実家に相続税はかかる?基礎控除で0円になる目安

実家に相続税がかかるかは、家の値段ではなく遺産の合計で決まります。
判定線は基礎控除の3,000万円+600万円×法定相続人の数で、相続人2人なら4,200万円。実際にかかったのは亡くなった人の10.4%です(令和6年分・国税庁、2026年7月30日確認)。判定に使う数字は、手元の課税明細書から出せます。
この記事の目次
判定するのは実家の値段ではなく、遺産の合計と基礎控除の差
相続税は、実家という財産ひとつにかかる税ではありません。亡くなった人から相続や遺贈で取得した財産を合計し、債務と葬式費用を差し引いた課税価格の合計額が基礎控除額を超えたときに、その超えた部分にかかります(出典:国税庁 No.4152 相続税の計算・2026年7月30日確認)。実家の評価が2,500万円でも、預貯金が2,000万円あれば結論は入れ替わります。
基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数です(同)。ここでいう法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても放棄がなかったものとして数えます。養子は、実子がいるときは1人まで、実子がいないときは2人までが人数に入ります(同)。人数ごとに置き直すと、判定線はこうなります。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額(判定線) |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
| 5人 | 6,000万円 |
線を超えるかどうかは遺産全体の話なので、実家だけを見ていても結論が出ません。規模の感覚として、令和6年分に亡くなった人1,605,378人のうち、相続税の申告書の提出に係る被相続人数は166,730人で、課税割合は10.4%でした(出典:国税庁 令和6年分 相続税の申告事績の概要・2026年7月30日確認)。かかった人だけを取り出すと、1人当たりの課税価格は1億4,025万円です(同)。課税されている層は、実家と預貯金だけという構成とは金額の桁が違うところにいます。
実家の評価額は、売れる値段でも固定資産税の金額でもない
相続税で使う評価額は、国税庁が定めた方法で出した金額です。土地は路線価方式または倍率方式、家屋は固定資産税評価額に1.0を乗じた金額で評価します(出典:国税庁 No.4602 土地家屋の評価・2026年7月30日確認)。路線価方式は、路線価を奥行価格補正率などの各種補正率で補正し、そこに面積を乗じて計算します。路線価が定められていない地域は倍率方式で、その土地の固定資産税評価額に地域ごとの倍率を乗じます(同)。
自分の実家がどちらの地域か、倍率がいくつかは、財産評価基準書に地図と表が載っています(出典:国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表・2026年7月30日確認)。市街地から離れた実家は倍率地域に入っていることがあり、その場合は固定資産税評価額が計算の出発点になるので、手順はむしろ短くなります。
金額の水準は、二つの公的な目途を並べると見当が付きます。路線価等は地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定められています(出典:国税庁 令和7年分の路線価等について・2026年7月30日確認)。一方、固定資産税の宅地の評価は、地価公示価格や鑑定評価価格等の7割を目途とされています(出典:総務省 固定資産評価のしくみについて(土地評価)・2026年7月30日確認)。同じ土地を別の割合で見ているので、固定資産税評価額から相続税評価額のあたりを付けるなら、1.1〜1.2倍程度が目安になります。補正率や地域差で動くため、これは概算の入口として使う数字です。
実家が分譲マンションの場合は、令和6年1月1日以後に相続や遺贈で取得したものについて、従来の評価額に区分所有補正率を乗じる方法に変わりました(出典:国税庁 No.4667 居住用の区分所有財産の評価・2026年7月30日確認)。同じ部屋でも、いつ取得したかで金額が動く部分です。
もう一つ、評価額と売れるかどうかは連動しません。相続税の計算では金額が付く土地でも、買い手が現れるかは接道や造成費といった別の条件で決まります。評価が低いから売りやすい、という関係にもなりません。
手元の書類だけで概算する順番。入口は固定資産税の課税明細書
評価額を知るために、査定や測量から始める必要はありません。毎年春に届く固定資産税の納税通知書に付いている課税明細書に、土地と家屋それぞれの評価額が載っています。順番はこうなります。
- 課税明細書で、土地と家屋の固定資産税評価額を書き出す
- 財産評価基準書で、実家の所在地が路線価地域か倍率地域かを見る
- 倍率地域なら固定資産税評価額×倍率、路線価地域なら路線価×面積で土地の概算を出す
- 家屋は固定資産税評価額をそのまま使い、預貯金や有価証券を足して基礎控除額と比べる
通知書が見つからないときは、市区町村で評価証明や名寄帳を取ります。東京都の場合、証明は1回の申請につき1件目400円、2件目以降は1件ごとに100円、土地・家屋名寄帳の閲覧は納税義務者ごとに300円です(出典:東京都主税局 固定資産に関する証明等・2026年7月30日確認)。書類の名称も手数料も必要書類も自治体で違うので、実家の所在地の役所で確かめる部分です。共有名義の持分や、私道になっている細長い土地が名寄帳で初めて出てくることもあります。
判定に必要な数字は、最初から封筒の中に入っていた
編集部の運営者は沖縄の傾斜地を相続しました。売却、寄付、国庫帰属と出口を一つずつ当たり、どれも成立せず、いまも保有しています。毎年出ていくのは固定資産税で、年に約7万円です。
調べ始めた時点では、土地の金額を知るには誰かに見てもらうしかないと思っていました。実際に要ったのは、すでに届いていた納税通知書の課税明細書と、路線価図・評価倍率表の2つだけです。評価額という同じ言葉が固定資産税用と相続税用で別物だと気づくまでに時間を使い、その間はどの数字も出せずに止まっていました。書類の名前を先に知っていれば、最初の1日で概算まで進んだところです。
国が用意した判定ツールで、申告が要るかの当たりを付ける
手元の数字が揃ったら、国税庁の相続税の申告要否判定コーナーに入力する方法があります。相続財産の金額などを入力することにより、相続税の申告のおおよその要否を判定するツールです(出典:国税庁 相続税の申告要否判定コーナー 入力例・FAQ等・2026年7月30日確認)。小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)や配偶者の税額軽減の入力にも対応しています(同)。
入力の前に用意しておくものは、この5点です。
- 法定相続人の人数(放棄がなかったものとして数えた人数)
- 土地と建物の評価額(課税明細書と財産評価基準書から出した概算)
- 預貯金、有価証券などの金額
- 死亡保険金や死亡退職金の金額
- 借入金などの債務と、葬式費用の金額
判定はあくまでおおよそのもので、システムの仕様上そのままでは扱えない入力があることも案内されています(同)。線の近くに来た場合や、土地の形が整っていない場合は、そこから先を税理士に渡す形になります。無料のツールで当たりを付けてから相談すると、聞く内容が具体的になります。
いくらの実家なら超えるのか。基礎控除から逆に引いてみる
判定は引き算です。基礎控除額から実家以外の財産を引けば、あなたの実家の評価がどこまでなら収まるかが出ます。実家以外の財産が1,000万円のときと3,000万円のときで並べます。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 | 他の財産が1,000万円 | 他の財産が3,000万円 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | 2,600万円まで | 600万円まで |
| 2人 | 4,200万円 | 3,200万円まで | 1,200万円まで |
| 3人 | 4,800万円 | 3,800万円まで | 1,800万円まで |
足す側と引く側にも決まりがあります。死亡保険金は、相続人が受け取ったものについて500万円×法定相続人の数までが非課税です(出典:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金・2026年7月30日確認)。相続人ではない人が取得した死亡保険金に、この非課税の適用はありません(同)。逆に、借入金などの債務と葬式費用は課税価格から差し引けます(出典:国税庁 No.4152 相続税の計算)。
地方の実家で、土地と古い家屋を合わせた評価が1,000万円台に収まる例は珍しくありません。判定が割れるのは実家の金額が大きいときより、預貯金と保険金の合計が思ったより残っていたときです。
超えていた場合、税額は三段で出る。速算表と国の計算例
相続税がいくらになるかは、三段の計算で出ます。課税価格の合計額から基礎控除額を引いて課税遺産総額を出し、それを各法定相続人が法定相続分で取得したと仮定して各人の税額を計算し、合計した相続税の総額を、実際に取得した課税価格の割合で割り振ります(出典:国税庁 No.4152 相続税の計算・2026年7月30日確認)。誰が実家を取るかで総額そのものは変わらず、変わるのは負担の分け方です。
仮定した取得金額に当てる税率は速算表で決まっています(出典:国税庁 No.4155 相続税の税率・2026年7月30日確認)。
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | なし |
| 1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
国税庁が示している例では、課税遺産総額1億5,200万円を妻と子2人が法定相続分で取得したと仮定すると、妻は7,600万円×30%-700万円で1,580万円、子は3,800万円×20%-200万円で560万円ずつとなり、相続税の総額は2,700万円です(出典:国税庁 No.4155 相続税の税率)。財務省の例では、配偶者と子2人が遺産1億円を法定相続分で相続した場合、配偶者は0円、長男と長女は各157.5万円になります(出典:財務省 遺産を相続する場合にどのような税金がかかるのですか・2026年7月30日確認)。人数構成が同じでも、遺産の額で桁が変わることが分かります。
配偶者、父母、子以外の人が財産を取得した場合は、税額に20%相当額が加算されます(出典:国税庁 No.4152 相続税の計算)。実家を甥や姪が受け取るときは、ここが効いてきます。
0円をつくる二枚は、どちらも申告することが条件になっている
基礎控除を超えていても、特例で税額が0円になることがあります。実家で効くのは小規模宅地等の特例と、配偶者の税額軽減の2つです。
小規模宅地等の特例のうち特定居住用宅地等は、330平方メートルまでの部分について評価額を80%減額します(出典:国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例・2026年7月30日確認)。取得したのが配偶者か、同居していた親族か、それ以外の親族かで要件が変わり、実家で落ちやすいのはこの取得者の要件です。条件の中身は小規模宅地等の特例で80%減|実家に使える条件に分けています。
配偶者の税額軽減は、配偶者が取得した正味の遺産額のうち、1億6千万円と配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは相続税がかからない仕組みです(出典:国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減・2026年7月30日確認)。
共通しているのは、適用を受けるには相続税の申告書を提出する必要があるという点です。小規模宅地等の特例は、申告書に計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付します(出典:国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例)。配偶者の税額軽減も、配偶者が取得した財産が分かる書類を添えて申告します(出典:国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減)。税額が0円になる場合でも、申告して初めて0円になるという順番です。
分割が決まらないと、0円にする枠のほうが先に閉まる
申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。提出先は被相続人の住所地を所轄する税務署で、相続人の住所地ではありません(出典:国税庁 No.4205 相続税の申告と納税・2026年7月30日確認)。納税も同じ期限までです(同)。
遺産が分割されていないことを理由に、この期限が延びることはありません。期限までに分割できなかったときは、民法に規定する相続分または包括遺贈の割合に従って取得したものとして計算し、申告と納税をします(出典:国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告・2026年7月30日確認)。このとき、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減は適用できない申告になります(同)。
手当てはあります。申告期限後3年以内の分割見込書を添えて申告しておけば、申告期限から3年以内に分割できたときに税額軽減の対象になります(出典:国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減)。分割があったことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求をする流れです(出典:国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告)。
実家が絡む相続で分割が長引くのは、金額の大きい財産が1つだけあり、分けようとすると売るか代償金を出すかになるためです。誰が住むかが決まらない段階でも、10か月という期限と、分割見込書という選択肢があることは先に共有しておく形になります。
10か月の中で現金が足りないときの入口
相続税は金銭で一度に納めるのが原則です。相続税額が10万円を超え、金銭で納付することを困難とする事由があるときは、その困難とする金額を限度に、担保を提供して年賦で納める延納を申請できます(出典:国税庁 No.4211 相続税の延納・2026年7月30日確認)。延納税額が100万円以下で延納期間が3年以下の場合は、担保の提供は不要です(同)。申請は納期限までに、延納申請書と担保提供関係書類を税務署長に提出して行います(同)。
延納の期間中は利子税がかかり、その割合は相続財産に占める不動産等の価額の割合によって変わります(同)。不動産の比重が大きい実家の相続では、この区分がどこに入るかで負担が動きます。
売って払うことを考える場合、売却には相続税とは別の税金が立ちます。実家を売ったときの譲渡所得と控除は実家を売ったときの税金|3000万円控除で0円になる条件、土地だけを売る場合と取得費加算は相続した土地を売る税金|取得費加算と3年10か月の期限にまとめています。買い手が付く時期は自分で決められないので、納税の期限とは別のカレンダーで見る部分です。
相続税が0円でも、止まらない手続きと費用がある
かからないという結論が出ても、名義と維持の話は残ります。相続による所有権の移転登記の登録免許税は、不動産の価額の1,000分の4です(出典:国税庁 No.7191 登録免許税の税額表・2026年7月30日確認)。課税標準になる不動産の価額は、固定資産課税台帳に登録された価格がある場合は原則としてその価格です(同)。土地と建物を合わせた価格が2,000万円なら8万円という計算になります。
相続登記の申請は令和6年4月1日から義務になりました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記が必要で、令和6年4月1日より前に相続したことを知った不動産については令和9年3月31日までです。正当な理由がないのに申請しない場合の過料は、10万円以下の範囲内で裁判所において決定されます(出典:法務省 相続登記の申請義務化に関するQ&A・2026年7月30日確認)。相続税の10か月とは別のカレンダーで動くので、2つ並べて書き出しておくと抜けません。
そして固定資産税は、住んでいなくても毎年出ていきます。相続税がかからない実家ほど、判断を先に延ばしても痛みが小さく、そのまま年数が過ぎやすいという構造があります。
判定でつまずきやすい4点と、誰に何を聞くか
実家の評価額だけで判定してしまう
相続税は財産の合計で判定します(出典:国税庁 No.4152 相続税の計算)。実家の評価が基礎控除より低くても、預貯金、有価証券、保険金が乗ると越えることがあります。逆に、債務と葬式費用は引けます。
固定資産税評価額をそのまま土地の相続税評価額に使う
家屋は固定資産税評価額に1.0を乗じた金額ですが、土地は路線価方式か倍率方式です(出典:国税庁 No.4602 土地家屋の評価)。倍率地域なら固定資産税評価額に倍率を乗じますが、路線価地域では別の物差しになります。両方を同じ数字で並べると、判定が線の手前か向こうかを取り違えます。
特例が使えるから申告しなくてよいと考える
小規模宅地等の特例も配偶者の税額軽減も、申告書の提出と書類の添付が前提です(出典:国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例・出典:国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減)。0円という結論と、何もしなくてよいという結論は別物です。
税理士に渡す範囲を決めていない
編集部は士業ではないため、個別の税額計算や遺産分割の判断はしません。判定線と概算までは手元の書類で進められます。土地の形が整っていない、賃貸に出していた部分がある、同居や持ち家の判定が微妙、相続人の間で分け方が決まらない。この4つのどれかに当たったら、そこから先が専門家の領域です。
よくある質問
実家しかなく、相続人は自分1人です。どこを見れば判定できますか
判定線は3,600万円です(出典:国税庁 No.4152 相続税の計算)。課税明細書で土地と家屋の固定資産税評価額を確認し、家屋はその金額のまま、土地は倍率地域なら固定資産税評価額×倍率で概算します(出典:国税庁 No.4602 土地家屋の評価)。そこに預貯金と、非課税枠を超える死亡保険金を足した合計が3,600万円に届くかで、見当が付きます(出典:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金)。
相続税がかからないなら、税務署に何も出さなくてよいですか
取得した財産の合計額が基礎控除額の範囲内であれば、申告も納税も必要ありません(出典:国税庁 No.4205 相続税の申告と納税)。ただし、特例を使って0円にする場合は申告が必要です(出典:国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例)。どちらの0円なのかで扱いが変わります。
実家を売ったお金で相続税を払う予定です。間に合いますか
申告と納税の期限は10か月です(出典:国税庁 No.4205 相続税の申告と納税)。買い手が付く時期は自分では決められないため、延納という制度が用意されています(出典:国税庁 No.4211 相続税の延納)。売却の見込みと期限を並べて、どちらの手を先に打つかを決める形になります。
親が老人ホームに入っていて、実家は空き家でした。特例は使えますか
小規模宅地等の特例は、被相続人等が居住の用に供していた宅地等が対象で、取得者ごとに要件があります(出典:国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例)。老人ホームに入っていた場合の扱いを含め、条件は小規模宅地等の特例で80%減|実家に使える条件にまとめています。当てはまるかどうかの最終判断は、税理士に確認する部分です。
相続が起きる前に調べておけることはありますか
相続人になる人の人数から基礎控除額を出しておくこと、実家の課税明細書の保管場所を確認しておくこと、財産評価基準書で所在地が路線価地域か倍率地域かを見ておくことの3つは、いまの時点でもできます(出典:国税庁 No.4152 相続税の計算・出典:国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表)。
