空き家の処分方法4つ|売る、貸す、解体、譲る

空き家の処分方法は売る・貸す・解体する・譲るの4つに整理できるが、並べて説明されるだけでは自分の家をどれに当てはめるか決まらない。
先に査定、解体は最後。木造30坪の解体は90〜150万円が目安で、更地にすると住宅用地特例が外れて土地の固定資産税は上がる。国に引き取ってもらう制度は建物があると申請すらできない(2026年7月31日確認)。
この記事の目次
空き家の処分方法4つを、費用と時間の桁で並べる
空き家の出口は、建物を残して誰かに渡すか、建物を壊して土地にするか、持ち続けるかの3方向しかない。売る・貸す・解体する・譲るの4つは、この分岐を手続きの形に落としたものになる。
先に費用と時間の桁を並べる。金額は物件と地域で大きく動くので幅で示す。
| 方法 | 手元に入るもの | 出ていく費用の目安 | 決着までの期間 |
|---|---|---|---|
| 仲介で売る | 売却代金(市場価格に近い) | 仲介手数料(売買価格の3%+6万円が上限)、登記費用 | 3か月〜1年以上 |
| 買取で売る | 売却代金(市場価格の5〜8割程度とされる) | 登記費用ほか | 数日〜1か月程度 |
| 貸す | 家賃 | 修繕費、管理委託料、原状回復費 | 数か月〜 |
| 解体して更地にする | 土地(売却・活用の可能性) | 解体費(木造30坪で90〜150万円が目安)、翌年からの固定資産税の増加 | 1〜2か月 |
| 譲る(個人・法人) | 維持費からの解放 | 登記費用、税の検討費用 | 数か月〜1年以上 |
| 国に引き取ってもらう(土地のみ) | 維持費からの解放 | 審査手数料1筆14,000円+負担金(原則20万円)+建物の解体費 | 審査に相応の期間がかかる |
解体費の目安は民間の不動産情報サイトの記載(ワケガイ「空き家を処分する4つの方法」2026年7月31日確認)による。買取価格の水準も同様に民間解説の記載であり、物件条件で大きく動く。
4つのうち、支出が先に確定するのは解体だけになる。売却と賃貸は決まれば入る側、譲渡は出ていく額をどこまで小さくできるかの勝負になる。検討の順番は、収入になりうるものから当たり、支出が確定するものを後ろに置くのが基本形になる。いきなり解体の見積もりから入ると、建物付きなら買えたはずの層を自分で消してしまうことがある。
1. 売る|仲介・買取・古家付き土地の3通り
売却は同じ言葉で3通りの意味に使われている。どれを指しているかで、価格も期間も別物になる。
仲介で売る
不動産会社に買主を探してもらう形になる。市場価格に近い額を狙えるのが最大の利点で、費用は成約時の仲介手数料(売買価格の3%+6万円が上限)が中心になる。弱点は時間で、需要の薄い地域では買主が現れないまま数年が過ぎることがある。売れ残っている間も固定資産税と管理の手間は毎年出ていく。
買取で売る
不動産会社が自ら買主になる形になる。数日から1か月程度で現金化でき、傷んだ家や仲介で断られた条件でも引き取られる可能性がある。代わりに価格は下がり、民間の解説では市場価格の5〜8割程度が目安とされる(ホームセレクト「空き家処分はこうすればOK」、ネクシルパートナーズ法律事務所コラム、いずれも2026年7月31日確認)。相続人が複数いて早く現金で分けたい場合に選ばれやすい。
古家付き土地として売る
建物を壊さず、土地の値段で売り出す形になる。買主が自分で解体するか、そのまま使うかを選べるため、解体費を先払いせずに買い手の間口を広げられる。解体前提の値付けになるので、更地の相場から解体費分が差し引かれることが多い。
2. 貸す|家賃が入る代わりに、修繕費が先に出る
貸すという出口は、所有権を残したまま維持費を家賃で相殺する考え方になる。売らずに済むので相続人の間で意見が割れにくい一方、手放したい人にとっては解決になっていない点に注意がいる。
実務上のハードルは3つある。1つ目は初期の修繕費で、長く空いていた家は水回り・雨漏り・シロアリの対応が先に必要になりやすい。2つ目は借主が見つかるかどうかで、持ち家率の高い地域では賃貸需要そのものが薄い。3つ目は遠方管理で、自分で対応できない場合は管理会社への委託料が家賃から引かれる。
修繕費を家賃の何か月分で回収できるかを先に割り算しておくと判断が早い。回収に10年以上かかる見込みなら、賃貸は出口ではなく先送りになる。
自治体の空き家バンクを使う場合
多くの自治体が空き家バンクを運営しており、売却と賃貸の両方で登録できるところが多い。移住希望者に届く可能性がある反面、掲載しただけでは動かないため、通常の不動産流通と並行させるのが現実的になる。登録要件や仲介の有無は自治体ごとに違うので、所在地の市区町村のページで確認する。
なお、改正空家法では市区町村が空家等管理活用支援法人を指定できる制度が新設されている(空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律、令和5年12月13日施行。国土交通省、2026年7月31日確認)。活用の相談窓口が増えている地域もある。
3. 解体して更地にする|費用と、翌年の固定資産税
建物に価値がなく、倒壊や飛散の恐れが出ている場合は解体が現実的な選択になる。ただし解体は4つの中で唯一、先に確定した支出が出る方法になる。
費用の目安
民間の不動産情報サイトでは木造住宅で1坪あたり3〜5万円、30坪なら90〜150万円が目安とされている(ワケガイ、2026年7月31日確認)。自治体側の数字も参考になる。宇都宮市の老朽危険空き家除却費補助金は、補助額の算定で延べ床面積1平方メートルあたり11,000円という上限単価を置いている(宇都宮市公式サイト、2026年7月31日確認)。100平方メートルなら110万円という水準で、民間の目安と大きくは離れていない。
実際の金額は、重機が入る道幅があるか、アスベストの調査と除去が必要か、家財の残置量がどれくらいか、で上下する。特に残置物の処分費は解体費と別建てになることが多く、自治体の補助対象からも外されているケースがある。
更地にすると土地の固定資産税は上がる
住宅が建っている土地には住宅用地特例があり、200平方メートル以下の部分は固定資産税の課税標準が6分の1、200平方メートルを超える部分は3分の1に減額される(国土交通省「空家法とは」、2026年7月31日確認)。建物を壊すとこの特例が外れる。宇都宮市も補助金のページで、更地にすると住宅用地特例が適用されなくなる点を関係者全員の同意事項として明記している。
解体を検討するなら、更地にした後の税額と売却見込みをセットで比べる必要がある。実家を更地にする費用と、更地にしてから売る損得で費目ごとに整理している。
もう1つの注意点は順序になる。市街化調整区域や再建築不可の土地では、壊した後に建て直せず買い手が減ることがある。解体前に、更地にした場合の売り出し価格を不動産会社に確認しておく。
4. 譲る・手放す|個人への譲渡、自治体への寄付、国庫帰属
売れず貸せない場合に残るのが、代金を取らずに手放す方向になる。3つの経路がある。
個人・法人へ無償で譲る
隣地の所有者、地域で使い道を探している人、法人が対象になる。隣地所有者は敷地の形を整えたい、接道条件を改善したいといった動機を持っていることがあり、市場に出しても反応がない土地でも話が通る場合がある。
無償でも税金の問題は残る。もらう側には贈与税、渡す側にも譲渡所得の課税関係が生じうるため、金額の設定と契約の形は税理士に確認する範囲になる。編集部は税額の判断をしない。
自治体への寄付
公共で使う予定がある土地でなければ受け付けない自治体が多い。断られること自体は珍しくないので、寄付を前提に予定を組まない。まず所在地の担当課に、寄付の受付基準があるかを聞くところから始まる。
相続土地国庫帰属制度
相続または相続人に対する遺贈で取得した土地を、国に引き取ってもらう制度になる。令和5年4月27日施行で、施行前に相続した土地も対象になる(法務省、2026年7月31日確認)。
- 費用は審査手数料が土地1筆あたり14,000円、承認後の負担金は1筆ごとに原則20万円(政府広報オンライン、2026年7月31日確認)。市街地の宅地、農用地区域内の農地、森林などは面積に応じた算定になる
- 建物がある土地は却下される。空き家のままでは申請できず、先に解体が要る
- 境界が明らかでない土地、担保権が設定されている土地、土壌汚染のある土地も却下事由になる
- 一定の勾配と高さの崖、地上の障害物、地下の埋設物は不承認事由になる
運用実績は法務省が公表している。令和8年6月30日現在で申請5,698件、帰属2,885件、却下83件、不承認93件、取下げ1,063件(法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」、2026年7月31日確認)。取下げのうち546件は、自治体の活用決定や隣接地所有者からの引き受け申出など、有効活用の見込みが生じたことによるものとされている。申請にたどり着いた案件の承認率は低くないが、そもそも申請に至る前の要件で止まるケースが多い制度になる。
編集部が出口を当たってみた結果
編集部が相続したのは沖縄の傾斜地で、建物は建っていない。売却の相談、寄付の可否、国庫帰属の要件と、当たれる出口は一通り当たった。どれも成立せず、いまも保有している。
出ていく額は固定資産税が年約7万円。1年では小さいが、出口が決まらないまま何年も同じ額が出続ける状態は、金額よりも終わりが見えないことが重い。査定を取る前に知りたかったのは、売れるかどうかではなく、売れなかったときに次に何を試すのかという順番の方だった。
田舎で買い手がつかないときに動かす順番
需要の薄い地域では、4つを並べて比べても答えが出ない。動かす順番を決めた方が早い。
- 相続登記を終わらせる。名義が故人のままでは売却も譲渡も進まない
- 複数社に査定を出す。仲介と買取の両方の数字を取る。ここで初めて、値段が付く物件かどうかが分かる
- 3か月出して問い合わせ件数を確認する。0件なら価格の問題ではなく需要の問題になる
- 隣地所有者と地元業者に当たる。市場に出ない形で決まることがある。特に隣地は動機を持っている可能性がある
- 古家付き土地へ切り替える。解体費を買い手に委ねて間口を広げる
- 買取・引き取り業者を検討する。金額は下がるが、決着が早い
- 解体と国庫帰属を計算する。解体費+審査手数料14,000円+負担金20万円を、固定資産税の何年分と釣り合うかで比べる
7の計算は多くの人が最後に突き当たる。仮に解体100万円と負担金20万円で合計120万円かかるとして、固定資産税が年5万円なら24年分になる。数字が出れば、持ち続けるか手放すかの判断は感情から離れる。
値下げと買取のどちらに倒すかは、空き家が売れないときの選択肢|買取と値下げの判断で分岐を整理している。
処分の前に終わらせる相続登記
どの方法を選んでも、名義が被相続人のままでは手続きが進まない。相続登記は令和6年4月1日から申請が義務化されている。
- 相続により不動産の所有権を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつその不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務がある(不動産登記法第76条の2第1項)
- 遺産分割が成立した場合は、成立した日から3年以内に、その内容に応じた登記が必要になる
- 正当な理由がないのに怠ったときは10万円以下の過料の適用対象になる(同法第164条第1項)
- 令和6年4月1日より前に発生した相続も対象になり、令和9年3月31日までの猶予がある
- 遺産分割がまとまらない場合は、単独で申請できる相続人申告登記で義務を履行したとみなされる
出典は法務省「相続登記の申請義務化について」および同Q&A(いずれも2026年7月31日確認)。過料は期限を過ぎた時点で自動的に科されるものではなく、登記官の催告を経て裁判所が判断する流れになると説明されている。
相続登記を促進するための登録免許税の免税措置も設けられており、価額100万円以下の土地に係る相続登記などが対象になる(免税期間は令和9年3月31日まで、法務省、2026年7月31日確認)。適用の可否は物件ごとに違うので、法務局または司法書士に確認する範囲になる。
放置を続けた場合に起きること
使用目的のない空き家は平成15年の212万戸から令和5年の386万戸へ、20年でおよそ2倍に増えている(国土交通省 空き家対策特設サイト、2026年7月31日確認)。行政側の対応も強まっている。
令和5年12月13日施行の改正空家法で、管理不全空家等という区分が新設された。適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にある空家等が対象になる(越谷市公式サイト、国土交通省、いずれも2026年7月31日確認)。
影響が出るのは税金になる。管理不全空家等または特定空家等として指導を受け、それに従わず勧告を受けると、その土地の住宅用地特例が解除される(国土交通省「空家法とは」、2026年7月31日確認)。前述のとおり特例は200平方メートル以下で6分の1、超過部分で3分の1の減額なので、外れれば土地の固定資産税は大きく上がる。
どの段階で何が起きるかは空き家の固定資産税が6倍になる条件と回避の順番で条件ごとに分けている。
使える税制と補助金|2026年7月31日時点
制度は年度で変わる。以下は2026年7月31日に一次ソースで確認した内容になる。適用の可否と税額の計算は税理士および自治体窓口で確認する範囲であり、編集部は判断をしない。
相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例として、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる(国税庁 No.3306、2026年7月31日確認)。主な要件は次のとおり。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 相続の時から譲渡の時まで、事業・貸付け・居住の用に供されていたことがないこと
- 売却代金が1億円以下であること
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間の譲渡であること
- 売却時に耐震基準を満たすか、売却後の翌年2月15日までに満たすこと(取壊しによる場合を含む)
- 令和6年1月1日以後の譲渡で、家屋と敷地を相続または遺贈で取得した相続人の数が3人以上である場合は2,000万円が上限になる
期限が2つある点に注意がいる。相続開始から3年を経過する日の属する年の年末という個別の期限と、令和9年12月31日という制度全体の期限で、早く来る方が実際の締切になる。
自治体の解体補助金
老朽化した危険な空き家の除却に補助を出す自治体は多い。金額と要件は地域差が大きいので、実例を並べる(いずれも各市公式サイト、2026年7月31日確認)。
| 自治体 | 補助率と上限 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 宇都宮市 | 対象額の3分の2、上限70万円 | 延べ床面積×11,000円との低い方が基準。老朽危険空き家の事前調査申請が必要 |
| 名古屋市 | 評価75点以上で3分の1・最大40万円、125点以上で3分の2・最大80万円 | 特定空家等と判断された家屋で、更地にする工事が対象 |
| 秋田市 | 対象経費の2分の1、上限50万円 | 市が老朽危険空き家として認定したものに限る |
| 松山市 | 令和8年度から上限100万円(島しょ部は160万円) | 老朽危険空家の解体が対象 |
| 北九州市 | いずれか低い額の3分の1以内 | 昭和56年5月以前建築で、市場流通が困難と判定された空き家 |
共通する落とし穴が2つある。1つは着工前の申請が必須で、契約や工事を先に始めると対象外になること。もう1つは予算上限で、長野市は令和8年度の交付申請手続きを予算到達により終了している。年度の早い時期に窓口へ確認する方が確実になる。
費用の内訳と、どこに相談するか
処分で出ていく費用は解体費だけではない。売却まで進めると次の費目が乗る。
- 相続登記の費用(司法書士に依頼する場合の報酬と登録免許税)
- 家財・残置物の処分費(解体費に含まれないことが多い)
- 測量費(境界が確定していない場合。国庫帰属では境界が明らかでない土地は却下事由になる)
- 仲介手数料(売買価格の3%+6万円が上限)
- 解体費(木造30坪で90〜150万円が目安)
- 売却益が出た場合の譲渡所得税と住民税
相談先は目的で分かれる。いくらで売れるかは不動産会社、名義と登記は司法書士、税額と特例の適用は税理士、補助金と空き家バンクと管理不全空家の判断は市区町村の空き家担当課になる。相続人の間で話がまとまらない場合は弁護士の領域になる。
順番としては、まず不動産会社の査定で値が付くかどうかを確定させ、その数字を持って税と登記の相談に入ると話が早い。金額が分からないまま税理士に相談しても、比較する材料がない。
建物を壊した後の土地に使い道が残るかどうかを先に見たい場合は、活用プランを取り寄せて更地の売却額と比べる方法もある。
よくある質問
相続放棄すれば空き家を手放せるか
相続放棄をすると空き家だけでなく預貯金を含む一切の財産を相続できなくなる。また、放棄しても次順位の相続人や相続財産清算人に引き継がれるまでの管理の問題が残る場合がある。放棄の可否と期限は個別事情で変わるため、弁護士または司法書士に確認する範囲になる。
建物が古くても解体せずに売れるか
古家付き土地として売り出す形なら可能になる。買主が解体費を負担する前提で価格を組むため、更地相場から解体費相当が引かれることが多い。解体費を自分で払って更地にした方が高く売れるかは、地域の需要と再建築の可否で逆転するので、両方の想定価格を不動産会社に出してもらって比べる。
国庫帰属制度は空き家のまま申請できるか
できない。建物が存する土地は却下事由になっている(法務省、2026年7月31日確認)。申請するには先に解体して更地にする必要があり、解体費に審査手数料14,000円と負担金原則20万円が上乗せされる。
遠方に住んでいて管理に行けない
草刈りや通風といった作業は、地域の事業者や空き家管理サービスに委託できる。費用は作業内容と回数で変わる。管理不全空家等の指導は敷地の状態が端緒になりやすいので、最低限の外構管理だけでも段階を上げない効果がある。
兄弟で共有しているが、意見が割れている
共有名義の不動産は、売却にも解体にも共有者全員の同意が要るのが原則になる。誰か1人が費用を立て替える形にすると後で揉めやすいため、費用の分担と将来の精算方法を書面にしてから動く。合意が取れない場合は弁護士の領域になる。
