特殊清掃の費用相場|通常の遺品整理と違う点

親の家の片付けの途中で必要だと分かった人も、賃貸の管理会社から先に連絡が来た人も、確認する順番は同じになる。
保険金支払いデータの平均は、遺品整理(残置物処理)が29万4131円、原状回復が49万4344円。ただし同じデータの最小は422円、最大は756万円で、平均はほぼ目安にならない。効くのは発見までの日数と汚染の深さの二つ。
この記事の目次
特殊清掃と遺品整理は、見積書の上でも別の作業
特殊清掃は、国の資料では「孤独死などが発生した住居において、原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービス」と説明されている(総務省行政評価局「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」令和2年3月、および国土交通省ガイドラインの脚注。2026年7月31日確認)。
遺品整理は、残す物と処分する物を仕分けて運び出す作業。特殊清掃は、体液や腐敗によって建材に入り込んだ汚染と臭気を、床材や壁の側から取り除く作業。目的が違うので、多くの業者は見積書でも別項目として立てる。
| 比べる点 | 遺品整理 | 特殊清掃 |
|---|---|---|
| 対象 | 家財・私物・残置物 | 床材・壁・下地・排水管などの建物側 |
| 作業の中心 | 仕分け、搬出、廃棄物の処分 | 汚染物の除去、消毒、消臭、害虫駆除 |
| 終わりの判定 | 物が無くなること | 臭いが戻らないこと |
| 金額の決まり方 | 間取りと物量でおおむね決まる | 汚染がどこまで染みたかで大きく振れる |
この二つを混ぜた総額だけを見ると、他社と比べられなくなる。相見積もりを取るなら、まず見積書がこの二層に分かれているかを確認する。
一次データで見た実額。平均は79万円、幅は422円から756万円
この分野で唯一まとまった実額データは、一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会が毎年公表している「孤独死現状レポート」になる。孤独死保険の支払い実績をもとにした集計で、最新は第10回(2025年12月22日公表、収集対象期間2015年4月〜2025年3月)。2026年7月31日時点でこれが最新版。
| 費目 | 平均損害額 | 最大損害額 | 最小損害額 |
|---|---|---|---|
| 遺品整理(残置物処理)費用 | 294,131円 | 4,253,473円 | 1,080円 |
| 原状回復費用 | 494,344円 | 7,564,673円 | 422円 |
足せば平均約79万円になる。競合記事が「孤独死の清掃費用は平均60万円台から80万円」と書くのは、この二つを合算した数字を指している。
ただし同じ表の最小損害額は原状回復で422円、最大は756万円。1万8千倍の開きがある区間の平均値を、自分の家の見積もりの妥当性判断に使うのは無理がある。平均は「そのくらいかかることがある」という上限感覚の材料であって、予算ではない。
もう一つ、単年度で見ると数字が動いている。同レポートの2024年度単年度データでは、遺品整理(残置物処理)費用の平均損害額が266,265円、原状回復費用の平均損害額が610,507円。レポート本文は原状回復が単年で高い理由を、物価高騰による材料・工費等の影響と説明している。数年前の記事に載っている相場表は、この上昇分だけ低く見えている可能性がある。
出典:一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会「第10回孤独死現状レポート」(2025年12月22日公表) https://www.shougakutanki.jp/general/info/kodokushi/index.html /2026年7月31日確認
金額を決める最大の変数は間取りではなく、発見までの日数
間取り別の料金表は各社が出しているが、同じ1Kでも数万円から数十万円まで振れる。振れ幅を作っているのは日数のほうになる。
第10回孤独死現状レポートの集計(n=9,249、死亡推定日・第一発見者不明分を除く)では、発見までの日数の分布はこうなっている。
| 発見までの日数 | 割合 |
|---|---|
| 3日以内 | 37.0% |
| 4〜14日 | 28.3% |
| 15〜29日 | 15.4% |
| 30〜89日 | 15.8% |
| 90日以上 | 3.5% |
平均日数は19日。3日以内に見つかったケースは4割に届いていない。
日数が延びると、汚染が届く深さが変わる。おおまかには三段階で考えると見積書が読める。
- 表面で止まっている段階。床材の表面と寝具の処分、消毒と消臭で終わる
- 下地まで届いた段階。フローリングや畳、その下の合板を剥がして処理する
- 躯体や配管まで届いた段階。床を開口する、排水管を洗浄する、階下の天井まで及ぶことがある
この段階が一つ上がるごとに、解体費と廃棄物処分費と復旧工事費がまとめて乗る。間取りが同じでも総額が二倍以上変わるのは、ここが理由になる。浴室やトイレなど狭くて排水設備がある場所で見つかった場合も、搬入搬出の制約と配管処理が加わって上振れしやすい。
各社が公開している目安を見ると、ブルークリーン株式会社は1K〜1Rで78,000〜280,400円、1DK〜3LDKで135,000〜482,000円、4DK以上で245,000〜690,000円という幅を示している(同社サイト、2026年7月31日確認)。EPARKくらしのレスキューの解説は1K/1Rで約3万〜30万円、4LDK以上で約20万〜60万円という幅を挙げている(同、2026年7月31日確認)。どちらも幅で示されているのは、日数という変数が入っているからになる。
見積書の内訳。どこまでやるかで総額が倍近く動く
特殊清掃の見積書は、工程ごとに行が立つのが普通になる。行が立っていない一式見積もりは、比較にも交渉にも使えない。
- 一次処理。汚染物と汚染された家財の除去、初期の消毒
- 消毒・除菌。薬剤による処理
- 消臭。オゾン処理などを回数と時間で計上することが多い
- 害虫駆除。ハエ、ウジ、その他の駆除
- 汚染建材の解体撤去。畳、フローリング、下地、建具など
- 廃棄物の処分。品目と量で変動する
- 原状回復工事。床の張り替え、クロスの張り替え、設備の交換
総額を大きく分けるのは、最後の原状回復工事を含めるかどうかになる。臭いと汚染を止めるところまでを特殊清掃と呼び、内装を戻す工事は別発注という切り方をする業者もあれば、まとめて一社で受ける業者もある。前者の見積もりと後者の見積もりを金額だけで比べると、安く見えたほうが結局高くつく。
もう一点、消臭は一度で終わるとは限らない。汚染が下地まで達していた場合、剥がして処理してから再度消臭し、養生期間を置いて臭い戻りを確認する工程が入る。作業に数日から数週間かかるケースがあるのは、この確認待ちが含まれるためになる。見積もり時に「臭い戻りが出た場合の再作業は費用に含まれるのか」を書面で確認しておくと、あとの追加請求の争点が一つ減る。
費用を誰が払うのか。賃貸と持ち家で分岐する
賃貸物件なら、部屋を元に戻す義務は賃貸借契約に基づいて借主側にある。借主本人が亡くなっている以上、請求は契約の内容に沿って、連帯保証人や相続人に向かうことになる。持ち家の実家なら、費用はその不動産を含む相続財産を引き継ぐ側の負担になる。
誰にいくら請求できるか、請求されたものを支払う義務があるかは、契約書の文言と個別事情で変わる。編集部は士業ではないので、金額の妥当性や支払い義務の有無の判断はしない。争いになりそうなら弁護士に、相続の手続きなら司法書士や税理士に確認する範囲になる。
保険が絡む場合の実額も、第10回孤独死現状レポートに出ている。原状回復費用は平均損害額494,344円に対して、孤独死保険の平均支払保険金は315,510円。遺品整理(残置物処理)費用は平均損害額294,131円に対して平均支払保険金293,360円。家賃保証の平均支払い額は337,035円。
原状回復のほうは、損害額と支払保険金に差が出ている。保険に入っていたとしても全額が埋まるとは限らないという意味になる。確認する先は三つ。故人が加入していた家財保険や少額短期保険、賃貸物件なら家主側が加入している保険、持ち家なら火災保険の特約の範囲。いずれも補償条件は契約ごとに違うので、証券と約款を先に探す。
賃貸の場合、費用の話と並行して、部屋の明け渡し期限と家賃の発生が進む。発見から保険会社への連絡までに要した日数は平均18日というデータもあり、請求手続きを行う相続人が判明するまで時間がかかるケースが多いとレポートは説明している。連絡先の整理を先に済ませておくと、この空白が短くなる。
金額の妥当性は、一社の見積書だけでは判断できない
特殊清掃と遺品整理をまとめて受けられる業者は多い。内訳が工程ごとに分かれた見積もりを複数集めて、同じ工程どうしで並べると、高い安いではなく作業範囲の違いが見える。
遺品整理の料金を比べる相続放棄を考えているなら、発注する前に確認する
費用が高額になりそうで相続放棄を検討する場合、順番を間違えないほうがいい。
相続放棄の申述は、家庭裁判所に対して「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」に行う。申立てできるのは相続人、申立手数料は申述人1人につき収入印紙800円(裁判所ウェブサイト、2026年7月31日確認)。
問題になるのは、故人の財産に手を付けたと評価される行為をしてしまうと、相続を承認したものと扱われるおそれがある点になる。故人の預金から特殊清掃費用を払う、価値のある遺品を処分したり持ち帰ったりする、といった行為がこれに当たるかどうかは個別判断になる。
編集部は法律の解釈をしない。放棄を少しでも検討しているなら、清掃業者に発注する前に弁護士か司法書士に、この作業と支払いが放棄に影響するかを確認する。3か月という期間が動いている以上、確認の順番を後ろに回すと選択肢そのものが消える。
賃貸で管理会社から急ぎの対応を求められている場合も同じで、急かされて自分名義で発注する前に、誰の債務として処理するのかを一度書面で整理してもらう。
特殊清掃を入れると、その家の売却・賃貸に告知が付く
実家の片付けとして特殊清掃を考えている場合、清掃費用と同じくらい効いてくるのが、そのあとの家の扱いになる。
国土交通省は令和3年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定している。要点はこうなる(2026年7月31日確認)。
- 老衰や病死などの自然死、階段からの転落や入浴中の溺死、誤嚥といった日常生活の中の不慮の死は、賃貸借取引でも売買取引でも原則として告げなくてよい
- ただし、長期間にわたって人知れず放置されたこと等に伴い、いわゆる特殊清掃や大規模リフォーム等が行われた場合は、買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性があるものとして扱われる
- 賃貸借取引については、特殊清掃等が行われることとなった死が発覚してから概ね3年間を経過した後は、原則として借主に告げなくてよい。ただし事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案はこの限りではない
- 告げる場合の内容は、事案の発生時期(特殊清掃等が行われた場合は発覚時期)、場所、死因、特殊清掃等が行われた旨
売買取引について、経過期間だけで告知不要とする扱いはガイドラインに書かれていない。つまり、賃貸に出す予定と売る予定とで、この線の意味が変わる。
ここから逆算すると、特殊清掃の発注時に確認しておく項目が一つ増える。作業前後の写真と、どの範囲にどの処理をしたかの記録を残してもらうこと。売却時に買主から状態を問われたとき、記録があるかないかで説明の重さが変わる。臭いが完全に消えているかの確認も、感覚ではなく作業記録と併せて残す。
実家をどうするかまで含めて考えるなら、片付けの費用そのものは遺品整理の費用相場|間取り別の目安と追加料金の内訳で間取り別の目安を確認しておくと、総額の見当が付く。
出典:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001426603.pdf /2026年7月31日確認
業者選び。この業界には業法がない前提で見る
特殊清掃と遺品整理を選ぶときに前提として知っておくべきことが一つある。総務省行政評価局の調査報告書(令和2年3月)は、遺品整理サービスについて、日本標準産業分類に独立した分類がなく、法令上定義しているものも見当たらず、いわゆる業法のようなものもない、と明記している。
免許で足切りできない以上、判断材料は許可と書面になる。
一般廃棄物の許可を持っているか
家庭の遺品整理で捨てることにしたごみは一般廃棄物に当たる。国民生活センターの資料は、一般廃棄物は市町村から委託を受けた事業者、または市町村長から一般廃棄物処理業の許可を受けた事業者でなければ運搬や処分を行うことはできない、産業廃棄物処理業や古物商の許可では不可、と注記している。
総務省の同報告書では、調査に協力した69事業者のうち、一般廃棄物収集運搬業の許可を取得しているのは34事業者。半数程度という水準になる。許可がない業者が悪いという話ではなく、その場合は許可を持つ事業者と提携して処分するのが通常の形になる。確認するのは「どの市町村の許可で、誰が運ぶのか」の一点。
書面で確認する三点
国民生活センターが2018年7月19日に公表した注意喚起(遺品整理サービスに関する相談は2013年度73件、2014年度109件、2015年度90件、2016年度114件、2017年度105件で推移)では、消費者へのアドバイスとして、複数社から見積もりを取ること、作業内容と費用を明確にした見積書の内容を十分に確認すること、料金やキャンセル料や具体的な作業内容を事前に確認することが挙げられている。見積もり自体に出張料や見積料がかかるかも、呼ぶ前に確認する。
無許可業者の見分け方や実際のトラブル類型は遺品整理業者とのトラブル例|無許可業者の見分け方に、見積書のどこを見るかは遺品整理の業者の選び方|見積もりで見る5項目にまとめてある。
下げられる費用と、下げられない費用を分ける
金額を圧縮したいときに動かせる部分は限られている。動かせないものに時間を使うと、その間に汚染が進んで逆に上がる。
| 下げられない | 下げられる |
|---|---|
| すでに経過した日数 | 作業範囲の切り分け(どこまで復旧するか) |
| 汚染が届いた深さ | 汚染していない部屋の家財を自分で処分する |
| 発見場所(浴室・トイレ等の条件) | 特殊清掃と遺品整理を同じ業者にまとめる |
| 廃棄物の法定の処理ルール | 加入している保険の適用範囲を先に確認する |
実務的に効くのは三つになる。
- 着手を早める。日数だけが一方向に増える変数で、待つほど工程が増える
- 汚染していない部屋の家財を先に自分で片付ける。特殊清掃の単価が高いのは汚染箇所の処理であって、無関係な部屋の物量まで同じ単価で払う必要はない
- 保険の証券を先に探す。原状回復の平均支払保険金は31万5510円という一次データがあり、埋まる部分と埋まらない部分を先に把握しておくと発注範囲を決めやすい
逆に、相場より極端に安い見積もりは避ける。国民生活センターの注意喚起でも、見積金額が他より低いことだけを理由にすぐ契約しないよう促されている。処分費を削れる先は法令上限られているので、極端な安さには理由がある。
よくある質問
自分で清掃することはできるのか
汚染が表面で止まっている段階でも、感染対策の装備と汚染物の処分ルートが必要になる。家庭から出た汚染物も一般廃棄物の処理ルールの中で扱うことになるため、市町村の処理ルールを確認しないまま運び出すことはできない。臭気は下地に入ると表面の清掃では戻らないので、部分的に自分でやるなら「汚染していない部屋の物を片付ける」までにとどめるのが現実的になる。
消臭は完全に消えるのか
汚染が下地や躯体まで届いていた場合、消臭だけでは戻る。剥がして処理するところまで含まれているかを見積書で確認し、臭い戻りが出たときの再作業の扱いを書面に残す。
作業は何日かかるのか
汚染の深さと、消臭後の確認待ちを含めるかで変わる。数日で終わるケースもあれば、解体と復旧まで入って数週間になるケースもある。賃貸で明け渡し期限がある場合は、期限を先に伝えて工程を組んでもらう。
費用がどうしても払えない場合は
加入している保険の適用範囲を確認したうえで、相続放棄を含めた選択肢を弁護士か司法書士に相談する。放棄を検討しているなら、発注と支払いより先に相談する。
事故物件になってしまうのか
国土交通省のガイドライン上、自然死は原則として告知不要だが、長期間放置され特殊清掃等が行われた場合は扱いが変わる。賃貸に出すのか売るのかで意味が変わるので、清掃の記録を残したうえで宅地建物取引業者に確認する。
