ぬいぐるみと人形の遺品|供養に出す方法と費用

他の遺品は片付いたのに、ぬいぐるみと人形だけ手が止まる。これはよくあることで、判断が甘いわけではない。
費用の目安は先に出せる。供養は箱単位が主流で1箱3,000〜10,000円台、自治体のごみに出すなら無料。数体なのか押し入れ一つ分なのかで、選ぶ先も金額も変わる。分ける基準と郵送の手順を、寺社の公式料金と自治体の分別区分から並べる。
この記事の目次
供養か処分かの二択にすると止まる
ぬいぐるみと人形の遺品で詰まる原因は、たいてい「供養に出すか、捨てるか」の二択で考えていることにある。二択だと、どちらを選んでも片方を切り捨てた感覚が残るので決まらない。
実務としては3つに分けると手が動く。①手元に残すもの、②供養に出すもの、③自治体のごみとして出すもの。全部を同じ扱いにする必要はない。
分ける目安
- 残す:故人が名前で呼んでいた、写真に何度も写っている、飾る場所が今の家にある
- 供養に出す:顔がある、故人が身につけていた、捨てる手が止まる
- ごみに出す:景品や量産品で、思い出の記憶がない。汚れやカビで人に渡せない
費用は数ではなく箱の数で決まることが多い。数体なら1箱で収まり、押し入れ一つ分でも2〜3箱に収まる。供養が必要かどうかの考え方は人形やぬいぐるみの処分|供養が必要か迷ったときでも整理している。
自治体のごみに出すときの分別
ぬいぐるみは多くの自治体で燃やすごみだが、サイズと素材で区分が変わる。横浜市のごみ分別辞典では、ぬいぐるみは燃やすごみ、注記として「50cm以上のものは粗大ごみ。ビニール類のぬいぐるみは粗大ごみ扱い」とある(2026年7月31日確認)。同市の粗大ごみの基準は、金属製品で一番長い辺が30cm以上、それ以外は50cm以上。
間違えやすいのが古布・古着の回収に混ぜてしまうことで、横浜市は古布の対象外として「中に綿の入っているもの(布団、ぬいぐるみ 等)」を明記している。布だからと資源に出すと回収されずに残る。
出す前に外すもの
- 音が鳴る・光る・動くタイプに入っている電池と電子部品
- 首輪や台座の金属パーツ、ガラスの目
- 人形のガラスケース、雛壇、屏風、道具類(別区分になることが多い)
供養に出す場合の費用(公式料金で確認できる範囲)
相場は「1体いくら」ではなく「箱いくら」で見たほうが実態に合う。2026年7月31日時点で各公式サイトに掲載されている料金は次の通り。
| 受付先 | 料金 | 単位 |
|---|---|---|
| 大和松尾寺(奈良県大和郡山市) | 3,000円から(故人の遺品の回向は5,000円から) | 一箱・一袋 |
| 日本人形協会 人形感謝(供養)代行サービス | 5,000円(ゆうパック料金は別途) | 一箱・3辺合計170cm以内/30kg以内 |
| 本寿院(東京都大田区) | 3辺合計70cm以内5,000円から、140cm以内10,000円から、280cm以内20,000円から | 箱のサイズ別のお布施 |
| 神社のお焚き上げ(祐徳稲荷神社) | 7,480円から(送料は神社負担) | 供養キット単位 |
つまり、ぬいぐるみを段ボール1箱にまとめて出すなら3,000〜10,000円台が中心の帯になる。ケース入りの日本人形や雛人形一式のように箱が大きくなると、本寿院の例で2万円台から3万円台に上がる。
追加料金の条件も先に見ておく。日本人形協会は箱が増えるごとに2,000円加算、本寿院はガラスや陶器などの不燃物が入る場合に2,000円追加としている。
郵送で頼むときの手順と、返送される条件
遠方の実家を片付ける場合、持ち込みより郵送のほうが現実的になる。郵送受付には大きく2つの型がある。
自分で箱に詰めて送る型
松尾寺は段ボールに詰めて元払いで送り、箱の中に連絡先の電話番号と支払方法(現金書留かクレジットカード)を明記する方式。日本人形協会はゆうパックを使い、顔がついた人形全般が対象で、ひな人形・五月人形・ぬいぐるみ・フランス人形を受け付ける。
キットを買って詰める型
祐徳稲荷神社の窓口では、供養キットを注文して届いた箱に詰め、着払いで送る。供養は1.5か月に1回のペースで、完了後にお焚き上げ証明書と祈祷動画がメールで届く。証明書が要るかどうかで選び分けるとよい。
受け付けてもらえないもの
- 電池・コード類(松尾寺は事前の取り外しを求め、燃えない素材が入っていた場合は着払いで返送される可能性があると明記)
- 剥製、陶器製・銅製の人形(松尾寺)
- ガラスケース、収納箱、飾り台、台座、屏風、道具類、マネキン、仏像(日本人形協会は対象外)
供養祭の時期にも締切がある。日本人形協会は9月末日までに代金の振込が完了した分を、その年の10月頃に東京大神宮で行う人形感謝(供養)祭で供養する。郵送の全体像はお焚き上げの費用と依頼先|郵送で頼めるものにまとめている。
寄付・リユースに回すという選び方
状態が良く、まだ人に渡せるものは寄付という出口がある。認定NPO法人グッドライフが運営するセカンドライフは、ぬいぐるみ・人形を箱単位で受け付け、希望すれば月2回の合同供養で供養してから(同団体の表現で「お心抜き」をしてから)国内外にリユースしている。
注意しておきたいのは、寄付でも費用がかかる点。同団体は全国一律の箱単位の料金を設定し、その大半はゆうパックの配送料だと説明している。箱は3辺合計で区分され、120cm程度が中箱、150cm程度が大箱、170cmは集荷対象外。重さにも上限がある。
また、リユース前提のため、顔や手足が取れたもの、カビが生えたものは受け付けの対象外になる。汚れて渡せない状態のものを寄付で片付けようとすると、送料を払って戻ってくることになる。
遺品整理業者にまとめて頼む場合の確認事項
ぬいぐるみだけを分けて送るより、家財ごと片付けるほうが早い場面もある。遺品整理業者や不用品回収業者には、供養やお焚き上げの代行をオプションで持つところがあり、遺品整理の基本料金に含まれるケースもあると各社が案内している。
見積りの段階で確認しておく点は次の4つ。
- 供養は自社で行うのか、提携する寺社に依頼するのか
- 供養証明書が出るか(親族に説明する必要があるなら要る)
- 供養後の品はどうなるか(焼却か、リユースか)
- ガラスケースや雛壇など不燃物の扱いと追加料金
費用は作業量と地域で変わるので、1社の金額を相場と思わないほうがよい。同じ量の作業でも、階数や搬出経路で見積りは動く。
庭で燃やすのは法律で禁止されている
供養のつもりで自宅の庭や畑で燃やす、というやり方は選べない。廃棄物の処理及び清掃に関する法律第16条の2は、法令で定められた方法による場合を除いて廃棄物を焼却することを禁じている。違反した場合、同法第25条第1項第15号により5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科とされ、法人の業務に関する違反では法人に3億円以下の罰金が科される(あきる野市の解説ページ、2026年7月31日確認)。
例外として政令に「風俗慣習上または宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却」が挙がっているが、これは寺社などが行う行事を指すもので、個人が自宅で燃やしてよいという意味ではない。構造基準を満たさない簡易焼却炉やドラム缶での焼却も同じ扱いになる。
手元でできるのは、燃やすことではなく整えること。ほこりを拭き、白い紙や布に包み、塩を軽く振ってから袋に入れる、といった作法は法律上の手続きではないが、気持ちの区切りとして広く行われている。
数が多すぎて決められないとき
ぬいぐるみは1体ずつ判断すると全部残ることになる。故人の趣味だった場合、押し入れや部屋一つが埋まっていることもある。
その場合は、品物ごとの判断をやめて先に枠を決める。
- 残す数を先に決める(例:飾れる棚1段分、箱1つ分)。数が決まれば選ぶ作業になる
- 並べて写真を撮る。全体を1枚に収めてから手放すと、記憶の側が残る
- 顔があるものだけ供養に回す。線引きを外形で決めると、家族の間でも説明しやすい
- 迷う数体は保留箱に入れて日付を書く。次の帰省まで持ち越しても構わない
写真やアルバムでも同じ詰まり方をする。残す量の決め方は遺品の写真とアルバムの処分|残す量の決め方で扱っている。
迷ったときに動かす順番
編集部が調べた範囲では、費用と手間が少ない順に見ていくと決めやすい。
- 残すものを先に抜く(数か枠を決めてから選ぶ)
- 自治体の分別を引く(市区町村名+ぬいぐるみ。サイズと素材で区分が変わる)
- 渡せる状態のものは寄付の可否を見る(送料は自己負担、破損・カビは対象外)
- 手が止まるものだけ供養に回す(箱に詰めて3,000〜10,000円台が中心の帯)
- 量が多ければ家財ごとの見積りを取る(供養の扱いと追加料金を確認)
料金と受付条件は年度や寺社ごとに変わる。この記事の金額は2026年7月31日に各公式サイトで確認した時点のもので、申し込む前に最新の記載を見ておくとよい。相続や税に関わる判断が絡む場合は、編集部は士業ではないため、税理士や弁護士に範囲を確認してほしい。
