると、手取りが減っただけで終わります。理由の整理は農地が売れない5つの理由と、それでも手放す方法にまとめています。
平均値の表に、自分の土地は載っていない
編集部が相続したのは農地ではなく、沖縄の傾斜地です。売却、寄付、国庫帰属と出口を順番に当たりましたが、どれも成立せず、いまも保有したままです。固定資産税は年約7万円。金額としては小さくても、出口がないまま毎年出ていく費用は、性質がまったく違って感じられます。
出口を探していたときに一番こたえたのは、相場表を見て「このくらいでは売れるはずだ」と思っていた期間でした。平均値は売買が成立した土地の数字であって、成立しなかった土地は集計に入りません。相場を調べる作業と、買い手がいるかを確かめる作業は別物だと、あとから分かりました。農地でも同じことが起きているはずです。
売る前に確認する順番
相場調べから入ると遠回りになります。順番を入れ替えるだけで、判断が早くなります。
- 登記簿の地目と現況を照合する。登記が田・畑なら、耕作をやめていても農地法上は農地として扱われるのが原則です
- 農業委員会で区域と区分を確認する。農用地区域内か、甲種・第1種・第2種・第3種のどれか。ここで転用の可否がほぼ決まります
- 相続した農地なら名義を確認する。相続登記の申請義務化は令和6年4月1日に施行されています(法務省。2026年7月31日確認)。名義が故人のままだと売買の手前で止まります
- 旧市町村単位の平均と実取引価格で幅をつかむ。全国平均ではなく、手元に近い数字で
- 使える特別控除の枠と、そのための手続きの順番を確認する。あっせんや買入協議は売る前に乗るもので、後から付けられません
- 実際に買い手を探せる相手に査定を出してもらう。1社では相場か例外か判断できません
編集部は士業ではないため、税額の計算や遺産分割の判断はしません。特別控除が使えるかどうかは税理士か税務署、区分と許可の可否は農業委員会、この2か所が確認先です。制度も相場も年ごとに更新されるので、この記事の数値は2026年7月31日時点のものとして扱ってください。
