生前整理とは?親が元気なうちに決めておく5つのこと

生前整理と検索して出てくるのは、たいてい片付けの手順です。
実家がある家庭で先に決めるのは、物より判断です。建物と土地の行き先、家財の線引き、お金と契約の在りか、墓と仏壇、意思の残し方の5つ。判断能力が落ちてからでは、実家の売却に家庭裁判所の許可が必要になります。
この記事の目次
生前整理とは何か。似た言葉との違いと、この5つの位置づけ
生前整理は、本人が生きている間に、持ち物・財産・情報を自分の意思で整理しておくことを指します。誰が判断するかが決定的な違いで、遺品整理は本人が亡くなった後に家族が判断し、老前整理は老後の暮らしやすさを目的に本人が判断します。終活はもっと広く、葬儀や医療の希望まで含む言葉です。
言葉の定義を突き詰めても手は動きません。実家がある家庭でつまずくのは、いつも同じ場所です。物を捨てる手順は調べれば出てくるのに、実家という不動産と、墓と仏壇と、親の意思の残し方だけは、親本人が元気なうちにしか決められません。
この記事で扱う「決めておく5つ」
| 決めること | 先に決めないと起きること |
|---|---|
| ①実家の建物と土地の行き先 | 空き家のまま相続し、税の特例の要件を外す |
| ②家財の線引き | 誰が捨てたかで兄弟が揉める |
| ③お金と契約の在りか | 口座と契約を探す作業に数か月かかる |
| ④墓と仏壇の行き先 | 引き取り手が決まらず実家に残る |
| ⑤意思の残し方 | 本人の希望を証明できない |
順番に意味があります。①から④は親の意向を聞かないと決まらず、⑤はその意向を後から証明できる形に変える作業です。物の仕分けは①から⑤が決まった後のほうが速く進みます。何を残すかの基準が先にできているからです。
片付けそのものの手順と、親への切り出し方は生前整理のやることリスト|順番と親への切り出し方で扱っています。実家を空にしてから引き渡すまでの全体像は実家じまいとは?進め方と費用の全体像を7ステップで解説にまとめました。
なお、親が入院中だったり、すでに相続が起きていたりする場合も、決めるべき5項目は変わりません。変わるのは道具です。本人の意向を聞けるなら遺言やエンディングノートで残し、聞けないなら相続人全員の遺産分割協議で決めることになります。手間は後者のほうが大きくなります。
①実家の建物と土地の行き先を決めておく
5つのうち、金額の桁がいちばん大きく、後回しにされやすいのがこれです。総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査では、空き家は900万2千戸で空き家率13.8%、そのうち賃貸用や売却用や別荘を除いた空き家が385万6千戸あります(総務省統計局・令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要/2026年7月30日確認)。行き先を決めないまま持ち主が代わった家が、この385万6千戸の中身です。
選択肢は4つに整理できる
- 親が生前に売る:親が住み替えや施設入居をして、親自身が売主になる
- 相続してから売る:現状のまま、または建物を解体して更地で売る
- 誰かが住む・貸す:子が住む、賃貸に出す
- 手放す手段を探す:買い手が付かない土地は、寄付や相続土地国庫帰属制度の検討に入る
この4つのどれを選ぶかで、税の扱いも手続きの相手も変わります。売る前提なら手順と相場の調べ方は実家を売る手順と相場の調べ方|更地と現状の比較にまとめてあります。
生前に売るか、相続後に売るかで使える控除が違う
編集部が調べた範囲で、判断材料になる制度は2つあります。どちらも要件が細かく、当たるかどうかの判定は税理士の仕事です。ここでは要件の存在だけを押さえてください。
親自身が住んでいる家を親が売る場合は、居住用財産を売ったときの3,000万円の特別控除があります。住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、親子など特別の関係がある人への売却は対象外であること、前年と前々年に同じ特例を受けていないことなどが要件です(国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例/2026年7月30日確認)。
相続してから売る場合は、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特別控除があります。控除額は最高3,000万円で、令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上のときは2,000万円までです。適用期限は令和9年12月31日までの譲渡。要件には、昭和56年5月31日以前に建築されたこと、区分所有建物登記がされている建物でないこと、相続の開始の直前において被相続人以外に居住していた人がいなかったこと、売却代金が1億円以下であること、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが並びます(国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例/2026年7月30日確認)。
ここで生前整理と直結する要件が2つあります。ひとつは建築時期です。昭和56年6月以降に建った家は、この空き家の特例の対象から外れます。もうひとつは同居です。相続開始の直前に親以外の誰かが住んでいた家も外れます。親が施設に入っていた場合は、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所したなどの特定事由に当たり、居住しなくなった時から相続開始まで事業用や賃貸用や他人の居住用にしていないことなど、市区町村長の確認書に記載する事項を満たせば対象になり得ます(同 No.3306)。
誰が相続するかで評価額も変わる
相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です(国税庁 No.4152 相続税の計算/2026年7月30日確認)。宅地については小規模宅地等の特例があり、特定居住用宅地等は330平方メートルまで評価額を80%減額できます。配偶者に取得者ごとの要件はなく、同居していた親族には申告期限まで住み続けて所有し続ける要件があり、別居の親族にはさらに複数の要件が付きます(国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例/2026年7月30日確認)。
つまり、実家を誰が引き継ぐかという一行の決定が、評価額の減額を使えるかどうかを左右します。この決定は親が元気なうちに家族で話しておくほうが早く、後から相続人全員の合意を取り直すより揉めません。
②家財の線引きを決めておく。誰が判断するかを先に決める
家財の整理でこじれるのは、量ではなく判断の権限です。親が捨てるなと言ったものを子が捨てた、子が保管しておいた形見を別の兄弟が知らずに処分した。この種の衝突は、線引きを言葉にしていなかったときに起きます。
4つの箱に分ける
- 親が最後まで持っていく物:施設や住み替え先に運ぶ量には上限があります。先に上限を数字で決めます
- 特定の人に渡す物:誰に渡すかを名前で決めます。口約束だけにしないのが要点です
- 売る物・譲る物:買取に出す物と、地域の引き取り手を探す物
- 捨てる物:自治体のルールで出す物と、業者に頼む物
2番の「特定の人に渡す物」を紙に残していないと、後から遺産分割の話に混ざります。高価な物だけの話ではありません。仏具、写真、印章、農具、工具のような、金額が付かないのに引き取り手が限られる物が実家には必ずあります。
先に捨てすぎないほうがよい物
生前整理は減らす作業だと思われがちですが、実家の場合は残しておくと後が楽になる物があります。編集部が手続きの側から逆算すると、次のあたりです。
- 建物の図面、建築確認や検査済証、増改築の記録:解体や売却の見積もりで使います
- 境界の資料、測量図、隣地との覚書:土地を売るときに境界の確認を求められます
- 登記済証や登記識別情報、固定資産税の納税通知書:不動産の特定に使います
- リフォームや設備交換の領収書:譲渡所得の計算で取得費に関わる可能性があるため、税理士に見せる前提で残します
逆に、量が多くて後で処分費がかさむのは、たんす、ソファ、ベッド、寝具、蔵書、食器です。ここは早く減らすほど後の見積もりが下がります。仕分けの具体的な順番は生前整理のやることリスト側に置いています。
親が捨てたがらない物は、捨てる以外の出口を出す
捨てるか残すかの二択にすると会話が止まります。写真は撮って残す、着物は仕立て直す、家具は売る、農具は使う人に譲る。出口が3つ以上あると、親が選べるようになります。処分の説得より、選択肢の提示のほうが進みます。
③お金と契約の在りかを決めておく。財産目録とデジタルの扱い
亡くなった後に家族がいちばん時間を取られるのは、物の処分ではなく探索です。どの銀行に口座があるか、どの保険に入っているか、何を毎月引き落としているか。これが分からないと、相続の手続きも解約も進みません。
財産目録に書く項目
- 預貯金:金融機関名、支店、口座の種類。残高は変わるので、目録では在りかを優先します
- 不動産:所在、地番、家屋番号、名義、持分。固定資産税の納税通知書が手がかりになります
- 有価証券:証券会社名、口座番号
- 保険:保険会社名、証券番号、受取人。受取人が古いままになっていないかを確認します
- 負債:住宅ローン、カードローン、他人の借入の保証
- 貸金庫、他人に預けている物、他人から預かっている物
- 年金、企業年金、共済
残高を書き込むと更新が面倒になって続きません。在りかと連絡先だけを1枚にして、年に1回見直す形のほうが残ります。
デジタルの契約は「止め方」まで書く
スマートフォンとパソコンの中にある契約は、外から見えません。ネット銀行、ネット証券、電子マネー、ポイント、サブスクリプション、写真の保管サービス、SNS。パスワードそのものを紙に並べるのは危険なので、編集部が現実的だと考える書き方は次の形です。
- サービス名と、登録に使ったメールアドレスまたは電話番号を書く
- 支払い方法(どのカードか、どの口座か)を書く
- パスワードは書かず、パスワード管理の場所(管理アプリか、封をした紙か、金庫か)だけを書く
- その封や金庫を誰が開けるかを決める
端末そのもののロック解除方法が分からないと、ここから先に進めません。少なくとも1人が解除できる状態にしておくかどうかは、親に聞いて決める項目です。
使っていない口座と契約は、生きているうちに閉じる
相続手続きでは、口座の数がそのまま作業量になります。金融機関ごとに書類を出し、残高証明を取り、解約します。使っていない口座を親が自分で閉じておくのは、家族の作業を減らす手として効きます。固定電話、新聞、有料放送、駐車場、町内の役なども同じです。
④墓と仏壇の行き先を決めておく
実家を空にする段になって止まるのが、墓と仏壇です。どちらも捨てるという言葉が使えず、引き取り手が決まらないと実家に残り続けます。売却の引き渡し日が決まってから慌てる家が多い箇所です。
墓について親に聞く3点
- 誰が承継するか:管理料の請求先になる人です。名前が決まっていないと、墓地の管理者側の手続きも止まります
- 今の場所を続けるか、移すか、やめるか:移す場合は改葬、やめる場合は墓じまいの手続きに入ります。どちらも自治体や墓地管理者の書類が必要です
- 遺骨をどうするか:合葬、永代供養、樹木葬、散骨のどれを望むか。本人の希望がないと、残された側が決めきれません
費用は地域と石材店で幅があり、区画の広さと立地で大きく変わります。編集部の立場では、生前整理の段階でやるべきなのは金額の確定ではなく、承継者の名前と方針の2点を決めることだと考えています。金額は方針が決まってから複数社で比べれば足ります。
仏壇について親に聞く2点
- 誰の家に置くか、置かないか:置く家が決まれば運搬の話に、置かないなら寺院への相談と処分の話になります
- 宗派と付き合いのある寺院:親しか知らない情報です。連絡先と、お布施の慣習をメモに残します
仏壇の中には、位牌、過去帳、掛軸、遺影、預金の証書や現金が入っていることがあります。中身の確認は親と一緒に行うのが安全です。ここは編集部の実体験ではないため、扱いの作法は宗派と寺院に確認する範囲として扱います。
⑤意思の残し方を決めておく。遺言、エンディングノート、後見
①から④で決めたことは、口約束のままでは残りません。形式によって、できることと費用が違います。
3つの道具の違い
| 道具 | できること | 法的な効力 |
|---|---|---|
| エンディングノート | 希望、連絡先、契約の在りか、葬儀や医療の意向を書く | なし。財産の分け方は決められない |
| 遺言書 | 誰に何を承継させるかを決める | あり。形式を満たす必要がある |
| 任意後見契約など | 判断能力が落ちた後の財産管理を誰に任せるか決めておく | あり。公正証書で結ぶ |
実家の行き先を決めたなら、その一行は遺言書の側に書く必要があります。エンディングノートには、通帳の場所や寺院の連絡先のような、法的効力は要らないが本人しか知らない情報を集めます。両方を作るのが現実的です。
自筆証書遺言書保管制度の手数料
自筆で書いた遺言書は、法務局(遺言書保管所)に預けられます。法務省が公表している手数料は、遺言書の保管の申請が1通3,900円、遺言書の閲覧の請求がモニターで1,400円・原本で1,700円、遺言書情報証明書の交付の請求が1通1,400円、遺言書保管事実証明書の交付の請求が1通800円で、収入印紙で納付します(法務省 自筆証書遺言書保管制度 手数料/2026年7月30日確認)。法務局に預けた自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認が不要になります。
公正証書で作る方法もあります。公証人が関与するため形式の不備が起きにくい一方、財産の額に応じた手数料がかかります。どちらの形式を選ぶかは、財産の内容と相続人の関係で変わるため、司法書士や弁護士に相談する範囲です。編集部は士業ではないので、どちらが有利かの判断はしません。
書く前に決める順番
- ①から④の方針を家族で口頭で確認する
- 財産目録を作り、名義と持分を登記や通知書で確かめる
- 誰に何をという骨格を決める
- 形式(自筆か公正証書か)を選び、専門家に相談する
- 保管場所と、開ける人を家族に伝える
順番を飛ばして先に文面を作ると、名義が思っていたものと違って書き直しになります。登記の名義が祖父のままだった、持分が兄弟で分かれていた、という実家は珍しくありません。
判断能力が落ちてからでは動かせなくなるもの
「元気なうち」は気持ちの問題として語られがちですが、実際には手続きの側に線が引かれています。ここは片付けの記事ではあまり触れられない部分なので、確認した内容をそのまま置きます。
実家の売却に家庭裁判所の許可が必要になる
本人の判断能力が低下して成年後見が開始した場合、成年後見人が本人に代わって本人の居住用不動産を処分するには、家庭裁判所の許可が必要です。裁判所の説明では、許可を得ないで処分をした場合、その処分は無効となります。処分には売却、抵当権の設定、賃貸借契約の締結・解除、建物取り壊し等が含まれます。居住用不動産には、現に住居として使っている場合だけでなく、現在は病院や施設に入所していて住んでいないが将来居住する可能性がある場合や、入所前に居住していた場合も含まれます。申立手数料は収入印紙800円分です(裁判所 成年被後見人(被保佐人、被補助人)の居住用不動産の処分についての許可/2026年7月30日確認)。
実家を売る、貸す、解体するという判断は、親が施設に入った後でも必要になります。その時点で親の判断能力が落ちていれば、後見人の選任と裁判所の許可という2段の手続きが挟まります。親が自分で決められる時期に方針を決めておく理由は、感情ではなくここにあります。
相続が起きた後は登記の期限が動き出す
令和6年4月1日から、相続で不動産を取得した相続人は、所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。遺産分割が成立した場合は、その日から3年以内に、内容に応じた登記も必要です。正当な理由がないのに申請を怠ったときは、10万円以下の過料の適用対象となります。施行日より前に開始した相続で相続登記をしていない場合も対象で、その期限は令和9年3月31日まで(不動産を相続で取得したことを知った日が令和6年4月以降の場合はその日から3年以内)とされています(法務省 相続登記の申請義務化について/2026年7月30日確認)。
3年以内に遺産分割がまとまりそうにない場合は、相続人が単独で申し出できる相続人申告登記という手続きがあります。ただし同じ法務省の説明では、これで履行できるのは知った日から3年以内という基本的義務のみで、遺産分割成立後の追加的義務には対応しません。登記の申請の代理や登記申請書等の書面の作成を業として行えるのは司法書士と弁護士に限られるため、実務は依頼する前提で考えることになります。
買い手が付かない土地は、出口を先に確認しておく
売れる前提で計算していた土地が売れないことがあります。相続土地国庫帰属制度は、相続などで取得した土地を国に引き取ってもらう制度ですが、審査手数料は土地一筆当たり14,000円で、却下や不承認でも返還されません。建物がある土地、担保権や使用収益権が設定されている土地、土壌汚染がある土地、境界が明らかでない土地などは申請自体ができず、崖があって管理に過分な費用や労力がかかる土地などは承認されません。負担金は国有地の種目ごとに管理に要する10年分の標準的な費用を考慮して算定されます(法務省 相続土地国庫帰属制度の概要/2026年7月30日確認)。
建物があると申請できないという要件は、解体の判断と直結します。始める時期の判断の目安は親が元気なうちに実家じまいを始める判断の目安で扱っています。
生前整理のデメリットと、実際に起きる衝突
良い面だけを並べると途中で止まります。デメリットとして挙がるのは、時間と労力がかかること、処分に費用がかかること、必要な物を捨ててしまうこと、業者とのトラブルの4つが定番です。ここでは実家がある家庭に固有のものを足します。
時間と体力が想定を超える
1部屋の仕分けだけでも、判断の回数が多いため疲れます。大型家具の移動には体力が必要で、高齢の親が単独で進めるのは現実的ではありません。数日で終わる想定を立てると、途中で止まって元に戻ります。1回2時間、月2回のような小さい単位に割るほうが続きます。
処分費用が先に出る
減らす作業には支出が伴います。粗大ごみは自治体の手数料が要ります。世田谷区の例では、有料粗大ごみ処理券はA券200円とB券300円の2種類で、品目ごとの手数料に応じて組み合わせて貼る方式です。中継所への持ち込みなら、収集の場合と比べて処理手数料が半額程度になります(世田谷区 粗大ごみの出し方/粗大ごみの処理手数料について、2026年7月30日確認)。金額と品目は自治体ごとに違うので、あなたの実家がある市区町村の窓口で確認してください。
費用を誰が払ったかが後で問題になる
実家の片付けや解体の費用を子のうち1人が立て替えることがあります。領収書と支払った人の記録を残していないと、後の遺産分割で「あの費用は誰の負担だったのか」という話に戻ります。契約者と支払者を最初にそろえるか、立て替えなら記録を残すかを決めておく項目です。分け方の判断そのものは弁護士や税理士の領域なので、編集部は結論を出しません。
先に処分した物が、後の判断材料だった
図面、境界の資料、リフォームの領収書、納税通知書のような紙は、見た目がただの古い書類です。解体の見積もり、境界の確認、譲渡所得の計算のどこかで必要になるため、紙類は最後にまとめて確認する順番のほうが安全です。
親の意向を飛ばすと、作業が二度になる
子が効率よく進めるほど、親の納得が置いていかれます。勝手に処分されたという記憶が残ると、次の作業日に協力が得られません。線引きの合意にかけた時間は、後の作業速度で戻ってきます。
生前整理の相場。自分でやる場合と業者に頼む場合
金額は物量と搬出の条件で動くため、幅で見るのが前提です。各社が公表している目安を並べると、間取りごとの帯はおおむね次のあたりに収まります。
| 間取り | 公表されている費用の目安 |
|---|---|
| 1R・1K | 約3万〜8万円 |
| 1LDK | 約7万〜20万円 |
| 2LDK | 約10万〜30万円 |
| 3LDK | 約15万〜50万円 |
| 4LDK以上 | 約22万〜60万円 |
出典は、みんなの遺品整理が公表している間取り別の費用目安(1R・1Kが約30,000円〜80,000円、3LDKが約170,000円〜500,000円、4LDK以上が約220,000円〜600,000円)、価格.comが公表しているパック料金の目安(1R・1Kがおおよそ3万〜8万円、1LDKが7万〜20万円程度)、税理士法人チェスターが公表している目安(1Kが3〜4万円、2LDKが10〜15万円、3LDKが15〜20万円)です(みんなの遺品整理/価格.com/税理士法人チェスター、いずれも2026年7月30日確認)。同じ間取りで下限と上限が数倍違うのは、物量と搬出経路と買取の有無で変わるからです。相場を1点で覚えるより、幅の理由を覚えたほうが見積もりを読めます。
時間制と作業単位の料金
- 整理の相談やアドバイスのみ:スタッフ1名1時間あたり約3,000円〜5,000円(みんなの遺品整理・価格.comの公表値)
- デジタル整理:約8,000円〜21,000円(項目による。みんなの遺品整理の公表値)
- 財産目録の作成代行:約50,000円〜100,000円(同)
- 遺言書の作成の依頼:約70,000円〜300,000円(依頼先による。同)
費用を下げる順番
- 自治体のルールで出せる物を先に出す。手数料はかかるが、業者のトラック台数が減ります
- 買取に回せる物を分ける。買取額が作業費と相殺される見積もりもあります
- 範囲を区切って頼む。大型家具だけ、1部屋だけ、という頼み方ができます
- 2社以上に訪問見積もりを取る。物量の見立てが業者で違います
家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)は家電リサイクル法の対象です。買い替えに伴う処分は新しい製品を購入する小売業者に、処分のみの場合は購入した小売業者に引き取りを依頼する形になります(国民生活センター 不用品回収サービスのトラブル・令和4年11月2日公表/2026年7月30日確認)。
間取りごとの料金を先に比べておく
物量と搬出条件で金額が動くため、見積もりは複数社で取るのが前提になります。遺品整理士が在籍する業者の料金とサービス内容を、地域と間取りで絞って比べられます。生前整理に対応している業者も探せます。
遺品整理の料金を比べる業者に頼むときに確認する4点。無許可業者のトラブルは実数で増えている
ここは推測ではなく公表データがあります。国民生活センターの令和4年11月2日の報道発表によると、不用品回収サービスに関するPIO-NETの相談件数は2018年度1,354件、2019年度1,457件、2020年度1,788件、2021年度2,231件と推移しています(国民生活センター 不用品回収サービスのトラブル/2026年7月30日確認)。
同資料が挙げる問題点は4つです。一般廃棄物処理業の無許可業者が一般家庭の廃棄物を違法に収集・運搬している、広告の表示や事前の説明と異なる追加料金が発生する、断りづらい状況で高額な支払いを迫られる、契約書面が交付されず内訳が分からない。相談事例には、空き家になっている母の家を整理しようとして詰め放題の広告で依頼したところ、当日に荷台の囲いの高さまでしか積めないと言われ、断ったらキャンセル料を請求されたという50歳代男性の例が載っています。実家の整理はそのまま狙われる場面です。
確認する4点
- 一般廃棄物処理業の許可:一般家庭から出る廃棄物の収集・運搬は、市区町村から一般廃棄物処理業の許可または委託を受けた事業者しか行えません(廃棄物処理法第7条第1項)。広告の規模と許可の有無は関係がないため、実家がある市区町村のホームページや窓口で許可業者を探すのが確実です
- 追加料金の有無:基本料金のほかに人件費や廃棄費用の名目で加算される例が挙がっています。加算の条件を書面で確認します
- 作業内容と料金の明示:総額を口頭で言われるだけの契約はトラブルの型です。内訳のある見積書を出してもらいます
- キャンセル料:断ったときの金額を先に確認します
依頼後に無許可業者だと分かった場合は作業を断る、というのが同資料のアドバイスです。作業後に想定外の金額を請求された場合は、後日納得した金額で支払う意思を示しつつ、その場での支払いを断る手順が示されています。見積もりのために呼んだ事業者とその場で契約した場合や、広告の表示額と実際の請求額が大きく異なる場合は、特定商取引法の訪問販売のクーリング・オフ等が適用できる可能性があるとも書かれています。相談先は消費者ホットライン188(いやや)で、最寄りの消費生活センター等に案内されます(いずれも同資料)。
生前整理を頼むときの追加の確認点
- 契約者を親本人にするか子にするか。支払いと契約の名義をそろえておくと、後の記録が単純になります
- 財産目録や書類の作成まで頼む場合、行政書士や司法書士が在籍しているか、正式に連携しているかを確認します。作成の代理を業として行える資格には制限があります
- 買取を併用するか。買取の有無で総額が変わります
- 作業の立会いを誰がするか。立会いなしで進めると、残す物の判断が業者に委ねられます
許可と料金を並べて確認する
業者ごとの対応エリア、料金、在籍資格を一覧で比べられます。相見積もりを前提に、2社以上を候補に残してから訪問見積もりに進むと、当日の追加料金の話に巻き込まれにくくなります。
遺品整理の料金を比べる生前整理についてよくある質問
何歳から始めるものですか
年齢で決まる制度ではありません。実務の側で見ると、判断の期限を作るのは年齢よりも出来事です。親の住み替え、施設入居、入院、退職、家の設備の大きな更新。このどれかが視野に入ったら、①から⑤の決定は前倒しになります。判断の目安は親が元気なうちに実家じまいを始める判断の目安にまとめました。
親が話に乗ってくれません
意思の確認から入ると身構えられます。管理料の請求書、固定資産税の納税通知書、実家の設備の見積もりのような、目の前にある事務の紙から入るほうが会話が続きます。切り出し方の型は生前整理のやることリスト|順番と親への切り出し方側で扱っています。
生前整理と遺品整理は、業者が違うのですか
同じ業者が両方に対応している場合が多く、違うのは作業の中身です。生前整理は本人が立ち会って残す物を決めるため、仕分けの時間が長くなります。遺品整理は家族が判断するため、探索と確認の作業が増えます。料金体系も、時間制と物量制のどちらが向くかが変わります。
親名義の家を、生前に子の名義へ変えたほうが得ですか
得かどうかは、贈与税、相続税、小規模宅地等の特例、譲渡所得の特別控除の組み合わせで変わります。編集部は士業ではないため、税額の計算や有利不利の判断はしません。建築年、登記の名義と持分、居住状況、相続人の数の4点をメモにしてから税理士に持ち込むと、話が早く進みます。
物を減らすと、家が売りにくくなりませんか
売却では、家財が少ないほうが内見と引き渡しの準備が短くなります。残置物があると引き渡し前に処分が必要になり、その費用は売主側の負担になるのが一般的です。売る前提の手順は実家を売る手順と相場の調べ方にまとめています。
相続登記は自分でできますか
申請の代理や登記申請書等の書面の作成を業として行えるのは司法書士と弁護士に限られますが、本人が自分の登記を申請することは可能です。法務局では登記手続案内が行われています。期限があるため、書類がそろわない場合は先に相談する順番が安全です。
この記事で確認した一次情報と確認日
数値と制度は、2026年7月30日に下記のページで確認したものです。制度は年度で変わるため、実行の直前に同じページで再確認してください。金額や要件の判定が必要な部分は、税理士、司法書士、弁護士、自治体の窓口が相談先になります。
- 総務省統計局 令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要:空き家数900万2千戸、空き家率13.8%、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家385万6千戸
- 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例:居住用財産の3,000万円の特別控除の要件
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例:控除額、適用期限、建築時期と居住状況の要件、老人ホーム等入所の取扱い
- 国税庁 No.4152 相続税の計算:基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数
- 国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例:特定居住用宅地等は330平方メートルまで80%減額
- 法務省 相続登記の申請義務化について:令和6年4月1日施行、3年以内、10万円以下の過料、施行日前の相続は令和9年3月31日まで、相続人申告登記の範囲
- 法務省 自筆証書遺言書保管制度 手数料:保管の申請1通3,900円ほか
- 法務省 相続土地国庫帰属制度の概要:審査手数料は土地一筆14,000円、却下・不承認事由、負担金の考え方
- 裁判所 成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可:許可なく処分すると無効、申立手数料800円
- 国民生活センター 不用品回収サービスのトラブル(令和4年11月2日):相談件数の推移、無許可業者の問題、見積もりの確認点、家電4品目、クーリング・オフ
- 世田谷区 粗大ごみの出し方と粗大ごみの処理手数料について:処理券A券200円・B券300円、持ち込みは半額程度
- 業者料金の目安:みんなの遺品整理/価格.com/税理士法人チェスターの各公表値
