相続した土地を売る税金|取得費加算と3年10か月の期限

相続した土地を売って税金がかかるのは、売れた金額ではなく、もうけの部分だけです。
相続なら親の取得日を引き継ぐため税率はほぼ長期の20.315%。払った相続税の一部を経費に足せる取得費加算は、相続開始から実質3年10か月で締まります(2026年7月30日確認)。
この記事の目次
課税されるのは売れた金額ではなく、譲渡所得の部分だけ
土地の売却で入ってきた金額に、そのまま税率が掛かるわけではありません。土地建物の譲渡所得は給与などと分けて計算する分離課税で、対象になるのは下の式で出た金額です。
譲渡所得 = 売れた金額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
取得費は、その土地を買い入れたときの購入代金や購入手数料などです。相続や贈与で取得した土地建物は、被相続人や贈与者が買い入れたときの金額を基に計算し、取得の時期もそのまま引き継ぎます(出典:国税庁 No.3202・2026年7月30日確認)。相続した日の評価額ではなく、親が買った当時の金額が基準になる、という点が最初の分かれ目です。
譲渡費用は、売るために直接かかった費用です。国税庁が例に挙げているのは、売るために支払った仲介手数料、印紙税で売主が負担したもの、土地を売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額、借地権を売るときの名義書換料などです。一方で、修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用は譲渡費用になりません(出典:国税庁 No.3255・2026年7月30日確認)。
差し引いてもうけが残らなければ、譲渡所得の税金は出ません。相続した土地で税額が膨らむのは、売値が高いからではなく、取得費が小さく見積もられるからです。
税率は所有期間で二段。相続なら親の取得日を引き継ぐ
譲渡所得が出た場合の税率は、譲渡した年の1月1日現在の所有期間で二段に分かれます。
| 区分 | 所有期間(譲渡した年の1月1日現在) | 所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 39.63% |
合計が端数になるのは復興特別所得税が乗るためです。平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付します(出典:国税庁 No.3208/No.3211・いずれも2026年7月30日確認)。
相続で取得した土地の場合、所有期間は原則として被相続人が取得した日から計算します(出典:国税庁 No.3202・2026年7月30日確認)。親が何十年も持っていた土地なら、相続の翌月に売っても長期の区分に入ります。相続してから5年待つ必要はありません。
逆に、親が買って数年で亡くなった土地は短期になり得ます。税率がほぼ倍違うため、登記事項証明書で被相続人の取得年月日を先に確認しておくと、売る時期の判断材料になります。
取得費加算の特例。払った相続税の一部が経費になる
相続した土地を売るときの主役は、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例です。相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できます(出典:国税庁 No.3267・2026年7月30日確認)。
使うための条件は二つです。
- その財産を取得した人に相続税が課税されていること
- その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
一つ目が先に効きます。基礎控除の範囲内で相続税がかからなかった場合、加算する相続税額がないため、この特例は効果を持ちません。相続税の申告をしたかどうかが、そのまま入口になります。
加算する金額は次の式で計算します(国税庁 No.3267)。
その者の相続税額 × その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した財産の相続税評価額 ÷(その者の取得財産の価額+その者の相続時精算課税適用財産の価額+その者の純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産の価額)
相続財産全体のうち、売った土地が占める割合の分だけ相続税を経費に振り替える形です。式の動きを見るために仮の数字を置くと、相続税額が600万円、分母が6000万円、そのうち売った土地の相続税評価額が1500万円なら、加算できるのは600万円×1500万円÷6000万円で150万円という計算になります。
上限もあります。計算した金額が、この特例を適用しないで計算した譲渡益の金額を超える場合は、その譲渡益相当額が加算の限度です(国税庁 No.3267)。もうけを超えて経費を作れるわけではないため、赤字にして他の所得と相殺する使い方はできません。
適用を受けるためには、一定の書類を添えて確定申告をすることが必要です(国税庁 No.3267)。税額が0円になる場合でも、申告しなければ特例は当たりません。加算できる金額は相続税の申告書の数字を使う計算になるため、編集部は式の形までを示します。金額の確定は税理士か税務署で当ててください。
3年10か月はどこから出てくるのか
取得費加算の期限は、条文の書き方だと相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。分解すると二段になっています。
- 相続税の申告期限=被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内(出典:国税庁 No.4205・2026年7月30日確認)
- そこからさらに3年
10か月と3年を足すと3年10か月です。この言い方は条文の言葉ではなく、逆算しやすいように足した目安です。
日付で追うと分かりやすくなります。相続開始が2026年3月10日だとします。
| 期限 | 日付の例 | 根拠 |
|---|---|---|
| 相続税の申告期限 | 2027年1月10日 | 国税庁 No.4205 |
| 取得費加算が使える譲渡の期限 | 2030年1月10日ごろ | 国税庁 No.3267 |
| 空き家の3000万円控除が使える譲渡の期限 | 2029年12月31日 | 国税庁 No.3306 |
| 譲渡した年の確定申告 | 翌年2月16日から3月15日 | 国税庁 No.2020 |
判定するのは譲渡の日です。売買契約を結んだだけでは終わらず、引き渡しと決済まで進める必要があるため、買主を探す期間を差し引いて考えることになります。境界の確認や相続登記が済んでいない土地では、そこに数か月単位で時間が乗ります。
相続した土地を売るまでの手順は相続した土地を売る流れに分けて整理しています。期限から逆算するときは、そちらの所要期間と並べてください。
相続税がかかったかどうかを先に確かめる
取得費加算は相続税を課税されていることが入口です。申告が必要だったか、いくら加算できるかは、相続税の申告書の数字を使う計算になります。
無料で相続税の相談をする土地だけを相続したとき、3000万円控除は原則届かない
相続した不動産の税金でよく紹介される空き家の3000万円特別控除は、正式には被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例です。名前のとおり、要件が家屋の側に付いています(出典:国税庁 No.3306・2026年7月30日確認)。
- 家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
- 相続の時から譲渡の時まで、事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと
- 売却代金が1億円以下であること
- 売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例など他の特例の適用を受けていないこと
もともと家が建っていなかった土地、親が住んでいなかった土地、貸していた土地は、この控除の対象になりません。相続した土地だけを売る人の多くは、ここで外れます。
例外は、家屋を取り壊してから敷地を売る場合です。被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に敷地等を売ることが要件として書かれており、被相続人が住んでいた家を壊した跡地であれば土地の売却でも当たり得ます(国税庁 No.3306)。ただし相続の時から譲渡の時までの利用制限は続くため、売れないあいだに駐車場として貸すと外れます。
控除額は最高3000万円ですが、令和6年1月1日以後に行う譲渡で相続人の数が3人以上である場合は2000万円までです。制度そのものの適用期間は平成28年4月1日から令和9年12月31日までで、相続に紐づく期限は相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです(国税庁 No.3306)。要件と必要書類は空き家の3000万円特別控除、家屋を含めて売る場合の全体像は実家を売ったときの税金に分けています。
そして取得費加算とは選択適用です。上の6番目の要件がそれを示しています。両方の条件を満たす土地なら、どちらが有利かを金額で比べてから選ぶことになります。
売値が低い土地に効く、低未利用土地の100万円控除
売値が数百万円にとどまる土地では、譲渡所得そのものが小さいため、3000万円控除の話が届きません。そこに当たるのが低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除です。長期譲渡所得の金額から100万円を控除でき、譲渡所得の金額が100万円に満たない場合はその金額が控除額になります(出典:国税庁 No.3226・2026年7月30日確認)。
主な要件は次のとおりです(国税庁 No.3226)。
- 都市計画区域内にある一定の低未利用土地等であること
- 売った年の1月1日において所有期間が5年を超えること
- 売手と買手が親子や夫婦など特別な関係でないこと
- 売った金額が、上にある建物等の対価を含めて500万円以下(一定の区域内は800万円以下)であること
- 売った後にその土地が利用されること
適用期間には注意が必要です。国税庁の同ページは令和7年4月1日現在の法令等に基づいており、令和2年7月1日から令和7年12月31日までと書かれています。一方、令和8年度税制改正でこの特例は3年延長され、令和8年1月1日から令和10年12月31日までの譲渡が対象になったことが自治体の案内で示されています(出典:横浜市の案内および財務省 令和8年度税制改正の大綱・いずれも2026年7月30日確認)。売る時点で有効な期限は、国税庁の最新ページと市区町村の窓口の両方で当ててください。
この控除を使うには、市区町村長から低未利用土地等確認書の交付を受けて確定申告する流れになります。確認書を出すのは税務署ではなく市区町村の都市計画や住宅の部署で、申請から交付まで日数がかかります。売買契約の日程を決める前に、窓口の所要日数を聞いておくほうが安全です。
500万円の線に入るかどうかは、査定でしか分からない
控除の要件は売った金額で判定されます。使える特例を絞り込む前に、その土地がどの価格帯なのかを複数社の査定で確かめておくと、順番を間違えにくくなります。
無料で査定額を調べる取得費が分からないと5%になる。先に探す場所
相続した土地で税額が跳ねる最大の原因は、税率でも特例でもなく、親がいくらで買ったのか分からないことです。
取得費が分からなかったり、実際の取得費が譲渡価額の5%より少ないときは、譲渡価額の5%相当額を取得費とすることができます(出典:国税庁 No.3258・2026年7月30日確認)。3000万円で売って取得費が不明なら、取得費は150万円です。残りがほぼ全部もうけとして扱われます。
この5%は救済ではなく、低いほうへ倒れた結果です。だから先に探します。
- 売買契約書、領収証、重要事項説明書
- 住宅ローンの契約書と償還予定表、通帳の振込記録
- 当時の分譲パンフレットや価格表
- 登記事項証明書に残る抵当権の設定額と設定年月日
- 親の確定申告書の控えや、仲介した不動産会社の記録
取得費に入るのは購入代金だけではありません。業務に使われていない土地建物を相続や贈与により取得した際に相続人や受贈者が支払った登記費用や不動産取得税の金額も取得費に含まれます(出典:国税庁 No.3270・2026年7月30日確認)。相続登記でかかった費用の領収証は、売るまで捨てないでください。
ただし同じページに、5%相当額を取得費とする場合は相続人などが支払った登記費用などを取得費に含めることはできない、とも書かれています(国税庁 No.3270)。5%で計算するなら登記費用を足せない、という関係です。契約書が出てくるかどうかで足せるものまで変わるため、書類探しを先に置きます。
書類が出てこない場合に、当時の公示価格や取引事例から取得費を推計する方法が実務で使われることがあります。ただし認められる範囲は事案ごとの判断になるため、5%で計算するか推計を試みるかは税理士に当ててから決める領域です。編集部は士業ではないため、どちらが通るかの判断はしません。
譲渡所得のほかに出ていく税と費用
もうけが出なくても、売る手続きそのものに税と費用がかかります。
相続登記の登録免許税。相続による土地の所有権移転登記は、固定資産課税台帳に登録された価格を課税標準として1000分の4です(出典:国税庁 No.7191・2026年7月30日確認)。売る前に名義を相続人へ移す必要があるため、ここは避けられません。
印紙税。売買契約書に貼る印紙は契約金額の段で決まります。軽減後の税額は、記載金額500万円超1000万円以下で5000円、1000万円超5000万円以下で1万円、5000万円超1億円以下で3万円です。軽減措置は平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される契約書が対象です(出典:国税庁 No.7108・2026年7月30日確認)。
仲介手数料。宅地建物取引業者が受け取れる報酬には国の告示で上限が定められています。金額は物件価格で変わり、低廉な空家等には別の上限が置かれています。率で概算せず、媒介契約書に書かれた金額そのものを確認してください。
売主が負担する実費。境界が不明なら測量、抵当権が残っていれば抹消登記、越境物があればその処理が入ります。土地の状態で幅が大きく出るため、査定と同時に見積もりを取って把握するのが順番です。
売った年の固定資産税も見落としやすい点です。固定資産税と都市計画税は毎年1月1日の賦課期日現在、固定資産課税台帳に所有者として登録されている人に当該年度分を課税します。1月2日以降に売買で所有権が移転しても納税義務者は変わらず、当事者間の契約による負担義務とは別の扱いです(出典:八王子市 年の途中で土地や家屋を売却した場合の課税・2026年7月30日確認)。売主と買主で日割り清算するかどうかは売買契約の条項で決まるため、契約書のその条項を読んでから署名してください。
売る時期に効く二つの縛り。小規模宅地の保有継続と、相続登記の3年
期限が来る前に売れば良いとは限りません。逆に、早く売ると損をする縛りが二つあります。
小規模宅地等の特例の保有継続要件。相続税の計算で宅地の評価を下げる特例で、限度面積と減額割合は特定居住用宅地等が330平方メートルまで80%、特定事業用宅地等が400平方メートルまで80%、貸付事業用宅地等が200平方メートルまで50%です。このうち特定事業用宅地等と貸付事業用宅地等は、その宅地等を相続税の申告期限まで有していることが要件に入っています(出典:国税庁 No.4124・2026年7月30日確認)。区分や取得者によって扱いが違うため、申告期限より前に売る予定があるなら、相続税の申告を担当する税理士に先に伝えてください。相続税の減額が消えて、譲渡所得の節税より高くつく場合があります。
相続登記の申請義務。令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されました。相続で不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければならず、違反した場合は過料10万円の適用対象になります。施行日前に発生した相続についても、令和9年3月31日までという猶予が置かれています(出典:法務省 相続登記の申請義務化に関するページ・2026年7月30日確認)。
売る予定があるかどうかに関係なく、相続登記は先に済ませる形になりました。買主に引き渡すには名義が相続人になっていることが前提なので、売却を考えているなら義務の期限より前に動くのが実務です。
期限から逆算した順番
ここまでの制度を、動く順に並べ替えます。
- 相続税の申告があったか、誰がいくら納めたかを確認する(取得費加算が使えるかの入口)
- 登記事項証明書で被相続人の取得年月日を見て、長期か短期かを判定する
- 親の取得費が分かる書類を探す。出てこなければ5%で計算した場合の税額も出しておく
- 相続登記が済んでいなければ済ませる
- 家屋が建っていた土地か、相続後に貸したり住んだりしていないかを整理する
- 1から5の材料を持って、取得費加算、空き家の3000万円控除、低未利用土地の100万円控除のどれに当たるかを税務署か税理士に確認する
- 査定を取り、価格帯と売り方を決める
- 売った年の翌年2月16日から3月15日に確定申告する
1を先に置くのは、相続税が課税されていなければ取得費加算という選択肢が最初から消えるためです。そこが決まると、比べる特例は一つ減ります。3を早めに置くのは、書類探しだけは他人に代われず、時間が読めないからです。
査定より先に期限を書き出しておく理由
編集部の運営者は沖縄の傾斜地を相続し、売却、寄付、国庫帰属と出口を当たったうえで、いまも保有しています。出ていくのは固定資産税で、年に約7万円です。
査定を取る前に知りたかったのは、特例の期限は買い手が付くかどうかと無関係に進むということでした。3年10か月も、3年を経過する日の属する年の12月31日も、値段が付く土地の人と付かない土地の人に同じ速さで来ます。特例を前提に税額を試算しても、譲渡が成立しなければその試算は使われません。
それでも期限の日付を先に書き出しておく意味はあります。取り逃がしを防ぐためというより、いつまでに買主が見つからなければ保有を続ける側の計算に切り替わるのか、その分岐日が見えるからです。分岐日が決まっていると、値下げをどこまでするか、更地にするかどうかの判断も、感触ではなく日付から決められます。
期限を過ぎたときに残る作業は二つです。取得費を探した結果と、相続税の申告書の控えの保管場所を記録しておくこと。そして、翌年以降に売れたときに使える特例の一覧をもう一度当て直すことです。制度は年度で変わるため、期限が切れた時点の一覧をそのまま持ち越さないでください。
この記事から繋ぐ先
- 相続した土地を売る流れ|名義変更から引き渡しまで(期限から逆算するときの所要期間)
- 実家を売ったときの税金|3000万円控除で0円になる条件(家屋を含めて売る場合)
- 空き家の3000万円特別控除|使える条件と必要書類(要件と必要書類)
