空き家のリフォーム補助金|移住や賃貸で使える制度

空き家のリフォームに補助金が出ると聞いても、自分の家が対象なのかが分からないまま止まってしまう。そこで詰まる人は多い。
結論として、個人が直接申請できる制度はほぼ市区町村側にある。国の制度は自治体か工事業者を通す形が中心で、金額は工事費の2分の1から3分の2、上限50万〜150万円あたりが目安になる(2026年7月31日時点)。
この記事の目次
空き家のリフォーム補助金は3つの層に分かれている
「空き家 リフォーム 補助金」で出てくる制度は、実際には性格の違う3つの層が混ざっている。この層を分けないまま探すと、国の大きな金額の記事を読んで期待し、自分の市には何もなかった、という結末になりやすい。
| 層 | 誰が申請するか | あなたとの関わり方 |
|---|---|---|
| 国の制度(国土交通省など) | 市区町村、または登録された工事業者・民間事業者 | 直接は申請できないことが多い。自治体の制度の財源として間接的に効く |
| 都道府県の制度 | 市区町村、民間事業者、一部は所有者 | 市区町村の制度を上乗せ・補完する位置づけ |
| 市区町村の制度 | 空き家の所有者・購入者・賃借人 | 個人が窓口に行って申請できる本命 |
探す順番を間違えないためにも、まず押さえておきたいのは、あなたが実際に手を動かす相手は物件のある市区町村の担当課だという点になる。国の名前が付いた制度を調べる時間より、市区町村の要綱を1本読む時間のほうが結果に直結する。
なお、全国の空き家は900万戸、空き家率13.8%で過去最多となっており、このうち賃貸用でも売却用でも別荘でもない、いわゆる放置に近い空き家が385万戸を占める(総務省・令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計。2026年7月31日確認)。制度が年々増えているのは、この385万戸のほうを動かしたいという事情による。
国の制度は、個人が直接受け取る形になっていない
国の制度を3つに絞って、申請者が誰なのかという視点で整理する。金額の大きさより、自分が申請の主体になれるかどうかが実務では効いてくる。
空き家再生等推進事業(活用事業タイプ)
空き家住宅や空き建築物を宿泊施設、交流施設、体験学習施設、創作活動施設、文化施設などに改修する費用を対象とする制度で、国費負担割合は事業主体が地方公共団体の場合で2分の1。民間が実施する場合は国費3分の1・地方公共団体3分の1・民間3分の1という負担割合になる。1戸・1棟から事業が可能で、空き家等の取得費(用地費を除く)や所有者を特定するための経費も対象に含まれる(国土交通省「空き家再生等推進事業活用のススメ」および同事業ページ。2026年7月31日確認)。
読み取るべきなのは、事業主体が地方公共団体または民間事業者だという点になる。自分が住むための水回り改修に個人が直接申請する制度ではない。
住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業(セーフティネット住宅の改修)
高齢者や低額所得者、障害者、子育て世帯など、住宅の確保に配慮が必要な人向けの賃貸住宅として登録することを条件に、改修費を補助する制度。対象工事はバリアフリー改修、耐震改修、間取り変更、子育て世帯対応改修、省エネ改修、防音工事など13項目が列挙されている(住宅保証支援機構「セーフティネット専用住宅改修事業」令和8年度ページ。2026年7月31日確認)。
補助率と1戸あたりの限度額はその年度の交付申請要領で決まるため、金額はここでは断定しない。押さえておきたいのは、改修費の補助を受けた登録住宅は10年以上、入居者を要配慮者に限定する専用住宅として管理する必要があるという点になる(国土交通省「住宅セーフティネット制度Q&A」。2026年7月31日確認)。
住宅省エネ2026キャンペーン
空き家専用の制度ではないが、改修後に住む・貸すのであれば工事内容によって乗る可能性がある。リフォーム側は4事業で構成され、先進的窓リノベ2026事業が1戸あたり上限100万円、みらいエコ住宅2026事業が住宅の種類に応じて40万〜100万円という設定になっている。交付申請の受付は予算上限に達するまでで、遅くとも2026年12月31日まで(住宅省エネ2026キャンペーン公式。2026年7月31日確認)。
ここで見落とされやすいのが申請者の規定で、公式サイトには手続きを行うのは工事施工者等であり、工事発注者が自ら行うことはできないと明記されている。つまり、この制度に登録している業者に発注しないと使えない。
本命は市区町村の制度。実際の金額と条件を3市で見る
まとめサイトの一覧は金額だけが並んでいて条件が落ちていることが多い。実際の要綱がどう書かれているかを、性格の違う3つの自治体で確認した(いずれも各市公式サイト。2026年7月31日確認)。
| 自治体・制度名 | 補助率と上限 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 木更津市 空家リフォーム助成制度 | 住居利用は対象経費の2分の1・上限50万円/高齢者サロン等の特定施設は3分の2・上限150万円。住居は転入で10万円、児童1人につき20万円(上限60万円)などの加算あり | 空家バンク登録済みの空家であること。市内に本店・支店・営業所を持つ施工業者との請負契約、または本人によるDIY工事。市税の滞納がないこと。5年以上住居または特定施設として利用 |
| 富士市 空き家リフォーム支援補助金 | 工事費の2分の1・上限80万円。市外からの転入は20万円加算、媒介手数料は5万円加算(加算はいずれか一方) | 空き家バンク登録物件で、売買または賃貸借契約により入居者が決まっていること。市内居住者は5年以上、市外転入者は10年以上の居住意思。3親等以内の親族との契約は対象外。市税の滞納がないこと |
| 北杜市 空き家バンク活用促進リフォーム補助金 | 所有者の補助と購入者・借受者の補助を合算して上限100万円まで | 空き家バンク登録物件。所有者の家財処分は登録から2年以内、賃貸用リフォームは登録から1年以内、購入者・借受者は契約締結から1年以内。申請前に実施した工事は対象外 |
3市を並べると、金額の幅より条件の形が似ていることのほうが見えてくる。空き家バンクへの登録、市内業者の利用、市税の滞納がないこと、そして一定期間の利用継続。この4つはかなりの確率で出てくる。
富士市の実施期間は2023年4月1日から2027年3月31日まで、木更津市の令和8年度分は2026年4月1日から受付開始で予算に達し次第終了となっている。制度は年度で組み替えられるため、記事や要綱の日付を必ず見てほしい。
金額より先に効いてくるのは「入口の条件」
補助率と上限額だけを見て動くと、条件のところで落ちる。上の3市から共通して読み取れる入口の条件を、落ちやすい順に並べる。
- 空き家バンクへの登録が前提になっている。木更津市も富士市も北杜市も、バンク登録物件であることが条件に入っている。先に一般の不動産仲介だけで話を進めると、登録の順番を取り戻せず使えなくなる場合がある
- 市内の施工業者に限定される。木更津市は市内に本店・支店・営業所を持つ業者との契約が条件。相見積もりの相手も自然と地元に絞られる
- 親族間の売買・賃貸は除外されることがある。富士市は3親等以内の親族との契約を対象外としている。実家を子や兄弟に貸す形を想定していた場合、ここで前提が崩れる
- 市税の滞納がないこと。これは3市とも条件に入っている。固定資産税の払い忘れが残っていないかを先に確認しておきたい
- 申請前に着工していないこと。北杜市は申請前に実施したものは対象外と明記している
条件は自治体ごとに違う。ここに挙げたのは3市を読んだ結果であり、あなたの物件がある市区町村では別の条件が付く。要綱そのものを1本読むのが確実になる。
自分が使える制度を探す順番
制度名から探すと迷路になる。立場から探すと、見る場所が3つくらいに絞れる。
1. 自分がどの立場で改修するのかを先に決める
同じ空き家でも、所有者のまま貸すのか、所有者のまま自分や家族が住むのか、売る前に手を入れるのか、買った人が直すのかで、対象になる制度が変わる。富士市のように所有者と購入者と賃借人のいずれもが申請できる制度もあれば、北杜市のように所有者側と購入者・借受者側で申請できる中身と期限が分かれている制度もある。
2. 物件のある市区町村の公式サイトを見る
検索するなら「市区町村名 空き家 リフォーム 補助金」。まとめサイトではなく、lg.jp ドメインの市の公式ページと、そこに貼られている交付要綱のPDFを開く。PDFの冒頭にある告示日と、ページの更新日を見れば、その情報が今年度のものかどうかが分かる。
3. 都道府県の空き家情報サイトを見る
都道府県が市区町村の制度を横断してまとめている場合がある。東京都は空き家情報サイトに補助金一覧のページを設け、都の空き家家財整理・解体促進事業や、区市町村による支援制度への入口を用意している(東京都住宅政策本部 東京都空き家情報サイト。2026年7月31日確認)。都道府県単位で似た窓口がある地域も多い。
4. それでも見つからないときは別枠を探す
空き家という名前が付いた制度がなくても、耐震改修、省エネ改修、移住定住支援、三世代同居、子育て世帯向けといった別の枠で改修費が出る自治体がある。空き家という言葉で絞りすぎると見落とす。
まとめサイトの金額を鵜呑みにしないでほしい。前年度の要綱のまま更新されていない一覧記事は多く、上限額だけが独り歩きしている。
申請の順番。ここを外すと全額自腹になる
空き家リフォームの補助金で最も多い取りこぼしは、条件を満たしていたのに順番を外したというものになる。おおまかな流れは次のとおり。
- 市区町村の担当課に事前相談。制度の有無、今年度の受付状況、残り予算を確認する
- 空き家バンクへの登録など、前提条件を先に整える
- 対象になる業者から見積もりを取る。市内業者限定や登録事業者限定の縛りがないかを確認
- 工事着手前に交付申請。富士市は工事着手前の申請を必須としており、申請前に着工すると対象にならないと明記している
- 交付決定の通知を受けてから契約・着工
- 工事完了後に実績報告。期限が決まっている。藤岡市の例では、工事完了日から1か月を経過した日か、交付決定を受けた年度の3月15日のいずれか早い日までとされている(藤岡市公式サイト。2026年7月31日確認)
- 額の確定通知を受けて請求、入金
ここで押さえておきたい点が2つある。
1つは、補助金は原則として後払いだということ。工事代金はいったん全額を自分で支払う。上限80万円の制度を使うつもりでも、工事の時点では全額分の資金が必要になる。
もう1つは、年度の予算枠で締め切られること。木更津市の令和8年度分は4月1日受付開始で予算に達し次第終了となっている。年度の後半に相談に行った時点で今年度分は終了です、と言われる可能性がある。動くなら年度の頭が有利になる。
補助金を受けたあとに残る縛り
補助金は工事の割引券ではない。受け取った側には、その空き家を一定期間その用途で使い続ける義務が残る。ここを知らずに申請すると、あとで出口をふさぐことになる。
- 木更津市:補助を受けてリフォームしたものは5年以上、住居または特定施設として利用すること。5年以上利用しなかった場合、経過年数に応じて補助金の返還を命じられることがある
- 富士市:市内居住者は5年以上、市外転入者は10年以上の居住意思が要件
- セーフティネット住宅の改修補助:改修費の補助を受けた登録住宅は10年以上、入居者を要配慮者に限定する専用住宅として管理する必要がある
言い換えると、補助金を使って直した瞬間、その物件は数年から10年、売る・別の用途に変える・空けたままにするという選択が取りにくくなる。相続した実家について、直して貸すか、直さずに売るかで迷っている段階なら、この縛りは判断材料そのものになる。
50万円の補助を受けるために、5年間の処分の自由を手放す。それが合う人と合わない人がいる。合うのは、その地域に関わり続ける理由がある人、あるいは自分か家族が住む予定がある人になる。
補助金が出ても合わない場合の見分け方
補助金の有無より前に、そもそも直して回収できるのかという計算がある。空き家の改修費は、傷み方と工事の範囲で大きく変わるため、一点の金額では出せない。目安として使えるのは、市区町村の要綱に書かれている補助対象の下限と上限のほうになる。
木更津市の住居利用で上限50万円、富士市で上限80万円、北杜市で合算上限100万円。補助率は2分の1から3分の2。この設計から逆算すると、自治体が想定している工事規模は100万〜200万円台が中心だと読める。水回り一式に加えて屋根と外壁まで踏み込む規模になると、補助はあくまで工事費の一部にしかならない。
回収年数の出し方
賃貸に出す前提なら、判断は次の式で足りる。
- (改修費 − 補助額)÷(想定家賃 × 12か月 − 年間の維持費)= 回収にかかる年数
- 年間の維持費には、固定資産税、火災保険、管理委託料、修繕の積み立てが入る
- そこに空室期間を見込む。地方の戸建賃貸は、埋まるまでに数か月かかることを前提にしておきたい
この年数が、補助金の利用継続義務の年数(5年や10年)より長くなるなら、直すという選択は慎重に見たほうがいい。義務期間が終わる前に回収できない計算だからになる。
毎年出ていく分は、直さなくても止まらない
編集部は沖縄の傾斜地を相続し、売却も含めて出口を検証したものの成立せず、現在も保有している。実額として書けるのは固定資産税が年約7万円という一点だけだが、この毎年出ていく金額は、建物に手を入れても入れなくても止まらない。空き家の判断で効いてくるのは工事費の総額よりも、直したあと何年その状態を維持するのかという時間軸のほうだった、というのが検証して残った実感になる。
相場は幅で見て、回収年数で判断する。この順番を崩さないほうが、補助金の金額に引っ張られずに済む。
直す以外の出口と並べて比べる
リフォーム補助金を調べている時点で、直すという答えが半分決まっていることが多い。ただ、補助金の縛りを踏まえると、次の3つを同じ表に並べてから決めたほうがいい。
| 出口 | 使える制度 | 残る縛り |
|---|---|---|
| 直して貸す・住む | 市区町村の空き家リフォーム補助金、条件が合えば住宅省エネ2026キャンペーン | 5〜10年の利用継続義務。返還のリスク |
| 直さずに売る | 改修の補助金は使えない。譲渡所得の特例は要件次第 | なし。ただし手取りは相場に左右される |
| 解体して土地にする | 自治体の解体・除却補助金 | 住宅用地の特例が外れ、固定資産税の負担が変わる |
それぞれの詳細は別記事にまとめてある。実家を残す場合のリフォーム費用と、貸すという選択では改修と賃貸化の費用側を、実家じまいで使える補助金の探し方|国と自治体の制度ではリフォーム以外も含めた制度の探し方を、空き家の解体補助金はいくら出る?条件と申請の順番では解体側の補助金を扱っている。
なお、税額の計算や、譲渡所得の特例に自分の物件が当たるかどうかの判断は、編集部の範囲を超える。金額に踏み込む段階では税理士に確認してほしい。
貸す・活用する側の数字を先に見ておく
改修して貸す場合、想定家賃と初期費用が分からないと回収年数が出せない。複数社の活用プランを取り寄せると、その土地と建物でいくらの家賃が見込めるのかの幅が分かる。
無料で活用プランを取り寄せる直さずに売った場合の金額と比べる
改修費から補助金を引いた額と、今の状態で売った場合の手取りを並べないと、直す判断は下せない。査定は無料で、依頼したからといって売る義務は生じない。
無料で査定額を調べる空き家リフォーム補助金でよくある疑問
相続した実家の名義がまだ親のままでも申請できるか
多くの制度が申請者を所有者・購入者・賃借人と定めており、登記事項証明書の提出を求める。名義が故人のままだと所有者の確認ができず、手続きが止まる可能性が高い。相続登記は2024年4月1日から義務化されているため、いずれにせよ先に済ませておく話になる(制度の適用や期限の考え方は個別事情で変わるため、司法書士に確認してほしい。2026年7月31日時点)。
DIYで直した場合も対象になるか
自治体による。木更津市は利用者自身が行うDIY工事も対象工事に含めている。富士市はDIYの場合は材料費のみが対象となる。人件費が出ないという扱いは他の自治体でも見られるため、要綱の対象経費の欄を確認してほしい。
国の制度と自治体の制度は併用できるか
できる組み合わせとできない組み合わせがある。住宅省エネ2026キャンペーンの公式サイトには、国費が充当されている制度は本キャンペーンの各事業と併用できないと記載されており、詳細は各地方公共団体に問い合わせるよう案内されている(2026年7月31日確認)。自治体の補助金の財源に国費が入っているかどうかで結論が変わるため、担当課に併用の可否を直接聞くのが早い。
家財が残ったままでも申請できるか
家財の処分そのものを補助対象にしている自治体がある。北杜市は所有者向けに家財処分の補助を設けており、東京都は空き家家財整理・解体促進事業として家財整理または解体にかかる費用の一部を補助している。リフォーム工事とは別枠になっていることが多いため、リフォームの補助金しかないと決めつけないほうがいい。
別荘やセカンドハウスは対象になるか
空き家の利活用や移住定住を目的とした制度が中心のため、居住や特定施設としての利用を条件にしている自治体が多く、二次的住宅は想定から外れやすい。富士市のように居住意思の年数を要件にしている制度では、実質的に対象外になる。
いつ動くのが有利か
年度の予算枠で運用されている制度が多く、木更津市のように4月1日受付開始で予算に達し次第終了という形が典型になる。制度の有無だけなら年度末に調べても分かるが、実際に受けるつもりなら、年度が変わる前に事前相談まで済ませておくと動きやすい。
