空き家の解体費用の相場|坪単価と追加費用の内訳

空き家の解体は、金額が見えないまま話が止まりやすい工事です。
木造30坪なら総額約90〜150万円、鉄骨造やRC造で約150〜240万円が、事業者が公開している目安です。ただし総額を動かすのは坪単価ではなく、残置物、外構、アスベストといった加算項目がいくつ乗るかです。坪単価だけで概算した金額は、見積書で上に振れます。
この記事の目次
坪単価×坪数では総額が出ない。決めるのは加算項目の数
同じ家でも、A社が120万円台、B社が190万円台と開くことがあります。坪単価そのものが違うのではなく、見積書に入っている項目の数が違うだけ、という開き方が多いです。先に、事業者が公開している坪単価を並べます。
| 構造 | 公開されている坪単価 | 出所 |
|---|---|---|
| 木造 | 約3〜5万円/約31,000〜44,000円 | アキサポ/クラッソーネ |
| 軽量鉄骨造 | 約6〜6.5万円 | タウンライフ |
| 重量鉄骨造 | 約6.5〜7万円 | タウンライフ |
| 鉄骨造(区分なし) | 約5〜7万円/約34,000〜47,000円 | アキサポ/クラッソーネ |
| RC造 | 約6〜8万円/約35,000〜80,000円 | アキサポ/クラッソーネ |
いずれも解体を扱う事業者が自社サイトで公開している数字です(2026年7月30日確認)。NPO法人空家・空地管理センターは、木造で坪4万円、鉄骨造で坪6万円、RC造で坪7万円を目安として置いています(同日確認)。総額の側では、空き家の解体で約100〜200万円、住宅の解体全般で約100〜300万円に収まることが多い、という幅が公開されています。
編集部は士業ではありません。共有名義の空き家で誰が解体費を負担するか、税額がいくらになるかといった判断には踏み込まず、金額の内訳、期限のある手続き、確認先を並べる形で整理します。
坪数別の総額と、坪数では説明できない実際の差
坪数別に公開されている総額の幅です。木造30坪の約90〜150万円が起点になります(アキサポ/2026年7月30日確認)。
| 延床面積 | 木造 | 鉄骨造 | RC造 |
|---|---|---|---|
| 30坪 | 約90〜150万円 | 約150〜210万円 | 約180〜240万円 |
| 40坪 | 約120〜200万円 | 約210〜270万円 | 約240〜300万円 |
| 50坪 | 約150〜250万円 | 約270〜330万円 | 約300〜360万円 |
次は、実際に成立した工事金額として公開されている事例です(クラッソーネ/同日確認)。
- 木造15坪・平屋 70万円
- 木造27.25坪・2階建 91.4万円
- 鉄骨造36.36坪・2階建 150万円
- 木造42.89坪・2階建 289.1万円
- 木造55.36坪・2階建 218万円
- 鉄骨造60坪・3階建 509.3万円
木造42.89坪が289.1万円で、それより大きい木造55.36坪が218万円です。坪単価では逆転を説明できません。差を作ったのは、重機が入るかどうか、外構がどれだけ付いているか、中に何が残っていたか、という現場側の条件です。相場表は入口の見当を付けるまでの道具で、金額の根拠にはなりません。
地域差も公開されています。木造30坪で、北海道、宮城、秋田などは坪2〜3万円(総額約60〜90万円)、東京都と神奈川県は坪3〜4万円(総額約90〜120万円)という整理です(アキサポ/同日確認)。人件費の上昇と職人の高齢化で、解体費は年々上がっているという説明も出ています(タウンライフ/同日確認)。数年前に聞いた金額をそのまま持っていると合いません。
見積書の半分近くは、壊す費用ではなく捨てる費用
金額の構成比として公開されているのは次の割合です(クラッソーネ/2026年7月30日確認)。
- 建物取壊し費 30〜40%
- 廃棄物処理費 30〜40%
- 諸費用 20〜30%
- 事業者の利益 10〜20%
- 付帯工事はこの外側に加算
別の整理では、労務費(人件費と重機)、廃棄物処理費、運搬費、足場と養生費の4つに分け、労務費の比率が最も高いとしています(アキサポ/同日確認)。どちらの分け方でも、壊す作業そのものより、出た廃材を分別して運んで処分する側に半分近くが乗ります。だから中身が残っている家は上がり、空にした家は下がります。金額を動かしているのは建物の大きさではなく、敷地から出る量です。
坪単価に入っていない現場条件
費用が高くなる条件として、事業者側が挙げているのは次のようなものです(空家・空地管理センター/同日確認)。前面道路が狭くて重機やトラックが入らない、敷地いっぱいに建っていて足場と養生の手間が増える、隣家と近接している、地震や火災で破損している、地下室がある、室内に荷物が残っている。重機が使えないと人の手で壊す工程が増え、同じ坪数でも別の工事になります。
ここは見積りを頼む前に自分で見ておけます。前面道路の幅、電柱や車止めの位置、隣家との隙間、門から建物までの導線を、写真と寸法で記録しておく。全社に同じ写真と同じ図面を渡さないと、金額を並べても比較になりません。
加算項目のチェックリスト。浄化槽が一番効く
建物本体の外側に乗る付帯工事の単価です(アキサポ/2026年7月30日確認。浄化槽は空家・空地管理センター/同日確認)。
| 項目 | 公開されている単価の目安 |
|---|---|
| 残置物の撤去 | 約8,000〜10,000円/1㎡あたり |
| ブロック塀の解体 | 約1万円/1本 |
| 庭木の撤去 | 約2,000〜3,000円/1㎡あたり |
| 庭石の撤去 | 約1万円/1tあたり |
| 物置・倉庫の撤去 | 約2〜3万円/1個 |
| 門扉・フェンスの撤去 | 約2万円/1組 |
| 浄化槽の撤去 | 約50〜80万円/1基 |
金額の大きさで見ると浄化槽が突出しています。下水に接続していない実家では、これが1基あるだけで総額の見え方が変わります。井戸、灯油タンク、地中に残った古い基礎やコンクリートがら、私設の水道管も同じ枠で、掘って初めて出てくるものは追加見積りになりやすい項目です。
逆に、自分の手で減らせるのは残置物です。1㎡あたりで課金される部分なので、家財を先に出しておくほど下がります。外構は同じ日程にまとめると重機の回送とトラックの手配が1回で済みます。庭石だけは重さで金額が決まる別の世界なので、庭石の処分費用で分けて整理しています。
アスベストだけは金額を先に確定できない
解体費のなかで、事前に幅を出しにくいのがアスベスト(石綿)です。制度として先に決まっているのは調査と報告の側です。
- 建築物の解体工事のうち、解体作業の対象となる床面積の合計が80㎡以上のものは、石綿含有建材の事前調査結果を都道府県等と労働基準監督署へ報告する義務があります(令和4年4月1日以降に着手する工事から。石綿事前調査結果報告システム/2026年7月30日確認)
- 調査の義務自体は規模や築年を問わず全ての解体等工事にかかります(環境省/同日確認)
- 令和5年10月1日以降に着手する建築物の解体等工事は、必要な知識を持つ資格者が事前調査を行うことが義務になりました(富山県/同日確認)
報告が電子システムに集約され、資格者が調べる形になった結果、調査そのものは省けない工程になっています。含有が見つかった場合の除去費は、建材の種類、面積、飛散のレベルで変わるため別途見積りが原則です。事業者側も、アスベスト処理は別途とする書き方をしています(アキサポ/同日確認)。
見積書を受け取ったら、石綿の事前調査費が含まれているか、除去費が入っているのか別建てなのか、含有が出た場合に金額がどう変わるかの3点を、契約前に文面で確認しておく形が安全です。昭和56年以前の建物は含有の可能性が高い側として扱われます。
工事費の外に出るお金と、期限が決まっている手続き
解体は、業者へ払う金額だけでは終わりません。期限が法律で決まっているものが2つあります。
着手7日前までの届出(建設リサイクル法)
コンクリート、木材などの特定建設資材が使われている建築物で、解体する床面積の合計が80㎡以上の工事は対象です。届出の義務は施工業者ではなく発注者および自主施工者にあり、都道府県知事へ工事に着手する7日前までに届け出る必要があります(国土交通省のリーフレット/2026年7月30日確認)。千葉市の案内では、4月9日着手なら4月2日が期限という書き方をしています(同日確認)。実務では業者が代行する形が多いものの、義務が置かれているのは頼んだ側です。契約時に誰が出すのかを決めておきます。
取り壊しから1か月以内の建物滅失登記
不動産登記法第57条は、建物が滅失したときは表題部所有者または所有権の登記名義人が、滅失の日から1か月以内に建物の滅失の登記を申請しなければならないと定めています(法務局の案内文書/2026年7月30日確認)。起算日は工事が終わって更地になった日で、業者が発行する取壊し証明書が必要書類になります。登記が残っていると、存在しない建物に課税が続いたり、土地の売却が進まなかったりします。
このほか、電気、ガス、水道、通信の停止時期、工事用水を使うかどうか、近隣への挨拶と工期の共有を、着工前に業者と決めておく項目として並べておきます。
着工が年をまたぐと、翌年度の土地の税額が変わる
固定資産税は毎年1月1日(賦課期日)の状況で決まります。住宅が建っている土地には住宅用地特例があり、東京都主税局の説明では、200㎡以下の小規模住宅用地は固定資産税の課税標準が価格の6分の1、それを超える一般住宅用地は3分の1になります。都市計画税は小規模住宅用地で3分の1、一般住宅用地で3分の2です。そして1月1日時点で住宅が存在しない土地は、原則として住宅用地の扱いになりません(2026年7月30日確認)。
つまり、12月中に工事を終えるか、年をまたいで1月以降に着工するかで、翌年度に届く土地の税額が変わります。一方で建物にかかっていた固定資産税は無くなるため、合計でどちらが軽いかは土地と家屋の評価額の比率で逆転します。ここを一般化した数字で語ることはできません。
あなたの手元にある課税明細書で土地と家屋の課税標準額を分けて見て、更地になった場合の土地の税額を市区町村の資産税課に問い合わせる、という順番が確実です。建て替えの場合など特例が継続する要件もあるため、編集部は税額の計算をせず、確認先を示す形にとどめます。
放置していれば特例が続く、という前提はもう崩れている
解体しない選択と比べるときの材料も変わりました。空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律が令和5年12月13日に施行され、放置すれば特定空家等になるおそれのある状態を指す管理不全空家等が新設されました(国土交通省/2026年7月30日確認)。
従来は特定空家等として勧告を受けた場合に住宅用地特例が外れる仕組みでしたが、改正後は管理不全空家等として勧告を受けた場合にも同じく特例が解除されます(秋田市/同日確認)。宝塚市は、勧告を受けた管理不全空家等について、土地の固定資産税が約3〜5倍になる可能性があると案内しています(同日確認)。
読み方はひとつです。手を付けずに置いておくことのコストが、以前より読みにくくなりました。庭木が越境している、屋根材が落ちている、といった段階で指導が入る余地ができたため、現地の状態を年に何度か確認できるかどうかが、解体を急ぐかどうかの判断材料になります。実家じまい全体の費用のなかでの位置づけは実家じまいの費用の内訳で整理しています。
更地にしてから売るか、建物ごと売るか
解体費を負担する前に、その支出が売却でどう戻るかを見ておく順番があります。更地は買い手の幅が広がる一方で、解体費が先に出て、住宅用地特例も外れます。建物を残したまま売れば解体費は買主側の見込みに移りますが、そのぶん価格から引かれます。どちらが手取りで残るかは、土地の値段と解体費の大小で入れ替わります。
税制の側には、取り壊してから売る場合にも使える控除があります。国税庁が説明している被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例では、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡について、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。令和6年1月1日以後の譲渡は、相続人が3人以上の場合の上限が2,000万円に引き下げられました(2026年7月30日確認)。
家屋を取り壊して敷地だけを売る場合の主な要件は、家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたものであること、売却代金が1億円以下であること、相続から取り壊しまで事業、貸付け、居住に使っていないこと、取り壊しから譲渡までその敷地を建物の敷地として使っていないこと、相続の開始から3年以内の売却であることなどです。要件が細かいので、当てはまるかどうかは税務署か税理士に確認する範囲です。編集部は個別の税額計算や適用の可否を判断しません。
順番として実務的なのは、解体を決める前に、現況のままと更地にした場合で見立てが変わるかを不動産会社に聞くことです。査定を取るだけで契約は発生しません。手順は実家を売る手順と相場の調べ方にまとめています。
安く抑える順番。値切りより先に効くものがある
- 補助金の有無を先に調べる。着工後の申請は原則受け付けられません。荒川区の例では、解体費用の3分の2かつ1件100万円が上限、不良住宅と判定された場合は延床1㎡あたり26,000円(最大500㎡)が上限で、昭和56年5月31日以前の建築、1年以上使われていないこと、区の現場調査で倒壊等のおそれがあると判定されたことなどが条件です(2026年7月30日確認)。金額も条件も自治体ごとに全く違うので、空き家の解体補助金の条件と申請の順番で確認する項目を整理しています。
- 同じ条件で2〜3社に出す。写真、寸法、図面、残置物の量を全社で同一にします。条件が違えば安く見えた側が後から増えます。
- 残置物を自分で減らす。1㎡あたりで課金される部分なので、ここは効きます。
- 外構と庭を同じ日程にまとめる。重機の回送とトラックの手配が1回で済みます。複数棟を同時に解体すると単価が下がるという説明も出ています(クラッソーネ/同日確認)。
- 時期をずらす。12月から3月が繁忙期で4月は閑散期という説明、春(4〜6月)と秋(9〜11月)の発注を勧める説明が、それぞれ事業者側から出ています(空家・空地管理センター/アキサポ、同日確認)。梅雨、台風期、猛暑、積雪期は工期が伸びます。
- 現場に近い業者を候補に入れる。重機とトラックの移動時間が短いほうが有利という整理です(空家・空地管理センター/同日確認)。
並べ替えの効果は、値引き交渉より上にあります。補助金は数十万円単位で動き、残置物と外構は自分の手で減らせます。工期に余裕を持たせると日程の相談もしやすくなります。
よくある質問
解体費用が払えないときは
選択肢として並ぶのは、自治体の補助金、金融機関の解体向けローン、建物を残したまま売って手元の負担をなくす形です。どれを取れるかは資産と収入の状況で変わり、編集部は融資の判断や個別の資金計画には踏み込みません。先に確認するのは、補助金の締切と、現況のままの査定額です。
解体費は誰が払うのですか
建物の所有者が負担するのが原則です。相続の手続きが済んでいない状態では、誰が名義人になるかで負担する側も変わります。共有名義や遺産分割にかかる判断は士業の領域なので、司法書士や弁護士に確認する範囲として扱います。
見積書で必ず見る項目はどこですか
石綿の調査費と除去費が含みか別建てか、残置物の撤去がどこまで入っているか、整地の仕上げがどの程度か(砂利敷きか土のままか)、追加費用が発生する条件、廃棄物の処理を証明するマニフェストの扱い、この5点です。総額だけを並べても比較になりません。
相見積りは何社まで取ればいいですか
2〜3社で足ります。社数を増やすより、全社に同じ条件を渡すほうが差の理由が読めます。安い1社を選ぶのではなく、なぜ差が出たのかを説明できる会社を選ぶ形です。
解体が終わったら何を出しますか
建物の滅失の登記を、滅失の日から1か月以内に申請します(不動産登記法第57条)。取壊し証明書は業者から受け取ります。登記を出すと法務局から市区町村へ通知が回る仕組みになっているため、家屋の課税もここで整理されます。
坪単価が安い会社に頼めば総額も安くなりますか
建物本体だけならそうなります。ただし総額の半分近くは廃材の処分と運搬、そして付帯工事です。坪単価の数字より、加算項目が何本入っているかを揃えて比べたほうが実際の差が見えます。
