生前整理のやることリスト|順番と親への切り出し方

生前整理のやることを調べると、物の仕分けとエンディングノートの話に行き着きます。
実家がある家庭で先に効くのは、物・金・家・墓の4分類のうち金と家の情報です。相続が起きると年金の届出が10日、相続放棄が3か月、相続税が10か月、相続登記が3年で動き出します。やることの順番は、この期限から逆算して決まります。
この記事の目次
生前整理のやることは4つに分かれる。物・金・家・墓
やることリストを並べた記事の多くは、物の仕分け、デジタルの整理、財産目録、エンディングノート、遺言書という並びで組まれています。順番としては間違っていませんが、実家がある家庭には2つ足りません。家という不動産と、墓と仏壇です。この2つは親本人の意向がないと決められず、後回しにすると子の代で行き先を探すことになります。
編集部は、やることを4つの箱に分けて考えています。箱ごとに、誰が判断するか、いつまでに必要になるかが違います。
| 箱 | やること | 後で効く場面 |
|---|---|---|
| 金と契約 | 口座、保険、年金、引き落とし、デジタル契約の在りかを一覧にする | 死亡後の届出、解約、相続税の判定 |
| 家 | 登記と図面と境界の書類をそろえ、行き先の方針を決める | 売却、解体、相続登記 |
| 物 | 使う、渡す、売る、捨てるの4つに分ける | 家を空にする作業、処分費 |
| 墓と仏壇 | 誰が継ぐか、移すか、費用は誰が出すかを決める | 継ぐ人がいないときの選択 |
物の量がいちばん目に見えるので、物から手を付けたくなります。ただ、物は最後まで残っていても手続きを止めません。止まるのは、金と家の情報が分からないときです。生前整理の全体像と、決めておく5項目は生前整理とは?親が元気なうちに決めておく5つのことにまとめてあります。
順番は「期限のある手続き」から逆算して決まる
やることの優先順位を、体力や気分ではなく手続きの期限から決めると迷いません。相続が起きた後に走り出す期限を、確認できた一次ソースだけで並べます。いずれも2026年7月30日に確認した内容です。
| 手続き | 期限 | 先に要る情報 |
|---|---|---|
| 年金受給権者の死亡届 | 厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内(マイナンバーが収録されている場合は原則不要) | 年金証書、基礎年金番号 |
| 相続放棄の申述 | 自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内 | 借入と保証の有無、財産の概要 |
| 相続税の申告と納税 | 死亡したことを知った日の翌日から10か月以内 | 不動産、預貯金、保険の全体像 |
| 相続登記の申請 | 取得を知った日から3年以内(令和6年4月1日施行) | 登記の名義、持分、相続人の範囲 |
出典は、日本年金機構の年金受給者が亡くなったときの手続き、裁判所の相続の放棄の申述、国税庁 No.4205 相続税の申告と納税、法務省の相続登記の申請義務化についてです。相続放棄は申述人1人につき収入印紙800円と、裁判所ごとに定める連絡用の郵便切手がかかります。3か月で判断材料がそろわない場合は、期間の伸長を家庭裁判所に申し立てる手続きがあります。
並べると分かるのは、最短の期限が10日で、そこで要るのは物ではなく紙と番号だという点です。物の仕分けは、期限のある手続きを1つも止めません。だから順番は、金と契約、家の書類、物、墓と仏壇になります。相続が起きた後の手続きを期限順に並べた一覧は相続手続きの流れ|期限がある順に並べた一覧にあります。
始める年齢に決まりはありません。順番を動かすのは年齢より出来事で、住み替え、施設への入居、入院、退職、設備の大きな更新のどれかが見えたら、金と家が前に来ます。すでに相続が起きている場合も、そろえる情報は同じです。違うのは、本人に聞けるか、相続人全員で決めるかという手間の差だけです。
①金と契約の在りかを一覧にする(最初にやる)
金額を書き出す作業ではありません。どこに何があるかを1枚に集める作業です。金額は変わりますが、在りかは変わりません。親が書いても、聞き取って子が書いても構いません。
一覧に並べる項目
- 預貯金:金融機関名と支店名だけ。口座番号は通帳の置き場所を書く形でも足ります
- ネット銀行と証券、暗号資産:店舗がないため、紙が家に残りません。事業者名を書き出します
- 生命保険と医療保険、共済:証券の置き場所と、受取人になっている人
- 年金:年金証書の置き場所と、厚生年金か国民年金か
- 毎月の引き落とし:通帳の記載から拾えます。使っていない契約はここで解約できます
- 借入、ローン、保証:金額ではなく有無。3か月の判断に直結します
- 貸金庫と鍵の場所、実印と印鑑登録カードの置き場所
デジタル契約は、ロックの開け方まで決めないと止まらない
国民生活センターは令和6年11月20日の報道発表で、デジタル遺品の相談事例を公表しています。スマートフォンでインターネットを利用する人は60代で78.3%、70代で49.4%(総務省の令和5年通信利用動向調査)で、遺族がIDとパスワードの手がかりを持たないために契約の確認や解約に進めない例が挙がっています。同資料は、万一のときに遺族が端末のロックを解除できる状態にしておくこと、ID等を紙に書く場合は修正テープで隠すなど第三者に見えない工夫をすることを挙げています(国民生活センター 今から考えておきたいデジタル終活/2026年7月30日確認)。
親のパスワードを教えてもらう交渉にすると、たいてい断られます。編集部が現実的だと考えるのは、パスワードそのものではなく「開け方が書いてある紙の置き場所」を1つ決める形です。中身を見せる必要はなく、場所だけを共有します。
②家の書類をそろえる。取れる紙と実費が決まっている
実家の話は、感情の前に紙で詰まります。売る、貸す、解体するのどれを選んでも、同じ書類を求められます。親が元気なうちなら、本人が取れる書類も本人に頼めます。
集める紙
- 登記事項証明書:土地と建物それぞれ。名義、持分、抵当権の有無が分かります
- 公図と地積測量図(地図等情報の証明書):境界と接道の確認に使います
- 固定資産税の納税通知書と課税明細:どの不動産を持っているかの一覧になります
- 固定資産課税台帳の写し(名寄帳):市区町村ごとに名称と手数料が違うため、窓口で確認します
- 建築確認や検査済証、建物の図面、増改築の記録:解体と売却の見積もりで使います
- 境界の覚書、隣地との取り決めの書面
- リフォームや設備交換の領収書:譲渡所得の計算に関わる可能性があるため、判断は税理士に渡します
法務局で取る書類の手数料
登記関係の実費は法定で決まっています。令和7年4月1日からの金額で、登記事項証明書は書面請求が1通600円、オンライン請求で送付を受ける場合が520円、オンライン請求で窓口交付を受ける場合が490円です。登記事項要約書は500円、公図や地積測量図などの地図等情報の証明書は書面請求500円、オンライン請求の送付470円、窓口交付440円です(法務省 登記手数料について/2026年7月30日確認)。
金額の桁が小さいので後回しにされますが、この紙がないと業者は見積もりを出せず、話が1か月単位で止まります。家の行き先そのものをどう決めるかは、親の意向の確認から入ります。
③物は4つに分ける。捨てるより先に「渡す」を決める
物の仕分けは、要る、要らない、保留の3分類で紹介されることが多いです。実家では保留の山が動かなくなるため、編集部は4つに分ける形を勧めます。
- 使う:今の暮らしで使っている物。触りません
- 渡す:誰に渡すかを名前で決める物。仏具、写真、印章、農具、工具のように、値段は付かないのに引き取り手が限られる物がここに入ります
- 売る:買取に出す物。買取額が作業費と相殺される見積もりもあります
- 捨てる:自治体のルールで出す物と、業者に頼む物
渡す物を紙に残していないと、後から遺産分割の話に混ざります。渡す先が決まっている物は、その場でメモに名前を書くだけで終わります。
手を付ける順番
判断が軽い物から始めると止まりません。消耗品と食器と寝具、次に衣類、次に家具と家電、最後に思い出の物と紙類という順番です。逆にやると、1枚の写真で2時間が終わります。
処分費の観点では、量と体積が大きい物から減らすほど後の見積もりが下がります。たんす、ソファ、ベッド、寝具、蔵書、食器がその代表です。粗大ごみの手数料と出し方は市区町村ごとに違うので、あなたの実家がある自治体の窓口で品目別の金額を確認してください。
紙類だけは最後にしてください。図面、境界の資料、納税通知書、領収書は、見た目がただの古い書類です。物を減らす勢いのまま処分すると、家の手続きで戻れなくなります。
④墓と仏壇は、行き先を決めるところまでが生前整理
墓と仏壇は、片づけの記事ではほとんど扱われません。物として運べないうえ、決める相手が家族の外側(寺院や墓地の管理者)にいるためです。生前整理でやるのは実行ではなく、決めることの確定です。
- 誰が継ぐか。継ぐ人がいない場合、どうしたいか
- 今の墓を続けるか、移すか、返すか。親本人の希望を言葉で残す
- 費用を誰が出すか。親の資産から出すのか、子が立て替えるのか
- 寺院や墓地の管理者との関係。年間の管理料の金額と支払い方法、連絡先
- 仏壇を誰の家に置くか。置けない場合の選択肢
費用は地域と方法で大きく変わるため、幅で押さえるところまでにします。手順と金額は、墓地の管理者と自治体の窓口に確認する順番になります。編集部は寺院ではないので、宗派ごとの作法や供養の内容についての判断はしません。
ここで決めた内容は、口約束にせず、次の項目のノートか遺言に落とします。管理料の請求書は、親と実家の話を始める入口としても使えます。
ノートと遺言、どちらに何を書くか。費用は法定で決まっている
4つの箱で決めたことを、後から証明できる形に変える作業です。エンディングノートと遺言は役割が違います。ノートは在りかと希望の記録で、書式は自由です。財産の分け方を法的に決めるのは遺言の側です。
ノートに書くこと
- 金と契約の一覧(金融機関名、保険、引き落とし、デジタル契約)
- 書類とロック解除の手がかりの置き場所
- 連絡してほしい人、知らせなくてよい人。年賀状や住所録を見ながら作ると早く、付き合いの整理も同時に進みます
- 墓と仏壇の希望、管理料の支払い先
- 医療と介護の希望
遺言は2つの型で費用が違う
自筆証書遺言は法務局の保管制度が使えます。手数料は保管の申請が1件3,900円、遺言書の閲覧がモニターで1回1,400円・原本で1回1,700円、遺言書情報証明書が1通1,400円、遺言書保管事実証明書が1通800円です。保管の申請の撤回や住所等の変更の届出に手数料はかかりません(法務省 自筆証書遺言書保管制度の手数料/2026年7月30日確認)。
公正証書遺言は公証人手数料令で決まっています。目的の価額ごとに、200万円超500万円以下が13,000円、500万円超1,000万円以下が20,000円、1,000万円超3,000万円以下が26,000円、3,000万円超5,000万円以下が33,000円、5,000万円超1億円以下が49,000円です。手数料は相続させる人ごとに計算して合算し、全体の財産が1億円以下のときは遺言加算として13,000円が足されます。原本の枚数が3枚を超えると1枚あたり300円、公証人が自宅や施設に出張する場合は日当が1日2万円・4時間以内1万円と交通費がかかります(日本公証人連合会 公正証書遺言の作成手数料/2026年7月30日確認)。
どちらの型が向くかは、相続人の数、不動産の分け方、揉める見込みで変わります。編集部は士業ではないため、有利不利の判定はしません。相続人の数、不動産の名義と持分、借入の有無をメモにしてから、弁護士か司法書士に持ち込む順番が早いです。
親への切り出し方。物の話から入ると止まる
やることリストが完成しても、親が乗らなければ1つも進みません。会話が止まるのは、片づけの提案として持ち出したときです。物の話は、持ち主の判断を否定する形になりやすいためです。
入口は紙にする
目の前にある事務の紙から入ると、会話が続きます。固定資産税の納税通知書、墓の管理料の請求書、保険の更新案内、年金の書類、給湯器や屋根の見積もり。どれも親が受け取っているもので、片づけの話ではありません。
言い方の型3つ
- 主語を手続きにする:「片づけて」ではなく「連絡先だけ教えて」。やってほしい作業ではなく、聞きたい情報を1つに絞ります
- 物ではなく場所を聞く:「通帳はどこ」ではなく「もし何かあったとき、最初に開ける引き出しはどこ」。中身の説明を求めないので身構えられません
- 捨てる話をしない:捨てるか残すかの二択にすると会話が終わります。写真は撮って残す、家具は売る、農具は使う人に譲る。出口を3つ以上出すと、親が選ぶ側に立てます
断られたときの落とし所
全部が無理でも、金と契約の在りかを数行だけ残せれば、期限のある手続きは動きます。1回で全部を取ろうとせず、1回の帰省で1項目にすると続きます。聞く人は1人に決めてください。兄弟が並んで囲むと、相談ではなく詰問になります。
親の判断能力が落ちてからでは、実家の売却に家庭裁判所の許可が必要になる場面が出てきます。時期の考え方は生前整理とは?親が元気なうちに決めておく5つのことで扱っています。
自分でやるか頼むか。資格は民間資格だと知っておく
生前整理を看板にした資格がいくつもあります。国家資格ではなく、民間団体の認定です。生前整理アドバイザーは生前整理普及協会の認定で、2級から準1級、1級、認定指導員へ順に進む形で、途中の級からは受講できません。ほかに認定作業士、診断士、相談士などの講座が用意されています(一般社団法人生前整理普及協会 講座のご案内/2026年7月30日確認)。遺品整理士も民間の認定資格です。
資格の有無は、作業の丁寧さや料金の妥当性を保証するものではありません。見るのは、一般廃棄物処理業の許可の有無、内訳のある見積書を出すか、キャンセル料の条件を先に示すかです。資格はその次の材料になります。
頼む範囲は切って渡せる
- 大型家具と家電の搬出だけ
- 1部屋だけ、物置と庭だけ
- 買取を併用して総額を下げる
- 立会いは誰がするか。立会いなしにすると、残す物の判断が業者に渡ります
料金は物量と搬出経路で動くため、2社以上の訪問見積もりが前提になります。生前整理は本人が立ち会って残す物を決めるので、遺品整理より仕分けの時間が長くなり、時間制の料金が向く場合もあります。間取り別の費用目安と、アドバイスのみ・財産目録の作成代行といった作業単位の料金は生前整理とは?親が元気なうちに決めておく5つのことに一覧で置いてあります。
料金と対応内容を先に比べる
遺品整理士が在籍する全国の業者を、地域と作業内容で絞って比較できます。相見積もりを前提に2社以上を候補に残すと、当日の追加料金の話に巻き込まれにくくなります。
遺品整理の料金を比べる生前整理のやることについてよくある質問
何から始めればいいですか
金と契約の在りかを1枚にすることからです。金額を書く必要はありません。金融機関名、保険、毎月の引き落とし、借入の有無の4行でも、死亡後の期限に間に合う情報になります。
親が話に乗りません
片づけを議題から外してください。納税通知書、墓の管理料、保険の更新のような紙を指して1項目だけ聞く形にすると続きます。1回の帰省で1項目で十分です。
業者に頼むタイミングはいつですか
4つの箱のうち、渡す物と売る物が決まってからです。決まる前に呼ぶと、判断を業者に預ける形になり、後から後悔が出ます。逆に、大型家具の搬出だけを先に頼むのは順番として問題ありません。
費用はどのくらい見ておけばいいですか
公表されている目安でも、同じ間取りで下限と上限が数倍違います。金額を1点で覚えるより、幅が出る理由(物量、搬出経路、買取の有無、階数とエレベーター)を押さえたほうが見積書を読めます。
相続登記や税金の判断も生前整理でできますか
判断はできません。登記の申請の代理や書面の作成を業として行えるのは司法書士と弁護士で、税額の計算は税理士の領域です。生前整理でやれるのは、名義、持分、建築年、相続人の数、借入の有無をそろえておくことまでです。そこまで用意すると、専門家に会ってからの時間が短くなります。
