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農地転用とは?費用と期間、許可が下りる条件をまとめて解説

農地転用とは?費用と期間、許可が下りる条件をまとめて解説

農地を動かそうと調べていくと、必ず農地転用という言葉に行き当たる。

結論から書く。転用は許可制で、土地の区分によっては申請しても下りない。期間は市街化区域の届出が1〜2週間、それ以外の許可が6週間から3か月ほど。行政書士報酬は4条許可で最も多い回答が8万円前後だった(2026年7月時点)。

この記事の目次
  1. 農地転用は「その土地がどの区分か」でほぼ決まる
  2. 4条と5条の違いは「誰が転用するか」だけ
  3. 許可が下りる農地と、申請しても下りない農地
  4. 2025年4月から、許可申請の前に増えた手続きがある
  5. 期間の目安。届出は1〜2週間、許可は6週間から
  6. 費用の内訳。専門家報酬は統計で見ると幅が広い
  7. 許可が出た時点で固定資産税が変わる。工事未着手でも
  8. 転用が終わったら1か月以内に地目変更登記
  9. 許可を取らずに転用した場合に起きること
  10. 転用の前に済ませる届出と、転用しない出口
  11. 細かい疑問への答え

農地転用は「その土地がどの区分か」でほぼ決まる

農地転用とは、田や畑を農業以外の用途に変えることを指す。住宅や倉庫を建てる場合だけでなく、駐車場や資材置場のように形を変えずに使う場合も転用に当たる。農地法に基づく許可または届出が必要になる(農林水産省・農地転用許可制度について、2026年7月30日確認)。

ここで先に押さえるべきは、手続きの種類が2つに分かれることだ。市街化区域の農地はあらかじめ農業委員会に届け出れば許可が要らない。それ以外の区域は都道府県知事(農林水産大臣が指定する指定市町村の区域では市町村長)の許可が必要になる(福岡県・農地を転用するには?東京都産業労働局・農地転用許可制度、2026年7月30日確認)。同じ事業のために4ヘクタールを超える農地を転用する場合は、許可に際して国との協議が入る(宇都宮市・農地の転用)。

相談者相談者
もう10年以上耕していない土地なのですが、それでも農地の扱いになるのでしょうか。

なる。休耕地でも耕作可能な状態なら農地に当たり、登記上の地目が田・畑であれば同じく農地として扱われる。窓口はどの区域でも農地の所在地の市町村農業委員会で、県に直接出すものではない(東京都産業労働局・農地転用許可制度)。

つまり最初にやることは、書類を集めることでも見積もりを取ることでもない。その土地がどの区分に置かれているかを農業委員会で確認することだ。区分によっては、費用をかけて図面をそろえても許可自体が出ない。

4条と5条の違いは「誰が転用するか」だけ

農地法の条文番号で呼ばれるので難しく見えるが、分かれ目は所有者が自分で転用するかどうかの一点だ。

条文どんな場面か申請するのは誰か
農地法第3条農地を農地のまま売る・貸す(転用ではない)売り手と買い手
農地法第4条所有者が自分の農地を転用する(自己転用)転用する本人
農地法第5条買った人・借りた人が転用する(権利移動を伴う)所有者と転用する事業者の連署

4条の申請者は本人単独、5条は譲り渡す人と譲り受ける人が連署して農業委員会に出す(長野県・農地等の転用(4条・5条許可)、2026年7月30日確認)。

相続で農地を受け取った立場だと、この振り分けは進み方をそのまま決める。自分の名義のまま自宅や倉庫、駐車場にするなら4条。買い手を見つけて宅地として売るなら5条で、許可が下りなければ所有権の移転そのものができない(福岡県・農地を転用するには?)。買い手が付いてから許可が下りずに止まるのを避けるため、実務では停止条件付きの契約にすることが多い。

ここで気をつけたいのは、一時的な利用も転用だという点だ。工事の資材置場や仮設の作業場に数か月使うだけでも一時転用の許可や届出の対象になる(横須賀市・農地転用について)。

許可が下りる農地と、申請しても下りない農地

許可の判断は立地基準と一般基準の2段で行われる。立地基準は場所の格付けで、農地を5つに区分して方針が決まっている。神奈川県が公開している区分表を引くと、次のようになる(神奈川県・農地転用許可制度、2026年7月21日更新/2026年7月30日確認)。

区分どんな農地か許可の方針
農用地区域内農地農業振興地域整備計画で農用地区域とされた区域内の農地原則不許可
甲種農地市街化調整区域内で土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)原則不許可(土地収用法第26条の告示事業等は許可)
第1種農地10ヘクタール以上の一団の農地、土地改良事業等の対象など良好な営農条件原則不許可(土地収用対象事業等は許可)
第2種農地市街化が見込まれる農地、生産性の低い小集団の農地周辺の他の土地に立地できない場合等は許可
第3種農地駅から300メートル以内など市街地の区域、市街地化が著しい区域原則として許可

農用地区域内の農地は、転用の前に農用地区域から外す手続き(農振除外)が必要になり、そこで別の要件審査が入る。詳しい要件と費用は農振除外とは?6要件と費用、農地転用との違いにまとめている。

もう一段の関門が一般基準

立地基準を通っても、一般基準で落ちることがある。東京都は一般基準として、転用事業の実施が確実と認められること、周辺農地の営農条件に支障を生じるおそれがないこと、一時転用なら農地への原状回復が確実と認められることを挙げている(東京都産業労働局・農地転用許可制度)。埼玉県はここを、申請目的実現の確実性、隣接農地への被害防除措置、資金の有無、計画の規模、他法令の許可等と説明している(埼玉県・農地転用許可制度の概要、2026年6月26日更新)。

資金の有無が審査対象になるのは見落とされやすい。転用したいという意思だけでは足りず、工事をやり切れる裏付けを出す必要がある。逆にいえば、具体的な土地利用計画がないまま資産として持つための転用は通らない設計になっている。

2025年4月から、許可申請の前に増えた手続きがある

ここは他の解説であまり触れられていないが、相続した農地を動かす人には期間の見積もりが変わるほど大きい。

農業経営基盤強化促進法の改正で、市町村は2025年3月末までに地域計画を策定した。地域計画には一筆ごとに将来の耕作者を示した目標地図が含まれる。2025年4月1日以降、申請地が地域計画の区域内にある場合は、農地転用の許可申請より先に地域計画の変更手続き(対象農地を地域計画から外すこと)が必要になっている(宇都宮市・農地の転用芦別市・農振除外や農地転用する際は、事前に地域計画の変更が必要です、いずれも2026年7月30日確認)。

どれくらい伸びるかを数字で示している自治体もある。ひたちなか市は、申請地が目標地図の区域に該当する場合、地域計画変更の手続きが前に入るため、2025年3月31日以前と比べて手続きに要する期間が約2、3か月長くなると案内している(ひたちなか市・農地法の規定による農地転用、2026年7月30日確認)。岐阜市も、地域計画の策定により農地転用許可と農用地除外の手続きが一部変更となり、これまでより時間を要する場合があるとしている(岐阜市・農地を転用する場合、2025年11月20日更新)。

同じ2025年4月には農業振興地域の整備に関する法律も改正施行され、農用地区域の除外にかかる判断基準が厳しくなった。奈良市は、申出者に農用地区域への編入や遊休農地の解消といった影響緩和措置を求めていくことがあると明記している(奈良市・農用地区域除外等の申し出について、2026年7月30日確認)。

実家じまいナビ編集部実家じまいナビ編集部
古い解説記事の期間だけを見て動くと、ここで2〜3か月ずれます。自分の農地が地域計画の区域内かどうかは、農業委員会か農政担当課で聞けば分かります。

制度は年度で変わる。ここに書いた内容は2026年7月30日時点で各自治体が公開しているもので、地域計画の区域も自治体ごとに違う。数字を持って動く前に、必ず所在地の農業委員会で最新の運用を確かめてほしい。

期間の目安。届出は1〜2週間、許可は6週間から

期間は届出と許可でまったく違う。まず市街化区域の届出から。

農地法関係事務処理要領では、受理または不受理の通知書が遅くとも届出書の到達があった日から2週間以内に届出者に到達するよう事務処理を行うとされている。運用として相模原市は受理通知書の交付まで届出日から約1週間程度、岐阜市は市街化区域の届出は随時受付で10日前後と案内している(相模原市・農地転用許可制度の仕組み/岐阜市・農地を転用する場合、2026年7月30日確認)。

許可はここから一段長い。

自治体公開されている期間の目安
宇都宮市申請書の受付締切日から許可書の交付までの標準処理期間を42日と設定
千葉県(知事許可事案)経由機関(農業委員会)4週間+処分機関2週間+4ヘクタール超は協議1週間
横須賀市申請から許可までおおむね2か月程度(場合によってはそれ以上)

宇都宮市千葉県・農地転用の許可(知事許可事案)横須賀市、2026年7月30日確認)

ここに月次の締切が乗る。許可申請の受付は毎月1回で、宇都宮市は市街化区域以外の許可申請を毎月月末締切、岐阜市は毎月20日締切で許可日は翌月中旬以降、鴻巣市と相模原市は毎月10日締切としている。締切を1日過ぎると審査の開始が丸ごと1か月後ろにずれる。

面積が大きいと途中に工程が増える。同じ事業のために30アールを超える農地を転用する場合、農業委員会は意見を付して知事に送る前に都道府県の農業委員会ネットワーク機構の意見を聴くことになる(愛知県・農地転用の許可について、2026年7月30日確認)。

申請から登記までの流れ

  1. 農業委員会に事前相談。転用の目的、位置、面積を整理して持ち込む
  2. 区分の確認と、必要なら地域計画の変更申出・農振除外・土地改良区への地区除外申請
  3. 添付書類をそろえて締切日までに申請。許可申請書、登記事項証明書、公図、土地利用計画図、資力・信用を証する書類、他法令の許認可の見込み、土地改良区の意見書などが求められる(東京都産業労働局・農地転用許可制度/福岡県・農地転用許可申請等の必要書類・様式例について)
  4. 農業委員会が意見を付して知事等に送付。総会での審議を経て許可書(指令書)の交付
  5. 着工。完了までの間は工事進捗状況報告書、完了したら工事完了報告書を提出
  6. 法務局へ地目変更登記の申請

期間の全体像は、市街化区域なら2週間前後、それ以外は締切待ちを含めて6週間から2か月強。地域計画の変更が前に入る土地なら、そこにさらに2、3か月。相続の手続きや売買の日程を組むなら、この幅で押さえておくと後から慌てない。

費用の内訳。専門家報酬は統計で見ると幅が広い

費用を「相場は何万円」と一言で言い切る解説は多いが、実際の分布はかなり散らばっている。日本行政書士会連合会が5年に1度実施している報酬額統計調査(令和7年度・2026年1月実施)の農地法関係を並べると、次のとおりだった。

手続き回答件数最も多い回答額平均額最小額/最大額
農地法第4条 許可申請273件80,000円96,893円8,800円/800,000円
農地法第5条 許可申請501件100,000円120,186円5,000円/1,618,720円
農地法第4条 届出170件50,000円50,728円3,000円/500,000円
農地法第5条 届出245件50,000円54,226円3,000円/500,000円
農地法第3条の3 の届出(相続)174件11,000円23,502円1,000円/500,000円

日本行政書士会連合会・報酬額の統計「令和7年度報酬額統計調査の結果」、金額は消費税を含み立替金は含まない、2026年7月30日確認)

読み方が2つある。ひとつは、4条許可申請は4万円以上10万円未満の回答が273件のうち162件で約6割、5条許可申請は5万円以上15万円未満が501件のうち357件で約7割を占めるということ。ボリュームゾーンは4条で4〜10万円、5条で5〜15万円あたりに寄っている。

もうひとつは、平均額が最も多い回答額より高く出ている理由だ。最大額が80万円や161万円台まで伸びているためで、平均だけを見ると高く見積もりすぎる。難易度で変わる業務なので、幅で押さえて複数から見積もりを取るのが実際的だ。依頼するかどうかの判断材料は農地転用は行政書士に頼むべき?報酬相場と依頼の判断に分けて書いた。

報酬以外にかかるもの

  • 書類の取得実費:登記事項証明書、公図、印鑑証明など。なお川崎市は2026年3月2日から農地転用届出時の全部事項証明書と公図の添付を省略できるとしており、自治体ごとに必要書類が動く(川崎市・農地転用届出手続きの流れ
  • 土地改良区の決済金:土地改良区の受益地なら、地区除外の決済金が土地改良法第42条に基づいて必要になる。静岡県の寺谷用水土地改良区は決済金単価を田1平方メートルあたり350円(畑かん地区の畑は田の3分の1)、事務手数料1件1,000円と公表している(寺谷用水土地改良区・賦課金・決済金について、2026年7月30日確認)。単価は改良区ごとに総代会の議決で決まるので、自分の農地の改良区に当たる必要がある
  • 造成・測量・分筆:土地の状態で変わるため、金額を先に決められない部分。ここが総額を左右する
  • 地目変更登記:登録免許税はかからないが、土地家屋調査士に頼めば報酬が乗る

坪数別の総額の組み立て方と、4条・5条で誰が払う慣例かは農地転用の費用はいくら?坪数別の総額と誰が払うかで分けて扱っている。

転用にいくらかけるか決める前に、活用したときの収支を見ておく

転用の目的が決まっていない段階なら、その土地で何ができて年にいくら残るのかを先に並べたほうが判断が早い。複数社のプランと収支の試算を無料で取り寄せられる。

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許可が出た時点で固定資産税が変わる。工事未着手でも

費用の話で最も抜けやすいのがここだ。転用の許可が出た(市街化区域なら届出が受理された)だけで、固定資産税の扱いが変わる。

彦根市は、農地転用の届出の受理または申請の許可がされると、現地の利用状況が農地(田畑)であっても、その土地は固定資産税の課税地目としての農地ではなくなると明記している。市街化区域内農地には評価額の3分の1を課税標準額とする特例があるが、届出が受理されると造成等の工事に着手していなくても特例から外れる。市街化調整区域内の農地も、許可されると付近の標準的な宅地から比準して評価額を計算することになる(彦根市・農地転用の固定資産税への影響、2025年12月10日更新/2026年7月30日確認)。

同市が示している計算例を並べると、差がはっきりする。

ケース(未造成)前提転用前の税額転用後の税額
市街化区域内の田1平方メートル単価8,000円・地積1,000平方メートル・評価額800万円37,300円78,400円
市街化調整区域内の農地1平方メートル単価6,000円・地積1,000平方メートル・評価額600万円1,400円58,800円

これは彦根市の条件での計算例なので、そのままあなたの土地の税額にはならない。ただ市街化調整区域の例では年1,400円程度だった負担が年58,800円程度になっており、桁が変わる方向に動くという構図は共通する。厚木市も、転用の許可・届出が済んだ農地を宅地等介在農地として宅地並みに評価し、課税標準額の特例率が1分の1になるため税額が大幅に上がると説明している(厚木市・土地(農地)の固定資産税の評価、2026年7月30日確認)。

固定資産税は1月1日の状況で決まるので、許可のタイミングと着工・売却の時期が離れると、使えない土地に高い税金を払う年が生まれる。転用の許可を先に取っておこうという発想は、この点で裏目に出ることがある。

実家じまいナビ編集部 実家じまいナビ編集部の実体験

農地ではないが、動かせない土地に毎年出ていく金額の重さは同じだった

編集部が相続したのは農地ではなく沖縄の傾斜地で、農地転用の許可申請をした経験はない。断っておくと、以下は制度の説明ではなく持ち続けている側の実感だ。

この土地の固定資産税は年に約7万円。売却、寄付、国庫帰属と出口を順に当たったが、どれも成立せず今も保有している。傾斜と接道と造成費という条件が動かないので、誰に相談しても結論が変わらなかった。

その過程で身に染みたのは、土地の条件と区分を先に確定させないと、集めた見積もりも相談も全部やり直しになるということだ。農地の場合、その区分は農業委員会で聞けば分かる。順番を逆にして図面と費用を先に用意すると、区分の一言でそこまでの手間が消える。

転用が終わったら1か月以内に地目変更登記

許可を取って工事を終えても、登記の地目は自動では変わらない。法務局への地目変更登記は所有者側の義務だ。

宇城市は、農地転用許可を受けて農地を宅地などに転用した場合、転用後1か月以内に地目変更登記の申請を行う必要があり(不動産登記法第37条第1項)、期間内に申請しなかった場合は10万円以下の過料に処せられる場合がある(同法第164条)と案内している(宇城市・農地転用工事終了後は法務局に地目変更登記を申請してください、2026年7月30日確認)。

登記申請には農地転用の許可書(または届出の受理通知書)を添付する。法務局が公開している畑から宅地への地目変更の記載例にも、農地を農地以外の地目に変更する場合は農地法の規定による許可が必要なので許可書を添付する、と注記がある(法務局・地目変更登記の記載例)。許可書はなくさないほうがいい。

放置すると後で効いてくる。宇城市は、地目変更登記をしていないと登記上の地目が農地のままになるため、数年後に土地を動かそうとしたときに容易に所有権移転ができない場合があり、現況が許可目的どおりでなければ改めて農地法の手続きが必要になる場合があると書いている。相続で受け取った土地の登記地目が農地なのに現況が宅地や雑種地というケースは、この登記漏れが原因のことがある。

工事中と工事後に出す報告書

許可を受けた転用事業者は、許可条件に従って工事が完了するまでの間に工事進捗状況報告書を提出し、工事が完了したときは遅滞なく工事完了報告書を提出する(東京都産業労働局・農地転用許可制度/横浜市・農地の転用)。許可後に建てる建物の用途や面積を変えるなら変更承認申請、軽い変更なら軽微変更届という別の手続きになる(福岡県・農地転用許可申請等の必要書類・様式例について、2026年7月30日確認)。許可はもらって終わりの書類ではない。

許可を取らずに転用した場合に起きること

知らずにやってしまう例が多い領域なので、起きることを事実だけ並べる。

違反転用行為は農地法第51条第1項に定めがあり、許可を受けないで農地を転用すること、許可を受けないで転用目的の権利設定・移転を行うこと、転用許可に付した条件に違反することが対象になる。措置は工事の中止命令や原状回復命令で、緊急に措置する必要がある場合等には都道府県知事等が行政代執行を行うことができる。罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人の場合1億円以下の罰金)で、根拠は農地法第64条と第67条(農林水産省・違反転用に対する措置についてさいたま市・農地の違反転用について、2026年7月30日確認)。

後から許可をもらえばいいという発想は通らない。大分市は、転用行為の許可申請の追認は原則として認められないとしている(大分市・ストップ!農地の違反転用、2026年7月30日確認)。

相続した農地で起きやすいのは、悪意のないパターンだ。

  • 使わないので知り合いに資材置場として貸した(形は変えていないが転用に当たる)
  • 草刈りが大変なので砂利を敷いて車を置けるようにした(駐車場化は転用)
  • 太陽光パネルを置いた(野立ては転用、支柱を立てて営農を続ける営農型は一時転用許可が必要)
  • 農業をやめたので物置と小屋を建てた(耕作者自身が2アール未満の農地に農業用施設を設置する場合は許可不要だが、農業用施設用地とするための願出が必要)

2アール未満の農業用施設の扱いは宇都宮市の案内による。太陽光の扱いは神奈川県と東京都が営農型太陽光発電に一時転用許可が必要と明記している(宇都宮市・農地の転用/神奈川県・農地転用許可制度/東京都産業労働局・農地転用許可制度)。

すでに現況を変えてしまっている場合、隠すより先に農業委員会に相談したほうが選べる手が多い。編集部は法令の解釈を断定できる立場ではないので、個別の事案は農業委員会と、必要なら農地関係を専門にする行政書士に当たってほしい。

転用の前に済ませる届出と、転用しない出口

農地転用を調べ始めた時点では、転用が唯一の道のように見える。実際は転用より先に期限のある手続きがあり、転用しない出口もある。相続で受け取った農地の場合の順番を並べる。

  1. 農地法第3条の3の届出を出す。相続(遺産分割や包括遺贈を含む)で農地の権利を取得した人は、農業委員会に届け出る義務がある。権利を取得したことを知った時点からおおむね10か月以内が目安で、届出をしなかったり虚偽の届出をした場合は10万円以下の過料に処せられることがある(酒田市・農地を相続したとき(農地法第3条の3の届出)、2026年7月30日確認)。これは所有権移転登記の代わりにはならないので、登記は別に必要になる。手順は農地を相続したらまず何をする?届出と3つの選択肢にまとめた
  2. 相続登記も期限がある。2024年4月1日から相続登記の申請が義務になった。相続(遺言を含む)で不動産の所有権を取得した相続人は、所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があり(不動産登記法第76条の2第1項)、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になる(同法第164条第1項)。2024年4月1日より前に相続したことを知った不動産で登記がされていないものは、2027年3月31日までが期限になる(法務省・相続登記の申請義務化について法務省・相続登記の申請義務化に関するQ&A、2026年7月30日確認)。転用の許可申請では登記事項証明書を出すので、名義が親のままだとここで止まる
  3. 区分を4つ確認する。農用地区域に入っているか、立地基準では第何種か、地域計画の区域内か、土地改良区の受益地か。この4つで、転用できるかと期間と費用の枠が決まる。窓口はどれも農業委員会か農政担当課で、費用はかからない
  4. 転用しない出口も横に並べる。農地のまま貸す、農地のまま売る(農地法第3条)、農地バンクに預ける、といった道は許可のハードルが転用とは別になる。転用して売るのが常に有利とは限らない
  5. そのうえで見積もりを取る。順番を逆にすると、区分の一言で図面と見積もりが無駄になる
相談者相談者
税金がどうなるかも一緒に判断したいのですが、どこまで自分で調べられますか。

制度の枠組みと手続きの順番までは公開情報で追える。ただ相続税や譲渡所得の計算、遺産分割の中でその農地をどう扱うかは個別の事情で変わるので、編集部は判断を書かない方針だ。相続税の納税猶予の適用可否や売却時の税額は税理士、許可申請の手続きは農地関係を専門にする行政書士、登記は土地家屋調査士と司法書士と、担当が分かれる。実家の片づけ全体の順番と費用の枠は実家じまいとは?進め方と費用の全体像に置いた。

転用の前に、その土地で何ができるかを比べておく

農地を転用した先に何を建てるか決まっていないなら、活用の型と収支の試算を複数社から取り寄せて比べるのが早い。相場を知るだけの利用でも問題ない。

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細かい疑問への答え

登記の地目が「田」だが、実際は10年以上放置している。農地か

農地に当たる。休耕地や耕作可能な状態の土地は農地として扱われ、登記地目が田・畑の場合も同様に手続きが必要になる。逆に、すでに許可を得て転用済みで地目変更登記だけ漏れている土地は農地ではないので、法務局で地目変更を進める形になる(九度山町・相続等による農地取得の届出、2026年7月30日確認)。

4ヘクタールを超える農地はどうなるか

4ヘクタール超も許可権者は都道府県知事(指定市町村では市町村長)で、許可に際して農林水産大臣との協議が入る(福岡県・農地を転用するには?/宇都宮市・農地の転用)。埼玉県は4ヘクタール超の申請について、県または指定市町村への事前審査の申し出が必要としている。

市街化区域なら必ず届出だけで済むか

原則はそうだが例外がある。市街化区域内に農用地区域の農地が混在しているケースや、生産緑地の指定を受けている農地は扱いが別になる。川崎市は、生産緑地の指定を受けている農地については行為制限の解除日以降に届出をすること、解除日より前に転用行為の着手や所有権の移転はできないと明記している(川崎市・農地転用届出手続きの流れ、2026年7月30日確認)。

申請はオンラインでできるか

農林水産省共通申請サービス(eMAFF)で農地関係の手続きをオンラインで行える場合がある。ただし提出先の農業委員会がeMAFFに対応している必要があるため、まず窓口に可否を確認する形になる(農林水産省・農地をめぐる事情について、2026年7月30日確認)。

農地は安く買えると聞いた。転用して家を建てるほうが得か

価格だけ見れば安く見えるが、上に乗る費用と条件がある。転用許可が下りる区分かどうかが最初の関門で、第1種農地や農用地区域では原則不許可。許可が下りても造成費と、建築に必要な接道の確保が別にかかる。周りが農地に囲まれた土地は道路に接する条件を満たせないことがある。さらに許可の時点で固定資産税の扱いが宅地側に変わる。安い理由は、この条件がそろっていないことにある。

許可が下りなかった場合はどうなるか

不許可の理由が立地基準なら、同じ土地で同じ計画を出し直しても結論は変わりにくい。一般基準(資金や計画の確実性、被害防除)が理由なら、計画を組み替えて再申請する余地がある。どちらに当たるかは指令書と窓口の説明で分かるので、そこを確かめてから次の手を選ぶことになる。

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実家じまいナビ編集部

実家じまいナビ編集部 |沖縄に売れない土地を持つ当事者が運営

実家じまいナビ編集部です。運営者自身が沖縄に売れない土地を相続し、出口が見つからないまま維持している当事者です。役所と業者を回って分かった順番、実際にかかる費用、先に知っておけば防げたことを記録しています。法令の解釈が必要な部分は断定せず、調べ方と相談先を示す方針です。

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