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遺品の現金やへそくりが出てきたときの扱い

遺品の現金やへそくりが出てきたときの扱い

遺品整理をしていて現金が出てくるのは、珍しいことではない。

結論から言うと、金額の大小に関係なく相続財産で、遺産分割が終わるまで相続人全員の共有として扱われる。手元の現金は口座と違って凍結されないぶん、使ってしまうと相続放棄ができなくなる。相続税の申告後に出てきたなら修正申告がいる。先にやることは記録と共有の2つ。

この記事の目次
  1. 遺品から出てきた現金は誰のものになるのか
  2. 見つけた直後にやることは記録と共有の2つだけ
  3. 捨てる前に開ける場所と、一緒に出てくるもの
  4. 手元の現金と口座の預金は、扱いがまったく違う
  5. 相続税がかかるかどうかは、現金単体では決まらない
  6. 申告が終わったあとに出てきたときの直し方
  7. 相続放棄を考えているなら、現金に触らない
  8. 形見分けを現金でするときは、順番と税目が変わる
  9. 銀行に入れるとき、使うときの手当て
  10. どこに相談すればいいのかの切り分け
  11. よくある質問

遺品から出てきた現金は誰のものになるのか

出てきた現金は、見つけた人のものにはならない。故人が持っていた財産である以上、預貯金や不動産と同じ相続財産に入り、遺産分割が終わるまでは相続人全員の共有として扱われる。国税庁も、相続税がかかる財産の例として現金と預貯金を並べて挙げている(国税庁 タックスアンサー No.4105 相続税がかかる財産/2026年7月31日確認)。

金額の大小は関係がない。封筒に入った札束でも、空き缶に貯まった小銭でも、法律上の位置づけは同じになる。これくらいなら、と自分の財布に入れた時点で、後から説明のつかない出金として残る。

相談者相談者
葬儀費用を立て替えているので、その分に充てるのもだめですか。
実家じまいナビ編集部実家じまいナビ編集部
立て替えの精算自体は実務でよくある。ただし、黙って充てるのと、金額を記録して相続人全員の了解を取ってから充てるのとでは、後で残るものがまったく違う。

出てきたお金の種類別に、扱いを整理する

見つかったもの扱い
タンス・仏壇・金庫の中の現金相続財産。相続人全員の共有
故人の財布に入っていた現金相続財産。少額でも同じ
亡くなる直前に口座から引き出された現金死亡日の残高証明書には載らないため、預貯金とは別に現金として計上する必要があると税理士法人が実務解説で指摘している
相続人が故人に預けていた自分のお金相続財産ではないが、そう言えるだけの資料が必要になる
商品券・金券・小切手金銭に見積もれる経済的価値があるものとして扱いを確認する

見つけた直後にやることは記録と共有の2つだけ

順番を間違えなければ、後の揉めごとはかなり減る。やることは多くない。

  1. その場で写真を撮る。引き出しを開けた状態と、数える前の状態の両方
  2. 発見日・場所・金額・立ち会った人を1行ずつ書き出す
  3. 数えたら、複数人で確認して合計を確定させる
  4. 相続人全員に、口頭ではなくメールや書面など記録の残る形で伝える
  5. 誰が保管するかを決め、他の財産と混ぜずに分けておく

一覧表の作り方は難しく考えなくてよい。次の項目が埋まっていれば足りる。

項目書き方の例
発見日2026年7月10日
場所寝室のタンス2段目、和封筒の中
金額紙幣18万円、硬貨3,240円
立ち会い長男、長女
保管者長男(分割まで自宅金庫で保管)

あとから出てきた金額が正しかったのかを誰も検証できない状態が、いちばん揉める。記録は、他の相続人を疑うためではなく、記録した本人を守るために残す。

捨てる前に開ける場所と、一緒に出てくるもの

現金は、まとめてどこか1か所にあるとは限らない。遺品整理を扱う各社の解説で共通して挙がるのは、次のような場所になる。

  • タンスや衣装ケースの引き出し。衣類に紛れていることが多い
  • 衣服やコートのポケット、バッグの内ポケット
  • 仏壇の引き出し、神棚。書類と一緒に入っていることがある
  • 本やアルバムの間、古い書類や領収書の束
  • 布団やカーペットの下、押し入れの奥
  • 非常用持ち出し袋、空き缶や紙袋、菓子箱

この作業は、現金だけを探す作業ではない。同じ場所からは通帳、不動産の権利証、保険証券、株式の書類が出てくる。むしろ手続きの上ではそちらのほうが金額が大きくなりやすい。何をどの順に探すかは 遺品整理で先に探すもの|通帳、権利証、保険証券 に分けて書いた。

紙袋や古い缶をゴミとして先に処分してしまうと、後から確認する手段がなくなる。中身を見てから捨てる、という一手間だけは省かない。

手元の現金と口座の預金は、扱いがまったく違う

金融機関は死亡を把握すると口座を凍結する。だから預金は、相続人が勝手に引き出すことができない。一方で、家の中から出てきた現金には凍結という仕組みがない。使おうと思えば使えてしまう。この差が、後の事故の入口になる。

凍結された口座から当面の費用を出す道は、法律で用意されている。民法909条の2は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始時の債権額の3分の1に自分の相続分を掛けた額について、各相続人が単独で払戻しを受けられると定めている(e-Gov法令検索 民法/2026年7月31日確認)。同一の金融機関からの払戻しは150万円が上限になる(三井住友銀行のよくあるご質問/2026年7月31日確認)。

実家じまいナビ編集部実家じまいナビ編集部
葬儀費用が要るなら、出てきた現金に手をつけるより先に、この払戻し制度を金融機関に確認するほうが筋がいい。記録が銀行側に残る。

手元の現金を使う場合も、この考え方をまねればよい。何に、いくら、誰の判断で使ったのかを、領収書とセットで残す。

相続税がかかるかどうかは、現金単体では決まらない

出てきた金額がいくらだから課税、という判定にはならない。遺産の総額から基礎控除を引いて、残りがあるかどうかで決まる。

基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数(国税庁 タックスアンサー No.4152 相続税の計算/2026年7月31日確認)。相続人が3人なら4,800万円になる。申告と納税の期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内で、提出先は被相続人の住所地を所轄する税務署になる。相続人の住所地ではない(国税庁 タックスアンサー No.4205 相続税の申告と納税/2026年7月31日確認)。

つまり、50万円が出てきても総額が基礎控除の中に収まるなら相続税の申告そのものが不要なことがあり、逆に10万円でも総額が超えていれば申告に載せる必要が出てくる。金額の感覚と、申告が要るかどうかは連動しない。

なお、編集部は士業ではない。各人の税額がいくらになるか、この財産が課税対象に入るかどうかの最終判断は、税理士の領域になる。この記事で書けるのは、確認すべき論点がどこにあるかまでになる。

申告が終わったあとに出てきたときの直し方

すでに相続税を申告している場合は、修正申告で足す。まだ申告していないなら期限後申告になる。どちらも、放置したときのほうが重くなる。

加算税の割合は国税通則法で決まっており、相続税にも同じ規定が適用される(国税庁 相続税、贈与税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)/2026年7月31日確認)。国税庁の解説によると、税務署からの調査の事前通知の前に自主的に修正申告をすれば過少申告加算税はかからない。事前通知の後で調査による更正を予知する前なら5%(新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)、調査を受けた後なら10%(同じく超える部分は15%)になる(国税庁 タックスアンサー No.2026/2026年7月31日確認)。事実を隠したり装ったりしていたと判断されると、過少申告加算税に代えて35%の重加算税になる(国税庁 申告が間違っていた場合/2026年7月31日確認)。

見つからないだろう、が通りにくくなっている

国税庁の令和6事務年度の集計では、相続税の実地調査9,512件のうち申告漏れなどの非違が7,826件、割合にして82.3%。重加算税の賦課は1,065件、1件当たりの申告漏れ課税価格は3,093万円だった。申告漏れ相続財産の金額の構成比は、その他が43.3%、現金・預貯金等が29.1%、有価証券13.6%、土地12.3%、家屋1.7%で、種類が特定される財産では現金・預貯金等がいちばん大きい(国税庁 令和6事務年度における相続税の調査等の状況/2026年7月31日確認)。

申告に載せるべきか判断がつかないとき

金額と相続人の数がわかっていれば、申告が必要かどうかの見立ては短時間で付く。自主的に直すか、指摘を受けてから直すかで負担が変わるため、迷っている段階で相談先を確保しておくほうが早い。

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相続放棄を考えているなら、現金に触らない

ここだけは金額に関係なく線が引かれている。民法921条1号は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認をしたものとみなすと定める。同条3号では、限定承認や相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部もしくは一部を隠したり、ひそかに消費したりしたときは単純承認とみなすとされている(e-Gov法令検索 民法/2026年7月31日確認)。

単純承認とみなされれば、借金を含めた義務もすべて引き継ぐことになる。故人に負債がある可能性が消えていない段階で、出てきた現金を使う判断は割に合わない。

相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ行う。費用は申述人1人につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手(裁判所 相続の放棄の申述/東京家庭裁判所の案内/2026年7月31日確認)。3か月で判断がつかないときは、期間の伸長を家庭裁判所に申し立てる道がある。

相談者相談者
もう少額を使ってしまいました。
実家じまいナビ編集部実家じまいナビ編集部
その一点で自動的に終わるとは限らないが、放棄を選べるかどうかの判断は弁護士に見てもらう領域になる。使った金額と使途の記録を持って相談するのが最短になる。

形見分けを現金でするときは、順番と税目が変わる

品物が残っていない、あるいは受け取る側が物では困る、という理由で現金を渡す形見分けが選ばれることがある。ここで押さえる点は2つある。

1つ目は順番。渡す前に遺産分割協議を済ませる。共有の状態のまま誰かが配ってしまうと、他の相続人の取り分を勝手に動かしたことになる。分割が終わり、自分の取り分になったお金から渡すのが筋になる。

2つ目は税目。相続人から相続人以外の人へ現金を渡すのは贈与にあたる。暦年課税では、1年間に受けた贈与の合計額から基礎控除110万円を引いた残りに贈与税がかかり、申告と納付は翌年2月1日から3月15日までになる(国税庁 タックスアンサー No.4402 贈与税がかかる場合/2026年7月31日確認)。複数回に分けて渡しても、その年の合計で見る。

金額と渡し方の目安

金額に決まった相場はないと説明する葬儀社もあれば、数万円から10万円程度の範囲で設定される例を挙げる解説もある(小さなお葬式/遺品整理みらい、いずれも2026年7月31日確認)。幅としては数万円から10万円前後を目安に、受け取る側の負担にならない額に収めるのが実務的な線になる。無地の封筒に入れ、表書きは仏式で遺品、神式で偲び草とする例が紹介されている。目上の人には渡さないという慣習もある。

時期や配り方でつまずきやすい点は 形見分けの決まりとタイミング|親族で揉めない配り方 にまとめた。

銀行に入れるとき、使うときの手当て

まとまった現金を口座に入れると、窓口で出どころを聞かれることがある。犯罪収益移転防止法にもとづく取引時確認で、200万円を超える現金の受払いを伴う取引や、10万円を超える現金による振込が対象になる(全国銀行協会 犯罪収益移転防止法に関するよくある質問/2026年7月31日確認)。

これは疑われているという話ではなく、どの金融機関でも同じ手続きになる。答えられるように、発見日と場所を書いた記録を持っておけばよい。

入金先も考えどころになる。相続人の1人の個人口座に入れると、自分のお金と混ざって後から追えなくなる。分割まで動かさない口座を1つ決めておくか、現金のまま保管して記録で管理するほうが説明しやすい。

遺産分割協議書には、後日新たな財産が見つかった場合の取り決めを1条入れておく。これがないと、現金が出てくるたびに協議をやり直すことになる。文言は司法書士や弁護士に確認する。

どこに相談すればいいのかの切り分け

相続の相談先は資格ごとに扱える範囲が違う。ここを間違えると、たらい回しで時間だけが減る。

相談先頼めること
税理士相続税の要否判定、申告書の作成、修正申告や期限後申告
弁護士相続人の間で対立があるとき、相続放棄の可否の判断、遺産分割の交渉
司法書士不動産の相続登記、遺産分割協議書の作成
遺品整理業者片付けと搬出。貴重品の捜索と報告のルールを契約前に確認する

現金だけを見て決めるのではなく、不動産を含めた総額で判断が変わる。土地が絡む場合は、売るかどうかで税金の組み立ても変わってくる。売却側の期限と控除は 相続した土地を売る税金|取得費加算と3年10か月の期限 に書いた。

総額で見たときに申告が要るかを先に確かめる

出てきた現金、預貯金、不動産を合わせた総額が基礎控除を超えるかどうかで、この先の手順が分かれる。10か月の期限は動かないため、判断だけでも早い段階で取っておくと選択肢が残る。

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よくある質問

数百円の小銭も相続財産になりますか

法律上の扱いは高額な現金と同じで、相続財産に含まれる。実務では合計して1つの金額として記録するのが現実的で、相続人全員が了解していれば少額の扱いで揉めることは少ない。了解を取らずに持ち帰る、という点だけが問題になる。

遺品整理業者が現金を見つけたらどうなりますか

依頼者に返すのが通常の対応になる。ただし、業者ごとに社内ルールが違うため、契約前に貴重品が出た場合の報告方法と、作業への立ち会いの可否を確認しておく。可能なら、業者を入れる前に自分たちで貴重品の捜索を済ませておくほうが安全になる。

見つけた人の取り分が増えることはありますか

見つけたという事実だけで取り分は増えない。分け方は遺言があればそれに従い、なければ遺産分割協議で決める。

貸金庫の中身はどう扱いますか

貸金庫の開扉には相続人全員の同意や必要書類を求められることが多く、金融機関ごとに手続きが違う。中身の確認は複数の相続人が立ち会い、目録を作ってから持ち出す。

タンス預金は税務署にわからないのではないですか

令和6事務年度の実地調査では、9,512件のうち82.3%で申告漏れなどの非違が指摘されている(国税庁)。口座の入出金履歴と生活実態が合わないときに調べられる、という構造がある以上、わからないことを前提に組み立てないほうがいい。

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実家じまいナビ編集部

実家じまいナビ編集部 |沖縄に売れない土地を持つ当事者が運営

実家じまいナビ編集部です。運営者自身が沖縄に売れない土地を相続し、出口が見つからないまま維持している当事者です。役所と業者を回って分かった順番、実際にかかる費用、先に知っておけば防げたことを記録しています。法令の解釈が必要な部分は断定せず、調べ方と相談先を示す方針です。

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