借地権割合とは?路線価図での調べ方と実家の評価
実家の建つ土地が借地だと分かった時点で、いくらの財産なのかの見当が急につかなくなる。
借地権割合は、国税庁の路線価図で路線価の右に付くAからGの記号で読む。Aが90パーセント、Gが30パーセントの7段階。ただしこれは相続税の評価に使う数字で、売れる金額ではない(2026年8月6日確認)。
この記事の目次
借地権割合が決めているのは相続税の評価額
借地権割合は、財産評価基本通達27に定めがある。借地権の価額は、その借地権の目的となっている宅地の自用地としての価額に、売買実例価額・精通者意見価格・地代の額などを基として評定した割合をおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長が定め、それを乗じて計算する、という形になっている(国税庁 財産評価基本通達 第2節 宅地及び宅地の上に存する権利、2026年8月6日確認)。
つまり借地権割合は、地域ごとに国税局長が決めた一律の数字で、用途は相続税と贈与税の評価。国税庁のタックスアンサーでも、借地権の価額は自用地としての価額に借地権割合を乗じて求めると示されている(No.4611 借地権の評価、令和7年4月1日現在法令等)。
ここを取り違えると全部ずれる。あなたの借地が実際にいくらで買い手に渡るかを国が決めているわけではない。決めているのは、相続税を計算するときにいくらの財産として数えるか、それだけになる。
- 使う場面:相続税・贈与税の申告、遺産分割で財産の大きさを揃えるとき
- 使えない場面:地主や第三者との売買価格の決定、立退きの交渉額の根拠
路線価図でAからGの記号を読む手順
調べる場所は国税庁の財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)。手順は3つで足りる。
- 財産評価基準書のページで、実家の土地がある都道府県と市区町村を選ぶ
- 該当する路線価図を開き、土地が接している道路の上の表示を探す
- 「215D」のような、数字とアルファベットの組み合わせを読む
国税庁の路線価図の説明によれば、数字は1平方メートル当たりの価額を千円単位で表示したもので、その右隣のAからGの記号が借地権割合を示す。215Dなら1平方メートル当たり215,000円、借地権割合60パーセントという意味になる。記号の対応は次のとおり(2026年8月6日確認)。
| 記号 | A | B | C | D | E | F | G |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 借地権割合 | 90% | 80% | 70% | 60% | 50% | 40% | 30% |
路線価が付いていない地域だったとき
路線価図に「倍率地域」と書かれている地域は、同じ財産評価基準書の評価倍率表を見る。評価倍率表(一般の土地等用)の説明では、借地権割合欄に、その町(丁目)または大字の地域について借地権の価額を評価する場合の借地権割合が掲げられている。2路線以上に面する場合や、路線価地域と倍率地域が接続する地域の借地権割合は、原則として路線価地域の正面路線価に表示された借地権割合による、とされている。
記号がどこにも無いとき
通達27にはただし書があり、権利金その他の一時金を支払うなど借地権の取引慣行があると認められる地域以外の地域にある借地権の価額は評価しない、と定められている。借地権側はゼロという扱いになる。一方で地主側の貸宅地は別で、国税庁は借地権の取引慣行がないと認められる地域にある貸宅地を評価する場合、借地権割合を20パーセントとして計算するとしている(No.4613 貸宅地の評価)。借地人側と地主側で扱いが違うので、20パーセントという数字だけを覚えて自分の借地権に掛けないほうがいい。
割合を掛けて評価額を出す(借りている側と貸している側)
計算そのものは掛け算ひとつになる。
- 借りている側(借地権)=自用地としての価額 × 借地権割合
- 貸している側(貸宅地・底地)=自用地としての価額 − 借地権の価額
路線価215D、面積150平方メートルの土地を、補正を考えない単純な形で並べると次のようになる。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 自用地としての価額(215,000円 × 150平方メートル) | 3,225万円 |
| 借地権(× 60パーセント) | 1,935万円 |
| 貸宅地(残り40パーセント) | 1,290万円 |
実際の申告ではこの手前に補正が入る。奥行が長い、間口が狭い、形がいびつ、私道に接している、といった事情で自用地としての価額そのものが動く。居住用の宅地なら小規模宅地等の特例が絡むこともある。編集部は士業ではないので、あなたの土地の税額がいくらになるかには答えない。ここで出せるのは、通達と路線価図がどうなっているかまでになる。
割合を掛ける前に、それが本当に借地権かを確かめる
借地権割合の記事は、借地権があることを前提にして書かれていることが多い。実家じまいの現場で最初に崩れるのはそこになる。
1. 借地権の定義に当たるか
借地借家法2条1号は、借地権を建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権と定義している。建物を建てない資材置き場や青空駐車場の賃借は、この借地権に当たらない。
2. 地代を払っていたか
親族間で無償のまま建物を建てているケースがある。この場合は使用貸借になり、国税庁の使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて(昭和48年11月1日付 直資2-189ほか2課共同)で、建物の所有を目的として使用貸借による土地の借受けがあった場合、権利金を支払う取引上の慣行がある地域であっても借地権相当の利益の贈与として取り扱わないとされている。財産としての借地権が立たない以上、路線価図の割合を掛ける相手が無い。地代の領収書や口座の振込記録は、この分かれ目の証拠になる。
3. 定期借地権ではないか
借地借家法22条から25条の定期借地権等は、通達27ではなく27-2で評価する。残存期間と借地権者に帰属する経済的利益を基に計算する仕組みで、路線価図のAからGをそのまま掛ける形にならない。契約書に公正証書である旨や更新がない旨の特約があれば、ここを疑う。
4. 建物の登記を見る
借地借家法10条1項は、借地権の登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは第三者に対抗できると定めている。建物の登記事項証明書は、権利の裏付けとして先に取っておく書類になる。
平成4年8月1日をまたぐかで、適用される法律が変わる
借地借家法は平成3年法律第90号として平成3年10月に公布され、平成4年8月に施行された(国土交通省 定期借地権の解説)。実家の借地契約は、この日より前に始まっているものが珍しくない。
借地借家法の附則2条は建物保護に関する法律・借地法・借家法を廃止し、附則4条は、附則に特別の定めがある場合を除きこの法律の規定は施行前に生じた事項にも適用すると定めている。問題はその特別の定めのほうで、実家の借地で効いてくる項目がそこに並んでいる。
- 附則6条:施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による
- 附則7条:施行前に設定された借地権について、建物の滅失後の建物の築造による期間の延長に関しては、なお従前の例による
- 附則9条・11条:13条2項や18条は施行前に設定された借地権には適用しない
存続期間の中身も違う。借地借家法3条は借地権の存続期間を30年とし、4条は更新後の期間を最初の更新で20年、その後は10年としている。旧借地法2条は、堅固の建物の所有を目的とするものは60年、その他の建物は30年とし、契約で堅固30年以上・その他20年以上の期間を定めたときはその期間による、と定めていた(国立公文書館デジタルアーカイブ 借地法 御署名原本 大正10年 法律第49号)。更新後は旧借地法5条で堅固30年・その他20年になる。
借地権割合の計算自体は新旧で変わらない。変わるのは、更新できるか、建て替えられるか、いつ期限が来るかという実家じまいの手順のほうになる。契約書に日付があるなら、まずそこを見る。
相続税評価額と、実際に売れる金額は一致しない
通達27の借地権割合は売買実例価額や精通者意見価格などを基として評定されたものだが、地域ごとに一本化された値になる。土地の個別事情も、地主との関係も入っていない。
実務で売却価格を動かすものは別にある。
- 地主が譲渡を承諾するか(借地借家法19条1項は、承諾しない場合に裁判所が承諾に代わる許可を与えられるとしている)
- 残存期間があとどれだけあるか
- 建物が古く、解体費と再建築の見込みがどうなるか
- 買い手側で住宅ローンが組みにくいこと
不動産会社の解説でも、相続税評価額と実際の売却価格にはズレが生じるとされている(センチュリー21中央プロパティー、2026年8月6日確認)。借地権割合が60パーセントだから更地価格の6割で売れる、という読み方はしないほうが安全になる。査定は一社で決めず、幅で受け取る。売り方の型は 借地権付きの実家を売る3つの方法|地主・第三者・同時売却 に分けてある。
地主に払う金額は、法律に定めがない
更新料、譲渡承諾料、増改築の承諾料。借地の話で必ず出てくるこの三つは、借地借家法の条文には金額の定めがない。条文にあるのは、協議が調わないときに裁判所が何をできるかのほうになる。
| 場面 | 条文にあること |
|---|---|
| 建物の種類や増改築の制限がある | 17条。協議が調わないとき、裁判所が借地条件を変更し、または承諾に代わる許可を与えられる。財産上の給付を命じることができる |
| 建物を第三者に譲渡したい | 19条。地主が承諾しないとき、裁判所が承諾に代わる許可を与えられる。許可を財産上の給付に係らしめることができる |
| 更新がなく期間が満了した | 13条1項。借地権者は建物その他を時価で買い取るべきことを請求できる(建物買取請求権) |
| 第三者が建物を取得したが承諾が得られない | 14条。その第三者が地主に対して時価での買取りを請求できる |
旧借地法にも同じ趣旨の規定があり、4条で契約の更新がない場合の時価による買取請求、10条で第三者の買取請求が定められていた。ただし定期借地権では、22条により13条の買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。
更新料は決着していない
借地借家法の条文に更新料の規定はない。契約書に更新料の定めがある場合はその合意の問題になるが、定めが無いときに支払義務があるかどうかは見解が分かれており、はっきり決まっていない。相手が請求してきたからといって当然に義務があるとは限らないし、逆に払わなくてよいと断定できるものでもない。
承諾料は割合で示される
譲渡承諾料は借地権の時価の10パーセント程度と言われることがあるが、法律でパーセンテージが決まっているわけではなく当事者間の交渉で決まる、という示され方になっている(センチュリー21中央プロパティー、2026年8月6日確認)。金額を一点で見積もらず、借地権価格の何割という形のまま持っておく。
借地の実家を片づけるときの順番
借地権割合を調べたくなるのは、たいてい相続の直後か、実家を手放そうとした時点になる。順番を入れ替えると調べ直しが増える。
- 権利の性質を確定する。契約書、地代の支払記録、建物の登記事項証明書。借地権か使用貸借か、普通借地権か定期借地権かがここで決まる
- 契約の日付を見る。平成4年8月1日より前かどうかで、更新と建て替えの扱いが変わる
- 路線価図か評価倍率表で割合を確認する。相続なら課税時期は被相続人の死亡の日になるので、その年分の図を見る
- 評価と申告は税理士に渡す。補正と特例はここから先の領域になる
- 出口を並べる。地主に買ってもらう、第三者に売る、地主と同時に売る、更新せず建物買取請求に進む
相続の直後にやることの並びは 借地に建つ実家を相続したら|最初に確かめる3つと4つの出口、割合を使った税の計算の順番は 借地権の相続税評価|借地権割合で計算する順番 にそれぞれ分けてある。
よくある質問
路線価に数字だけあってアルファベットが無い
通達27のただし書で、借地権の取引慣行があると認められる地域以外にある借地権の価額は評価しないとされている。ただし地主側の貸宅地は、借地権の取引慣行がないと認められる地域では借地権割合を20パーセントとして計算する(国税庁 No.4613)。借地人側と地主側で扱いが違う。
借地権割合が高いほうが有利なのか
借りている側は、割合が高いほど相続財産として数えられる金額が大きくなる。貸している側は逆に底地の評価が下がる。有利不利は立場によって反転するので、割合の高さだけでは判断できない。
何年分の路線価図を見ればいいか
相続の場合、課税時期は被相続人の死亡の日になる(国税庁 No.4611)。今年の図ではなく、その課税時期の属する年分の路線価図を見る。数年前に亡くなった親の分を調べているなら、当時の年分に切り替える。
借地権割合で地代の適正額まで分かるか
分からない。借地権割合は相続税と贈与税の評価のために国税局長が定めたもので、地代の額を決める基準ではない。地代の増減については借地借家法11条が別に規定を置いている。
