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農地を放置するとどうなる?税金と罰則、近隣トラブル

農地を放置するとどうなる?税金と罰則、近隣トラブル

耕していない農地をそのままにしている状態そのものを罰する規定は、農地法にない。ただし固定資産税が約1.8倍になる勧告と、市町村長の措置命令に従わなかったときの30万円以下の罰金は実在する。

勧告に至る順番、税額が動く時点、近隣トラブルの法的な扱い、貸す・売る・国に渡すの出口までを、確認日つきで並べる。

この記事の目次
  1. 放置そのものに罰則はない。実在するのは3つの法的措置
  2. 固定資産税が約1.8倍になるのは「勧告を受けた農地」だけ
  3. 勧告までの順番。分岐点は意向調査の封筒
  4. 近隣トラブルは、放置しても消えず請求書として戻ってくる
  5. 持ち続ける限り出ていく費用を、先に把握する
  6. 出口1:農地バンク(農地中間管理機構)に貸す
  7. 出口2:売る。ただし買える相手が法律で絞られている
  8. 出口3:転用して活用する
  9. 出口4:国に引き取ってもらう(相続土地国庫帰属制度)
  10. 保有を続けると決めた場合の最低限
  11. よくある疑問

放置そのものに罰則はない。実在するのは3つの法的措置

農地法には、耕さないこと自体を罰する条文がない。何年放置しても、そのことだけで罰金が科されるわけではない。ただし、農地の放置に紐づく法的な措置は3つ実在する。

  • 措置命令と30万円以下の罰金:病害虫の発生や土石その他これに類するものの堆積などにより、周辺地域の営農条件に著しい支障が生じている、または生じるおそれがあると市町村長が認めた場合、期限を定めて支障の除去等の措置を命じられる(農地法第42条)。この命令に違反した場合の罰則が30万円以下の罰金(同第66条)。
  • 相続の届出を出さないと10万円以下の過料:相続や遺産分割などで農地の権利を取得した人は、取得を知った時点からおおむね10か月以内に、農地のある市区町村の農業委員会へ届け出る(農地法第3条の3)。届出をしない、または虚偽の届出をした場合は10万円以下の過料(同第69条)。
  • 相続登記を放置しても10万円以下の過料:2024年4月1日から相続登記が義務化され、正当な理由なく、取得を知った日から3年以内に申請しなかった場合は過料の対象になる。

並べ直すと、罰則は「耕していないこと」ではなく、「周囲に実害を出したうえで命令に従わないこと」と「手続きを出さないこと」に付いている。近隣の農地と接していて、しかも相続の手続きが途中で止まっている農地が、いちばん罰則に近い状態にある。(条文は2026年7月31日確認)

固定資産税が約1.8倍になるのは「勧告を受けた農地」だけ

放置で最も現実的に効いてくるのが固定資産税だが、草が伸びただけで自動的に上がるわけではない。仕組みは評価額の計算式にある。

  • 通常の農地の評価額は、売買価格に限界収益修正率0.55を乗じて算出する
  • 農業委員会から農地中間管理機構との協議を勧告された遊休農地は、この0.55を乗じない
  • 結果として1÷0.55、つまり約1.8倍になる(平成28年度税制改正、平成29年度から適用)

対象は農業振興地域内の農地で、機構への貸付の意思も自作の再開も示さないまま勧告を受けたものに限られる。都留市は、1月1日時点で協議勧告が行われている場合に課税が強化されると案内している。福岡市は、意向調査を行った年度の翌々年度の固定資産税から反映されると説明している。つまり通知が届いてから税額が動くまでには時間差がある。

逆方向の措置もある。藤沢市の案内(2026年3月25日更新時点)では、農業振興地域内で所有する全農地(1,000平方メートル未満の自家消費用農地を除く)を機構に10年以上貸し付けた場合、15年以上なら5年間、10年から14年なら3年間、固定資産税が2分の1に軽減される。適用期限は貸付の設定が令和10年3月31日までに行われたものとされている。制度も期限も年度で動くため、自分の農地の扱いは市区町村の税務課と農業委員会で確認する。

税額そのものの計算は、農地の固定資産税はいくら?宅地に変えると何倍になるかで整理している。

勧告までの順番。分岐点は意向調査の封筒

いきなり勧告は来ない。農地法に沿った手順があり、途中に必ず所有者へ意思を確認する段階が入る。

  1. 利用状況調査(農地パトロール):農業委員会が毎年1回、区域内の全農地の利用状況を調査する(農地法第30条)。多くの自治体で8月頃に実施される
  2. 遊休農地の判定と通知:現に耕作されておらず引き続き耕作されないと見込まれる農地が1号遊休農地、周辺の農地に比べて利用の程度が著しく劣る農地が2号遊休農地。該当すると所有者へ通知が届く(同第32条)
  3. 利用意向調査:貸すか、自分で再開するか、機構に相談するかを郵送で確認される
  4. 機構との協議の勧告:意思表明どおりに動かない場合に勧告。ここで課税強化の対象になる
  5. 都道府県知事の裁定:最終的に機構が農地中間管理権を取得できるよう措置される
相談者相談者
通知が来ても、正直どう答えていいか分からなくて置いてしまった
実家じまいナビ編集部実家じまいナビ編集部
返信しないと「意思表明なし」として次の段階へ進む。貸す気がなくても、検討中と返すだけで手順は止まる

規模感も押さえておく。農林水産省の令和6年度食料・農業・農村白書によれば、2024年3月末時点の荒廃農地面積は25.7万ha、うち再生利用が可能なものが9.4万ha。2023年度に新たに発生した荒廃農地は2.5万haで、再生利用されたのは1.0万haだった。相続未登記農地は2022年3月末時点で52.0万haある。放置は例外ではなく、行政側も個別に追い切れていない量が積み上がっている。

近隣トラブルは、放置しても消えず請求書として戻ってくる

実際に苦情の元になるのは、雑草の繁茂、病害虫の発生、ごみの不法投棄、イノシシなど鳥獣の隠れ場所になること、そして隣地への枝の越境が多い。ここで押さえておきたいのが、2023年4月1日に施行された改正民法第233条だ。

従来は、越境した枝は所有者に切らせるしかなく、応じなければ訴訟が必要だった。改正後は、原則を維持したうえで、竹木の所有者に催告しても相当の期間内に切除しないとき、所有者やその所在が調査しても分からないとき、急迫の事情があるときのいずれかに当たれば、越境された側が自ら枝を切り取れるようになった(同条第3項)。そして切除にかかった費用は、基本的に竹木の所有者に請求できると考えられている(民法第703条、第709条)。

農地法第42条の措置命令も同じ構造を持つ。命令に係る期限までに措置を講じないとき、所有者を確知できないとき、緊急に措置が必要なときには、市町村長が自ら支障の除去等の措置を講じることができ、要した費用を所有者に負担させることができる。

つまり放置は「何も起きない」状態ではない。連絡が来ないまま作業が進み、あとから費用の請求として戻ってくる形に変わっただけになる。

持ち続ける限り出ていく費用を、先に把握する

出口を選ぶ前に、いま毎年いくら出ているかを確定させる。判断材料はここに集約される。

  • 固定資産税:耕していなくても、1月1日時点の所有者に課税される。ただし免税点があり、同一市町村内に所有する土地の課税標準額の合計が30万円未満であれば課税されない(地方税法第351条)。評価の低い農地では課税されていないこともあるため、まず納税通知書を確認する
  • 草刈りなどの管理費:自分で行くなら交通費と日数、外注するなら面積と回数で変わる。金額は地域差が大きいので、複数社の見積もりで幅を確認する
  • 再生費用:数年放置した農地は、抜根や整地が必要になり、草刈りだけでは戻らないことがある
実家じまいナビ編集部 実家じまいナビ編集部の実体験

編集部が持っている土地の話

編集部は沖縄の傾斜地を相続して、いまも保有したままでいる。固定資産税は年約7万円。売却、寄付、国庫帰属と順に検証したが、どれも成立せず、結局は毎年その額だけが出ていく状態が続いている。学んだのは、出口を探すより先に「年いくら出ているのか」「その額を何年払う気があるのか」を数字にしておかないと、比較のしようがないということだった。年7万円なら10年で70万円で、これが処分にかけてよい費用の上限の目安になる。

農地が値段の付かない条件については、農地が売れない5つの理由と、それでも手放す方法で整理している。

出口1:農地バンク(農地中間管理機構)に貸す

農地中間管理機構は都道府県ごとに置かれ、所有者から農地を借り受けて担い手へ転貸する。所有権は手放さずに管理負担を移せるうえ、前述の固定資産税の2分の1軽減もこの貸付に紐づく。

ただし機構は何でも借りるわけではない。借受基準に適合しないと判断されれば断られる。傾斜がきつい、進入路がない、区画が細かい、水利が切れているといった条件は不利に働く。まず農業委員会または機構に現況を伝え、借受の可能性があるかを聞くところから始める。

利用意向調査の封筒が届いている場合は、そこに機構への相談を選ぶ欄がある。放置のまま勧告に進むのと、貸付の相談に乗るのとでは、税額の向きが逆になる。

出口2:売る。ただし買える相手が法律で絞られている

農地の売却には2つのルートがあり、必要な許可が違う。

  • 農地のまま売る:農地法第3条の許可。買い手は原則として農業を営む人や法人に限られるため、母数がそもそも小さい
  • 転用を前提に売る:農地法第5条の許可。農業振興地域の農用地区域内にある農地は原則として不許可で、先に除外手続きが必要になる

許可を取らずに転用した場合は農地法第64条の対象で、3年以下の懲役または300万円以下の罰金と定められている。買主に「あとで宅地にすればいい」と言われたまま進めない。

価格は地域差が非常に大きく、一点で示せる相場はない。市街化区域に近い畑と、中山間地の傾斜地では桁が変わる。最初にやるべきは金額の期待値を上げることではなく、そもそも値が付くのか、付かないのかを早く確定させることになる。

値が付く土地か、先に確かめる

複数社にまとめて査定を依頼すると、値が付かない場合もその理由が返ってくる。売る決心がついていなくても、保有を続けるかどうかの判断材料になる。

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出口3:転用して活用する

資材置場、駐車場、太陽光発電、貸し農園などに用途を変える道もある。自分で転用するなら農地法第4条、売却や貸付と同時に転用するなら第5条の許可が要る。農用地区域内であれば、除外の手続きが先に立ちはだかる。

採算は立地でほぼ決まる。周辺に需要がなければ、造成費だけ払って空いたままになる。判断のためには、造成にいくらかかり、その用途で年いくら入るのかを、複数のプランで並べる必要がある。

自治体側の支援もある。株式会社NTTデータの運営するメディアがまとめた都道府県別の補助金一覧では、山形県村山市の遊休農地対策事業が10aあたり55,000円、長野県大町市の遊休農地荒廃防止支援事業が10aあたり7万円以内など、10aあたり数万円規模の助成例が並ぶ。ただし要件も金額も自治体ごとに違い、年度で終了することもある。実際に使えるかは市区町村の農政担当課で確認する。

その土地で何が成立するかを見る

用途ごとの初期費用と想定収入を、複数社のプランで比べられる。成立しないと分かること自体が、保有を続けるか手放すかの答えになる。

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出口4:国に引き取ってもらう(相続土地国庫帰属制度)

2023年4月27日に始まった制度で、相続または相続人に対する遺贈で取得した土地を、負担金を納めて国に引き渡せる。農地も対象になる。売買で自ら買った土地は使えない。

  • 審査手数料:土地1筆あたり14,000円。却下されても取り下げても返還されない
  • 負担金:1筆あたり20万円が基本。ただし一部の市街地の宅地、農用地区域内の農地、森林などは面積に応じて算定される
  • 手順:土地の所在地を管轄する法務局の本局に事前相談してから承認申請する

引き取れない土地の要件が細かく定められており、境界が明らかでない土地や、通路など他人の使用が予定される土地は対象外になる。使えるかどうかは申請前の事前相談で判断がつくので、負担金の見込みも含めてそこで確かめる。(法務省の案内および政府広報オンラインを2026年7月31日確認)

保有を続けると決めた場合の最低限

どの出口も成立しないことはある。その場合でも、コストを最小にしたまま持ち続けるためにやることは決まっている。

  1. 年に数回の草刈りを入れる:2号遊休農地の判定基準は周辺の農地と比べて利用の程度が著しく劣ることなので、最低限の管理を続けていれば判定が変わることがある。周南市は、草刈りのタイミングによって誤って遊休農地と判断される場合があるため、回答してもらえれば修正すると案内している
  2. 利用意向調査には必ず返信する:無回答は勧告に向かう分岐になる
  3. 相続の手続きを終わらせる:農業委員会への農地法第3条の3の届出(おおむね10か月以内)と、法務局への相続登記(3年以内)。どちらも過料の対象になる
  4. 作業と費用を記録する:草刈りの日付と費用を残しておくと、苦情が来たときと、将来売却するときの両方で効く

草刈りだけ外注する

遠方の農地は、年に数回の草刈りを地元の事業者にスポットで頼む形が現実的になる。料金を比べてから決められる。

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よくある疑問

何年放置すると勧告が来ますか

年数では決まらない。毎年の利用状況調査で遊休農地と判定され、利用意向調査に対して意思を示さない、または示したとおりに動かないことが条件になる。1年で通知が来ることも、何年も来ないこともある。

市街化区域の農地も1.8倍になりますか

課税強化の対象は農業振興地域内の農地で、機構との協議を勧告されたものに限られる。市街化区域の農地は市街化区域農地としての課税方式が別にあるため、自分の農地がどちらの扱いかは納税通知書と市区町村の税務課で確認する。

農地だけ相続放棄できますか

できない。相続放棄は相続財産全体に対する手続きで、農地だけを選んで放棄することはできない。期限も短いため、他の財産と併せて早い段階で司法書士や弁護士に確認する。

税額や遺産分割の判断は誰に聞きますか

編集部は士業ではないため、個別の税額計算や、誰がどの農地を取得すべきかという遺産分割の判断はしない。課税の扱いは市区町村の税務課と税理士、登記と相続放棄は司法書士や弁護士、農地法上の許可と届出は農業委員会が窓口になる。この記事で整理しているのは、どの窓口に何を聞けばよいかの順番までになる。

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実家じまいナビ編集部

実家じまいナビ編集部 |沖縄に売れない土地を持つ当事者が運営

実家じまいナビ編集部です。運営者自身が沖縄に売れない土地を相続し、出口が見つからないまま維持している当事者です。役所と業者を回って分かった順番、実際にかかる費用、先に知っておけば防げたことを記録しています。法令の解釈が必要な部分は断定せず、調べ方と相談先を示す方針です。

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