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実家を買取に出す判断|仲介より安くなる分の対価

実家を買取に出す判断|仲介より安くなる分の対価

実家の買取を調べていると、最初に「仲介より安い」に行き当たります。

目安は仲介で売れる想定価格の7〜9割、条件が重なると5割前後まで下がります。その差は価格を捨てて確実性と手間を買う対価です。売却価格が800万円以下なら2024年7月の仲介手数料の改正も手取りに効くので、両方を並べて計算します。

この記事の目次
  1. 買取と仲介の差は「値段の差」ではなく「確実性の差」
  2. 引かれている1〜3割は、何の対価なのか
  3. 買取なら仲介手数料はゼロ。ただし2024年7月に仲介側の計算が変わった
  4. 提示額ではなく手取りで比べる
  5. 買取のほうが現実的になりやすい実家の条件
  6. 更地にしてから出すか、現況のまま査定に出すか
  7. 3000万円控除は買取でも使える。2024年からは解体を買主に任せても使える
  8. 事故物件・訳ありの事情は、最初に全部伝えたほうが高く着地する
  9. 名義が親のままだと、買取のスピードは意味を持たない
  10. 業者の見分け方と、断られたときの次の一手
  11. 買取に出す前に確認する順番

買取と仲介の差は「値段の差」ではなく「確実性の差」

買取は不動産会社が自分で買主になる取引です。仲介は不動産会社が買主を探してくる取引で、会社は売主と買主の間に入るだけです。この違いが、価格・期間・売却後の責任のすべてに効いてきます。

価格の目安は、不動産会社各社の解説で「仲介での売却価格の7〜9割」とされています。売り出しの難易度が高い物件では5割程度まで下がることもある、という説明も併記されています(HOME4U、スターマイカの解説ページ、2026年7月31日確認)。訳ありの事情が重なる物件では5〜8割という記述もあり、一点で覚えず幅で持っておくのが安全です。

比べる項目仲介買取
価格市場価格に近い仲介想定の7〜9割(条件により5割前後)
期間買主が見つかるまで数か月から1年以上査定から引き渡しまで数日から1〜2か月
仲介手数料かかるかからない(業者が買主のため)
内覧必要不要なことが多い
残置物撤去してから引き渡すのが基本残したまま買い取る業者がある
契約不適合責任売主が負う免責特約が付くことが多い(要確認)
近隣への露出広告するため知られやすい広告しないため知られにくい

金額だけを見れば買取は不利です。ただし比べるべきは提示額ではなく、最終的に手元に残る金額と、そこへ到達するまでの月数です。空き家が売れないときの選択肢|買取と値下げの判断でも触れていますが、売れない期間そのものが費用を生みます。

引かれている1〜3割は、何の対価なのか

買取価格が下がるのは、業者が値引きを狙っているからとは限りません。買い取った後に業者側が負担する費用と、抱えるリスクが、査定の段階で価格から引かれているためです。

  • リフォーム費または解体費。買った状態のままでは再販できないことが多い
  • 再販するときに業者が次の買主へ負う契約不適合責任。不具合を直してから売る必要がある
  • 在庫として持っている間の資金コストと固定資産税
  • 再販時の広告費や仲介手数料
  • 想定より安くしか売れなかった場合の損失を織り込む分

つまり差額は、自分で背負えば減らせる費用と、背負いたくないから業者に渡すリスクの合計です。ここを分けて考えると、提示額が相場の範囲に収まっているのか、それとも根拠なく低いのかを自分で判断できます。査定のときに「この価格は解体費とリフォーム費をいくら見込んだ結果ですか」と聞けば、答えられる業者と答えられない業者にはっきり分かれます。

買取なら仲介手数料はゼロ。ただし2024年7月に仲介側の計算が変わった

買取では仲介手数料がかかりません。ここは買取の明確な利点ですが、2024年に仲介側のルールが変わったため、差額の計算をやり直す必要があります。

宅地建物取引業者が受け取れる報酬額の告示(昭和45年建設省告示第1552号)が改正され、令和6年国土交通省告示第949号として2024年(令和6年)7月1日に施行されました。売買代金800万円以下の宅地・建物は「低廉な空家等」とされ、媒介報酬の上限が30万円の1.1倍、税込33万円まで受け取れる扱いになっています(国土交通省の公表資料、2026年7月31日確認)。

従来の速算式(売買代金の3%+6万円+消費税)が使えるのは800万円を超える取引で、それ以下では上限がこの33万円に置き換わります。売買代金300万円の実家なら、速算式では15万円前後だった上限が最大33万円まで上がり得るということです。地方の実家は売買代金が800万円以下に収まることが珍しくないため、仲介を選んだときの手数料を古い計算のまま見積もると、買取との差を実際より大きく見積もることになります。

これは上限であって、必ず33万円になるわけではありません。媒介契約を結ぶ前に報酬額を説明し合意することが求められているので、契約書の金額欄をその場で確認してください。

提示額ではなく手取りで比べる

買取と仲介は、提示額ではなく手取り額で比べます。売却時に引かれるものと、比べて迷っている間にも出ていくものを、同じ表に載せます。

  • 仲介手数料(買取は不要。仲介は800万円以下なら上限33万円)
  • 残置物の処分費、ハウスクリーニング費
  • 解体費、測量費(求められた場合)
  • 登記費用、印紙代
  • 譲渡所得税と住民税(後述の特例が使えるかで大きく変わる)
  • 売れるまでの保有コスト。固定資産税・都市計画税、火災保険、草刈りや現地に通う交通費
実家じまいナビ編集部 実家じまいナビ編集部の実体験

毎年出ていく分は、査定額の話が始まる前から減っている

編集部は沖縄の傾斜地を相続し、売却・寄付・国庫帰属と出口を順に検証しましたが、どれも成立せず、いまも保有したままです。固定資産税は年約7万円。額としては小さく見えます。ただ査定を取る前に知りたかったのは、この年約7万円が、判断を先延ばしにした年数の分だけ確定で出ていくという単純な事実でした。

仲介で1年待って売れなかった場合、価格の差は縮まらないまま保有コストだけが積み上がります。買取の提示額を見て安いと感じたとき、本当の比較対象は仲介の想定価格ではなく、待ち続けた場合の手取りです。

買取と仲介、両方の金額を先に並べる

手取りの比較は、査定額が2つ以上そろわないと始まりません。複数社の査定を一度に取り寄せて、買取の提示額と仲介での想定価格を並べるところから始めてください。金額を見てから、売るかどうかを決めて構いません。

無料で査定額を調べる

買取のほうが現実的になりやすい実家の条件

次のどれかに当てはまる実家は、仲介で買主を探すより買取のほうが現実的な選択肢になりやすい類型です。

  • 再建築不可、接道義務を満たしていない、旗竿地で重機が入らない
  • 築年数が古く、住むにはリフォームより建て替えのほうが安く済む
  • 残置物が大量にあり、片付けから始めなければ内覧に出せない
  • 相続人が遠方に住んでいて、内覧の立ち会いや草刈りに通えない
  • 相続人が複数いて、期限を決めて現金で分けたい
  • 事故物件、共有持分、借地・底地、連棟など、権利や心理面の事情がある
  • 近隣に売却を知られたくない

逆に、駅から近い、更地にすれば普通に建てられる、築年数が比較的浅い、そして時間に余裕があるなら、まず仲介で売り出してから判断しても遅くはありません。売り出して反応がない場合に、価格の問題なのか物件条件の問題なのかを切り分ける手順は実家が売れない理由と、値下げ以外に打てる手にまとめています。

更地にしてから出すか、現況のまま査定に出すか

買取に出す前に「更地にしたほうが高く売れるのでは」と考えるのは自然ですが、順番を間違えると費用だけが増えます。

建物を壊すと、その土地は住宅用地の課税標準の特例(地方税法第349条の3の2)の対象から外れます。住宅が建っている間は固定資産税の課税標準が小規模住宅用地で6分の1、一般住宅用地で3分の1に軽減されていますが、更地にすると翌年度からこの軽減が外れます。解体してから買主が決まらなければ、税負担が増えた状態で待つことになります(2026年7月31日時点の制度)。

さらに、解体費をかけた分だけ売却価格が上がるとは限りません。買取業者は解体を前提に査定していることが多く、その場合は解体費が最初から価格に織り込まれています。実務的にはこの順番になります。

  1. 現況のまま複数社に査定を出す
  2. 同じ業者に「更地にして引き渡した場合はいくらか」も聞く
  3. その差額と、実際の解体見積もり、解体後に増える固定資産税を並べる
  4. 差額が解体費を明確に上回るときだけ、自分で解体する

解体前提の査定を出されたら、解体費の相場も自分で持っておく

「解体費を引いてこの価格です」と説明されたとき、その解体費が妥当かどうかは相場を持っていないと判断できません。複数社の解体見積もりを比べて、引かれている金額の当否を確かめてください。

無料で解体費用を比べる

3000万円控除は買取でも使える。2024年からは解体を買主に任せても使える

買取であっても、売却益が出れば譲渡所得として課税されます。逆に、使える特例は買取でも仲介でも同じように検討できます。個別の税額計算や適用可否の判断は税理士か税務署の領域なので、ここでは要件の枠だけを示します。

相続した空き家の3000万円特別控除

被相続人が住んでいた家屋とその敷地を相続して売った場合、一定の要件を満たすと譲渡所得から最高3000万円を控除できます。国税庁のタックスアンサーNo.3306(2026年7月31日確認)で示されている主な要件は次のとおりです。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
  • 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間の譲渡であること
  • 相続のときから売却のときまで、事業・貸付け・居住に使われていないこと
  • 令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合、控除の上限は2000万円になる

買取と関係が深いのは、令和6年1月1日以後の譲渡から加わった扱いです。売却してから翌年2月15日までに買主が耐震改修または取壊しを行った場合も、対象になります。以前は売主が自分で解体してから売る必要がありましたが、いまは解体を買主側に任せる形でも要件を満たし得ます。現況のまま引き渡す買取と噛み合う変更です。ただし期限までに買主が実際に工事を行うことが前提なので、契約書でその点をどう定めるかを業者と税理士の両方に確認してください。

取得費加算の特例

相続税を納めている場合、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売れば、納めた相続税のうち一定額を取得費に加算できます(国税庁タックスアンサーNo.3267、2026年7月31日確認)。3000万円控除とどちらを使うかで有利不利が分かれるため、両方の数字を出したうえで税理士に判断を仰ぐのが安全です。編集部は士業ではないので、どちらが有利かの結論は出しません。

事故物件・訳ありの事情は、最初に全部伝えたほうが高く着地する

告知が必要な事情がある場合、隠して売るのが一番損をします。

国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を令和3年10月8日に公表しています。賃貸では、自然死や日常生活の中での不慮の死以外の死が起きた場合でも、事案の発生からおおむね3年が経過した後は原則として告げなくてよいとされていますが、売買についてはこの期間の目安が示されていません(2026年7月31日確認)。売買では、年数が経っていても告知の検討が必要になると考えておくべきです。

買取業者は、こうした事情を織り込んだうえで査定します。最初に全部伝えたほうが、後から発覚して価格をやり直されるより結果的に高く着地します。伝えずに契約すれば、契約不適合責任や損害賠償の問題が引き渡し後まで残ります。

あわせて、契約書に契約不適合責任の免責特約が入っているかを確認してください。免責は買取の利点として挙げられることが多いものの、扱いは業者によって異なります。口頭の説明ではなく書面で確かめる項目です。

名義が親のままだと、買取のスピードは意味を持たない

買取の利点は速さですが、相続登記が終わっていなければ、そこで手続きは止まります。

法務省によると、相続によって不動産の所有権を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつその不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をする義務があります。正当な理由がないのに怠ると、10万円以下の過料の対象とされています。施行日は令和6年4月1日で、施行前に発生していた相続も対象となり、その場合は令和9年3月31日までに申請すれば義務を果たしたことになります(法務省サイト、2026年7月31日確認)。

遺産分割がまとまらない場合の暫定策として相続人申告登記がありますが、法務省はこの制度について、不動産の権利関係を公示するものではなく、相続した不動産を売却したり抵当権を設定したりする場合には相続登記が必要だと明記しています。売る前提であれば、相続登記まで終わらせる必要があります。

相続人が複数いて共有になっている場合は、売却に全員の同意が要ります。誰が何に反対しているのかによって打てる手が変わるため、査定を取るのと並行して、そこを先に確かめておくと時間を無駄にしません。

業者の見分け方と、断られたときの次の一手

買取は1社の提示額だけでは適正かどうか判断できません。同じ物件でも、業者が持っている再販の出口によって金額が変わるためです。事故物件に強い業者と、共有持分の権利調整に強い業者は同じではありません。

依頼する前に見るところ

  • 宅地建物取引業の免許番号。括弧内の数字は更新回数で、営業年数のおおよその目安になる
  • 自分の物件と似た類型の買取実績が公開されているか
  • 契約不適合責任の免責を書面で明記できるか
  • 残置物を残したままでよいか、処分費を誰が負担するか
  • 費用負担が発生する取引になる可能性を、先に説明するか
  • 査定額の根拠を、再販の想定と費用の内訳で説明できるか

最低でも3社に、同じ資料と同じ事情を伝えて査定を出してもらい、金額と条件を並べます。1社ずつ探すと時間がかかるので、一括査定で母数を作ってから絞るほうが手数は少なくて済みます。

どこにも断られたとき

買取業者に断られること自体は珍しくありません。次の順で当たり先を変えます。

  1. 訳あり物件専門の買取業者に切り替える。権利調整や特殊な再販ルートを持っている
  2. 隣地の所有者に打診する。隣地と一体になれば使える土地になる場合がある
  3. 自治体の空き家バンクや空き家相談窓口に登録・相談する
  4. 建物を解体して土地だけにし、相続土地国庫帰属制度の要件に当たるか確認する。建物が建ったままでは申請できない

売る以外の出口も含めた整理は空き家の処分方法4つ|売る、貸す、解体、譲るにまとめています。

まず3社ぶんの金額をそろえる

買い叩かれているかどうかは、比べる相手がいて初めて分かります。査定は無料で、金額を見てから売らない判断をしても構いません。

無料で査定額を調べる

買取に出す前に確認する順番

順番を守るだけで、余計な出費と手戻りが減ります。

  1. 登記事項証明書を取り、名義が誰になっているかを確かめる
  2. 相続登記が未了なら、売却の前提として登記を進める
  3. 共有なら、相続人全員の意向を先に確認する
  4. 告知が必要な事情、境界の未確定、越境物の有無を洗い出す
  5. 現況のまま3社以上に査定を依頼する。片付けも解体もこの前にやらない
  6. 同じ業者に、更地の場合の価格と、残置物の扱い、費用負担の有無を聞く
  7. 仲介での想定価格と、800万円以下なら上限33万円の仲介手数料も並べて、手取りで比較する
  8. 3000万円控除や取得費加算の要件に当たりそうなら、契約前に税理士へ確認する

片付けと解体を先にやってしまうと、その費用を回収できないまま査定に臨むことになります。順番を後ろに置くだけで、支出のかなりの部分は判断の後に回せます。

ABOUT US

実家じまいナビ編集部

実家じまいナビ編集部 |沖縄に売れない土地を持つ当事者が運営

実家じまいナビ編集部です。運営者自身が沖縄に売れない土地を相続し、出口が見つからないまま維持している当事者です。役所と業者を回って分かった順番、実際にかかる費用、先に知っておけば防げたことを記録しています。法令の解釈が必要な部分は断定せず、調べ方と相談先を示す方針です。

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