墓じまいのとき位牌はどうする?仏壇との関係

墓じまいの話が進むと、遺骨の行き先は決まっても位牌だけが宙に浮きます。
位牌に行政手続きは一切なく、決めるのは家族だけです。行き先は自宅・寺の一時預かり・永代供養・お焚き上げの4つ。費用の目安は閉眼供養3〜5万円、お焚き上げ1万円前後、永代供養10〜50万円です(2026年7月31日確認)。
この記事の目次
許可が要るのは遺骨だけ。位牌に届出はない
墓じまいで役所が絡むのは遺骨の部分だけです。すでに墓地や納骨堂に納めた遺骨を別の墓地へ移すことを改葬といい、市町村長の許可を受ける必要があります(厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律の概要」2026年7月31日確認)。八王子市の案内でも改葬は「すでに墓地(墳墓)・納骨堂などに納めた遺骨を別の墓地(墳墓)・納骨堂に移すこと」と定義され、申請手数料は無料と明記されています(八王子市公式サイト、2026年7月31日確認)。
位牌はこの枠の外にあります。自宅に置き続けても、寺に預けても、お焚き上げにしても、役所に出す書類はありません。届出がないということは、期限もないということです。墓石の撤去日までに位牌まで決めきる必要はなく、遺骨の行き先だけ先に確定させ、位牌は後で決める進め方でも実務は回ります。
後回しにすると効いてくる点が一つだけあります。閉眼供養(魂抜き)を頼める先が菩提寺しかない場合、離檀の話が済んだ後に改めて依頼するのは切り出しにくくなります。墓じまいの読経を依頼する時点で「位牌もお願いできますか」と一言添えておくと、日程もお布施もまとめて片づきます。
位牌の行き先は4つ。費用の目安を並べる
墓じまい後の位牌の選択肢は、大きく4つに整理できます。金額はいずれも寺院や地域で変動するため、幅のまま把握しておくほうが安全です。以下は2026年7月31日時点で確認した各社解説の目安値です。
| 行き先 | 費用の目安 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 自宅に残す | 0円(仏壇なしでも可) | お参りする人がまだいる。仏壇は残す、または小さく置き換える |
| 寺の一時預かり | 年1万〜3万円程度 | 引っ越し中・実家の片づけ中など、結論を先送りしたい |
| 永代供養(位牌堂に個別安置) | 10万〜50万円程度(1柱あたり) | 形を残したまま、寺に長く任せたい |
| 永代供養(合祀型・お焚き上げ型) | 3万〜10万円程度 | 継ぐ人がいない。個別のお参りは求めない |
| 閉眼供養してお焚き上げ | 閉眼供養3万〜5万円+お焚き上げ1万円前後 | 手元にも寺にも残さず、区切りをつける |
数字の出どころは、小さなお葬式「墓じまいをしたら位牌はどうすればいい?」(一時預かり年1万〜3万円、永代供養10万〜50万円、閉眼供養3万〜5万円、お焚き上げ1柱約1万円)と、ヤシロ永代供養ナビ「墓じまいと位牌の供養方法」(位牌堂10万〜50万円、合祀供養塔3万〜10万円、お焚き上げと過去帳記載で1万〜5万円)です。いずれも2026年7月31日に確認しました。
閉眼供養とお焚き上げを菩提寺にまとめて頼む場合は、お布施1万〜10万円程度という広い幅で示されることもあります(小さなお葬式「位牌の処分方法は?」、お仏壇のはせがわ「お位牌は処分してもいい?」いずれも2026年7月31日確認)。幅が広いのは、お布施が対価ではなく寺との関係で決まるためです。金額に迷ったら「他のご門徒はどれくらい包まれていますか」と直接聞いても、作法上の問題にはなりません。
仏壇を残すか処分するかで、位牌の答えが変わる
位牌単体で悩むと決まりません。位牌は仏壇の中に置くものなので、仏壇の側を先に決めると自動的に絞り込めます。
前提として、墓じまいをしたら仏壇じまいもしなければならない、という決まりはありません。お墓は遺骨を納める場所、仏壇は自宅で手を合わせる場所で、役割が別だからです。永代供養に切り替えた後も自宅の仏壇を残す家は珍しくありません(ヤシロ永代供養ナビ、みんなが選んだ終活、2026年7月31日確認)。
| 仏壇の扱い | 位牌の現実的な選択 |
|---|---|
| 仏壇を残す | 位牌もそのまま安置。数が多ければ繰出位牌や過去帳にまとめる |
| 仏壇を小型のものに買い替える | 入る柱数に合わせて整理。入り切らない分だけ永代供養かお焚き上げ |
| 仏壇も処分する | 位牌は寺に預ける・永代供養・お焚き上げのいずれか。手元供養品に替える家もある |
仏壇そのものの手順と費用は仏壇の処分方法と費用|魂抜きから引き取りまでの順番に、位牌だけを手放す場合の依頼先は位牌の処分方法と費用|永代供養に預ける選択肢にまとめています。墓じまい本体の流れと遺骨の行き先は墓じまいとは?費用と流れ、遺骨の行き先の決め方で確認してください。
位牌が5柱10柱あるときは、まとめるという中間解がある
先祖代々の家では、位牌が一つではありません。仏壇を開けたら曽祖父母の代まで並んでいた、という状況で「全部お焚き上げか、全部残すか」の二択にすると決断が重くなります。
間に入る方法が二つあります。一つは繰出位牌(くりだしいはい)で、札板を複数枚納められる箱型の位牌に、それぞれの戒名を書き写してまとめる形です。もう一つは過去帳で、戒名・法名、俗名、没年月日、享年を帳面に記録として残します。どちらも「情報は残し、物の数は減らす」やり方です。ヤシロの解説でも、お焚き上げと過去帳への記載をあわせて1万〜5万円程度という目安が示されています(2026年7月31日確認)。
費用の考え方は、新しい繰出位牌や過去帳の代金に、新調分の開眼供養と、古い位牌の閉眼供養が加わる形です。開眼供養と閉眼供養はそれぞれ3万〜5万円程度が目安とされます(ヤシロ永代供養ナビ、2026年7月31日確認)。柱数が多いほど、まとめてから手放すほうが結果的に安くなる場面があります。
閉眼供養は「墓→仏壇→位牌」の順で進める
同じ時期に墓じまいと仏壇じまいを進めるなら、魂抜きの順番はお墓、仏壇、位牌です。先に位牌を手放してしまうと、その後の仏壇や墓前で手を合わせる対象がなくなるためで、順序として不自然になります(ヤシロ永代供養ナビ、2026年7月31日確認)。
当日の費用は、お布施のほかに交通費相当のお車代を用意するのが通例です。5千円から1万円程度で包まれることが多いとされます(小さなお葬式、仏壇供養の一休堂、2026年7月31日確認)。僧侶を自宅に招くのか、位牌を寺に持参するのかで、必要かどうかが変わります。
例外もあります。位牌に開眼供養(魂入れ)をしていないなら、閉眼供養を行わずにお焚き上げしても差し支えないという説明が、仏壇店の解説でも示されています(小さなお葬式「位牌の処分方法は?」2026年7月31日確認)。自分の家がどちらかは、四十九日にどんな法要をしたか、菩提寺に記録が残っているかで確認できます。
もう一つ、環境への配慮から焼却を行わない寺院が増えているという指摘があります(樹木葬松戸家の解説、2026年7月31日確認)。閉眼供養は引き受けても、お焚き上げは対応外というケースがあるため、依頼時に「読経のみか、焼却まで含むか」を分けて聞くと行き違いが防げます。
浄土真宗は前提が違う。位牌を用いない家がある
ここまでの説明は、位牌に故人の魂が宿るという考え方を前提にしています。浄土真宗では前提が違います。亡くなればただちに浄土に往生するという教えのため、魂が宿る器としての位牌は基本的に用いず、代わりに法名軸や過去帳を用いるのが本来の形とされています(小さなお葬式「浄土真宗では位牌を作らないのか?」2026年7月31日確認)。
そのため、仏壇を動かすときの儀式の呼び方も変わります。魂抜きではなく遷仏法要(せんぶつほうよう)という別の儀式として営まれます(みんなが選んだ終活、2026年7月31日確認)。閉眼供養という言葉で問い合わせると話がかみ合わないことがあるので、宗派がわかっているなら最初に伝えておくと早いです。
実際には、地域の習慣で浄土真宗の家にも位牌があることは珍しくありません。仏具店の解説でも、すでに位牌がある家庭は記録として扱いそのまま使ってよい、寺から過去帳に替えるよう勧められた時点で切り替えればよい、という説明がされています(井上佛工所、2026年7月31日確認)。あるものを慌てて否定する必要はなく、扱いだけ確認すれば足ります。
宗派が分からないときの確認先は、菩提寺、位牌の戒名の書式、そして葬儀を頼んだ葬儀社です。戒名の頭に「釈」が付いていれば浄土真宗の法名である可能性が高い、という見分け方も示されています(同前)。
墓じまいの日程に、位牌をどう挟むか
順番だけ先に固めておくと、当日の段取りが崩れません。位牌に締切がないぶん、他の工程に合わせて置き場所を決めておく形になります。
- 親族に墓じまいの意向を伝え、位牌と仏壇の扱いも同じ場で話に出す
- 遺骨の受け入れ先(永代供養墓・納骨堂・樹木葬など)を決め、受入証明を取る
- 現在の墓地がある市区町村へ改葬許可を申請する。八王子市の例では手数料は無料(2026年7月31日確認)
- 閉眼供養を依頼する。このとき位牌と仏壇の分もあわせて相談する
- 墓石を解体・撤去し、区画を返還する
- 遺骨を新しい納骨先に納める
- 位牌の行き先を実行する(自宅・預かり・永代供養・お焚き上げ)
この流れは小さなお葬式が示す手順(行政手続き、閉眼供養、墓石の解体・撤去、納骨、位牌の供養)と同じ並びです(2026年7月31日確認)。位牌が最後に来るのは後回しでよいという意味ではなく、他が動いた後でないと置き場所が決まらないためです。
実家そのものを整理する予定があるなら、仏壇の運び出し日と家財の片づけ日を揃えると、往復の手間が減ります。位牌だけは箱に入れて手持ちにし、業者の荷物と混ぜないようにするのが実務上の注意点です。
位牌をごみに出していいのか、という問い
この疑問は多くの人が飲み込んでいますが、避けても解決しないので事実だけ整理します。
自治体のごみ区分では、仏壇は大型ごみに分類されるのが一般的です。神戸市の公式FAQでは仏壇は大型ごみで、事前申込制の有料収集としたうえで、5kg以内でごみ指定袋に入り口を結べる場合は、木製・プラスチック製は燃えるごみ、陶器製・金属製は燃えないごみで出すよう案内しています(神戸市FAQ、2026年7月31日確認)。位牌は木製の小さな札なので、区分の上ではこの後半に当たることになります。
ただし、区分に当てはまることと、そうすべきかは別の話です。仏具店や寺の解説では、閉眼供養を終えた後であっても、長く手を合わせてきた対象を一般ごみとして出す家はあまりない、と一致して説明されています(お仏壇のはせがわ、関内霊園、2026年7月31日確認)。決めるのはあなたと家族で、外から罰則が来る話ではありません。
費用を抑えたい場合は、位牌だけを郵送で受け付ける供養サービスもあります。専門業者に閉眼供養からお焚き上げまで頼む場合は5千円〜1万円程度が目安とされ(小さなお葬式「位牌を処分する際のお焚き上げの費用は?」2026年7月31日確認)、事業者によっては送料のみの負担で提携寺院での合同供養を受け付けている例もあります(お位牌Maker公式、2026年7月31日確認)。依頼するなら供養証明書を発行する先を選ぶと、親族への説明がしやすくなります。
位牌でもめる典型と、先に確認しておくこと
金額よりも先に壊れるのは、親族との関係です。位牌は一度手放すと戻せないため、事後報告が最も揉めます。上位の解説記事がそろって「継承者一人の判断では進めない」と書いているのは、この一点に集約されます(小さなお葬式、ヤシロ永代供養ナビ、2026年7月31日確認)。
先に確認しておくと安全なのは、次の3点です。
- 誰の位牌が入っているか。自分の直系だけでなく、分家した親族の親にあたる位牌が混ざっていることがあります。連絡先が分かる範囲で声をかけておく
- 仏壇の中に何が挟まっているか。過去帳、家系図、権利証や通帳が引き出しに入っている例が指摘されています(みんなが選んだ終活、2026年7月31日確認)。処分業者に渡す前に必ず全段を開ける
- 誰が引き継ぐことになっているか。位牌や仏壇は祭祀に関わる財産として扱われ、国税庁も墓地・墓石・仏壇・仏具など日常礼拝している物には相続税がかからないとしています(国税庁タックスアンサーNo.4108、相法12、2026年7月31日確認)
ただし、誰が承継するかという法律上の判断や、骨とう的価値があるものの扱いは、編集部の説明できる範囲を超えます。親族間で主張が対立しているなら、弁護士や司法書士に確認する範囲です。同様に、税額の計算そのものは税理士の領域になります。
もう一つ、永代供養は依頼した後にやり直しが難しい点も押さえておく必要があります。個別安置の期間、その後に合祀されるのか、供養が何年で区切られるのかは施設ごとに異なるため、契約前に書面で確認するよう複数の解説が注意喚起しています(ヤシロ永代供養ナビ、2026年7月31日確認)。
よく引っかかる点
墓じまいをしたら位牌も必ず処分するのか
その必要はありません。お墓は遺骨を納める場所、仏壇と位牌は自宅で手を合わせる場所で、目的が別です。遺骨を永代供養に移した後も、位牌を自宅に置き続ける選択は成り立ちます。
位牌を手放したら供養できなくなるのか
位牌がなくても供養は続けられる、という点は上位の解説でも共通しています(小さなお葬式、2026年7月31日確認)。過去帳に記録を残す、写真を置く、遺骨の一部を手元供養品に納めるなど、形は複数あります。
菩提寺がない場合はどこに頼むのか
同じ宗派の寺院に相談する方法のほか、仏壇仏具店、僧侶手配サービス、供養専門業者が受け皿になります。位牌を郵送して合同供養を受ける形なら、遠方でも進められます。
白木位牌が出てきたが、これはどうするのか
葬儀で使う白木位牌は四十九日までの仮のもので、本位牌に替えた後は寺でお焚き上げされるのが通例です(小さなお葬式、2026年7月31日確認)。実家の片づけで出てきた場合も、本位牌と同じ流れで相談できます。
費用を一番抑える組み合わせは
閉眼供養だけ寺に頼み、位牌の焚き上げは郵送受付の専門業者に出し、仏壇本体は自治体の大型ごみか業者の運び出しに回す形が下限に近くなります。ただし菩提寺との関係を続けるつもりがあるなら、まとめて依頼するほうが後の法要で話が早くなります。
