実家を売った翌年の確定申告|必要書類の一覧

実家を売った翌年、申告が要るのかどうかという入口から分からない状態で調べ始める人は多い。
判定は2つだけ。売却で利益が出たか、特例を使うか。どちらか当てはまれば申告が必要で、期限は売った年の翌年3月15日(休日なら翌平日)。必要書類は全員共通の8点と、使う特例ごとの追加書類に分かれる。
この記事の目次
申告が要るかどうかは3つの質問で決まる
実家を売った翌年に確定申告が必要になるのは、大きく分けて2つの場合しかない。売却で利益(譲渡所得)が出た場合と、税額を下げる特例を使う場合だ。国税庁も、譲渡価額から取得費と譲渡費用を引いた金額がプラスになる人は原則として確定申告が必要だと案内している(国税庁「不動産等を売却した方へ」2026年7月31日確認)。
- 売った金額から、買ったときの金額と売るためにかかった費用を引くとプラスになるか。プラスなら申告が必要になる。
- 3,000万円の特別控除や取得費加算などの特例を使うか。使うなら、計算した結果が0円でも申告が必要。特例は申告して初めて適用される仕組みで、申告しなければ使えない。
- 会社員で、給与以外の所得の合計が20万円を超えるか。1か所から給与を受けていて全額が源泉徴収の対象になっている人は、給与所得と退職所得を除く各種所得の合計が20万円を超えると申告が必要になる(国税庁タックスアンサーNo.1900、2026年7月31日確認)。2か所以上から給与を受けている場合は判定が変わる。
1と2の両方が「いいえ」なら、所得税の確定申告は原則として不要になる。ただし所得税の申告が不要でも、住民税の申告が別に必要になる場合がある。この点は後半で扱う。
譲渡所得の計算式と、相続した実家がつまずく取得費
計算式はひとつしかない。
譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)= 譲渡所得(国税庁「不動産等を売却した方へ」2026年7月31日確認)
取得費は、亡くなった人が買ったときの購入代金や購入手数料をもとに計算する。相続や贈与で取得した資産は、取得費だけでなく取得の日も前の所有者から引き継ぐ(国税庁タックスアンサーNo.3270)。親が40年前に買った家なら、所有期間も40年として数える。建物部分については、その間の減価償却相当額を差し引いた金額が取得費になる。
詰まるのは、購入時の売買契約書が残っていないケースだ。取得費が分からないときは、売った金額の5%相当額を取得費とすることができる(No.3258)。ただしこれを使うと、3,000万円で売れた場合の取得費は150万円にしかならず、譲渡所得は大きくふくらむ。実際に親が買った金額のほうが高いなら、契約書や当時の住宅ローンの資料を探すだけで税額が変わる。
税率は所有期間で二段階になる。譲渡した年の1月1日時点の所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得で所得税15%・住民税5%、5年以下なら短期譲渡所得で所得税30%・住民税9%。どちらも所得税額の2.1%が復興特別所得税として上乗せされる(No.3208/No.3211、2026年7月31日確認)。相続した実家は取得の日を引き継ぐため、多くの場合は長期側になる。
取得費の資料が、どこにも残っていなかった
編集部は沖縄の傾斜地を相続し、売却・寄付・国庫帰属と出口を順に検証したが、どれも成立せず、今も固定資産税を年約7万円払いながら保有している。その検証の途中で最初に詰まったのが取得費だった。いつ、いくらで取得したものなのか、契約書も領収書も一枚も出てこない。査定を取る前に知りたかったのは相場ではなく、手元にどの紙が残っているかのほうだった。
税額そのものの計算と控除の条件は実家を売ったときの税金|3000万円控除で0円になる条件で扱っている。
全員に共通する必要書類8点
特例を使うかどうかに関わらず、譲渡所得を申告するなら次の書類が土台になる。
| 書類 | 入手先 | 役割 |
|---|---|---|
| 確定申告書 第一表・第二表 | 税務署/国税庁サイト/確定申告書等作成コーナー | 給与など全体の所得と所得控除、最終的な税額を書く |
| 確定申告書 第三表(分離課税用) | 同上 | 譲渡所得は分離課税のため必須。ここを落とすと申告が成立しない |
| 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】 | 同上 | 物件の所在地・面積・売却金額・取得費・譲渡費用を書く計算の中心 |
| 売却時の売買契約書の写し | 手元(仲介した不動産会社にも控えがある) | 譲渡価額の裏づけ |
| 取得時の売買契約書の写し | 亡くなった人の書類・実家の権利証の袋など | 取得費の裏づけ。無い場合は概算取得費5%になる |
| 譲渡費用の領収書の写し | 手元 | 仲介手数料、売買契約書の印紙代、測量費、売るための解体費など |
| 登記事項証明書 | 法務局(オンライン請求可) | 所有者と所有期間の確認。特例により添付を省略できる場合がある |
| 本人確認書類の写し | 手元 | 紙で提出する場合。マイナンバーカードは両面の写し |
給与所得がある人は源泉徴収票の内容を第一表と第二表に転記する。源泉徴収票そのものの添付は現在は求められないが、数字を写すために手元に置く。
登記事項証明書については、譲渡所得の特例の適用を受ける場合、不動産番号等を記載した明細書を提出することで添付を省略できる取り扱いがある(国税庁「A4-1 申告手続き(譲渡所得関係 申告書添付書類)」2026年7月31日確認)。取り寄せる前に、自分が使う特例で省略できるかを税務署に確認したほうが早い。
特例を使うときに追加で要る書類
実家の売却で使われる特例は主に4つ。どれを使うかで追加書類が変わる。控除額や要件は年度で変わるため、下記はいずれも2026年7月31日時点で国税庁のタックスアンサーを確認した内容になる。
相続した空き家の3,000万円特別控除(No.3306)
昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、相続開始の直前に亡くなった人以外に住んでいた人がいないことなどが要件。売却期限は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡であること。売却代金は1億円以下。控除額は最高3,000万円だが、その家屋と敷地を取得した相続人が3人以上いる場合は、令和6年1月1日以後の譲渡に限り1人あたり最高2,000万円になる。
- 譲渡所得の内訳書
- 登記事項証明書など、家屋の建築時期や区分所有でないことが分かる書類
- 被相続人居住用家屋等確認書(家屋がある市区町村長が発行する)
- 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し(耐震改修して売る場合)
- 売買契約書の写し(売却代金1億円以下の確認のため)
被相続人居住用家屋等確認書は市区町村への申請が必要で、電気やガスの閉栓証明など細かい添付を求められる。申告直前に動くと間に合わない。条件の全体像は空き家の3000万円特別控除|使える条件と必要書類で扱っている。
居住用財産の3,000万円特別控除(No.3302)
自分が住んでいた実家を売る場合。住まなくなってから売る場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件。添付書類は譲渡所得の内訳書が中心で、売った家屋の所在地と申告時の住所が違うときは戸籍の附票の写しなど、そこに住んでいたことが分かる書類を添える。親子や夫婦など特別の関係がある人への売却は対象外。
相続税の取得費加算(No.3267)
相続税を実際に払った人が、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売った場合、払った相続税の一部を取得費に加算できる。相続税の申告期限は原則10か月後なので、実質は相続開始から3年10か月が期限になる。
- 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
- 譲渡所得の内訳書【土地・建物用】
期限の数え方は相続した土地を売る税金|取得費加算と3年10か月の期限で整理している。
所有期間10年超の軽減税率(No.3305)
自分が住んでいた家屋と敷地を、売った年の1月1日時点でどちらも所有期間10年超で売った場合、課税長期譲渡所得6,000万円以下の部分について所得税10%の軽減税率が使える。添付書類は譲渡所得の内訳書と、家屋および敷地の登記事項証明書。3,000万円特別控除との併用ができる。
「確定申告書B様式」を探しても見つからない理由
実家の売却と確定申告を扱う解説記事には、必要書類として「確定申告書B様式」「所得税青色申告決算書」を挙げているものが今も残っている。この2つは、そのまま真に受けると手が止まる。
申告書AとBの区分は現在は使われていない。国税庁の様式ページでは、申告書Aと申告書Bは「令和4年分以前用」としてまとめられている(国税庁「確定申告書(令和4年分以前用)」2026年7月31日確認)。今の申告書はA・Bの区別がない一本化された様式で、そこに分離課税用の第三表を足す形になる。
青色申告決算書は事業所得や不動産所得を計算するための書類で、実家を1回売った譲渡所得の申告では使わない。賃貸に出していた期間があるなど、不動産所得が別にある場合の話になる。
書類はどこで取るか、いつから動くか
集めるのに時間がかかる順に並べると、取り寄せ先が外部にあるものから先に動くことになる。
- 被相続人居住用家屋等確認書(空き家特例を使う場合)。家屋がある市区町村の窓口。必要な添付資料は自治体ごとに案内が違うため、まず所在地の市区町村のページを見る。発行までに日数がかかる。
- 登記事項証明書。法務局の窓口またはオンライン請求。郵送でも取れる。
- 取得時の売買契約書。実家の権利証と一緒に保管されていることが多い。見つからない場合、当時の仲介業者や住宅ローンを借りた金融機関に控えが残っていることがある。ここが一番読めないので最初に着手する。
- 譲渡費用の領収書。仲介手数料は不動産会社、解体費は解体業者、測量費は土地家屋調査士から。売却の過程で受け取った紙を1か所にまとめておく。
- 相続税の申告書の控え(取得費加算を使う場合)。申告を依頼した税理士が控えを持っている。
売却の決済が終わってから申告期間までは、早ければ2か月しかない。決済の当日に、仲介手数料の領収書と売買契約書の写しをその場でまとめておくと、翌年に探し直す手間が消える。
取得費や特例の判断が読めないとき
取得費が分からない、相続人が複数いる、相続税を払ったかどうか自体があいまい、といった条件が重なる場合は、申告書を書き始める前に相続に強い専門家に条件を当ててもらったほうが早い。編集部は士業ではないため、個別の税額計算や適用可否の判断はしない。
無料で相続税の相談をする期限と、遅れたときに起きること
確定申告の期間は原則として売った年の翌年2月16日から3月15日まで。3月15日が土日にあたる年は翌平日にずれる。国税庁の確定申告特集では、令和7年分(2025年中の売却分)の所得税の申告・納付期限を令和8年3月16日(月)と案内している(2026年7月31日確認)。
期限を過ぎても期限後申告はできる。ただしペナルティが付く。無申告加算税は、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に申告した場合は納付すべき税額の5%。事前通知を受けた後で調査を受ける前なら50万円までの部分が10%、50万円超300万円までが15%、300万円超が30%。調査を受けた後だと50万円までが15%、50万円超300万円までが20%、300万円超が30%になる(令和5年分以降。国税庁タックスアンサーNo.2024、2026年7月31日確認)。
ただし、法定申告期限から1か月以内に自主的に申告し、納付すべき税額の全額を法定納期限までに納めていて、過去5年間に無申告加算税や重加算税を課されていない場合は、無申告加算税がかからない。これとは別に、納付が遅れた期間に応じた延滞税もかかる。
不動産の譲渡は登記で動きが残る。申告しないまま放置しても、時間が経つほど加算される側が増えていく。
損が出たとき、相続した実家は他の所得と相殺できない
売っても利益が出ず、譲渡所得がマイナスになった場合は、原則として確定申告の義務はない。
ここで誤解しやすいのが損益通算だ。土地や建物の譲渡で損失が出ても、給与所得など他の所得との損益通算はできない。損益通算や繰越控除の特例が用意されているのは、一定の要件を満たすマイホームを売った場合に限られる(国税庁「不動産等を売却した方へ」2026年7月31日確認)。
相続してから誰も住まないまま空き家になっていた実家を売って損が出た場合、この特例の対象になる可能性は低い。つまり、申告しても税金が戻ってくるわけではない。逆に、自分が住んでいた実家を売って買い替えたようなケースでは、申告したほうが有利になることがある。自分がどちらに当たるかの判断は、税務署の相談窓口か税理士に条件を出して確認する範囲になる。
兄弟で共有していた場合と、住民税の申告
実家を兄弟姉妹で相続し、共有のまま売却したケースは扱いが変わる。譲渡による所得は各人の持分に応じて各人に帰属するため、申告も一人ずつ別々に行う。空き家の3,000万円特別控除の限度額が相続人ごとに判定され、家屋と敷地を取得した相続人が3人以上なら1人あたり2,000万円になる(No.3306)という規定も、各人が自分の申告をする前提で作られている。
そのため、売買契約書の写しや領収書の写しは人数分そろえることになる。原本は誰か1人が持っていることが多いので、決済のときに必要部数をコピーしておくと後が早い。誰か1人がまとめて申告して精算する、という処理はできない。
もうひとつ見落とされやすいのが住民税だ。給与以外の所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要になる場合でも、住民税は源泉徴収の仕組みがないため、市区町村への申告が別に必要になる。大津市も、給与所得以外の所得が20万円以下の人について、所得税の確定申告は不要だが市民税・県民税の申告は必要だと案内している(大津市「個人市民税・県民税 申告をしなければならない方について」2026年7月31日確認)。所得税の確定申告を出した場合は、住民税の申告をしたものとして扱われるため二重に出す必要はない。
自分で申告するか、税理士に頼むか
国税庁の確定申告書等作成コーナーは、不動産の売却に対応していて、スマートフォンからでも譲渡所得の申告書を作成できる(国税庁「不動産等を売却した方へ」2026年7月31日確認)。画面の案内どおりに売却金額と取得費、譲渡費用を入れていけば第三表まで自動で計算される。
自分で進めやすいのは、購入時の売買契約書が残っていて、相続人が1人で、使う特例が無いか1つだけ、というケース。逆に手が止まりやすいのは次の条件が重なるときになる。
- 取得費が分からず、概算取得費5%を使うかどうかで税額が大きく変わる
- 相続人が複数いて、持分ごとに申告を分ける必要がある
- 空き家特例と取得費加算のどちらを使うか、または併用の可否が判断できない
- 売却の前に解体していて、その費用を譲渡費用に入れられるか分からない
譲渡所得の申告を税理士に依頼した場合の報酬は、物件数や特例の有無によって幅があり、10万円台から数十万円まで開く。金額は事務所ごとに設定が違うため、複数から見積もりを取って比べる形になる。特例が1つ使えるかどうかで税額が数百万円動く場面もあり、そこを外すほうが高くつくことがある。
相続がからむ申告で判断がつかないとき
相続税を払ったかどうか、取得費加算が使えるか、相続人が複数のときの分け方など、相続側と譲渡側がまたがる論点は、一度専門家に条件を当てて整理してもらうと判断が早い。
無料で相続税の相談をするよくある質問
売った翌年ではなく、売った年に申告するのでは
申告するのは売った年の翌年になる。1月1日から12月31日までの所得を、翌年の2月16日から3月15日までに申告する。年の前半に売ると翌年の申告期間まで1年以上空くため、書類の所在を忘れやすい。
売却代金を兄弟で分けた。分けた後の金額で計算するのか
共有で売った場合は、自分の持分に応じた譲渡価額と取得費で計算する。一方、相続のときに1人が不動産を取得して他の相続人に代償金を払った場合など、遺産分割の形によって扱いが変わる。分割の内容によって判断が分かれるところなので、遺産分割協議書を持って税務署か税理士に確認する範囲になる。
特例を使って税額が0円になった。それでも申告するのか
する。3,000万円特別控除も取得費加算も軽減税率も、確定申告書に必要な書類を添えて提出することが適用の条件になっている(国税庁タックスアンサーNo.3302/No.3306/No.3267/No.3305)。申告しなければ控除前の金額で課税される。
更地にしてから売った。解体費は経費になるのか
建物を取り壊して土地を売った場合の取壊し費用は、譲渡費用に含められる場合がある。ただし空き家特例を使うケースでは、取壊しの時期や敷地の使い方に要件がある。解体の見積もりを取る段階で、売却の予定と特例の使用予定を業者と税務署の双方に伝えておくと後戻りが減る。
相続登記をしていない実家は売れるのか
売買の前提として、相続人への登記が済んでいる必要がある。相続登記は義務化されており、期限や過料の扱いは制度改正で変わってきた部分になるため、最新の内容は法務局の案内で確認する。
