相続手続きの流れ|期限がある順に並べた一覧
相続の手続きは数が多く、どれから手をつけるか迷います。
期限が決まっているものだけを並べると、7日・10日・14日・3か月・4か月・10か月・1年・3年の8段です。実家の土地がある場合、有名な相続登記の3年より先に、固定資産税の側の3か月が来ます(2026年7月31日確認)。
この記事の目次
期限がある手続きは8段。日付の早い順に並べる
相続の手続きのうち、法律や条例で期限が決まっているものは限られています。数え上げると8段です。それ以外は期限がなく、いつやっても違反にはなりません。まず期限があるものだけを、日付の早い順に置きます(2026年7月31日確認)。
| 期限 | 手続き | 起算日 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 7日 | 死亡届 | 死亡の事実を知った日 | 市区町村 |
| 10日/14日 | 年金受給権者死亡届 | 死亡日 | 年金事務所 |
| 14日 | 世帯主変更届 | 変更があった日 | 市区町村 |
| 14日 | 国民健康保険・介護保険の資格喪失 | 異動があった日 | 市区町村 |
| 3か月 | 相続の放棄・限定承認の申述 | 自己のために相続の開始があったことを知ったとき | 家庭裁判所 |
| 3か月 | 固定資産の現所有者申告 | 現所有者であると知った日 | 市区町村 |
| 4か月 | 準確定申告 | 相続の開始があったことを知った日の翌日 | 税務署 |
| 10か月 | 相続税の申告と納税 | 死亡したことを知った日の翌日 | 税務署 |
| 1年 | 遺留分侵害額の請求 | 相続の開始と侵害を知った時 | 相手方(調停は家庭裁判所) |
| 3年 | 相続登記の申請 | 不動産を相続で取得したことを知った日 | 法務局 |
| 3年の年末 | 空き家の特別控除を使う売却 | 相続開始日 | 税務署 |
実家と土地がある場合に見落とされやすいのが、3か月の行の二つ目です。相続登記の3年は広く知られるようになりましたが、固定資産税の側にも3か月の申告があることは、案内が届かないまま過ぎることがあります。
起算日は「亡くなった日」とは限らない
期限の数字だけを写して起算日を死亡日で統一すると、実際の締切とずれます。公式の案内では、起算日が三通りに分かれています。
- 死亡日から数えるもの。年金受給権者死亡届と、世帯主変更届(変更があった日から14日)
- 知った日から数えるもの。死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内です(法務省)。相続の放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内です(裁判所)
- 知った日の翌日から数えるもの。準確定申告は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内、相続税は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です(国税庁)
同居していれば三つはほぼ重なります。離れて暮らしていて連絡が遅れた場合は、知った日が後ろにずれる分、締切も後ろにずれます。ずれる向きは有利ですが、いつ知ったかを説明できる状態にしておく必要があります。
相続税の期限が土曜日・日曜日・祝日などに当たるときは、その翌日が期限とみなされます(国税庁 No.4205)。死亡届も、7日目が役所の閉庁日に当たる場合は翌開庁日までとしている自治体があります。1日単位で詰まっているときは、窓口の開庁日から先に調べます。
7日と14日。役所の窓口でまとまる分
最初の2週間に集中するのは、市区町村と年金事務所への届出です。葬儀と重なる時期なので、まとめて回れる形にしておくと往復が減ります。
死亡届(7日)
死亡の事実を知った日から7日以内。国外で亡くなったときは、その事実を知った日から3か月以内です。届出先は、亡くなった方の死亡地・本籍地、または届出人の所在地の市区町村役場のいずれかで、死亡診断書または死体検案書を1通添えます。届出人になれるのは親族、同居者、家主、地主、家屋管理人、土地管理人、後見人などです(法務省)。
実家が遠い場合、届出先を3か所から選べる点が効きます。本籍地まで出向かなくても、亡くなった場所の役場で受け付けてもらえます。
世帯主変更届(14日)
亡くなった方が世帯主で、その世帯に15歳以上の人が2人以上残っている場合に必要です。亡くなった日から14日以内。一人暮らしだった場合や、残った人が1人だけの場合は自動的に世帯主が決まるため、手続きは要りません(東京都中央区)。親が一人で実家に住んでいた形なら、この行は消えます。
健康保険と介護保険(14日)
国民健康保険は、異動があった日から14日以内に世帯主が届け出ることが法令で定められています(東京都大田区)。介護保険の被保険者証も同じ窓口で返します。書類の名称と持ち物は自治体ごとに少し違うので、死亡届を出すときに手続き一覧をもらうのが早い形です。
年金(10日・14日)
年金受給権者死亡届は、厚生年金が10日以内、国民年金が14日以内です。ただし日本年金機構にマイナンバーが収録されている方については、原則として提出が不要になっています(日本年金機構)。不要になるのは受給を止める届出だけで、未支給年金の請求は別に要ります。亡くなった月分までの年金は、生計を同じくしていた遺族が受け取れます。
3か月には二つある。相続放棄と、土地にだけかかる申告
相続の放棄・限定承認(3か月)
自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ申述します。費用は申述人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便料です。郵便料は裁判所ごとに異なります(裁判所)。添付書類は、被相続人の住民票除票または戸籍附票と申述人の戸籍謄本が共通で、申述人がどの立場かによって必要な戸籍が増えます。
実家じまいでこの期限が効くのは、建物や土地に費用がかかりそうな場合と、借金の有無が分からない場合です。3か月で調べ切れないときは、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てる方法があります。放棄が得かどうかの判断は弁護士と司法書士の領域なので、編集部は結論を書きません。
固定資産の現所有者申告(3か月)
土地または家屋の登記簿上の所有者が亡くなった場合、現所有者であると知った日から3か月以内に、固定資産現所有者申告書を市区町村へ提出する必要があります。令和2年度の地方税法改正(第384条の3)を受けて条例で義務化されたもので、3か月以内に所有権移転が完了していれば申告は不要です(横浜市)。正当な事由なく申告をしなかった場合、10万円以下の過料が科されることがあります(広島市)。
相続登記の期限は3年ですが、こちらは3か月です。登記が終わっていない間、その土地と家屋は法定相続人全員の共有として扱われ、全員が連帯して納税義務を負います。納税通知書を受け取る代表者を決める相続人代表者指定届を、現所有者申告書と兼ねた様式にしている自治体もあります(八王子市)。
賦課期日は1月1日です。亡くなった日が1月1日より前か後かで、翌年度の扱いと出す書類の名前が変わります。役所から案内が届く場合もありますが、届かないまま3か月が過ぎることもあるので、実家の所在地の税務課へ自分から確認するのが確実です。
相続放棄を考えている場合は順番に注意が要ります。固定資産税の支払いや代表者の届出をどう扱うかは判断が分かれるところなので、放棄の予定がある旨を先に役所へ伝え、弁護士か司法書士に確認してから動きます。
4か月と10か月。税の申告は二段ある
税の申告は、所得税と相続税の二段です。片方だけ知って動くと、もう片方の期限が過ぎます。
準確定申告(4か月)
亡くなった方に確定申告が必要だった場合、相続人が代わりに申告します。期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内。提出先は、被相続人の死亡当時の納税地の税務署長です。相続人が複数いる場合は、連署で提出しても、各人が別々に提出しても構いません(国税庁 No.2022)。
実家に関係するのは、親が不動産を貸していた場合と、年金以外に収入があった場合です。医療費が多くかかっていた年は、還付になることもあります。
相続税の申告と納税(10か月)
被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内。提出先は被相続人の住所地を所轄する税務署で、相続人の住所地の税務署ではありません(国税庁 No.4205)。
そもそも申告が必要かどうかは基礎控除で決まります。基礎控除額は、3,000万円に、600万円へ法定相続人の数を掛けた額を足したものです(国税庁 No.4152)。財産の合計がこれを超えるかどうかが分かれ目になります。
編集部は士業ではないため、税額の計算と遺産分割の判断はしません。実家と土地がある場合は評価が入るので、超えるかどうかの当たりを付ける段階で税理士に確認する、という線を引いています。小規模宅地等の特例のように、使えば下がる仕組みには申告が前提になるものがあり、要否の確認だけでも早い方が動きやすくなります。
1年と3年。話し合いと登記、それに売却の締切
遺留分侵害額の請求(1年)
遺言などによって最低限の取り分を受け取れなかった場合の請求です。相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年、相続開始の時から10年で権利が消滅します。注意点として、家庭裁判所に調停を申し立てただけでは相手方への意思表示になりません。調停の申立てとは別に、相手方へ権利を行使する意思表示をする必要があります。調停の申立費用は収入印紙1,200円分です(裁判所)。
相続登記(3年)
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内。2024年4月1日より前に相続した分は2027年3月31日までです。過料の扱いと自分で申請する手順は相続登記の義務化はいつまで?過料と自分でやる手順に分けて書いています。
実家を売るなら、締切は10か月ではない
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例を使う場合、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。特例そのものの適用期間は平成28年4月1日から令和9年12月31日までです。家屋は昭和56年5月31日以前に建築されたものが対象で、令和6年1月1日以後の譲渡で、家屋と敷地を相続または遺贈で取得した相続人の数が3人以上の場合、控除額は2,000万円までになります(国税庁 No.3306・2026年7月31日確認)。
売却を選ぶ可能性があるなら、実質の締切は10か月ではなく、この3年後の年末です。片付けと残置物の処分、解体するか現況で売るかの判断、買い手が付くまでの期間を積むと、3年は長くありません。要件に当たるかどうかの判定は税理士に確認する範囲です。
期限がない作業を、期限のある手続きより前に置く
期限のある手続きは、ほぼ全部が同じ材料を要求します。戸籍と、相続人が誰かの証明です。ここが遅れると全部が遅れるので、日付が付いていないのに最優先になります。
戸籍を集める
2024年3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになりました。必要な戸籍の本籍地が全国各地にあっても、1か所の窓口でまとめて請求できます(法務省)。ただし請求できる人と取れない戸籍に制限があります。使える場面と使えない場面は相続登記の記事で細かく整理しています。
本籍が分からないとき
戸籍は本籍が分からないと辿れません。調べ方は二つあります。一つは、住民登録のある市区町村で本籍記載の住民票の写しを請求する方法です。本人および同一世帯の人が、本人確認書類を持って請求できます(東京都中央区)。もう一つは、マイナポータルの「その他のわたしの情報」から戸籍関係情報を取得し、在籍本籍コードを総務省の全国地方公共団体コードと照合する方法です(マイナポータル)。
法定相続情報一覧図を1枚作る
戸籍が揃ったら、相続関係を一覧にした図を作って登記所へ申し出ます。登記官が民法に定められた相続関係と合っているかを確認し、認証文を付した写しを無料で交付します(法務局)。申出先は、被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地を管轄する登記所のいずれかで、郵送での申出もできます。
この1枚があると、相続登記、預貯金の払戻し、相続税の申告、年金の手続きで、戸籍の束の代わりに使えます。束を1か所へ出している間は他が止まりますが、写しを必要な枚数もらっておけば並行して進みます。交付は無料で枚数の制限もないので、戸籍集めの直後に作るのがいちばん効きます。
名義変更に期限はない。ただし口座は連絡した時点で止まる
預貯金、公共料金、固定電話、自動車の名義変更に法律上の期限はありません。ただし、金融機関が死亡を把握した時点で口座は動かなくなります。引き落としも止まるので、実家の電気や水道の支払いが宙に浮きます。
遺産分割が終わる前でも、一定額までは単独で払い戻せる仕組みがあります。口座ごとに、相続開始時の残高の3分の1へ自分の法定相続分を掛けた額まで。ただし同一の金融機関からの払戻しは、複数の支店に口座があっても合計150万円が上限です(民法909条の2・三井住友銀行の説明・2026年7月31日確認)。葬儀費用や当面の支払いを立て替えずに済ませたいときに使う制度です。
実家を空き家にする場合、公共料金は解約と継続の判断が分かれます。片付けや解体の作業で電気と水道を使うため、先に全部止めると作業側が困ります。電気と水道は作業が終わるまで残し、ガスは先に止める、という組み方になりやすい部分です。手順は実家の片付けが進まないときの順番と合わせて決めると往復が減ります。
実家が空き家になると、郵便物は転送できない
案内されないまま詰まる場面がここです。日本郵便では、亡くなった方あての郵便物を家族に転送することはできません。受取人が亡くなられた場合、本人あての郵便物は差出人へ返還される扱いになります(日本郵便・2026年7月31日確認)。
生きている人が引っ越すときの転居届とは別の扱いです。実家が空き家になり、相続人が遠方に住んでいる場合、次のことが起きます。
- 固定資産税の納税通知書や保険会社からの書類が実家に届き、誰も開けないまま溜まる
- 差出人へ返還されて、届いていたはずの案内が手元に来ない
- 郵便受けから溢れて、空き家であることが外から分かる状態になる
対処は転送ではなく、差出人ごとに送付先を変える形になります。固定資産税は、相続人代表者指定届を出すことで納税通知書の宛先が代表者に変わります(八王子市)。金融機関、保険、公共料金、通信は、それぞれに死亡の連絡と送付先の変更を伝えます。
どこから何が届いていたかを知るために、片付けの初回で郵便受けと直近の郵便物を一度全部見ておくと、契約の洗い出しが早くなります。通帳と保険証券が見つからない場合でも、郵便物から契約先を逆に辿れることがあります。
自分でやる範囲と、渡した方が早い範囲
編集部は士業ではありません。法令の解釈、税額の計算、遺産分割の判断はしません。ここでは、手を動かす場所と渡す場所の分け方だけを置きます。
自分でやりやすいもの。
- 市区町村と年金事務所への届出(7日・10日・14日の段)
- 戸籍の収集と、法定相続情報一覧図の申出
- 固定資産の現所有者申告と相続人代表者指定届
- 金融機関の名義変更、公共料金の解約
渡した方が早いもの。
- 相続税がかかるかどうかの判定と申告(税理士)
- 相続放棄や限定承認をするかの判断(弁護士・司法書士)
- 相続人の間で意見が割れている、連絡が取れない相続人がいる(弁護士)
- 不動産が複数ある、共有になっている、未登記の建物がある(司法書士)
費用は依頼先と財産の内容で幅が出ます。相続登記だけを司法書士に頼む場合と、戸籍の収集から名義変更まで一式を頼む場合では、金額の桁が変わります。見積もりは複数から取り、どこまでが含まれるかを比べる形が確実です。無料相談だけ使って、自分でやる範囲を決める使い方もできます。
片付けから土地の始末までを含めた全体の順番は実家じまいとは?進め方と費用の全体像を7ステップで解説に並べています。
相続手続きの流れについてよくある質問
何から始めればいいですか
死亡届と葬儀の後は、戸籍の収集です。期限のある手続きがどれも戸籍を要求するためです。並行して、実家の郵便受け、通帳、保険証券、納税通知書を集めて契約の一覧を作ると、後の名義変更で探し直さずに済みます。
期限を過ぎたらどうなりますか
手続きによって違います。相続の放棄は3か月を過ぎると原則として承認したものとして扱われます。相続税は延滞税や加算税の対象になります。固定資産の現所有者申告は、正当な事由がなければ10万円以下の過料が科されることがあります(広島市)。一方で、世帯主変更や金融機関の名義変更は、遅れても手続き自体は受け付けられるのが通常です。過ぎたことに気づいた時点で、窓口へ連絡するところから始まります。
相続人が遠方に住んでいて集まれません
戸籍は最寄りの窓口で広域交付を使える場合があり、法定相続情報一覧図の申出は郵送でもできます(法務局)。遺産分割協議書は、持ち回りで署名と押印を集める形が一般的です。全員が集まる必要があるのは、話し合いそのものの場面だけです。
親が元気なうちにできることはありますか
本籍と、契約している金融機関・保険・公共料金・通信の一覧を聞いておくと、後の作業がまるごと短くなります。不動産の権利証と固定資産税の納税通知書の保管場所も同じです。聞き出す進め方は実家の片付けが進まないときの順番に書いています。
