遺品の衣類の処分|寄付、買取、供養の使い分け

故人の服は、量が多いうえに一枚ずつ手が止まるので、遺品整理の中でも最後まで残りやすい。
出口は寄付・買取・供養・自治体回収の4つで、迷う基準は服の状態と量と気持ちだけ。郵送供養は1箱3,000〜15,000円ほど、古布回収は洗って乾いた物だけで、汚れた服は受け付けない自治体が多い(2026年7月時点)。
この記事の目次
衣類の出口は4つしかない
故人の衣類の出口は4つしかない。買取に出す、寄付する、供養してから手放す、自治体の回収か可燃ごみに出す。どれを選ぶかは服の値打ちではなく、状態と量、そしてその服を持ったときに手が止まるかどうかで決まる。
| 服の状態 | 向く出口 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 未使用・タグ付き、ブランド品、着物や和装小物 | 買取 | 値が付けば収入。付かない分の返送料がかかる業者もある |
| 洗えばまだ着られる普段着 | 自治体の古布回収、または寄付 | 回収は無料が中心。寄付は送料が自己負担 |
| 着られるが手放すのがつらい | 供養してから手放す | 郵送供養で1箱3,000〜15,000円ほど |
| 汚れ、破れ、においがある | 可燃ごみ | 指定袋代のみ |
| 量が多くて手が回らない | 遺品整理業者にまとめて依頼 | 間取りと物量で大きく変わる |
ひとつの出口に寄せなくていい。1軒の家から出る衣類は、たいていこの4つに分かれる。先に出口の名前を知っておくと、1枚ずつ悩む時間が短くなる。
袋に詰める前に確認する5つ
先に確認しておかないと後戻りできない項目が5つある。仕分けを始める前に、この順で潰す。
- ポケットと内ポケット。現金、鍵、指輪、通帳、保険証券が出てくることがある。上着とズボンは特に多い
- 遺言書とエンディングノート。特定の服を誰に渡すか書かれていることがある。遺言書には法的な効力があり、エンディングノートには無い。扱いに迷う記載があれば、処分せずに弁護士や司法書士に確認する
- 同居していた家族の服が混ざっていないか。クローゼットが共用だと見分けがつかない
- 親族の希望。欲しいと思っていた服を先に捨てると、後から取り返しがつかない
- 葬儀がまだなら、棺に納める服。素材や金具に制限があるので葬儀社に確認する
衣類の中に高価な物があり、相続財産としての扱いが絡みそうなときは、評価や分割の判断をこちらでせず税理士や弁護士に確認する範囲になる。誰が何を受け取るかの決め方は形見分けの決まりとタイミング|親族で揉めない配り方にまとめてある。
仕分けは残す・迷う・手放すの3つで足りる
- 残す。先に枚数か箱の数の上限を決めてから選ぶ。上限を決めないと結局全部が残る
- 迷う。箱に入れて、詰めた日付を書く。四十九日や一周忌など親族が集まる機会に開けて、もう一度見る
- 手放す。ここからさらに、買取、寄付、供養、回収へ分ける
迷う箱の保留期間を3か月から半年に置く解説は多いが、期限そのものに決まりはない。期限が要るのは、賃貸物件の明け渡しや家の売却、解体の予定がある場合だけで、そのときは日付から逆算して箱を開ける日を決める。手放す前に写真を撮っておくと、服そのものが無くても着ていた姿は残る。
寄付は受け入れ条件が思ったより狭い
寄付は無料で手放せる方法に見えるが、実際は条件が細かい。夏物のみ、下着は不可、季節ごとに募集品目が変わる、といった制限がある団体が多く、送料は送り主の負担が原則になる。
受付そのものが止まっていることもある。日本救援衣料センターの公式サイトでは、2026年7月31日時点で衣料品の受け付けを行っておらず、海外輸送費の不足により在庫品の現地寄贈が優先で、輸送費の寄附のみを募っていると告知されている(日本救援衣料センター/2026年7月31日確認)。
まとめ記事に載っている団体名をそのまま信じて箱を送ると、受け取ってもらえずに送料だけが消える。送る前に、その団体の公式ページで現在の受付状況と品目を必ず確認する。確認できないなら、寄付は候補から外して別の出口に回したほうが早い。
買取に出せる服と、自宅に呼ぶときの注意
値が付きやすいもの
未使用でタグが付いている物、ブランド品、状態のよい着物と和装小物には値が付く可能性がある。逆に、着用済みの普段着、礼服、量販店の衣類はほとんど値が付かない。買取に回るのは全体の一部で、大半は別の出口に行くと考えて仕分けたほうが早い。着物は洋服と査定の仕組みが違うので、実家の着物は売れる?買取価格が付く条件と相場で条件を確認してから出す。
自宅に呼ぶ買取には法律の保護が付いている
業者が自宅に来て買い取る取引は、特定商取引法の訪問購入に当たる。消費者庁の解説では、事業者は勧誘に先立って氏名と目的と買い取る物品の種類を告げる義務があり、飛び込み勧誘は禁止で、査定を頼んだだけの相手に査定を超えて勧誘することも法に抵触するとされている。契約書面を受け取った日から8日以内はクーリング・オフができ、その期間内は物品の引渡しを拒める(消費者庁 特定商取引法ガイド 訪問購入/2026年7月31日確認)。
東京都の消費生活相談でも、不用品を買い取ると言われて訪問を承諾したら貴金属だけ安値で買われた、着物の買取をクーリング・オフして取り戻したい、といった事例が挙げられている(東京くらしWEB 訪問購入/2026年7月31日確認)。その場で持ち帰らせない、という一手で防げる。
供養とお焚き上げの実際の料金
供養やお焚き上げは義務ではない。しないまま手放しても問題はない。手が止まって作業が進まないときに、段差を下げるための道具として使う。
郵送で受け付けている寺院は公開価格を出している。2026年7月31日時点で確認できた例は次のとおり。
| 寺院 | 供養料 |
|---|---|
| 真如寺(郵送) | レターパックに収まる物 3,000円/3辺合計80cm以内 5,000円/140cm以内 10,000円/170cm以内 15,000円。不燃物が含まれる場合は一律2,000円加算 |
| 真善寺(郵送・持込) | レターパックに収まる物 3,000円より/3辺合計80cm以内 6,000円より |
出典は真如寺 遺品供養お焚き上げと真善寺 遺品供養お焚き上げ(いずれも2026年7月31日確認)。金額と受付方法は変わるので、申し込み前に各寺院に直接確認する。
箱の大きさで課金される仕組みなので、衣類を全部入れると高くつく。よく着ていた1着だけを供養に回し、残りは通常の出口に流すほうが費用も手間も軽い。遺品整理業者が合同供養をオプションで扱うこともあり、その場合も個別供養は別料金になることが多い。
自治体の古布回収は品目が市区町村で違う
まだ着られる普段着の受け皿は、自治体の古布・古着回収になる。共通するルールは、洗って乾いていること、中身が見える透明か半透明の袋に入れること、ボタンとファスナーは外さないこと。
出せない物は自治体ごとに違う。2026年7月31日時点で各自治体が公開している例を挙げる。
- 練馬区:汚れのある物、電熱式防寒服や電動ファン付き衣類、じゅうたん、ふとん、マットレス、ゴム製品、はんてん、ぬいぐるみ、かばん、靴は回収不可。段ボールや紙袋では出せない(練馬区 古着・古布の回収)
- 横浜市:洗濯してあり乾いている物のみ。雨の日は出さない。濡れた古布はリユースできないため、次の収集日か資源回収ボックスへ回す(横浜市 古布)
- 福岡市:下着類、ストッキング、靴下、ネクタイ、伸びる素材のタオル、油が付着した物は不可。洗っても取れない多少のシミは可(福岡市 使わなくなった古着を回収しています)
福岡市のように下着や靴下を受け付けない自治体がある一方、練馬区のように下着を含めて受け付けるところもある。自分の市区町村のページを開いて品目表を見るのが唯一の確実な手順になる。汚れや強いにおいがある物は資源に回さず可燃ごみへ出す。無理に資源へ入れると、同じ袋の他の衣類までリサイクルできなくなる。
業者にまとめて任せるときの守り方
量が多い、家が遠い、明け渡しの期限がある。この条件が重なると、業者にまとめて任せるほうが早い。ただし相談も起きている。
国民生活センターが2018年7月19日に公表した資料では、遺品整理サービスに関する相談件数は2013年度73件、2014年度109件、2015年度90件、2016年度114件、2017年度105件と推移している。作業時に予定外の料金を請求され最終的に見積金額の2倍を請求された、処分しないよう頼んだ物が処分された、といった事例が紹介されている(国民生活センター 遺品整理サービスでの契約トラブル/2026年7月31日確認)。
衣類に限れば、防ぎ方は単純になる。
- 残す服を先に別の部屋か別の箱へ移し、貼り紙をしておく。口頭の指示だけにしない
- 現地を見た上での見積書をもらい、追加料金が発生する条件を書面で確認する
- ごみとして運ぶ作業には一般廃棄物収集運搬業の許可が要る。買取も行うなら古物商許可も確認する
- 2社以上から見積もりを取る。金額そのものより、内訳の書き方に差が出る
間取りごとの目安と追加料金の内訳は遺品整理の費用相場|間取り別の目安と追加料金の内訳にまとめてある。
費用と手間で並べた比較表
4つの出口を、費用と手間と向く量で並べる。金額は2026年7月31日時点で確認できた範囲の幅で書いている。
| 出口 | 費用 | 手間 | 向く量 |
|---|---|---|---|
| 自治体の古布回収 | 無料が中心 | 洗って乾かして袋詰め。回収日が限られる | 数袋まで |
| 可燃ごみ | 指定袋代のみ | 最も軽い。1回に出せる袋数に制限がある自治体もある | 少量ずつ |
| 寄付 | 送料が自己負担 | 受付状況と品目の確認が要る | 段ボール1〜2箱 |
| 買取 | 値が付けば収入 | 査定と契約。自宅買取は書面を残す | 選んだ数点 |
| 郵送供養 | 1箱3,000〜15,000円ほど | 申し込みと発送のみ | 厳選した数点 |
| 業者へ一括 | 物量と間取りで大きく変わる | 立ち会いと指示出し | 1部屋以上 |
1軒分をひとつの出口で処理しようとすると、どれかが必ず無理をする。数点を買取と供養に、まだ着られる分を回収に、残りを可燃ごみに、という分け方が現実的な形になる。
よくある疑問
故人の服を着てもいいのか
法律にも仏教の教義にも、着てはいけないという決まりはない。着ない方がよいという言い方は民間の風習や占いの領域の話で、根拠のある禁止ではない。サイズが合って気持ちが動くなら着てよく、着られないなら手放してよい。
いつまでに処分しないといけないか
期限は無い。四十九日や一周忌に合わせる人が多いのは、親族が集まって相談しやすいからで、宗教上の締切ではない。期限が発生するのは、賃貸の明け渡し、家の売却、解体の予定がある場合だけになる。
量が想像より多い
珍しくない。環境省のサステナブルファッションの資料では、1人が1年間に手放す服は約11着、一度も着られていない服が1人あたり約24枚あるとされている。手放された衣類のうちリユースとリサイクルに回るのは約38%で、残りは焼却か埋立に向かう(環境省 サステナブルファッション/2026年7月31日確認)。1人分のクローゼットが数十枚あるのは平均的な状態で、あなたの実家が特別なわけではない。
どうしても捨てられない1着がある
残していい。1着だけ残すのと全部残すのは別の話で、上限を決めて残す限り家は片付く。仕立て直して小物にする、写真に撮って現物は供養に回す、といった中間の手も使える。
