実家じまいの費用は総額いくら?項目別の内訳と削れる順番

実家じまいの費用は、片付けだけで済むのか建物を壊すのかで、総額が数倍変わります。
片付けと現況のまま売る組み合わせなら100〜200万円程度、解体して更地にするなら150〜400万円程度が目安です。費用を9つのブロックに分け、削れる順番と削ってはいけない支出まで並べます。
この記事の目次
総額はこの3パターンのどれかでほぼ決まる
項目を積み上げる前に、自分がどのパターンに当たるかを決めるほうが早いです。建物を壊すかどうかが最大の分岐点で、そこで総額の桁が変わります。
| パターン | 総額の目安 | 主な内訳 |
|---|---|---|
| 片付けだけ(建物は残して保有) | 約20〜80万円 | 片付け・処分、簡易清掃、名義の手続き |
| 片付け+現況のまま売る | 約100〜200万円 | 上記+仲介手数料、印紙税、必要なら測量 |
| 片付け+解体して更地で売る | 約150〜400万円 | 上記+解体、付帯物の撤去、更地化後の固定資産税 |
この幅は、不動産査定・空き家系の各メディアが公表している目安を並べたものです(GMO不動産査定、お清め不動産の公表値。2026年7月30日確認)。一次資料ではなく事業者側の集計値なので、幅として読むところまでが使い方です。
幅が広いのは、荷物の量、建物の構造と延床面積、現地までの距離という3つの変数がすべて金額に効くためです。同じ30坪の木造でも、家財が軽トラック数台で済む家と大型トラックが何往復も必要な家では、片付けだけで数十万円の差が出ます。
費用を9つのブロックに分ける
見積もりを取る前に、9つのうちどれが自分に必要かを消していきます。不要なブロックが3つあれば、その分だけ総額が落ちます。払う相手が違うので、混ぜて考えると交渉先を間違えます。
| ブロック | 払う相手 | 額の決まり方 |
|---|---|---|
| 1. 片付け・遺品整理 | 不用品回収業者、遺品整理業者 | 見積もり(交渉できる) |
| 2. 清掃・簡易補修 | 清掃業者 | 見積もり |
| 3. 建物の解体 | 解体業者 | 見積もり |
| 4. 付帯物の撤去(塀・門・庭木・カーポート・物置・浄化槽) | 解体業者、造園業者 | 見積もり(別建てになりやすい) |
| 5. 仏壇・神棚の閉眼供養と搬出 | 寺院、運搬業者 | 寺院ごと、業者ごと |
| 6. 墓じまいと改葬 | 石材店、新しい供養先、市区町村 | 石材店ごと、供養先ごと |
| 7. 名義の手続き(相続登記、必要なら測量) | 法務局、司法書士、土地家屋調査士 | 法定+報酬 |
| 8. 売却の諸費用(仲介手数料、印紙税) | 不動産会社、国 | 上限が法令で決まっている |
| 9. 税金(相続税、譲渡所得税、固定資産税・都市計画税) | 国、市区町村 | 要件に当たるかで決まる |
1から6は見積もりの世界で、相見積もりと自力作業が効きます。7から9は制度の世界で、値切る対象ではなく、要件に当たるかどうかと期限の問題です。総額を落とすなら前半、損を避けるなら後半を見ます。
片付け・遺品整理は間取りより荷物の量で決まる
間取り別の料金表は各社が公表しています。遺品整理業者の比較サイトが掲載している料金表では、1R・1Kで約3万〜8万円、2LDKで約12万〜30万円、3LDKで約17万〜50万円、4LDK以上で約22万〜60万円です(みんなの遺品整理の掲載料金表。2026年7月30日確認)。
ただし間取りは入口の目安で、実際の見積もりは荷物の体積と搬出の手間で動きます。同じ3LDKでも、押入れと納戸が埋まっている家は上限側に振れます。追加が立ちやすいのは次の項目です。
- 2階からの搬出で人員追加や吊り下げが必要になる
- 敷地の前に車を付けられず、手運び(横持ち)の距離が出る
- テレビ・冷蔵庫・洗濯機・エアコンは、リサイクル料金が別に立つのが一般的
- 仏壇、金庫、ピアノ、屋外の物置は別料金になりやすい
- 畳や襖の処分、エアコンや照明の取り外し
削り方は2つです。買取を併せてやる業者を選んで処分費と相殺すること。そして、貴重品と書類の捜索だけ自分で先にやり、残りを一括で任せること。権利証、通帳、保険証券、年金関係の書類は、一括処分の後では戻りません。
間取り別の内訳と追加料金の出方は遺品整理の費用相場|間取り別の目安と追加料金の内訳で細かく分けています。
解体費用で差がつくのは本体工事ではない
木造30坪クラスの解体は、各社の公表値では約90万〜150万円、鉄骨造で約120万〜180万円、鉄筋コンクリート造で約150万〜240万円が目安として並びます(お清め不動産の公表値。2026年7月30日確認)。相見積もりで開くのは、この本体工事より次の項目です。
- 残置物の処理。家財を残したまま頼むと、解体業者の産業廃棄物処理の単価で計算される
- ブロック塀、門柱、庭木、カーポート、物置、浄化槽の撤去
- 重機が入れるかどうか。前面道路の幅、養生の条件、近隣への配慮
- アスベストの調査費用と、含まれていた場合の除去
- 地中埋設物(古い基礎、井戸、使われていない浄化槽)が掘り出されたときの追加
家財を残して解体に丸投げすると総額が上がる構造になっています。産業廃棄物としての処理単価は、片付け業者の処分費より高くつく場面が多いためです。片付けと解体を分けて順番に発注するほうが読めます。
坪単価の見方と追加費用の内訳は空き家の解体費用の相場|坪単価と追加費用の内訳にまとめています。
解体の補助金は出るが、片付け費用は見てくれない
解体の補助金は多くの市区町村にあります。ただし実際の要綱を読むと、期待とずれる点が共通してあります。2026年7月30日時点で公開されている3市の制度で確認しました。
| 自治体 | 補助額 | 条件と対象外 |
|---|---|---|
| 宇都宮市(老朽危険空き家除却費補助金) | 除却に要した額と「延べ床面積×11,000円」の低い額の3分の2で、上限は約70万円 | 昭和56年5月31日以前の建築などの要件と、所得の要件がある。先に事前調査申請が必要(同市ページは令和8年4月1日更新) |
| 下関市(危険家屋の解体費補助) | 補助対象経費の2分の1で上限は約40万円(重点対象地区は約60万円) | 塀や樹木などの付属物の撤去費用、家財の処分費用等は対象外。募集は15件程度で、応募多数なら抽選 |
| 長野市(老朽危険空き家の解体工事補助金) | 国が定める除却工事費を基準にした額、補助対象経費に一定率を掛けた額、限度額の3つのうち最も少ない額 | 家財や残置物等の処理費、跡地整備費は対象外。令和8年度は予算上限に達して受付を終了 |
読み取れるのは3点です。第一に、補助の対象は解体本体で、片付けと塀や庭木の撤去は自腹になりやすい。第二に、予算枠と募集期間で閉まる。長野市は令和8年度分の受付を終了しており、次年度の案内は年度末に出る形です。第三に、事前調査や交付決定より前に契約や着工をすると対象外になる自治体があるため、業者と契約する前に窓口へ行く順番になります。
もう一つ、宇都宮市の案内には解体後の税について踏み込んだ注記があります。「空き家を解体し更地にした場合、当該土地の住宅用地特例(固定資産税等の減税措置)が適用されなくなることも含め、同意を得てください」(宇都宮市の同ページ。2026年7月30日確認)。補助金を出す側の自治体が、翌年から土地の税が上がることを先に告知しています。
名義の手続きは義務化されていて、後回しが一番高い
2024年(令和6年)4月1日から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務になりました。正当な理由がないのに怠ると10万円以下の過料の対象です。令和6年4月1日より前に相続していた分は、令和9年3月31日までが期限とされています(法務省「相続登記の申請義務化について」。2026年7月30日確認)。
費用は登録免許税と、司法書士に依頼する場合の報酬に分かれます。相続による所有権移転の登録免許税は、固定資産税評価額の1000分の4です(国税庁 No.7191 登録免許税の税額表)。価額が100万円以下の土地に係る相続登記には、令和9年3月31日までの免税措置があります(法務省・同ページ)。
3年以内に遺産分割がまとまらないときは、相続人申告登記を単独で申し出ることで申請義務を履行したとみなされます。ただし法務省は、遺産分割が成立した後の追加的な義務は相続人申告登記では果たせないとしています。
土地だけが残って売れない場合の出口として、相続土地国庫帰属制度があります。審査手数料は土地一筆あたり14,000円で、収入印紙で納付します(法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」)。加えて負担金がかかり、国有地の種目ごとに管理に要する10年分の標準的な費用を考慮して算定されます(法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」)。市街化区域や用途地域の内外、宅地か農地かで額が変わるため、事前に法務局へ相談する前提の制度です。
登記の代理や登記申請書の作成を業務として行えるのは、司法書士と弁護士に限られます(法務省)。編集部は士業ではないため、個別の税額計算や遺産分割の判断はしません。この章は見積もりの話ではなく、相談先と期限の話です。
売るときの費用は上限が決まっている(安い実家ほど注意)
仲介手数料の上限は国土交通大臣の告示で決まっています。国土交通省の消費者向け案内では、取引額200万円以下の部分は5.5%、200万円超400万円以下の部分は4.4%、400万円超の部分は3.3%(いずれも税込)の料率を段階的に乗じた合計が上限とされています(国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」。2026年7月30日確認)。
実家じまいで効いてくるのは、令和6年7月1日から始まった特例です。物件価格が800万円以下の低廉な空家等については、原則の上限を超えて30万円の1.1倍まで報酬を受領できます。売主と買主の双方から受け取ることも想定されており、媒介契約の締結に際してあらかじめ、上限の範囲内で報酬額を依頼者に説明し合意することが必要とされています(国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」)。
つまり地方の安い実家では、約300万円で売れた場合でも手数料が約33万円になり得ます。3%で計算していた人には想定外の額です。媒介契約を結ぶ前に、報酬額が契約書のどこに書かれているかを確認します。
印紙税には軽減措置があり、令和9年3月31日までに作成される不動産譲渡契約書は、契約金額が500万円超1,000万円以下で5,000円、1,000万円超5,000万円以下で10,000円です(国税庁 No.7108。2026年7月30日確認)。境界が不明で測量が必要なら、土地家屋調査士への費用が別に立ちます。
更地にして売るか現況のまま売るかの比較は実家を売る手順と相場の調べ方|更地と現状の比較で扱っています。
税金は要件に当たるかどうかで額が跳ねる
相続税は、遺産の総額が基礎控除を超えるかどうかで判断します。基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数です(国税庁 No.4152 相続税の計算。2026年7月30日確認)。超えない家では、この行の費用はゼロになります。
売って利益が出た場合の譲渡所得税は、譲渡した年の1月1日時点の所有期間で税率が変わります。5年超なら所得税15%・住民税5%、5年以下なら所得税30%・住民税9%。加えて令和19年分までは、復興特別所得税として基準所得税額の2.1%がかかります(国税庁 No.3208・No.3211)。
ここで効くのが空き家の3,000万円特別控除です。要件が重く、期限が二重にかかります(国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例。2026年7月30日確認)。
- 家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたものであること
- 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売ること
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売却代金が1億円以下であること
- 一定の耐震基準を満たすか取り壊すのを、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに終えること
- 令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は、控除額が2,000万円になること
相続から3年という壁と、制度そのものの適用期限が令和9年12月31日という壁が、別に立っています。相続がいつだったかを先に数える。要件に当たるかどうかの当てはめは、税務署か税理士に確認する範囲です。
保有し続ける費用と、更地にした翌年の税
住宅が建っている土地には住宅用地特例があります。200平方メートル以下の部分は固定資産税の課税標準が価格の6分の1、都市計画税は3分の1。200平方メートルを超える部分は固定資産税が3分の1、都市計画税が3分の2です。標準税率は固定資産税1.4%、都市計画税0.3%です(東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」。2026年7月30日確認)。
建物を解体して更地にすると、この特例は外れます。解体費用を払った翌年から土地の税額が上がるという順番です。売る予定が立たないまま解体すると、支出と税負担の両方が増えます。
放置した場合も同じ方向に動きます。令和5年12月13日に施行された改正空家法で管理不全空家等という区分ができ、市区町村長から勧告を受けた敷地は住宅用地特例の適用対象から除外されます(国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律について」、同・固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置。2026年7月30日確認)。壊しても放置しても、税の軽減は外れる方向にしか動かない設計です。
固定資産税は毎年出ていく。判断の分母をそこに置いた
編集部は沖縄の傾斜地を相続して保有しています。売却、寄付、国庫帰属と出口を順に検証しましたが、どれも成立せず、いまも持ったままです。毎年出ていくのは固定資産税の年約7万円で、これは減りません。
費用の判断で迷ったときは、総額の大小ではなく、あと何年払うかで見るようにしています。片付けと解体で約200万円かかるとしても、年約7万円の負担が止まるなら30年分に近い支出を1回で終わらせる話になります。逆に、更地にしても売れる見込みがないなら、約200万円を払ったうえで税が上がるほうへ進むことになります。金額そのものより、期限のない支出が止まるかどうかで判断が分かれます。
全体の順番と、費用が発生するタイミングは実家じまいとは?進め方と費用の全体像を7ステップで解説で通して見られます。
この費用は誰が払うのか
出どころは3つに分かれます。どれを選ぶかで、揉めるポイントも変わります。
- 相続人の誰かが立て替える。最も多い形で、後の精算を前提にする
- 相続財産の預貯金から出す。相続人の合意と金融機関の手続きが前提になる
- 売却代金から精算する。解体を売買の条件にして、決済のときに清算する組み方もある
こじれるのは、立て替えた人が精算を求めた段階です。片付けや解体は不動産の管理と処分に関わる支出ですが、誰がどの割合で負担するかは遺産分割の話に接続します。編集部は士業ではないため、負担割合や債務の帰属の判断はしません。代わりに、着手前に決めておけることを2つ挙げます。
- 誰が立て替え、どの費用を精算対象にするかを、着手前に文字にして共有する。口約束は精算のときに残らない
- 見積書と領収書は立替者の宛名で全部残す。現金払いを避け、振込の記録を作る
相続人が複数いて連絡が取りづらい場合、先に動いた人が費用と手間の両方を抱えます。金額を調べる前に精算の約束を取るほうが、総額の削減より効く場面があります。
削れる順番と、削ってはいけない支出
同じ実家でも、削る順番を間違えると総額は下がりません。効く順に並べます。
- 残置物を先に減らす。解体に丸投げすると産業廃棄物の単価で処理される部分を、片付け業者や自治体の処理施設に回す
- 買取を併せてやる業者を選ぶ。処分費と相殺される分がそのまま総額から落ちる
- 相見積もりを3社以上、同じ条件で取る。現地調査をしていない概算は比較の材料にならない
- 補助金の要否を、業者と契約する前に窓口で確認する。事前調査や交付決定の前に着工すると対象外になる自治体がある
- 解体するかどうかを、売却の見込みと更地化後の税負担で決める。解体してから売れないのが一番重い
- 期限のあるものを先に処理する。相続登記の3年と、空き家の3,000万円特別控除の3年は、仏壇や墓の整理より先に動く
- 遠方の往復回数を減らす。1回の滞在で片付けの立会いと窓口の相談をまとめる。交通費と宿泊費は見積書に出てこない費用で、回数がそのまま積み上がる
逆に、削ると後で高くつくものが3つあります。
- 相続登記の先延ばし。義務化されており、放置している間に相続人がさらに亡くなると当事者が増え、書類と費用がまとめて増える
- 貴重品と書類の捜索。権利証、通帳、保険証券、実印は、一括処分の後では戻らない
- 現地調査。見ないで出した見積もりは着工後に追加が出る。安い見積もりほど、何を見ていないかを確認する
墓と仏壇は法令上の期限がないため、順番としては後ろに置けます。撤去工事と新しい供養先の費用は墓じまいの費用は総額いくら?撤去と供養の内訳で分けています。
費用についてよく聞かれること
平均額はいくらか
1つの平均値としては成立しにくい数字です。建物を壊すかどうかで倍以上変わるため、平均より前に、最初の表でどのパターンに当たるかを決めるほうが誤差が小さくなります。
手元にお金がない場合はどうするか
順番を変えます。現況のまま買い取ってもらえれば解体費が要りません。解体を売買の条件にして決済時に精算できるかは、不動産会社に確認する事項です。補助金は工事完了後の精算払いが基本のため、いったん立て替える資金が必要になります。
期間はどれくらいかかるか
各不動産メディアの公表では6か月から1年程度が目安とされています(GMO不動産査定。2026年7月30日確認)。相続登記の3年、特別控除の3年から逆算して、いつまでに何を終えるかを置きます。
親が元気なうちに始めると費用は変わるか
片付けの内容は近くなりますが、制度の側が変わります。相続が発生していない段階では相続登記の義務も空き家の特別控除も関係せず、親名義の家を子が単独で処分することもできません。一方で、残す物を本人が決められるため、荷物の量が減って片付け費用が下がる場合があります。
仏壇と墓の費用はどこに入るか
仏壇は閉眼供養のお布施(寺院により異なる)と、搬出・処分(業者)に分かれます。墓は撤去工事と新しい供養先の費用に加えて、市区町村への改葬の手続きが入ります。どちらも片付けや解体の見積書には含まれないため、別のブロックとして数えます。
