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農地転用の許可と届出の違い|市街化区域かで変わる

農地転用の許可と届出の違い|市街化区域かで変わる

農地転用の手続きが許可になるか届出になるかは、土地の場所ひとつで決まる。

市街化区域なら農業委員会への届出で、受理か不受理の通知は届出書が届いてから2週間以内。それ以外の区域は知事の許可で、標準の処理期間は農業委員会の3〜4週間に知事の2週間が乗る。添付書類も3点と11項目で違う(2026年7月30日確認)。

この記事の目次
  1. 分かれ目は場所ひとつ。市街化区域なら届出で済む
  2. 許可と届出で変わるのは、この9か所
  3. 期間は2週間以内と、5週間から。制度側に数字がある
  4. 4条と5条の分かれ方は、許可でも届出でも同じ
  5. 許可も届出も要らない場合がある
  6. 届出でも止まる条件が4つある
  7. 許可を取らず、届出もせずに転用した場合
  8. 自分がどちらか確かめる順番
  9. 細かい疑問への答え

分かれ目は場所ひとつ。市街化区域なら届出で済む

農地を農業以外の用途に変えるときは、原則として都道府県知事(農林水産大臣が指定する指定市町村の区域ではその市町村長)の許可が必要になる。例外がひとつある。市街化区域内の農地は、あらかじめ農業委員会に届け出て転用する場合は許可が要らない(農地法第4条第1項第7号、第5条第1項第6号。和歌山県・農地転用の許可の手引き、2026年7月30日確認)。

届出は許可の簡易版ではなく、許可制の例外として置かれた別のルートだ。そのため審査の中身も、期間も、出す先も変わる。

相談者相談者
うちの畑がどちらなのか、そこから分かりません。

地番を持って、農地のある市町村の農業委員会か都市計画の担当課に聞けば分かる。照会そのものに費用はかからない。市街化区域の外(市街化調整区域、非線引きの都市計画区域、都市計画区域外)はすべて許可の側で、調整区域の場合はそもそも転用できるかどうかが農地の区分でさらに分かれる。見分け方は市街化調整区域の農地は転用できる?可否の見分け方に分けた。

先に確かめておくことがもうひとつある。手続きの対象になる農地かどうかは、登記の地目ではなく現況で決まる。休耕地や耕作放棄地でも、耕作しようと思えばいつでも耕作できると認められる状態なら農地に当たる(千葉市・農地の転用、2026年7月30日確認)。判断するのは農業委員会で、現況で行う(上越市・農地を転用する時の手続き)。

許可と届出で変わるのは、この9か所

国が示している農地法関係事務処理要領と、自治体が公開している運用を突き合わせると、違いは細かい運用ではなく手続きの骨格に出る。

比べる点許可(市街化区域以外)届出(市街化区域)
根拠農地法第4条第1項、第5条第1項同第4条第1項第7号、第5条第1項第6号
決める人都道府県知事等農業委員会
出す先農業委員会を経由して知事等へ農業委員会へ
受付月1回の締切がある自治体が多い(鹿児島市は毎月10日)随時、または週単位の締切
審査の性質立地基準と一般基準による実質審査記載事項と添付書類の形式審査
現地調査行う行わないとしている自治体がある
第三者機関事案により都道府県の農業委員会ネットワーク機構へ意見聴取なし(総会には報告する運用)
出る結論許可または不許可受理または不受理
添付書類11項目(資力を証する書面、施設の図面、土地改良区の意見書など)3点から4点(地図、登記事項証明書ほか)

(農林水産省・農地法関係事務処理要領/鹿児島市・農地の転用(農地法第4条、第5条)、いずれも2026年7月30日確認)

最後の行が、手間の差をいちばん素直に表している。許可申請では、事業を実施するために必要な資力があることを証する書面、建てようとする建物や施設の面積と位置を示す図面(縮尺は500分の1から2000分の1程度)、農地が土地改良区の地区内にある場合の意見書までが並ぶ。届出で必ず要るのは、土地の位置を示す地図(縮尺は1万分の1から5万分の1程度)と土地の登記事項証明書の2点で、そこに賃貸借がある場合の書面などが足されるだけだ(同要領)。

期間は2週間以内と、5週間から。制度側に数字がある

届出の側には、要領に上限の目安が書かれている。農業委員会は届出書の提出があったら直ちに受理か不受理の決定手続を進め、その通知書が遅くとも届出書の到達があった日から2週間以内に届出者へ到達するよう事務処理を行う(農林水産省・農地法関係事務処理要領、2026年7月30日確認)。実際の運用は自治体が公表している。

自治体市街化区域の届出で通知が出るまで
鹿児島市受付からおおむね1週間で受理通知書を交付
越谷市随時受付。審査後、翌日から7日以内(土日休日を含まず)
姫路市木曜日を締切日とし、翌週の木曜日に受理書を交付
太子町届出書の提出から受理書の交付までおよそ2週間

(各市町の農業委員会のページ、2026年7月30日確認)

許可の側は、同じ要領の別表1に標準的な事務処理期間が置かれている。都道府県の農業委員会ネットワーク機構に意見を聴かない事案では、農業委員会が申請書の受理後3週間で意見書を送り、知事等が申請書と意見書の受理後2週間で処分する。機構に意見を聴く事案は、農業委員会側が4週間になる。農林水産大臣への協議を要する事案では、協議書の送付と回答の通知に各1週間が別に乗る。

制度上の5週間から6週間に、月1回の締切待ちが加わる形だ。締切を1日過ぎれば審査の開始が丸ごと1か月後ろにずれる。期間と費用の全体像は農地転用とは?費用と期間、許可が下りる条件をまとめて解説に置いた。

4条と5条の分かれ方は、許可でも届出でも同じ

条文番号は、転用するのが誰かで分かれる。所有者が自分の農地を転用するなら4条、売ったり貸したりして相手が転用するなら5条だ。区域の話とは別の軸なので、組み合わせは4通りになる。外注したときの値段にも、その重さの差が出ている。

手続き出す人報酬の最も多い回答額
農地法第4条 許可申請転用する本人8万円(回答273件、平均は約9万7千円)
農地法第5条 許可申請権利を取得する人と手放す人の双方10万円(501件、平均は約12万円)
農地法第4条 届出転用する本人5万円(170件、平均は約5万1千円)
農地法第5条 届出双方5万円(245件、平均は約5万4千円)

(日本行政書士会連合会・令和7年度報酬額統計調査の結果、令和8年1月実施、金額は消費税を含み立替金は含まない、2026年7月30日確認)

同じ4条でも許可申請と届出で3万円ほど離れ、5条では2倍近くになる。ただし分布は広く、4条許可の回答は最小8,800円から最大80万円まで散っている。この数字は中心を見る目安として使い、実際は幅で構えて複数から見積もりを取るのが現実的だ。

相続した農地でつまずきやすいのは、届出でも名義が問われる点だ。要領は、相続後まだ相続による権利移転の登記を終えていない場合のように、登記事項証明書だけでは真正な権利者かどうか確認できないときは、戸籍謄本その他の書類の提出を求めて確認するのが適当としている。川崎市も、登記簿上の所有者が死亡している場合は被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書などが必要になり、一部は法務局が発行する法定相続情報証明書で代えられると案内している(川崎市・農地転用届出手続きの流れ、2026年3月2日更新)。書類の一覧と申請先は農地転用の手続きの流れ|必要書類と申請先の一覧にまとめている。

許可も届出も要らない場合がある

和歌山県が公開している手引きは、転用許可が不要になる場合を11項目挙げている。相続で農地を受け取った個人に関係しそうなものを抜くと次のとおり(2026年7月30日確認)。

  • 耕作の事業を行う者が、自己の農作物育成などのために200平方メートル未満の農地を農業用施設に転用する場合(農地法施行規則第29条第1号)
  • 土地収用法その他の法律によって収用または使用された農地を、その目的に供するために転用する場合(法第4条第1項第6号、第5条第1項第5号)
  • 国または都道府県等が、道路や農業用用排水施設その他の必要性が高いと認められる施設を建設するために転用する場合(法第4条第1項第2号、第5条第1項第1号)
  • 土地改良法に基づく土地改良事業により転用する場合、土地区画整理事業の施行により道路や公園等の公共施設を建設するため転用する場合(規則第29条第4号、第5号)

勘違いしやすいのは、許可不要が手続きゼロを意味しない点だ。2アール(200平方メートル)未満の農業用施設は転用許可が要らないが、農業委員会への届出は必要としている自治体がある(岩手県野田村・農業用施設(2アール未満)の届出について、2026年7月30日確認)。進入路や用排水路のように自己の農地の保全や利用上必要不可欠なものは、面積に関係なく許可が要らないとしている自治体もある(群馬県嬬恋村・農地の転用(農地法第4条・第5条))。運用が分かれる領域なので、着工前に窓口で確かめる部分になる。

行政書士の報酬統計にも「農地法施行規則第29条届出」という項目があり、回答25件で最も多い回答額は5万円だった。許可が要らない枠でも、書類を外に出している人はいる。

届出でも止まる条件が4つある

生産緑地の指定を受けている

市街化区域の農地でも、生産緑地に指定されていれば届出をすぐには出せない。川崎市は、生産緑地の指定を受けている農地については行為制限の解除日以降に届出をすること、解除日より前に転用行為の着手や所有権の移転を行うことはできないと明記している。行為制限の解除は買取申出から進み、市町村が買い取らず他の農業従事者へのあっせんも不調に終わった場合に、申出から3か月後に解除される(富士見市・生産緑地制度及び特定生産緑地制度について、2026年7月30日確認)。

誰かに貸している

届出に係る農地が賃貸借の目的になっている場合は、その賃貸借について農地法第18条第1項の許可があったことを証する書面を添付する(同要領)。太子町も、届出地を所有者以外の人が耕作している場合は耕作者の同意や小作の解約が必要になることがあると案内している(2024年5月27日更新)。口約束で近所の人に作ってもらっている状態は、ここで書類の話になる。

開発許可が別に必要

5条の届出では、転用行為が都市計画法第29条の開発許可を受けることを必要とするものである場合、その許可を受けたことを証する書面を添付させるのが要領の建て方だ。太子町も同じ案内をしている。一方で川崎市は、500平方メートル以上の5条転用で開発許可が必要な場合の許可証の写しの添付は、農地法の改正に伴い令和4年4月1日以降は不要になったとしている。添付書類は自治体で動くので、他サイトの一覧ではなく窓口で確かめる部分だ。

土地改良区の地区内にある

届出に係る農地が土地改良区の地区内にあるときは、農業委員会が転用の届出があったことをその土地改良区に通知する(同要領)。改良区側の地区除外や決済金という別の負担が出てくる入口になる。

そして届出には不受理がある。農業委員会は、届出地が市街化区域内にあるか、届出書の法定記載事項が記載されているか、添付書類がそろっているか、その農地が賃貸借の目的になっていないかを調べ、届出が適法かどうかを審査して受理か不受理を決める(同要領)。上越市は、この届出が受理されないと転用に着手することができないと書いている。出せば終わる紙ではない。

許可を取らず、届出もせずに転用した場合

順序を逆にしたときに何が起きるかを、事実だけ並べる。

  • 許可を受けないでした権利の設定または移転は、法律上の効力を生じない(農地法第5条第3項)。売買を先に済ませても所有権は動かない
  • 許可を受けないでした行為には、処分または罰則の適用がある(法第51条、第64条)。ここまでは和歌山県の手引きによる
  • 罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金で、法人は1億円以下の罰金(鹿児島市・農地の転用、2026年3月11日更新)
  • 届出をしていない転用も同じ側に置かれている。千葉市は、許可を受けていない、または届出をしていない農地転用は無効であり、法律により罰せられることがあるとしている

届出の条文が「あらかじめ農業委員会に届け出て」となっている点が、ここで効いてくる。要領も、届出は適法に受理されるまで効力が発生しないことを届出者に十分に説明し、受理通知書の交付があるまでは転用行為に着手しないよう指導するとしている。草刈りが大変だから砂利を敷いた、知り合いに資材を置かせた、という順番は制度側で想定されていない。

すでに現況を変えてしまっている場合は、隠すより先に農業委員会に相談したほうが選べる手が残る。編集部は法令の解釈を断定できる立場ではないので、個別の事案は農業委員会と、必要なら農地を専門に扱う行政書士に当たってほしい。

自分がどちらか確かめる順番

あなたの農地がどちら側かは、次の順番で確かめられる。照会はどれも窓口でできて、順番を守れば書類の作り直しが起きない。

  1. 地番を持って農業委員会へ。市街化区域か、区域外かを確認する。ここで届出か許可かが決まる
  2. 市街化区域だった場合は、生産緑地の指定がないか、貸している事実がないかを確認する
  3. 区域外だった場合は、農用地区域(青地)に入っていないか、立地基準では第何種かを確認する。青地なら転用の前に除外の手続きが入る
  4. どちらの場合も、都市計画法第29条の開発許可が必要な計画か、土地改良区の地区内かを確認する
  5. 転用するのが自分か、売買や貸借を伴うかで4条と5条を振り分ける
  6. そのうえで書類を集める。届出なら地図と登記事項証明書から、許可なら図面と資力を証する書面を含む一式になる
実家じまいナビ編集部 実家じまいナビ編集部の実体験

区域の確認は、窓口への照会で終わる側にある

編集部が相続したのは農地ではなく沖縄の傾斜地で、農地転用の届出も許可申請もしたことがない。制度の説明ではなく、出口を探した側の話として読んでほしい。

この土地の固定資産税は年に約7万円。売却、寄付、国庫帰属と順に当たって、どれも成立せず今も持っている。毎回止まったのは土地の条件のところで、こちらが用意した資料の出来では動かなかった。

農地の許可と届出は、その条件の確認が照会で済む部分にある。区域を聞くだけで、期間が2週間なのか2か月なのか、書類が2点なのか一式なのかが決まる。先に済ませておけば、あとの手間が無駄にならない。

転用の目的が決まっていないなら、先に選択肢を並べる

許可か届出かが分かっても、その土地で何ができて年にいくら残るのかは別の話だ。使わない土地の活用プランと収支の試算を、複数社から無料で取り寄せられる。相場を知るだけの利用でも問題ない。

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細かい疑問への答え

市街化区域なら必ず届出だけで済むか

原則はそうだが例外がある。生産緑地の指定を受けている農地は行為制限の解除が先に立ち、市街化区域に農用地区域の農地が混在しているケースも扱いが別になる。区域の名前だけで決めず、農地の状況を農業委員会で確認することになる。

建物を建てないなら手続きは要らないか

要る。福岡県は、農地の形質に何ら変更を加えない場合でも、農地をそのまま資材置場に利用する場合など、人の意志によって農地を耕作の目的に供されない状態にするものは農地転用に該当するとしている(福岡県・農地を転用するには?、2026年7月30日確認)。砂利を敷いた駐車場も同じ側に入る。

郵送やオンラインで出せるか

窓口のみとしている自治体がある。名古屋市は農地転用の届出は窓口のみで受け付け郵送等では受け付けていないとしており、鹿児島市も電子メールや郵便による転用の申請と届出は受け付けていないと明記している(いずれも2026年7月30日確認)。平日に出向く前提で日程を組むことになる。

許可と届出を選べるか

選べない。区域で決まる。市街化区域外の農地を届出で通すことはできず、逆に市街化区域の農地について許可申請を出す実益もない。

相続で農地を受け取っただけなら、この届出が必要か

相続そのものは転用ではないので、4条や5条の手続きではない。ただし農地法第3条の3という別の届出を農業委員会に出す義務があり、相続登記の期限も別に走っている。相続で受け取った農地を動かす順番は農地転用とは?費用と期間、許可が下りる条件をまとめて解説で扱っている。

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実家じまいナビ編集部

実家じまいナビ編集部 |沖縄に売れない土地を持つ当事者が運営

実家じまいナビ編集部です。運営者自身が沖縄に売れない土地を相続し、出口が見つからないまま維持している当事者です。役所と業者を回って分かった順番、実際にかかる費用、先に知っておけば防げたことを記録しています。法令の解釈が必要な部分は断定せず、調べ方と相談先を示す方針です。

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