無断で農地を使うとどうなる?違反転用の罰則

許可を取らないまま農地を駐車場や資材置き場にしていた、と後から気づく例は珍しくない。
結論から書く。農林水産省の集計では、令和6年に違反状態が是正された3,287件のうち追認許可が3,244件、原状回復は36件。実務の出口は取り壊しではなく事後の許可に寄っている。ただし農用地区域内や面積の大きい案件は扱いが変わり、そこが分かれ目になる。
この記事の目次
何をすると「違反転用」になるのか
農地法第51条第1項が処分の対象として挙げているのは、次の5つ。工事をした事業者だけが対象ではない点が見落とされやすい。
- 許可を受けないで農地を転用すること
- 許可を受けないで農地等を転用するために権利の設定・移転を行うこと
- 転用許可に付した条件に違反すること
- 違反転用者からその違反に係る工事等を請け負うこと
- 虚偽等の不正な手段による許可を受けること
自分の農地を自分で別の用途にするのが第4条の許可、売ったり貸したりして相手に転用させるのが第5条の許可。市街化区域内の農地は、この許可が農業委員会への届出に置き換わる(農林水産省、2026年7月31日確認)。
判定は登記の地目ではなく現況で行われる
大田原市は、登記簿の地目が農地であれば耕作されていなくても農地として扱い、逆に地目が農地でなくても作物等を肥培管理している土地は農地とみなす、と説明している。さらに同市は、現在耕作していない農地を工事の資材置き場として一時的に使う場合であっても、許可を得ずに使用すれば無断転用になるとしている。「もう何年も作っていないから農地ではない」という自己判断が、そのまま違反状態の起点になりやすい。
一方で、自己所有の農地に2アール未満の農業用施設を設ける場合など、転用許可がそもそも不要な類型もある(内閣府 規制改革推進会議「違反転用の課題について」令和4年4月5日 資料2-1)。まず自分のケースがどの箱に入るのかを確認する、というのが順番の一番目になる。
全国では実際どう決着しているか(令和6年の集計)
農林水産省が公表している「違反転用の是正状況」(令和6年12月31日時点、農村振興局農村計画課調べ)の数字は次のとおり。
| 区分 | 件数 | 面積 |
|---|---|---|
| 令和6年に新たに発見された違反転用 | 3,608件 | 241ha |
| うち年内に追認許可で是正 | 3,244件 | 177ha |
| うち年内に原状回復で是正 | 36件 | 6ha |
| うち年内にその他の方法で是正 | 7件 | 0.3ha |
| 年内に是正されなかったもの | 321件 | 57ha |
是正された3,287件のうち、原状回復は36件。割合にすると1%あまりで、残りはほぼ追認許可(事後の許可)で決着している。この傾向は単年の偏りではなく、同じ資料の平成20年以降どの年も追認許可が大半を占めている。
ただし「未是正のまま残る山」がある
同じ資料には、令和6年当初(1月1日)時点で行政庁が把握している違反転用が5,515件・1,032ha、年内に4,130件・294haが解消し、年末(12月31日)時点で未是正のものが4,993件・978ha、と記載されている。新規発見よりも、過去から積み上がった案件のほうが解消しにくい構造になっている。
どこから発覚するか。相続・売却の場面が多い
内閣府の規制改革推進会議に提出された農林水産省の実態調査(令和2年中に違反状態だったもの、n=8,613、発見手法が不明なものを除く)では、発覚の契機は次の内訳だった。
- 別の許可申請・行政手続で判明:2,605件(30%)
- 違反転用者による申出・相談:1,982件(23%)
- 農地パトロール:1,657件(19%)
- 農業委員等が発見:1,436件(17%)
- 市民等からの通報:878件(10%)
最も多いのは、建築確認や地籍調査など「別の手続をしたときに出てくる」パターン。実家の片づけで言えば、相続登記のあとに地目を変えようとしたとき、土地を売ろうとしたとき、太陽光や駐車場で別の申請を出したときが該当する。つまり、放っておけば見つからないのではなく、出口に向かって動いた瞬間に必ず突き当たる。
発見は遅れがち
同じ調査では、令和2年に新規発見された違反転用のうち76%が平成28年以前に行われたものだった。発見までに数年から十数年かかっているケースが多数派で、当事者が亡くなったあと相続人が引き継いでから表に出る、という順番になりやすい。
用途別では、住宅用地2,094件、資材置場1,869件、車庫駐車場1,587件、農業関係施設997件の順。違反者の属性は個人が約7割で、農業を一切行わない個人・法人が全体の7割を占めていた。
関連して、放置したまま何も動かさない場合に何が起きるかは農地を放置するとどうなる?税金と罰則、近隣トラブルで整理している。
発覚後の流れ。指導・勧告・処分・代執行
農林水産省「違反転用に対する措置について」が示す一般的な流れは、次の順で進む(2026年7月31日確認)。
- 農地パトロールや通報により違反転用を発見
- 農業委員会が事案を調査し、都道府県知事等へ報告
- 期間を定めて是正の指導
- 指導に従わない場合、工事その他の行為の停止等を書面で勧告
- 勧告にも従わない場合、その土地および周辺の土地利用の状況等を総合的に考慮して措置の内容を決定。許可の取消し、原状回復命令、許可条件の変更等(農地法第51条第1項)
この間、悪質な事案については刑事訴訟法による告発の検討が並行する。また、違反転用者等を確知できないときや、緊急に措置を講ずる必要がある場合には、都道府県知事等が自ら行政代執行を行うことができる(同条第3項)。
代執行の費用は本人から徴収される
農林水産省「農地法の運用について」は、第51条第5項の費用徴収について、行政代執行法第5条・第6条を準用し、期日までに納付されない場合は国税滞納処分の例により徴収できるとしている。所在が不明な場合でも公示送達により差押書を送達して財産を差し押さえ、公売により費用を回収できる、とまで書かれている。「行政が勝手にやってくれる」ではなく、費用が最終的に土地の側へ戻ってくる仕組みになっている。
罰則の条文と、実際に適用されている件数
罰則は、許可を受けずに農地を転用した者などに対して3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人の場合は1億円以下の罰金(農地法第64条、第67条)。さいたま市、浜松市など多くの自治体が同じ内容を掲示している。浜松市は、対象が所有者だけでなく転用事業者・施工業者にも及ぶことを明記している。
ただし刑事に進む件数は少ない
令和2年中に違反状態だった9,588件に対し、転用許可権者が行った措置は、是正の勧告410件(133ha)、是正の処分72件(29ha)、告発・告訴23件(16ha)だった。1万件近い母数に対して告発・告訴は0.2%程度にとどまる。
追認許可が行われた4,870件について違反の認識を調べた結果でも、制度の不知が4,098件、制度の誤認が360件で、9割以上が制度を知らなかった・誤解していたことによるものと分類されている。悪質性ありと判断されたのは370件(8%)で、そのうち最も多い分類は「違反を認識するのが当然と思われる事例」337件だった。
編集部は法令の解釈をする立場にないため、自分の事案が刑事に進む可能性があるかどうかの判断は行政書士・弁護士に確認する範囲として扱う。ここで押さえておけるのは、統計上は行政指導と追認許可で終わる案件が圧倒的に多い、という事実関係までになる。
追認許可という現実的な出口と、始末書
追認許可は、すでに転用してしまった土地について、改めて第4条または第5条の許可を申請し、事後的に許可を受けて違法状態を解消する扱い。農林水産省「農地法の運用について」は、違反転用を把握した場合、仮に第4条第1項または第5条第1項の許可の申請が行われれば当該許可をすることができるような場合であっても、原状回復を求める必要性についての検討は必要であると念を押している。つまり、追認は自動ではなく、行政側の判断を経る。
審査は通常の許可と同じ土俵で行われる
令和2年に追認許可が行われた事案のうち、許可基準を満たすために是正措置を行わせたものは285件(6%)。内容は、面積の必要性の明確化、工事計画・資金計画の提出、土地改良区の意見や隣接耕作者・道水路管理者の同意、擁壁やU字溝による被害防除、一時転用の場合の復元計画書の提出などだった。書類を出せば通る手続ではなく、通常の農地転用許可と同じ基準を後追いで満たしにいく作業になる。
始末書を求める農業委員会は約8割
全国農業会議所を通じたアンケート(回答1,434農業委員会)では、追認許可にあたり違反転用者から始末書を提出させる等の運用を行っている農業委員会が1,091(76%)。そのうち21農業委員会は様式をホームページで公開している。書式が公開されていない場合でも、記載を求められるのは土地の所在・地目・面積、無断転用した内容、無断転用に至った理由と経緯、今後の誓約、といった項目が中心になる。
合法な状態に戻したうえで土地をどう使うかは、届出や収支の考え方が用途ごとに変わる。駐車場にする場合の手順は農地を駐車場にするには?届出と収支の考え方にまとめている。
合法化したあと、その土地で何ができるかを先に見ておく
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無料で活用プランを取り寄せる原状回復になりやすいのはどういう案件か
件数では追認許可が大半でも、条件によっては原状回復に振れる。令和2年の調査では、是正の方法は件数ベースで追認許可93%・原状回復4%だったのに対し、面積ベースでは追認許可85%・原状回復11%。原状回復されるものは面積が大きい傾向にある、と資料自体が指摘している。
農用地区域内(いわゆる青地)は扱いが違う
農林水産省「農地法の運用について」は、第51条第1項の「特に必要があると認める」かどうかの判断について、農業振興地域の整備に関する法律第8条第2項第1号に規定する農用地区域内にある土地は、一般的には「特に必要がある」と認められると解される、と明記している。原状回復措置が行われた農地の区分を面積で見ると、農用地区域内農地が66%、第1種農地が14%を占めていた。
そのほか、同項の判断では、土地の現況、周辺の土地利用の状況、転用後に形成された法律関係、過去に違反転用を行ったことがあるか、是正勧告に従わないと思われるか、といった事情が総合的に考慮されるとされている。
時間が経つほど是正率が落ちる
違反転用の発生からの経過年数別に是正率を見ると、発生1年目は84%、2年目は70%、3年目は52%、4年目以降は51%。未是正案件について行政側が是正の見込みを回答した結果では、見込まれないが49%、どちらともいえないが33%。その理由の最多は「違反から長期間経過しているため」39%、次いで「違反者に是正の意思が見られないため」33%だった。
隣地や水路との関係が絡むと、行政手続とは別に民事のトラブルが並走する。その型は農地転用で起きるトラブル|隣地と水路、無断転用で扱っている。
相続で引き継いだ違反転用は、相続人の問題になる
ここが実家じまいの場面で一番効いてくる。農地法第51条第1項の処分の名宛人である「違反転用者等」には、違反した者だけでなくその一般承継人が含まれる。農林水産省の処理基準および都道府県の事務処理手引きは、一般承継人を相続人および包括受遺者と説明している。親の代の無断転用は、相続によって相続人の側の問題として引き継がれる。
相続したら農業委員会への届出が別途必要
相続、遺産分割、包括遺贈、時効取得などで農地の権利を取得した場合、農地法第3条の3により、権利を取得したことを知った時点からおおむね10か月以内に農業委員会へ届け出る必要がある。届出をしなかったり虚偽の届出をした場合は10万円以下の過料(上越市、小平市、酒田市ほか、2026年7月31日確認)。この届出は相続登記の代わりにはならず、法務局での登記は別に必要になる。
そして、届出の際に農業委員会が現況を把握することになるため、無断転用があればここで表に出る可能性がある。順番としては、隠す前提で組み立てるより、届出と同時に現況を相談してしまうほうが選択肢が広い。
編集部の土地でも、登記と現況は合っていなかった
編集部は沖縄の傾斜地を相続し、売却・寄付・国庫帰属といった出口を一つずつ検証したうえで、どれも成立せずに保有を続けている。固定資産税は年約7万円。農地ではないので同じ話にはならないが、共通していたのは、登記簿を取り寄せるまで現況と書面がどれだけずれているか分からなかったこと、そして「使えないのに毎年出ていく」状態が、判断を先送りするほど動かしにくくなることだった。書面と現況の突き合わせは、出口を選ぶ前の作業になる。なお、遺産分割の内容や相続税額の判断は編集部の扱う範囲ではない。誰が引き継ぐか、いくらかかるかは、税理士・司法書士に確認する項目として分けておく。
現況がもう農地でない場合の別ルート(非農地証明)
長く耕作されず山林や原野の様相になっている土地については、農地転用の手続を経ずに地目を変える道がある。農業委員会が発行する非農地証明(現況証明)で、これを添えて法務局へ地目変更登記を申請する形になる。
日南市は、非農地証明の認定基準について、法務省民事局長通達「登記簿上の地目が農地である土地について農地以外の地目への地目の変更の登記申請があった場合の取扱いについて」(昭和56年8月28日付け法務省民3第5402号)に定める認定基準に準拠して行う、としている。鮫川村は、農地の現況が林野化しており再生利用が困難な農地について、農地法の適用を受けない土地であることを証明するもの、と説明している。
違反状態の農地は対象外になる
鮫川村は、農地転用許可を受けた農地、農地法の規定や許可の条件に違反する状態の農地は証明の対象とならないと明記している。日南市も、審査の結果、基準に合致せず違反転用と認められるものについては、その旨を回答し、適切な措置や指導を行うとしている。
つまり、無断で建物や舗装を入れた土地を非農地証明で片づけることはできない。自然に山林化した土地なのか、人が手を入れて転用した土地なのかで進む道が分かれる。判断は農業委員会の現地確認と総会審査を経るため、事前相談は窓口で行うことになる(各自治体ページ、2026年7月31日確認)。
最初に確認する順番と、相談先
編集部が資料を突き合わせて整理した順番は次のとおり。
- 登記事項証明書で地目を確認する。田・畑であれば農地法の対象。現況の写真も日付入りで残しておく
- 農地の区分を調べる。農用地区域内(青地)か、第1種・第2種・第3種のどれか、市街化区域内か。ここで追認の見通しが大きく変わる
- 転用の時期と経緯を思い出せる範囲で書き出す。始末書で問われるのはこの部分。日付が不明なら不明のまま整理する
- 農業委員会に相談する。是正の方法を決めるのは行政側で、自己判断で工事や撤去を進めると手戻りになる
- 書類作成を依頼するか決める。農地転用の申請書類は行政書士の業務範囲。報酬は事務所と案件の内容で幅があるため、複数から見積りを取って比べる
相談を先送りするほど不利になるのは、統計の側からも言える。発生1年目の是正率84%に対し3年目以降は5割程度まで落ち、未是正案件では行政側の今後の対応も「消極的に対応」が65%を占める。放置は、行政が動かなくなる代わりに、売却や地目変更が止まったままの土地が手元に残る、という結果になる。
費用の見立ては、原状回復まで行くのか、追認許可で済むのかで桁が変わる。撤去や整地が必要かどうかは現況次第なので、金額は現地を見た事業者の見積りで確認する範囲として扱う。
是正の方向が決まったら、出口を並べて比べる
追認許可で使い続けるのか、原状回復のうえで別の用途を探すのか。判断材料は、その土地で成り立つ活用プランの実物になる。複数社のプランを無料で取り寄せて、費用と収支を並べて見る。
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