実家じまいはどこに相談する?窓口の使い分け表

実家じまいの相談先が決まらないのは、調べ方が悪いからではない。窓口が10種類以上あり、無料で聞ける範囲がそれぞれ違うからだ。
結論は、悩みの種類ではなく期限で選ぶ。相続放棄3か月、準確定申告4か月、相続税10か月、相続登記3年。この順で当たる窓口が決まる。2026年7月31日時点の制度で整理した。
この記事の目次
相談先は「悩みの種類」より先に「期限」で決まる
実家じまいの相談は、片付け・売却・解体・相続手続きが同時に押し寄せる。どれから手を付けるか迷ったときに使える基準は一つで、期限のあるものが先になる。法律と税の期限は相続の開始日から自動的に動き出し、過ぎたものは後から取り戻せない。
下の表は、実家じまいで動き出す主な期限と、その期限に対応する窓口をまとめたもの。数字はすべて官公庁の公開情報で、2026年7月31日時点の内容を確認した。
| 期限 | いつまで | 提出先 | 先に当たる窓口 |
|---|---|---|---|
| 相続放棄・限定承認 | 自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内 | 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所 | 弁護士・司法書士、法テラス |
| 準確定申告 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内 | 被相続人の死亡当時の納税地の税務署長 | 税理士、税務署 |
| 相続税の申告と納税 | 被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内 | 被相続人の住所地を所轄する税務署 | 税理士 |
| 相続登記の申請 | 不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内 | 法務局 | 司法書士、法務局の登記手続案内 |
| 空き家の3000万円特別控除 | 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ令和9年12月31日までの譲渡 | 税務署 | 税理士 |
相続放棄の申述にかかる収入印紙は申述人1人につき800円、郵便切手代は裁判所ごとに異なる(裁判所「相続の放棄の申述」)。相続登記の義務化は令和6年4月1日から始まっており、施行前に相続した不動産は令和9年3月31日までが期限になる。正当な理由なく怠った場合の過料は10万円以下の範囲内で裁判所が決定する(法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。
窓口の使い分け表:頼めること、頼めないこと
窓口を選ぶときに効くのは、その窓口が何をしてくれるかより、何をしてくれないかのほうだ。断られる場所に順番を使うのがいちばんの遠回りになる。
| 窓口 | 頼めること | 頼めないこと | 費用の性格 |
|---|---|---|---|
| 市区町村の空き家担当課 | 地域の補助金、空き家バンク、管理の相談、専門家相談会の案内 | 個別の売却仲介、税額の計算 | 無料 |
| 法務局(登記手続案内) | 登記申請書の作成等に必要な情報の提供 | 遺産分割の是非の判断、個別の法律相談 | 無料・完全予約制 |
| 法テラス | 弁護士・司法書士による法律相談 | 資力基準を超える人の無料相談、刑事事件 | 条件を満たせば無料 |
| 消費生活センター(188) | 業者との契約・料金トラブルの相談 | 業者の選定や紹介 | 相談無料・通話料は自己負担 |
| 司法書士 | 相続登記、争いのない遺産分割協議書 | 相続人間の争いの代理交渉 | 報酬は事務所ごと |
| 弁護士 | 相続人間の争いの代理、相続放棄 | 登記そのものの申請代理は原則対象外 | 報酬は事務所ごと |
| 税理士 | 相続税、準確定申告、譲渡所得の申告 | 不動産の仲介、登記 | 報酬は事務所ごと |
| 土地家屋調査士 | 測量、境界の確定、建物滅失登記 | 相続税や売却の判断 | 報酬は事務所ごと |
| 不動産会社 | 査定、仲介、買取 | 相続登記、税務判断 | 売却成立時に仲介手数料 |
| 解体業者 | 建物の解体、整地 | 登記、相続手続き | 見積り無料が多いが要確認 |
| 遺品整理業者 | 家財の仕分け、搬出、処分 | 相続手続き、不動産の処分判断 | 見積り無料が多いが要確認 |
編集部は士業ではない。上の表は各窓口が公開している業務範囲を整理したもので、個別の税額計算や遺産分割の可否を判断するものではない。金額や適用の可否は、必ず税理士・司法書士・弁護士に確認する。
無料で聞ける窓口と、その「無料の範囲」
無料相談は存在するが、無料の範囲は窓口ごとに明確に線が引かれている。線を知らずに行くと、聞きたかったことだけ持ち帰れない。
法務局の登記手続案内
全国の法務局は、登記手続に専門知識のない人に対し、登記申請書の作成等に必要な情報を提供している。利用時間は1回あたり20分以内、完全予約制で、電話・窓口での対面・ウェブ会議から選べる(法務省 法務局「登記手続案内」)。利用できるのは申請人本人(親族・従業員)に限られ、委任状のない代理人、税理士、行政書士は利用できないと案内している法務局もある(広島法務局)。
ここは「登記の書き方を教わる場所」であって、誰が相続するのが得かを一緒に考える場所ではない。遺産分割の方針が固まってから予約すると密度が上がる。
法テラス(民事法律扶助)
収入と資産が資力基準以下であること、勝訴の見込みがないとはいえないこと、民事法律扶助の趣旨に適することの3条件を満たすと、弁護士・司法書士の法律相談が無料になる(法テラス「民事法律扶助業務」)。相談は1回30分程度で、同じ問題について3回まで利用できる。対象は民事・家事・行政に関する問題で、刑事事件は対象外(政府広報オンライン)。
司法書士会などの無料相談
相続登記の義務化に合わせて、法務局と司法書士会が共同で無料相談所を開いている地域がある。名古屋法務局は愛知県司法書士会と共同で、愛知県内6か所の法務局に予約制の無料登記相談所を開設していると案内している(名古屋法務局)。広島司法書士会の総合相談センターは電話相談が無料、面談相談は要予約で初回無料と案内されている(広島法務局)。枠組みは都道府県ごとに違うので、実家のある都道府県の司法書士会を確認する。
消費者ホットライン188
業者との契約や料金でもめたときは188に電話すると、身近な消費生活センターや相談窓口につながる。相談は無料だが、窓口につながった時点から通話料が発生する(消費者庁「消費者ホットライン」)。
自治体の窓口は「実家のある市区町村」に当たる
市区町村の窓口は、実家じまいで最初に無料で当たれる場所になる。国土交通省の空き家対策特設サイトも、空き家をどうするか迷ったときや管理・活用の方法が分からないときは、空き家のある市区町村の窓口や不動産事業者などの専門家に相談するよう案内している。解体・改修には補助金や各種制度を活用できる場合があり、まずは市区町村のウェブサイトで調べるか窓口に問い合わせる、という順番が示されている。
ここで間違えやすいのが窓口の場所で、当たるのは自分が住んでいる市区町村ではなく、実家のある市区町村になる。補助金の要件も空き家バンクの運用も、その自治体の制度だからだ。
市区町村で聞けることは、おおむね次の範囲に収まる。
- 空き家の解体・改修に使える補助金の有無と要件、申請の時期
- 空き家バンクへの登録可否(国土交通省は全国版空き家・空き地バンクの構築を支援している)
- 市区町村が連携するNPO法人などによる相談対応やマッチング支援の有無
- 家財の収集運搬を頼む業者が一般廃棄物処理業の許可を持っているかの照会
- 管理不全の状態が続いた場合に市区町村がどう関与するか
国土交通省は、空き家の発生原因の半分以上が相続によるものだとして、親が住まなくなった家の方針を決めないまま相続すると空き家のまま放置されやすいと注意を促している。方針を決めるための材料を無料で集められる場所として、市区町村は先に使ったほうがいい。
補助金の要件は年度で変わる。2026年7月31日時点で確認できるのは制度の枠組みまでで、金額と締切は実家のある市区町村の当年度のページで確認する必要がある。
士業の使い分け:資格ごとに扱える領域が法律で分かれている
士業を「相続の専門家」とひとまとめにすると空振りする。扱える領域が資格ごとに分かれているためで、依頼先を間違えると断られるか、別の士業を紹介されて時間が増える。
司法書士
相続登記の中心になる。争いのない遺産分割協議書の作成も扱う。相続登記の義務は、期限内に相続登記ができない事情があるときは相続人申告登記でも履行できる。これは自らが登記簿上の所有者の相続人であること等を3年以内に登記官へ申し出る制度で、特定の相続人が単独で申し出られるが、各相続人が個別に申し出る必要がある(法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。
弁護士
相続人の間で意見が割れている、連絡が取れない相続人がいる、相続放棄を検討している、といった場面が担当領域になる。争いがある状態で司法書士や不動産会社に持ち込んでも、代理交渉はできない。
税理士
相続税、準確定申告、売却したときの譲渡所得の申告を扱う。空き家の3000万円特別控除は、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡で、売却代金1億円以下などの要件がある。令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合、控除額は2000万円までに制限される。譲渡の時から翌年2月15日までに一定の耐震基準を満たすか、家屋の全部の取壊し等を行ったことも要件になる(国税庁 No.3306、2026年7月31日確認)。適用できるかどうかの判断は税理士か税務署に確認する。
土地家屋調査士
境界が不明確な土地の測量、建物を解体した後の滅失登記を扱う。実家が古く、隣地との境界に杭が無い場合は早めに当たっておくと売却の局面で詰まりにくい。
行政書士
許認可の書類作成が中心になる。実家に田や畑が付いているケースでは農地の扱いが関わってくる。判断の目安は農地転用は行政書士に頼むべき?報酬相場と依頼の判断にまとめている。
民間業者の窓口は、見積りを取る前に許可を確認する
片付け、解体、売却は民間業者が窓口になる。ここは無料相談ではなく営業の入口なので、比較の前提を先に揃えておく必要がある。
国民生活センターは、遺品整理サービスについて「高額な追加料金が発生した」「処分しない予定の遺品が処分された」といった料金や作業内容に関する相談が全国の消費生活センター等に寄せられていると公表している(2018年7月19日公表)。同センターの見守り新鮮情報(2025年10月30日公表)では、遺品や住まいの不用品を廃棄物として収集・運搬する事業者は、市町村からの委託業者であるか、市町村長から一般廃棄物処理業の許可を受けている必要があり、無許可事業者による処分は法律違反となって不法投棄などにつながりかねないとして、市町村の窓口に照会するなど慎重に選ぶよう促している。
この2点を先に押さえると、比較の軸が「安いかどうか」から「同じ条件で比べられているか」に変わる。
- 収集運搬の許可を持っているか(市町村の窓口に照会できる)
- 見積書を書面で出すか、追加料金が発生する条件が書いてあるか
- 残す物と処分する物の指定方法(作業員が分かるよう印を付ける等)
- 複数の事業者から見積りを取り、料金と契約内容を比較したか
親が存命で本人と一緒に進める場合は、業者を呼ぶ前の段階でつまずくことが多い。伝え方の順番は親の家の片付けを親と一緒に進めるときの伝え方で扱っている。
ワンストップの相談窓口は使っていいか
実家じまいをまとめて引き受ける民間の相談窓口が増えている。複数の専門家を自分で探す手間が消えるのは事実で、遠方に実家がある場合は特に効く。一方で、無料と書かれた窓口も収益はどこかで発生している。判断材料は、その窓口がどこで儲けているかを聞けるかどうかに尽きる。
契約前に確認できる項目を挙げる。
- どこまでが自社の業務で、どこから先が他社の紹介か
- 紹介手数料は誰が払うのか(自分か、紹介先の業者か)
- 宅地建物取引業の免許を持っているか、買取なのか仲介なのか
- 売却を選ばなかった場合に費用が発生するか
免許の有無は自分で確認できる。国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」では、宅地建物取引業者の免許番号、商号、代表者名、本店・支店所在地、免許年月日、免許の有効期間、所属団体などを検索できる(国土交通省近畿地方整備局の案内による)。同システムは処分等の情報を扱っていないため、行政処分の履歴は国土交通省のネガティブ情報等検索サイトを別に見る。
付け加えると、このサイトも紹介による収益で運営している。アフィリエイトリンクを含む記事には日付の横に広告表記が付く。だから編集部は、窓口を勧める前に確認手順のほうを先に書いている。
相談に持って行く4点で、聞ける中身が変わる
無料相談は時間が短い。法務局の登記手続案内は1回20分以内、法テラスの法律相談は1回30分程度で、資料を探している時間がそのまま削られる。先に手元に揃えておくものは4つに絞れる。
- 登記事項証明書:名義が誰になっているか。祖父母の代で止まっていることがある
- 固定資産税の課税明細書:毎年届く。土地と建物の評価額、筆の数、地目が分かる
- 現況が分かる写真と間取り:家財の量、建物の傷み、接道の状況
- 相続人の一覧と連絡の可否:何人いるか、連絡が取れるか
加えて、期限の起算日をメモしておく。相続放棄は自己のために相続の開始があったことを知ったとき、準確定申告と相続税はそれぞれ知った日の翌日、相続登記は不動産を相続で取得したことを知った日が起算点になる。どの窓口でも最初に聞かれるのはここで、答えられると相談が一段進む。
課税明細書は特に効く。筆の数と地目が分かれば、田や畑が混じっているか、隣接地が別筆で残っているかが読める。この情報が無いまま不動産会社に行くと、査定の話が現地調査まで進まない。
状況別・最初に連絡する1か所
状況によって最初の1か所は変わる。以下は、期限と無料の範囲から逆算した順番になる。
親が存命で、本人が判断できる
最初は親本人との話し合いになる。その次が、実家のある市区町村の空き家担当課。補助金と空き家バンクの有無を先に把握しておくと、選択肢の幅が変わる。
相続したばかりで、何の期限があるか分からない
この記事の冒頭の表で自分に当たる期限を拾う。3か月と10か月に関わるなら税理士か弁護士、登記だけなら法務局の登記手続案内を予約する。
数年放置していて、名義も分からない
登記事項証明書で名義を確認するのが先。祖父母の代で止まっていた場合、相続人が枝分かれしていることがあるので司法書士に持ち込む。令和6年4月1日より前に相続した不動産の登記期限は令和9年3月31日になる。
兄弟で意見が割れている
弁護士。収入と資産が資力基準以下なら、法テラスの無料相談を同じ問題について3回まで使える。相続放棄を検討しているなら3か月の期限が先に来る。
遠方に住んでいて現地に行けない
実家のある市区町村に電話で当たる。法務局の登記手続案内は電話とウェブ会議にも対応しているので、移動を伴わずに1回20分の枠を使える。
相続したが、誰も引き取り手がいない
相続土地国庫帰属制度が選択肢に入る。相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した人が対象で、審査手数料は土地一筆当たり14000円、これとは別に負担金がかかる。制度の施行は令和5年4月27日で、施行前に相続等で取得した土地も対象になる(法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」、2026年7月31日確認)。要件は厳しいので、通るかどうかを含めて法務局か司法書士に確認する。
全体の順番と費用の内訳は実家じまいとは?進め方と費用の全体像を7ステップで解説で通してまとめている。
よくある質問
無料相談だけで実家じまいは進められる?
方針を決めるところまでは進む。市区町村での情報収集、法務局での登記の書き方の確認、条件を満たす場合の法テラスの法律相談は無料で使える。ただし、登記の申請代理、相続税の申告、売却の仲介は有料の業務になる。無料で進めるのは判断材料を集める段階まで、と割り切ると使いやすい。
実家が遠方でも、近所の専門家に頼める?
登記は不動産の所在地を管轄する法務局が窓口になるため、法務局の手続案内は実家のある地域の管轄に当たる。税務署も被相続人の住所地を所轄する税務署になる。一方で相談自体は電話やオンラインに対応している窓口が増えているので、移動できるかどうかで諦める必要はない。
相続登記を3年以内にできそうにない
相続人申告登記という簡易な方法がある。登記簿上の所有者の相続人であること等を期限内に登記官へ申し出ることで義務を履行できる制度で、特定の相続人が単独で申し出られる。ただし各相続人が個別に申し出る必要がある(法務省)。遺産分割がまとまらない場合の受け皿として用意されている。
業者ともめたときはどこに言えばいい?
消費者ホットライン188に電話すると身近な消費生活センターにつながる。相談は無料。契約書、見積書、やり取りの記録を手元に置いてから電話すると話が早い。
相談先を1か所にまとめたほうが楽では?
楽にはなる。判断材料は、その窓口が自社でどこまでやり、どこから紹介に切り替わるか、紹介手数料を誰が払うかの2点。宅地建物取引業の免許は国土交通省の検索システムで自分で確認できる。
