農地の固定資産税はいくら?宅地に変えると何倍になるか

納税通知書の額だけを見ても、それが農地として高いのか安いのか判断できない。
効いているのは面積ではなく区分だ。農林水産省の整理では10アールあたり一般農地が千円、三大都市圏の特定市の市街化区域農地が十数万円。転用の許可が出ると農地の特例は外れる(2026年7月30日確認)。
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まず4つの区分のどれか。ここで税額の桁が変わる
農地の固定資産税は、広さより区分で決まる。同じ面積でも区分が違えば、10アールあたりの税額が千円と十数万円に分かれる。農林水産省は農地を次の4つに整理している(出典:農林水産省・農地の保有に対する税金(固定資産税)/制度の一覧は農林水産省・農地に関する税制特例について・2026年6月12日更新/2026年7月30日確認)。
| 区分 | 評価 | 課税 | 税額のイメージ |
|---|---|---|---|
| 一般農地 | 農地評価 | 農地課税 | 千円/10アール |
| 生産緑地地区の指定を受けた農地 | 農地評価 | 農地課税 | 千円/10アール |
| 一般市街化区域農地 | 宅地並評価 | 農地に準じる | 数万円/10アール |
| 特定市街化区域農地(三大都市圏の特定市の市街化区域農地) | 宅地並評価 | 宅地並み | 十数万円/10アール |
農地評価は農地利用を目的とした売買実例価格を基準にした評価、宅地並評価は近くの宅地の売買実例価格を基準にした価格から造成費相当額を差し引いた評価だ。田園住居地域には別に減価補正が入る。一般農地とは、市街化区域農地や転用許可を受けた農地などを除いたものを指す(出典:大津市・税額の算定(農地)/2026年7月30日確認)。
計算は2通り出して低い方を採る
農地の税額は、掛け算1本では出ない。本則税額と調整税額の2つを出して、低い方がその年の税額になる(出典:農林水産省・農地の保有に対する税金(固定資産税))。
- 本則税額=評価額×1.4パーセント。市街化区域農地は評価額×3分の1×1.4パーセント
- 調整税額=前年度の課税標準額×負担調整率×1.4パーセント
- 負担水準=前年度の課税標準額÷当該年度の評価額。市街化区域農地は分母に3分の1を掛ける
負担調整率は負担水準で4段に分かれる。大津市はこれに、負担水準1.0以上なら1.0まで引き下げる扱いを加えて示している(出典:大津市・税額の算定(農地))。
| 負担水準 | 負担調整率 |
|---|---|
| 0.9以上 | 1.025 |
| 0.8以上0.9未満 | 1.05 |
| 0.7以上0.8未満 | 1.075 |
| 0.7未満 | 1.1 |
大津市が公開している計算例では、一般市街化区域農地で本年度の評価額1,200万円、前年度の課税標準額200万円のとき、負担水準は0.5、負担調整率1.10、本年度の課税標準額220万円、税相当額は30,800円になる(出典:大津市・土地の固定資産税の求め方(計算例)/2026年7月30日確認)。
特定市街化区域農地だけは宅地の調整措置が使われ、調整税額は前年度の課税標準額に当該年度の評価額×3分の1×5パーセントを足して税率を掛ける。これが本来の課税標準額の20パーセントを下回るときは20パーセントで止まる(出典:久喜市・農地及びその他の地目の税額の求め方・2025年2月21日更新/柏市・農地の課税・2024年4月1日更新)。新たに特定市街化区域農地になった農地には、初年度0.2から4年度目0.8の軽減率が乗る。
上がり方にも上限がある。国土交通省の資料は、農地課税と農地に準じた課税は前年度比10パーセント増まで、宅地並み課税は前年度比5パーセント増までに抑制されると整理している(出典:国土交通省・特定生産緑地指定の手引き(令和8年4月版))。編集部は個別の税額計算をしない。自分の土地の数字は課税明細書を持って資産税課に照会する。
課税標準額が30万円未満なら課税されない
農地を持っているのに通知書が来ない、という状態は普通に起こる。固定資産税には免税点があり、同じ市町村内に持つ土地の課税標準額の合計が30万円未満なら課税されない。家屋は20万円が境目になる(出典:東京都主税局・固定資産税・都市計画税(土地・家屋)・2024年8月22日更新/2026年7月30日確認)。
免税点未満だと課税明細書にも載らない。小平市は、公衆用道路などの非課税物件と、土地・家屋それぞれの課税標準額の合計が免税点未満のものは課税明細書に記載されないと明記している(出典:小平市・固定資産税・都市計画税の納税通知書、納期限などについて・2026年4月16日更新)。手元の明細に農地が見当たらないときは、抜けているのではなく免税点の下にいる可能性がある。
一般農地の税額のイメージが10アールあたり千円という水準なので、その市町村に農地しか持っていなければ免税点に届かないこともある。逆に、実家の敷地や家屋を同じ市町村内で相続していれば合算されるので、農地だけを見ていると見落とす。
基準になる日は1月1日で、その日の所有者に1年分が課される。評価額は3年ごとに見直され、直近の基準年度は2024年度(令和6年度)だ(出典:東京都主税局・固定資産税・都市計画税(土地・家屋))。
宅地に変えると何倍になるか。同じ市の計算例を並べる
転用して宅地になると何倍か、を1つの数字で言うことはできない。区分と前年度の課税標準額で変わるからだ。手がかりになるのは、同じ自治体が同じ評価額で示している計算例を並べることだ。
大津市の計算例は、いずれも本年度の評価額1,200万円で揃っている(出典:大津市・土地の固定資産税の求め方(計算例)/2026年7月30日確認)。
| ケース | 前年度の課税標準額 | 本年度の税相当額 |
|---|---|---|
| 一般市街化区域農地 | 200万円 | 30,800円 |
| 専用住宅が建っていない宅地・雑種地 | 750万円 | 105,000円 |
前提が同じではない点は押さえておきたい。前年度の課税標準額が違うので、これは同じ土地が転用で動いた前後ではなく、同じ評価額の農地と住宅のない宅地が同じ年にどう課税されているかの並びだ。それでも3倍を超える差が出ている。
この差が生まれる引き金は、農地としての課税から外れることだ。農地法の転用許可を受けた農地は宅地としての潜在的価値を持つとされ、宅地介在農地として、宅地であるとした場合の価格から造成費を控除した評価に切り替わる。銚子市は、転用許可を取り消さない限り従前の農地より高い評価のまま課税が続くと説明している。課税地目は登記簿ではなく1月1日の現況で決まる(出典:銚子市・固定資産税関係Q&A(土地の評価に関すること)・2024年11月20日更新)。許可を取っただけで着工しない年が続くと、農地として耕していても宅地寄りの税額を払うことになる。
ただし転用後に住宅を建てれば、その家屋に課税が始まる年度から住宅用地の特例で下がる方向に動く。空き家にして特例が外れる話は空き家の固定資産税が6倍になる条件と回避の順番に、許可の手順と期間は農地転用とは?費用と期間、許可が下りる条件にまとめてある。
生産緑地は、特定生産緑地の指定を受けたかどうかで分かれる
市街化区域内でも、生産緑地地区に指定された農地は農地評価・農地課税のままだ。生産緑地は、市街化区域内の500平方メートル以上(市区町村が条例を定めれば300平方メートルまで引き下げ可)の農地を都市計画に定め、建築行為などを許可制で規制する制度で、全国で52,955地区・10,613ヘクタール(2025年12月31日現在)ある(出典:国土交通省・特定生産緑地指定の手引き(令和8年4月版)/国土交通省・生産緑地制度・2026年7月30日確認)。
分岐は30年目に来る。都市計画の告示から30年が経過するまでに特定生産緑地に指定されれば、買取り申出ができる時期が10年延期され、税制も継続する。指定しなかった場合、指定期限が延長されなかった場合、指定が解除された場合は次のように変わる。
- 三大都市圏の特定市:宅地並み評価・宅地並み課税。急な負担増を避けるため、課税標準額に初年度0.2、2年目0.4、3年目0.6、4年目0.8の軽減率を乗じる激変緩和措置が入る
- それ以外の都市:宅地並み評価・農地に準じた課税
30年を過ぎてからでは特定生産緑地に指定できない点も国土交通省が注意書きにしている。相続で受け継いだ農地が生産緑地なら、指定の状況と告示日は市町村の都市計画の担当課で確認する話になる。
放置しただけでは上がらない。上がるのは勧告を受けたときだ
耕していない農地の税が自動で増えるわけではない。増えるのは、農業委員会から農地中間管理機構との協議を勧告された遊休農地に限られ、対象は農業振興地域内だ(出典:農林水産省・遊休農地を放置すると固定資産税が増額される場合があります/農林水産省・遊休農地の課税の強化/機構に貸し付けた農地の課税軽減・2026年7月30日確認)。
手法は評価の側にある。通常の農地の評価額は売買価格に0.55(限界収益修正率)を乗じるが、勧告を受けた遊休農地はこれを乗じない。結果として約1.8倍になる。2017年度(平成29年度)から実施されており、1月1日時点で勧告が撤回されていない遊休農地が対象になる。
勧告に至らない道も同じ資料に書かれている。
- 利用意向調査で機構への貸付けの意思を表明した場合は、機構側の事情で貸付けに至らなくても勧告は行われない
- すでに森林の様相を呈しているなど再生利用が困難で、農業委員会が非農地と判断した場合も勧告は行われない
- 遊休農地の解消が確認された場合、機構が借り入れた場合、知事の裁定で機構が権利を取得した場合は勧告が撤回され、翌年度以降の課税強化は解除される
税以外に何が起きるかは農地を放置するとどうなる?税金と罰則、近隣トラブルで扱っている。
軽減の手は限られる。農地バンクの特例は2026年4月に中身が変わった
持ったまま税を下げる手は多くない。使えるとすれば農地中間管理機構(農地バンク)への貸付けだが、この特例は2026年(令和8年)4月1日に条件が入れ替わった。古い解説と食い違うのはここだ(出典:農林水産省・遊休農地の課税の強化/機構に貸し付けた農地の課税軽減/農林水産省・農地バンクに貸し付けると固定資産税の軽減を受けられます・2026年7月30日確認)。
| 時期 | 対象 | 軽減 |
|---|---|---|
| 2026年3月31日まで | 所有する全農地(10アール未満の自作地は残せる)を同一年に新たに機構へ貸付け | 15年以上なら5年間、10年以上15年未満なら3年間、2分の1 |
| 2026年4月1日から | 一の地域計画の区域内に所有する全農地を同一年に新たに10年以上で貸付け | 3年間、2分の1 |
新しい方の適用期限は2028年(令和10年)3月31日までで、2026年4月1日から2027年1月1日までに対象の貸付けをすれば2027年度からの課税が軽くなる。15年以上で5年間という枠は新しい条件には無い。地域計画は市町村が作る地域農業の将来像の計画なので、自分の農地がその区域に入っているかが最初の関門になる。
貸せるかどうかは機構側の借受け希望にも左右される。相続税の納税猶予は税目が違い、要件も別に組まれている。適用の可否は税理士と農業委員会の領域で、編集部は判断しない。
貸すか活用するかを決める前に、その土地で成り立つ形と収支を見る
軽減の条件に乗るかどうかの前に、その土地が何なら成り立つのかで結論が変わります。複数社の活用プランと収支の試算を無料で取り寄せて、机の上で比べてから窓口に行く順番が無駄になりません。
無料で活用プランを取り寄せる農地に付いてくる税は固定資産税だけではない
毎年のものと、節目のものが別にある。農林水産省が原則として整理しているのは次の並びだ(出典:農林水産省・農地に関する課税(原則)・2026年7月30日確認)。
- 持っている間:固定資産税(評価額×1.4パーセント)と都市計画税(評価額×0.3パーセント以下、都市計画区域内に限る)。特別土地保有税と地価税は現在適用停止
- 相続したとき:相続税と、所有権移転登記の登録免許税(固定資産課税台帳価格×0.4パーセント)。不動産取得税は非課税
- 売ったとき:譲渡益に所得税15パーセントと住民税5パーセント
- 貸したとき:賃貸料収入が不動産所得として他の所得と合算
都市計画税は市街化区域農地にも課税標準の特例があり、柏市は固定資産税3分の1、都市計画税3分の2と案内している(出典:柏市・農地の課税)。市街化区域の外にある農地では固定資産税だけを見ることになるので、通知書に都市計画税の欄があるかどうかで自分の土地の位置が読める。
確認する順番。窓口は3つに分かれている
税の窓口だけ回っても、農地の話は片付かない。順番はこうなる。
- 納税通知書と課税明細書を出す。地目、評価額、課税標準額、都市計画税の有無を見る。負担水準を載せている自治体もある(出典:大津市・税額の算定(農地))
- 市町村の資産税課で、課税地目と評価の根拠、免税点との関係を確認する
- 農業委員会で、農地としての区分、転用の届出か許可か、遊休農地の調査の対象になっているか、機構への貸付けが可能かを確認する
転用を考えているなら、税の試算より先に農業委員会だ。区分の一言で申請が通らない場合があり、そこで図面や見積もりが無駄になる。評価額そのものに納得できないときは固定資産評価審査委員会への審査の申出という道があり、さいたま市は期間を、価格等を登録した旨の公示日(通常4月1日)から納税通知書の交付を受けた日後3か月以内と案内している(出典:さいたま市・固定資産評価審査委員会への審査の申出のあらまし・2026年7月30日確認)。
年約7万円という数字の意味が分かったのは、明細の内訳を見た後だった
編集部の運営者は沖縄に傾斜地を相続し、売却・寄付・国庫帰属と出口を当たったが成立せず、今も持ち続けている。農地ではないので農地の特例はどれも関係がない。
それでも毎年払っている固定資産税は年に約7万円で、通知書が届いたときに最初に思ったのは、この額が妥当なのかどうか判断する材料が自分に無いということだった。地目と評価額、課税標準額の関係を明細で追って、ようやく額の出どころが読めた。
分かったのは、この土地に下げる余地は無いということだった。それでも内訳を把握してから払うのと、分からないまま払うのとでは、次に当たる先の選び方が変わる。農地なら、区分と課税地目という下げ幅の効く変数が明細に出ている。
細かい疑問への答え
田1反(10アール)でいくらか
一つの数字では出ない。上の区分表にある10アールあたりのイメージが出発点で、実額は評価額と前年度の課税標準額で動く(出典:農林水産省・農地の保有に対する税金(固定資産税))。
家庭菜園は畑として課税されるか
銚子市は、住宅の敷地の一部で面積も小規模な家庭菜園について、肥培管理の点からは畑と認められなくもないとしつつ、地目は土地の現況と利用目的に重点を置き、土地全体としての状況で判断すると説明している(出典:銚子市・固定資産税関係Q&A(土地の評価に関すること))。
登記が畑のままなら畑の税額か
課税上の地目は登記簿ではなく1月1日の現況で決まる(出典:銚子市・固定資産税関係Q&A(土地の評価に関すること))。
納期はいつか
自治体ごとに違う。2026年度で見ると、小平市は通知書を5月上旬に送り、第1期6月1日、第2期7月31日、第3期12月25日、第4期2027年3月1日。越谷市は5月1日発送で第3期が2027年1月4日だ。小平市は年税額4,000円未満なら第1期で全額納付と案内している(出典:小平市・固定資産税・都市計画税の納税通知書、納期限などについて/越谷市・令和8年度 固定資産税・都市計画税の納税通知書・2026年2月26日更新)。
