農地転用は結局いくら?ケース別の総額早見表

農地転用の費用を調べても、3万円から数百万円まで並んでいて判断できない。理由ははっきりしている。手続きの費用と工事の費用が足し算されているからだ。
手続きだけなら、市街化区域の届出で4〜10万円、区域外の許可で6〜17万円が目安。工事費はこれとは別枠で、土地の状態でしか決まらない。
この記事の目次
農地転用の費用は「手続き」と「工事」に分けると見える
農地転用にかかるお金は、性質の違う二つの塊でできている。一つは農地法の手続きにかかる費用で、専門家の報酬と書類の取得実費が中身になる。もう一つは、土地を目的の用途で使える状態にする工事費だ。
前者には全国統計があり、数万円単位まで詰められる。後者には公表統計がなく、田か畑か、道路との高低差、樹木の有無で桁が動く。ひとつの数字が返ってこないのは、この二つを足した合計を答えようとするからだ。編集部は、確定できる方から順に置いていく。
| 費用の塊 | 決まり方 | この記事での扱い |
|---|---|---|
| 手続き費用(報酬+実費) | 手続きの種類でほぼ決まる | 全国統計の実数値で幅を出す |
| 土地改良区の決済金 | 地区ごとの規程で決まる | 公表単価の実例で桁を示す |
| 工事費(造成・整地) | 土地の状態でしか決まらない | 見積もり必須。標準単価は下限の目安 |
市街化区域の中にある農地の転用は、農業委員会への届出で足りる。区域の外にある農地は、都道府県知事または農林水産大臣が指定した市町村長の許可が要る(農林水産省「農地転用許可制度」/2026年7月31日確認)。同じ農地転用という言葉でも、この二つは別の手続きだと考えたほうがいい。
手続きの実費は1万円以内。金額を動かすのは専門家報酬
まず動かない方から。申請書に添える書類は法務局で取る。手数料は令和7年4月1日から改定されており、現在は次のとおりだ(法務省「登記手数料について」/2026年7月31日確認)。
| 書類 | 書面請求 | オンライン請求・送付 | オンライン請求・窓口交付 |
|---|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 600円 | 520円 | 490円 |
| 地図等情報(公図など) | 500円 | 470円 | 440円 |
ここに住民票や印鑑証明、資力を示す残高証明などが加わる。筆数が多くなければ、実費の合計は数千円から1万円程度に収まる。総額を動かしているのは、この部分ではない。
行政書士報酬は、手続きの種類で倍近く変わる
日本行政書士会連合会は5年ごとに全国の報酬額統計調査を行っており、最新は令和7年度調査(2026年1月実施・9回目)だ。金額には消費税が含まれ、立替金は含まない。農地法関係の実数値は次のとおり(日本行政書士会連合会「令和7年度報酬額統計調査の結果」/2026年7月31日確認)。
| 手続き | 回答者数 | 平均値 | 最頻値 | 最小値 | 最大値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 農地法4条届出 | 170 | 50,728円 | 50,000円 | 3,000円 | 500,000円 |
| 農地法5条届出 | 245 | 54,226円 | 50,000円 | 3,000円 | 500,000円 |
| 農地法4条許可申請 | 273 | 96,893円 | 80,000円 | 8,800円 | 800,000円 |
| 農地法5条許可申請 | 501 | 120,186円 | 100,000円 | 5,000円 | 1,618,720円 |
| 農地法3条許可申請 | 493 | 58,616円 | 50,000円 | 5,000円 | 500,000円 |
平均値だけ見ると最大値に引っ張られる。同じ調査の金額分布を使うと、実際に多い帯はもっと狭い。5条許可申請は5万円以上15万円未満に71.2%が集まり、4条許可申請は4万円以上10万円未満に59.3%。届出側は、4条届出が2万円以上6万円未満に75.3%、5条届出が3万円以上6万円未満に62.0%だ。
つまり報酬の現実的な帯は、届出でおおむね3〜6万円、許可で5〜15万円。この幅の中でどこに落ちるかは、農地の立地と書類の量で決まる。
ケース別・手続きまでの総額早見表
上の統計と実費を積み上げると、工事に入る前までの総額はこう見える。金額は幅で示す。数字を一点に固めた見積もりは、土地を見ずに出せるものではない。
| ケース | 手続き | 報酬の目安 | 実費 | 工事前までの小計 |
|---|---|---|---|---|
| 市街化区域の農地を自分で使う(自宅・駐車場・資材置場) | 4条届出 | 3〜6万円 | 数千円〜1万円 | 約4〜7万円 |
| 市街化区域の農地を売る・貸す | 5条届出 | 3〜6万円 | 数千円〜1万円 | 約4〜7万円+移転登記 |
| 市街化区域外の農地を自分で使う | 4条許可 | 4〜10万円 | 数千円〜1万円 | 約5〜11万円 |
| 市街化区域外の農地を売る・貸す | 5条許可 | 5〜15万円 | 数千円〜1万円 | 約6〜16万円 |
| 農用地区域(青地)の農地 | 農振除外+許可 | 上の許可+除外申出分 | 数千円〜1万円 | 期間8〜12か月が先に効く |
この表に測量費と造成費は入っていない。土地の一部だけを転用する場合は分筆が要り、土地家屋調査士の測量が加わる。全部を転用して境界にも争いがなければ、測量なしで進むこともある。
転用後の地目変更登記は、農地法の許可書や届出受理通知が添付書類になるため書類自体は重くない。複数の土地家屋調査士事務所が公開している料金表では4〜5万円台に置かれていることが多い。
用途ごとの詳しい積み上げは 農地転用の費用はいくら?坪数別の総額と誰が払うか に、駐車場にする場合の収支の見方は 農地を駐車場にするには?届出と収支の考え方 にまとめている。
転用後に何ができる土地なのか、先に当たりを付ける
手続き費用より先に効くのは、その土地が転用後にいくら生むかだ。複数社の活用プランを取り寄せて、駐車場・資材置場・売却のどれが成立しそうか比べておくと、行政書士に相談する時点で話が早い。
無料で活用プランを取り寄せる工事費に公表相場はない。国税庁の単価は下限の目安
総額が数百万円に届くかどうかは、ここで決まる。そして工事費には、報酬統計にあたるような公的な相場表が存在しない。
ただし、目安として使える公的単価はある。国税庁が相続税の土地評価のために毎年公表している宅地造成費の金額表だ。令和7年分・東京都の平坦地の単価は次のとおり(国税庁「令和7年分 財産評価基準書 東京都 宅地造成費の金額表」/2026年7月31日確認)。
| 工事費目 | 単位 | 金額 |
|---|---|---|
| 整地費 | 整地を要する面積1㎡当たり | 800円 |
| 伐採・抜根費 | 伐採抜根を要する面積1㎡当たり | 1,100円 |
| 地盤改良費 | 地盤改良を要する面積1㎡当たり | 2,100円 |
| 土盛費 | 土盛り体積1㎥当たり | 7,800円 |
| 土止費 | 擁壁の面積1㎡当たり | 83,600円 |
この表の読みどころは金額そのものではなく、費目の並び方にある。整地だけなら1㎡あたり800円の世界だが、道路より低い土地で土盛りと擁壁が要ると、擁壁は1㎡あたり83,600円。100倍の桁の項目が同じ現場に同居する。見積書が跳ねるときは、たいていこの土止費が入っている。
傾斜地は別表になっており、傾斜度3度超5度以下で1㎡あたり22,900円、10度超15度以下で42,600円、25度超30度以下で73,300円。傾斜が3度を超えた時点で、平坦地の整地費とは別の世界に入る。
注意点を一つ。この金額表は相続税評価で控除する標準額であり、実際の工事の見積書そのものではない。地域差もある。使い方としては、自分の土地に伐採抜根と地盤改良と土盛りのどれが乗るかを事前に把握し、業者見積もりを読む土台にする、という位置づけになる。
田は水を張っていた土地なので、畑より地盤改良が乗りやすい。埋め立ての順番と地盤の話は 田んぼの埋め立て費用の相場と、地盤で失敗しない順番 で扱っている。
見積書に載ってこない土地改良区の決済金
対象の農地が土地改良区の受益地なら、農業委員会への申請とは別に、土地改良区への地区除外の手続きと決済金の支払いが発生する。行政書士の見積書には出てこないことがあり、後から知らされる費用の代表格だ。
この決済金は土地改良法に基づくもので、単価は各土地改良区の規程で決まる。まとめ記事では100〜500円/㎡といった幅で書かれることが多いが、公表されている実額を並べると、幅というより桁が違う。
| 公表元 | 決済金の単価 | 330㎡(約100坪)換算 |
|---|---|---|
| 安城市(国営矢作地区・一部) | 農家住宅等150円/㎡、その他転用190円/㎡(令和8年4月1日改定) | 約49,500〜62,700円 |
| 同上・令和8年3月31日受付分まで | 一律10円/㎡(国営矢作地区50円/㎡) | 約3,300〜16,500円 |
| 吉野ヶ里町 | 10アールあたり155,000円(155円/㎡) | 約51,150円 |
| 寺谷用水土地改良区(静岡県磐田市) | 田350円/㎡(畑かん地区の畑は田の3分の1)+事務手数料1,000円 | 約115,500円+1,000円 |
出典は安城市「農地転用等の通知書の提出」、吉野ヶ里町「転用決済金」、寺谷用水土地改良区「賦課金・決済金について」(いずれも2026年7月31日確認)。安城市の例は改定前後の差が15〜19倍あり、単価が改定されるタイミングでも金額が変わることがわかる。
やることは単純で、農業委員会に相談した時点で「この土地は土地改良区の受益地か」を聞き、該当するなら管轄の土地改良区に単価を直接確認する。ここを飛ばした見積もりは、そもそも総額になっていない。
青地なら、費用より先に8〜12か月の時間が要る
農地は優良度で区分されていて、農用地区域内農地と甲種農地は原則として転用が許可されない。第1種農地も原則不許可で、例外に当たるかどうかの判断になる。転用しやすいのは第3種農地で、第2種は第3種への転用が困難な場合に検討される(農林水産省「農地転用許可制度」/2026年7月31日確認)。
いわゆる青地、つまり農用地区域の中にある農地を転用するには、その前に農業振興地域整備計画から外す手続き(農振除外)が要る。ここで効いてくるのは金額より受付の回数だ。
吉野ヶ里町は、農振除外の申請受付を毎年度9月と3月の年2回に限り、申請受付から許可までに8か月から12か月程度を要すると案内している(吉野ヶ里町「転用決済金」/2026年7月31日確認)。回数と期間は自治体ごとに違うが、月単位ではなく年単位で動く手続きだという構造は共通する。
相続した農地は、転用の前に名義の費用が乗る
親から引き継いだ農地を転用する場合、登記名義が被相続人のままだと手続きが前に進まない。相続登記は令和6年4月1日から義務になっており、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならない。正当な理由なく怠ると、10万円以下の範囲で裁判所が過料を決定する(法務省「相続登記の申請義務化について」/2026年7月31日確認)。
この費用は農地転用の費用表には載らないが、相続した農地を動かす人にとっては実際に先に出ていく。登録免許税と司法書士報酬がかかり、相続人が複数いれば遺産分割の合意も要る。
誰がいくら払うか、どう分けるかは相続人の間の話であって、編集部が判断できる領域ではない。税額の計算や分割の進め方は司法書士や税理士に確認してほしい。ここで言えるのは、転用の見積もりを取る前に名義を自分に寄せておかないと、行政書士に依頼しても書類が揃わないという実務上の順番だけだ。
費用は誰が払うのか
農地法に負担者の定めはない。実務では次のように分かれる。
- 4条(自分の農地を自分で転用する):所有者が負担する
- 5条(売る・貸すのに伴って転用する):当事者間の取り決めで決まる
5条の場合、買主が転用を条件に買うのだから買主負担、という慣行がある地域もあれば、売主が転用まで済ませて引き渡す形もある。決まっていないのは、揉めるのは決済金や造成費のような後から出てくる項目だ、ということでもある。
契約前に、行政書士報酬・測量費・決済金・造成費のそれぞれを誰が持つかを書面に落としておく。口頭で「転用にかかる費用は買主で」とだけ決めておくと、決済金が11万円出てきた段階で解釈が割れる。
転用したあとに続く費用
転用は一度払って終わりではない。転用後に地目が変われば、固定資産税の評価も農地としての扱いから外れる。農地の課税は宅地とは別の考え方で行われているため、転用後は毎年の税額が変わる。金額は自治体の資産税担当に確認するのが確実で、編集部がここで一律の倍率を書ける性質のものではない。
加えて、転用の許可や届出を受けたあとには、工事完了の報告を求められることがある。許可の内容と違う使い方をすれば、工事停止や原状回復を命じられる余地がある。駐車場にすると申請して資材置場にした、というような食い違いは避けたい。
維持費も続く。使っていない土地でも、草は伸びるし固定資産税は毎年届く。転用して土地を使える形にすること自体は出口だが、出口の先にも維持費がある、という前提で計算しておくほうがいい。
見積もりを取る前に確認する4つ
金額を調べる前に、次の4つを窓口で確認すると、返ってくる見積もりの精度が変わる。どれも無料で聞ける。
- 市街化区域の内か外か(市町村の都市計画担当)。届出か許可かが決まり、報酬が倍近く変わる
- 農地区分と青地かどうか(農業委員会・農政担当)。農振除外が要るなら年単位の話になる
- 土地改良区の受益地か(農業委員会で確認し、該当すれば当該土地改良区へ)。決済金の単価は地区ごとに違う
- 道路との高低差と樹木の有無(現地)。土盛りと擁壁が要るかで工事費の桁が変わる
順番を間違えると、費用は調べても意味がない
編集部が相続したのは沖縄の傾斜地で、農地ではない。それでも同じ壁に当たった。出口を探した順番は、相続してから売却・寄付・国庫帰属と一つずつ検証し、どれも成立せず、いまも保有している。固定資産税は年約7万円が出ていく。振り返ると、最初にやったのは費用を調べることだった。だが実際に効いたのは、その土地が何に該当するのかを窓口で確定させることだった。傾斜と接道と造成費の条件が先に決まっていて、金額はその後についてくる。農地でも構造は同じで、区域と農地区分が決まらないうちに集めた金額は、自分の土地の金額にならない。
転用後の使い道から逆算する
転用費用を払う価値があるかは、転用後にその土地が何に使えるかで決まる。複数社のプランを無料で取り寄せて、収支の当たりを付けてから手続きに進むほうが判断を間違えにくい。
無料で活用プランを取り寄せるよくある質問
自分で申請すれば費用は抑えられるか
報酬分は抑えられる。市街化区域の届出であれば、書類の点数も比較的少ない。ただし許可申請は添付書類が多く、農業委員会の受付は月1回の締切制をとる自治体が多い。不備で1か月待つコストを、報酬と比べて判断することになる。
面積が2倍になれば費用も2倍になるか
報酬は面積に比例しない。比例するのは決済金と工事費だ。決済金は単価×面積、造成費も面積や体積で積む。100坪と300坪で差が出るのは、報酬ではなくこの二つになる。
測量は必ず必要か
土地の一部だけを転用・売買する場合は分筆が要るため、測量がほぼ前提になる。1筆をまるごと転用し、境界にも争いがなければ不要なこともある。要否は法務局の公図と現地の状況で変わるので、土地家屋調査士に見てもらう。
許可が下りなかった場合、払った費用は戻るか
取得した書類の実費は戻らない。報酬の扱いは契約次第なので、着手金と成功報酬の区分を依頼前に確認しておく。青地や第1種農地のように原則不許可の区分に当たる土地は、着手前の見込みの説明をどこまでしてもらえるかが事務所選びの分かれ目になる。
制度や単価はいつ時点のものか
この記事の登記手数料は令和7年4月1日改定後のもの、報酬統計は令和7年度調査、造成費単価は令和7年分、決済金は各公表元の最新掲載(いずれも2026年7月31日確認)。決済金の単価も相続登記の運用も改定されるので、実際に動く時点で各窓口に当て直してほしい。
