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農地が売れない5つの理由と、それでも手放す方法

農地が売れない5つの理由と、それでも手放す方法

農地を売りたいのに話が進まない状態には、はっきりした原因がある。

原因は5つに分かれ、それぞれ打ち手が違う。純農業地域の中田価格は10アールあたり104万4千円で30年連続の下落、下落理由の1位は買い手の減少そのものだった(全国農業会議所・2026年7月30日確認)。まず自分がどれに当たるかを分ける。

この記事の目次
  1. 「売れない」には3通りある。どれに当たるかで相談先が変わる
  2. 理由1|買い手が農家に限られる。ただし「50アール以上」の壁は2023年に消えた
  3. 理由2|宅地にして売る道が、区分によって最初から閉じている
  4. 理由3|買い手の母数が、25年で半分以下になった
  5. 理由4|値段が30年下がり続け、下落理由の1位が「買い手の減少」
  6. 理由5|土地の情報が確定していないと、その場で候補から外れる
  7. 放置を選ぶと出ていく金額。勧告を受けた遊休農地は固定資産税が約1.8倍
  8. 手放すための順番。窓口で確定させてから外に出す
  9. 売買も貸借も成立しないときに残る2つのルート
  10. 売れたときにかかる費用と税金
  11. よくある疑問への答え

「売れない」には3通りある。どれに当たるかで相談先が変わる

農地を動かそうとして返ってくる言葉は、だいたい3通りに収まる。原因も相談先も別なので、最初に切り分けておくと空回りが減る。

返ってきた言葉実際に起きていること最初に当たる窓口
農地は扱えない制度側の障害。買い手の資格、転用できない区分、権利関係の未整理市町村の農業委員会
値段が付かない制度は通るが需要がない。買う理由が相手の側にない複数の不動産会社、農業委員会とJAのあっせん
引き取り手がいない売買も貸借も成立しない。無償でも受け手が出ない農業委員会(非農地判断)、法務局(相続土地国庫帰属制度)
相談者相談者
不動産会社に電話したら、農地は扱っていませんと言われて話が終わりました。これは1番目でしょうか。
実家じまいナビ編集部実家じまいナビ編集部
断り文句だけでは判別できない。制度の壁で本当に扱えないのか、手間の割に手数料が出ないから受けないだけなのかは別の話になる。農業委員会で区分と許可の見込みを先に取ると、どちらなのかが分かる。

以下の5つのうち、1番目と2番目は制度側、3番目と4番目は需要側、5番目は書類側の問題になる。同じ売れないでも、効く手が違う。

理由1|買い手が農家に限られる。ただし「50アール以上」の壁は2023年に消えた

農地を農地のまま売るときは、農地法第3条の許可が要る。許可を受けずに結んだ売買契約は効力を生じない。買い手を自由に選べないところが、宅地との一番の違いになる。

ここで多くの解説が古いまま止まっている。かつて許可の要件には、取得後の耕作面積が都府県50アール(北海道2ヘクタール)以上になること、という下限面積要件があった。これは農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律(令和4年法律第56号)の施行により、2023年(令和5年)4月1日に廃止されている。各農業委員会が独自に定めていた別段の面積も同時に廃止された(御前崎市・2026年7月30日確認)。面積が小さいから買えない、という説明はもう当たらない。

廃止されたあとも残っている要件

  • 全部効率利用要件。申請地を含め、所有または借りている農地のすべてを効率的に耕作すること
  • 農作業常時従事要件。申請者または世帯員等が農作業におおむね年150日以上従事すること
  • 地域調和要件。申請地の周辺の農地利用に悪影響を与えないこと
  • 法人が取得する場合は、農地所有適格法人の要件を満たすこと

面積の下限は無くなったが、実際に耕す人であることの証明は残った。資産として持ちたいだけの人、値上がりを待ちたい人は今も買えない。買い手の母集団が農業をする人に限られる構造は変わっていない。

ひとつ例外に触れておくと、市街化区域内の農地は、農地以外に変える手続き(転用)が許可ではなく農業委員会への届出で足りる。ただし農地のまま権利を移す3条許可は、市街化区域でも必要になる。自分の農地がどこに位置しているかで、話の前提が変わる。

理由2|宅地にして売る道が、区分によって最初から閉じている

農地のまま売れないなら宅地にして売る、という発想は正しい。ただし転用できるかどうかは、持ち主の意思ではなく農地の区分で決まっている。農地法第5条の許可には立地基準があり、農地は5つに分けられる。

区分転用許可の扱いどういう農地か
農用地区域内農地(青地)原則不許可市町村の農業振興地域整備計画で農用地区域に指定された農地。転用するには先に区域から外す手続きが要る
甲種農地原則不許可(第1種よりさらに限定)市街化調整区域内の、特に良好な営農条件を備えた農地
第1種農地原則不許可おおむね10ヘクタール以上の一団の農地、土地改良事業の施行に係る区域内の農地など
第2種農地周辺の他の土地では目的を達成できない場合に限る市街地化が見込まれる区域内の農地
第3種農地許可される市街地の区域内、または市街地化の傾向が著しい区域内の農地

第3種に当たるなら、転用して売る道が現実的に開く。青地に当たるなら、まず農用地区域から除外する手続きから始まることになり、かかる時間の単位が変わる。区分は自分では判定できないので、農業委員会で確認する(区分と許可方針は高知県の公表資料・2026年7月30日確認)。

区分を通っても、もう一段ある

立地基準を通過しても、一般基準の審査が残る。転用の目的が確実に実現するか(資力・信用、他法令の許可の見込み、事業計画の妥当性)、周辺農地への日照や排水、土砂の流出などへの被害防除措置が取られているか、が見られる。買い手の計画が固まらない段階では、そもそも申請ができない。農地の売買で買い手が先に決まらないと動かないと言われるのは、この順序による。

許可を取らずに埋めたり停めたりしない

無許可の転用は農地法違反になる。是正指導、工事その他の行為の停止等の勧告、原状回復命令という順で処分が進み、悪質な事案は告発される。罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金と定められている(農地法第64条・第67条/農林水産省・2026年7月30日確認)。行政代執行になった場合、原状回復に要した費用は違反者の負担になる。

資材置場にしていた、砂利を敷いて車を停めていた、という段階でも転用に当たる可能性がある。売る前に現況を見てもらったほうが早い。手続きの中身は農地転用とは?費用と期間、許可が下りる条件にまとめてある。

理由3|買い手の母数が、25年で半分以下になった

制度の条件を全部クリアしても、買う人がいなければ売れない。買い手の母集団そのものが縮んでいる。

個人経営体で、ふだん仕事として主に自営農業に従事している基幹的農業従事者は、2000年の240万人から2025年には102万人になった。平均年齢は67.6歳で、年齢構成のピークは70歳以上の層にある。50代以下は22.7万人しかいない(農林水産省「農業経営をめぐる情勢について」令和8年1月・2026年7月30日確認)。

  • 2000年 240万人
  • 2010年 205万人
  • 2015年 176万人
  • 2020年 136万人
  • 2025年 102万人(概数値)

減り方は加速している。2015年から2020年、2020年から2025年はいずれも2割以上の減少で、2000年以降で最大の減少割合になった。

残った担い手も、買うより借りる

規模を広げている経営体はある。ただし広げ方は購入ではなく借入が主流で、制度もその方向に寄せられた。2025年(令和7年)4月から、農業経営基盤強化促進法に基づく利用権設定(当事者どうしの相対の貸借)は廃止され、農地の貸借は原則として農地バンク(農地中間管理機構)を通す形に一本化されている。農地法第3条に基づく貸借は引き続き使える(長岡京市・2026年7月30日確認)。

借り手の側から見ると、借りれば固定資産税も相続も背負わずに耕せる。売り手が買ってほしいと言っても、相手には買う理由がない。ここが、値段を下げても解決しない部分になる。

相談者相談者
隣の農家さんが規模を広げていると聞いたので、声をかけてみようと思っています。
実家じまいナビ編集部実家じまいナビ編集部
悪くない。ただし最初から売却の話にしないほうが通りやすい。まず借りてもらえるかを聞いて、耕作が続く形を作ってから譲渡の相談に移ると、相手の負担が段階的になる。あっせんの窓口は農業委員会にもある。

理由4|値段が30年下がり続け、下落理由の1位が「買い手の減少」

価格の側も見ておく。全国農業会議所の令和6年田畑売買価格等に関する調査(2025年3月21日公表)が全国の実勢を追っている。

区分(10アールあたり)中田中畑
純農業地域(農用地区域内)104万4千円(前年比 △1.2%)77万1千円(同 △1.0%)
都市的農業地域(市街化調整区域の農用地区域)281万1千円(同 △0.8%)267万1千円(同 △0.7%)

純農業地域は平成7年以降30年連続、都市的農業地域は32年連続の下落になっている。最高値だった年と比べると、純農業地域の中田は47.8%、中畑は44.0%下がった。都市的農業地域はさらに大きく、中田が74.9%、中畑が76.2%の下落になる。

下落の理由として最も多く挙がったのが農地の買い手の減少や買い控えで、純農業地域では中田35.3%、中畑38.1%を占めた。次いで後継者不足(中田18.7%)、米価など農産物価格の低迷(中田13.0%)と続く(同調査・2026年7月30日確認)。値段が下がっている原因が、そのまま売れない原因と同じところにある。

全国平均より地域差のほうが大きい

同じ調査のブロック別を見ると、純農業地域の中田価格は10アールあたりで東海が200万円、近畿が178万6千円、関東が138万8千円である一方、北海道は23万8千円、東北は49万円、中国は66万2千円だった。前年からの下げ幅は九州(中田 △2.0%)と東北(同 △1.6%)が大きい。

自分の農地がいくらになるかは、この平均からは出ない。農業委員会が地元の売買実例を持っている場合があるので、まずそこで聞くのが早い。そのうえで、転用が見込める区分にある農地なら、宅地見込みとしての査定額も並べて見ておくと判断材料が増える。

農地のままの値段と、転用を前提にした値段は別物になる

第2種・第3種に当たる可能性がある農地なら、査定を複数社から取って幅を把握しておく。相場を知るためだけの利用でも問題ない。数字が出てこない場合は、需要がないのか制度で止まっているのかの切り分けにも使える。

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理由5|土地の情報が確定していないと、その場で候補から外れる

買い手も仲介も、最初に確認するのは3点になる。誰の土地か、どこからどこまでか、何に使えるか。ここが1つでも空欄だと、話は保留になって戻ってこない。

相続登記が済んでいない

名義が亡くなった親のままだと、売買契約の当事者が決まらない。相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内の申請が必要になった。正当な理由なく怠ると、10万円以下の範囲で裁判所が過料を決定することがある。施行日より前に相続したことを知っている未登記の不動産は、2027年(令和9年)3月31日までが期限になる(法務省・2026年7月30日確認)。

境界が決まっていない

古い農地は境界杭が失われていることが多い。確定測量には費用と時間がかかるうえ、隣接地の所有者が分からないと止まる。後で出てくる相続土地国庫帰属制度では、境界が明らかでない土地は申請自体ができない却下要件になっている。売るにしても手放すにしても、ここは避けて通れない。

登記の地目と現況が食い違っている

農地かどうかは、登記地目ではなく現況で判断される。地目が畑でも耕されていれば農地であり、地目が原野でも耕作目的なら農地として扱われる。逆に、長年放置して山林の様相になっている土地は、農業委員会が非農地と判断する余地が出てくる。この点は後半で効いてくる。

水利費と土地改良区

土地改良区の区域内にある農地は、転用の際に地区除外や決済金の手続きが要る場合がある。金額と要否は改良区ごとに違うので、農業委員会で改良区の有無を確認したうえで、改良区に直接聞く。買い手が付いてから判明すると、価格の交渉がやり直しになる。

実家じまいナビ編集部 実家じまいナビ編集部の実体験

窓口を回った順番だけは同じだった

実家じまいナビの運営者が相続したのは農地ではなく、沖縄の傾斜地になる。売却、寄付、国庫帰属と出口をひとつずつ当たったが、どれも成立しないまま今も持っていて、固定資産税を年約7万円払い続けている。

その過程ではっきりしたのは、外に出す前に確定させておくものが決まっている、ということだった。誰の名義か、どこまでが自分の土地か、何に使えるか。この3つが空欄のまま相談に行くと、どの窓口でも同じところで止まる。逆に3つが埋まっていれば、断られるにしても理由がはっきりする。理由がはっきりすれば、次に当たる先が選べる。

放置を選ぶと出ていく金額。勧告を受けた遊休農地は固定資産税が約1.8倍

売れないから置いておく、という選択にも値段が付いている。

遊休農地の課税強化

農業委員会は毎年、農地の利用状況調査(農地パトロール)を行い、遊休農地と判定した農地の所有者に利用意向調査をする。農地バンクへの貸付けの意思を示さず、自分でも耕作を再開しない状態が続くと、農地中間管理機構と協議すべき旨の勧告が行われる。1月1日時点で勧告を受けていると、翌年度から固定資産税の課税が強化される。

仕組みは評価の計算にある。通常の農地の固定資産税の評価額は売買価格に0.55(限界収益修正率)を乗じて出すが、勧告を受けた遊休農地はこれを乗じない。結果として約1.8倍になる(農林水産省「遊休農地の課税の強化」・2026年7月30日確認)。対象は農業振興地域内の農地に限られる。

同じ資料には、外れる道も書かれている。利用状況調査で遊休農地が解消されたと確認された場合、農地バンクが借り入れた場合、裁定で農地中間管理権を取得した場合のいずれかで勧告は撤回され、翌年度以降の課税強化は解除される。利用意向調査の段階で貸付けの意思を表明していれば、機構側の事情で貸付けが成立しなくても勧告は行われない。すでに森林の様相を呈していて農業委員会が非農地と判断した場合も、勧告の対象外になる。

税金以外に出ていくもの

  • 草刈りなどの管理。自分で通えない距離なら委託費がかかる
  • 水利費や土地改良区の賦課金。耕作していなくても賦課される区域がある
  • 近隣とのやり取り。倒木、雑草、害虫、不法投棄の始末は所有者に来る

相続放棄で逃げられるかというと、農地だけを選んで放棄することはできず、他の財産も含めた放棄になる。放棄したあとも、次の管理者が決まるまでの管理責任が残る場合がある。この整理は農地は相続放棄できる?放棄後も残る管理義務の話で扱っている。

手放すための順番。窓口で確定させてから外に出す

順番を逆にすると、同じ話を何度もやり直すことになる。制度側の答えを先に取って、そのあとで市場に出す。

  1. 農業委員会で区分と見込みを聞く。農用地区域内かどうか、立地基準ではどの区分か、転用許可の見込み、非農地判断の可能性、あっせんの実績。ここで売れない型が決まる
  2. 名義と境界を埋める。相続登記の申請、公図と登記事項証明書の取得、境界の確認。測量が要るかどうかは買い手の用途と登記の内容で変わるので、必要性を確認してから発注する
  3. 農地のまま売る道を当たる。農業委員会とJAのあっせん、地域の担い手、農地バンクへの貸付け。貸借は2025年4月から原則として農地バンク経由になっている
  4. 転用を前提にした売却を当たる。第2種・第3種に当たるなら、買い手の用途が決まらないと5条許可の申請ができないので、用途込みで買い手を探す
  5. どれも成立しないなら、農地の枠から出す道を検討する。非農地判断と、相続土地国庫帰属制度
段階窓口主にかかるもの
区分と見込みの確認市町村の農業委員会相談は無料の自治体が多い
相続登記法務局(司法書士に依頼可)登録免許税と、依頼する場合の報酬
境界の確認・測量土地家屋調査士面積と現況で幅が大きい。複数見積もりで比べる
あっせん・貸付け農業委員会、JA、農地バンク窓口の相談は無料のことが多い
転用許可の申請農業委員会経由で都道府県知事等行政書士に頼む場合の報酬は事務所差が大きいので見積もりを取る
国庫帰属の申請法務局(本局)審査手数料14,000円/筆と負担金

期間も窓口で聞ける。市街化区域内の農地の転用は届出で足りるが、市街化調整区域では許可になり、農用地区域からの除外が必要な場合はさらに前段が積み上がる。どれくらいかかるかは地域と案件で違うので、農業委員会に直接聞くのが確実になる。売り方そのものの整理は農地を売る2つの方法|農地のままと転用してからに分けて書いている。

外に出す前に、値段が付くのかを確かめる

窓口で区分と見込みを取ったら、次は市場側の答えを取る。査定を複数社に同時に出すと、農地として見るのか転用見込みで見るのかの差が数字に出る。無料で、依頼したからといって売らなければならないわけではない。

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売買も貸借も成立しないときに残る2つのルート

1. 非農地判断で、農地の枠から出す

登記地目が田や畑でも、現況が農地でなくなっている土地は、農業委員会の非農地判断(非農地証明・現況確認証明)を経て地目変更登記ができる場合がある。農地でなくなれば農地法の許可は要らなくなり、買い手の資格の制限も外れる。

ただし条件は緩くない。姫路市が公表している確認要件では、農地に該当しない状態が20年を超える期間続いていると認められること、農地法第51条第1項の違反転用の処分対象となった土地でないこと、農業振興地域の農用地区域内の土地でないこと、が挙げられている。20年以上の経過は、建物の登記図面や20年以上前の航空写真などで客観的に示す必要がある(姫路市・2026年7月30日確認)。

基準は自治体ごとに違い、法律ではなく行政の運用として行われている。荒れているから通る、という性質のものではない。まず窓口で対象になり得るかを確認する。無断で転用してから証明を求める、という順序は通らない。

2. 相続土地国庫帰属制度で、国に引き取ってもらう

相続または相続人への遺贈で取得した土地に限り、法務大臣の承認を受けて所有権を国庫に帰属させられる制度で、2023年4月27日に始まった。売買で自分が買った土地には使えない。

  • 審査手数料は土地1筆あたり14,000円。取り下げても却下されても返還されない
  • 負担金は、国有地の種目ごとに10年分の標準的な管理費用を考慮して算定する。田・畑は定額で原則20万円、市街化区域または用途地域が指定されている地域内にある場合は面積に応じた算定になる
  • 隣接する2筆以上で種目が同じなら、申出により1つの土地とみなして負担金を算定できる

申請自体ができない却下要件には、建物がある土地、担保権や使用収益権が設定されている土地、他人の利用が予定されている土地、土壌汚染がある土地、境界が明らかでない土地や所有権の存否・範囲に争いがある土地が並ぶ。承認されない不承認要件には、一定の勾配・高さの崖があって管理に過分な費用がかかる土地、管理を阻害する有体物が地上にある土地などがある(法務省・2026年7月30日確認)。

農地は、この制度で最も多く申請されている地目になっている

法務省の統計(令和8年6月30日現在の速報値)では、申請件数の総数5,698件のうち、地目別で最も多いのが田・畑の2,226件だった。宅地1,973件、山林868件、その他631件と続く。帰属が認められた2,885件の種目別内訳は、宅地1,073件、農用地925件、森林193件、その他694件になっている。

同時に、取下げが1,063件、却下83件、不承認93件も出ている。申請すれば通る制度ではない。それでも、田・畑が申請の最多地目であり、農用地として900件を超える土地が実際に国庫へ帰属している。売れない農地の出口として現実に機能している数字になる。

相談者相談者
負担金20万円を払ってまで手放す意味があるのか、迷います。
実家じまいナビ編集部実家じまいナビ編集部
払い切りか、払い続けるかで比べる。負担金は承認を受けたときの一度きりで、固定資産税と管理費は持っている限り毎年出ていく。次の代に渡すかどうかも判断材料になる。金額と年数を紙に書いて並べると、感情を挟まずに比べられる。

売れたときにかかる費用と税金

譲渡所得

売却益には所得税と住民税がかかる。他の所得と分けて計算する分離課税で、税率は所有期間5年超の長期譲渡が所得税15%・住民税5%、5年以下の短期譲渡が所得税30%・住民税9%になる(農林水産省「農地を売った場合の税金」・2026年7月30日確認。このほかに復興特別所得税がかかる)。時価の2分の1に満たない低額で譲渡した場合も、時価で売ったものとみなして課税される点は押さえておく。

農地に固有の特別控除

農用地区域内の農地には、集積・集約化を促すための特別控除がある。

控除額対象になる譲渡
800万円農地中間管理事業の推進に関する法律に基づく農用地利用集積等促進計画、農業委員会のあっせん等により農用地区域内の農地を譲渡した場合/農用地区域内の農地を農地中間管理機構に譲渡した場合
1,500万円農業経営基盤強化促進法に基づき市町村長が通知する農地中間管理機構との買入協議により、農用地区域内の農地を機構に譲渡した場合
2,000万円農業経営基盤強化促進法に基づく地域農業経営基盤強化促進計画の特例により、農用地区域内の農地を機構に譲渡した場合
5,000万円農地が土地収用法等により買い取られる場合 など

自分で相手を見つけて直接売ると、これらは使えない。あっせんや機構を通す順番を先に踏むかどうかで、手取りが変わることがある。適用の可否と実際の税額は個別の事情で決まるので、税理士か税務署で確認する。編集部は士業ではないので、ここで税額の計算はしない。

仲介手数料

2024年(令和6年)7月1日から、低廉な空家等(売買代金800万円以下の宅地または建物)の売買の媒介について、報酬の上限が33万円(税込)に引き上げられた。国土交通省告示第949号による改正で、宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方も同日から改正されている。特例を使うには、媒介契約の締結に際してあらかじめ上限の範囲内で報酬額を説明し、依頼者と合意することが必要とされている(高知県による国土交通省改正の案内・2026年7月30日確認)。

安い農地ほど、売買代金に対する手数料の比率は高くなる。100万円で売れて手数料が33万円になり得る、という意味になるので、媒介契約を結ぶ前に金額を確認しておく。売主と買主の双方から受け取れる仕組みである点も、知っておくと交渉がしやすい。

そのほかにかかるもの

  • 転用許可の申請を行政書士に頼む場合の報酬。事務所と案件で幅が大きいので、複数から見積もりを取って比べる
  • 測量・境界確定の費用。面積と隣接地の状況で変わる
  • 売買契約書の印紙税と、登記にかかる費用
  • 土地改良区の決済金。区域内の農地を転用する場合に生じることがある

よくある疑問への答え

知り合いの農家に直接売ってもいい?

当事者どうしで話をまとめるのは自由だが、農地法第3条の許可は必要になる。許可を受けない売買は効力を生じない。契約の前に農業委員会に相談して、相手が許可要件を満たすかを確認する。

無償であげるなら許可は要らない?

要る。売買でも贈与でも、農地の権利が移る以上は3条許可の対象になる。無償だから簡単になるわけではない。

自治体は引き取ってくれる?

寄付を受けるかどうかは自治体の判断で、公用・公共用の具体的な利用計画がなければ受け付けないところが多い。扱いは自治体ごとに違うので、資産管理の担当課に直接聞くのが早い。断られた場合の理由は、次の手を選ぶ材料になる。

太陽光発電の用地にすれば売れる?

農地に発電設備を設置するのも転用に当たるので、区分の壁は同じようにかかる。農用地区域内なら原則不許可で、除外の手続きから始まることになる。支柱を立てて上部で発電しながら下で営農を続ける営農型は、一時転用の許可という別の枠組みになる。買い手が事業者でも、許可の見込みがなければ話は進まない。

市民農園として貸すのは?

特定農地貸付けや農園利用方式など、複数の枠組みがある。要件と手続きは市町村と農業委員会が窓口になるので、まず地元で貸付けの実例があるかを聞く。人が入って草が刈られる状態になれば、遊休農地の判定からも外れる。

引き取り業者に費用を払って処分するのは?

有償で土地を引き取るサービスはある。ただし前払いを求められる形態は確認が要る。契約書で所有権移転の時期、費用の内訳、移転登記まで誰が責任を持つのかを確かめる。国庫帰属の負担金と比べて、金額と確実性のどちらが有利かを並べたうえで判断する。

売れないまま置いておくと、いつか固定資産税が上がる?

農業振興地域内で遊休農地の勧告を受けた場合は上がる。勧告が撤回されれば、翌年度以降は解除される。市街化区域内の農地は評価の仕組み自体が別なので、まず課税明細で、自分の農地がどの区分で課税されているかを確認する。

結局、最初にどこへ行けばいい?

市町村の農業委員会になる。区分、許可の見込み、あっせんの実績、非農地判断の可能性が一度に分かる。そこで型が決まってから、不動産会社や法務局に持っていくと、同じ説明を繰り返さずに済む。

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実家じまいナビ編集部

実家じまいナビ編集部 |沖縄に売れない土地を持つ当事者が運営

実家じまいナビ編集部です。運営者自身が沖縄に売れない土地を相続し、出口が見つからないまま維持している当事者です。役所と業者を回って分かった順番、実際にかかる費用、先に知っておけば防げたことを記録しています。法令の解釈が必要な部分は断定せず、調べ方と相談先を示す方針です。

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