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底地と借地権|地主と同時に売ると高くなる仕組み

底地という言葉は、実家の土地の権利を調べると必ず出てくる。底地と借地権は切り離すと合計が更地価格に届かず、底地だけを売ると更地価格の10〜50パーセントに沈む。

地主と借地人がそろって売る同時売却なら、更地として通常の相場で取引できる。2026年8月6日に確認した条文と国税庁の資料をもとに、4つの出口を並べる。

この記事の目次
  1. 底地と借地権は、1つの土地を2つに割った権利
  2. 切り離すと、なぜ両方が安くなるのか
  3. 適用される法律が2つある。分かれ目は平成4年8月1日
  4. 相続税評価は国税庁の路線価図で決まる。ただし売買価格とは別物
  5. 出口1・借地人に買ってもらう
  6. 出口2・同時売却なら更地として売れる
  7. 出口3・等価交換で分ける
  8. 出口4・底地買取業者や投資家に売る
  9. 話を切り出す前に確認する4つ
  10. 編集部が置いている判断の順番

底地と借地権は、1つの土地を2つに割った権利

底地とは、借地権が設定されている土地の所有権のことを指す。地主の側から見れば「他人に貸している土地」であり、同じ土地を借りている側から見れば「借地」になる。土地は1つなのに、そこにぶら下がる権利が2つある状態だと考えると分かりやすい。

借地権は、建物を所有する目的で土地を借りる権利で、物権である地上権と、債権である土地賃借権に分かれる。実家が借地に建っている場合、家族が持っているのは建物と借地権であり、土地そのものは地主のものになる。逆に、地主側の立場を相続したのなら、手元にあるのは底地だ。

この2つは、法律の上でも強さが違う。借地借家法3条は「借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする」と定める(e-Gov法令検索・借地借家法/2026年8月6日確認)。さらに5条で、期間満了時に建物があり借地権者が更新を請求すれば、従前と同じ条件で更新したものとみなされる。地主が更新を拒むには、6条の正当の事由が要る。土地の所有者であっても、簡単には返してもらえないという構造がここで決まっている。

相談者相談者
土地の名義は地主なのに、地主のほうが弱いように見える。
実家じまいナビ編集部実家じまいナビ編集部
底地の価格が低くなる理由の大半は、この「返してもらえなさ」から来ている。

切り離すと、なぜ両方が安くなるのか

理屈の上では、更地の価値を1としたとき、借地権割合が60パーセントの地域なら借地権が0.6、底地が0.4になる。ところが実際に別々に売ると、合計が1に戻らない。片方だけでは土地として使えないからだ。

底地だけを買った人にできることは、地代を受け取ることに限られる。建物は借地人のもので、建て替えも売却も自由にはできない。金融機関の担保にも入りにくい。だから買い手は、地代からの利回りだけを見て値段を付ける。実務の目安として、買取業者への売却は更地価格の10〜20パーセント前後、投資家への仲介売却は10〜30パーセント程度、あるいは40〜50パーセントとする解説もあり、示され方に幅がある(イエコン「底地の買取相場」/センチュリー21中央プロパティー「底地の買取相場はいくら?」/2026年8月6日確認)。同じ「底地」でも、地代の水準と契約内容で結論が変わるため、一点の金額で語れる対象ではない。

借地権だけを売る側にも制約がある。土地賃借権を第三者に譲るには地主の承諾が要り、承諾が得られないときは借地借家法19条により裁判所へ承諾に代わる許可を申し立てることになる。同条は、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、許可を財産上の給付にかからせることができるとも定めている。手続きと費用が挟まる分、買い手は値を引く。

つまり、権利が割れている状態そのものが両者から価値を削っている。借地権付きの実家を売る3つの方法|地主・第三者・同時売却で扱う出口の優劣も、この一点から説明できる。

適用される法律が2つある。分かれ目は平成4年8月1日

実家の借地は、契約が古いことが多い。ここで効いてくるのが、借地借家法(平成3年法律第90号)の施行日だ。この法律は平成4年(1992年)8月1日に施行され、同時に建物保護に関する法律・借地法・借家法が廃止された(借地借家法附則2条/2026年8月6日確認)。

附則4条の本文は「この法律の規定は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する」としている。ところが、その「特別の定め」が広い。附則6条は、施行前に設定された借地権に係る契約の更新について、なお従前の例によると定める。附則7条は、建物の滅失後の再築による期間の延長も従前の例によるとする。結果として、平成4年7月31日以前に設定された借地権は、更新を重ねた今も実質的に旧借地法の枠で動く(金子総合法律事務所「旧借地法の規定が適用される土地賃貸借」/トゥモローズ「旧借地法と借地借家法の異同点」/2026年8月6日確認)。

期間の違い

項目旧借地法の借地権借地借家法の普通借地権
存続期間堅固な建物60年/非堅固な建物30年(期間の定めがない場合)建物の構造を問わず30年(3条)
更新後の期間堅固30年/非堅固20年最初の更新は20年、その後は10年(4条)
建物が朽廃したとき借地権が消滅しうる朽廃による消滅の規定はない

底地と借地権のどちらを持っていても、最初に確認するのは契約書の日付だ。ここを取り違えると、期間の計算も、価格の前提も全部ずれる。契約書が見当たらないときの調べ方は借地に建つ実家を相続したら|最初に確かめる3つと4つの出口にまとめている。

相続税評価は国税庁の路線価図で決まる。ただし売買価格とは別物

相続の場面で出てくる評価は、売買の相場ではなく国税庁の基準で計算される。借地権が設定された土地、つまり貸宅地の評価額は「自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合」で求める(国税庁 No.4613 貸宅地の評価/2026年8月6日確認)。借りている側の借地権は、自用地としての価額×借地権割合になる(国税庁 No.4611 借地権の評価)。

借地権割合は自分で決めるものではなく、地域ごとに定められていて、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できる。路線価図では路線価の数字の後ろにアルファベットが付き、Aが90パーセント、Bが80パーセント、Cが70パーセント、Dが60パーセント、Eが50パーセント、Fが40パーセント、Gが30パーセントを表す。たとえば「215D」なら、1平方メートルあたりの路線価が21万5000円で借地権割合が60パーセントという意味になる(国税庁 路線価図の説明/2026年8月6日確認)。借地権の取引慣行がないと認められる地域では、借地権割合を20パーセントとして扱う定めもある。

ここで落とし穴になるのが、この割合をそのまま売買価格に持ち込むことだ。借地権割合60パーセントの土地の底地が、必ず更地価格の40パーセントで売れるわけではない。相続税評価は課税のための共通のものさしで、買い手が実際に払う金額を保証しない。評価額より安くしか売れないことも、借地人に売る場面のように評価額に近づくこともある。割合の読み方は借地権割合とは?路線価図での調べ方と実家の評価で詳しく扱う。

なお、実際の相続税額や特例の適用可否は個別の事情で変わる。編集部は士業ではないため、税額の計算はしない。路線価図で自分の土地の割合を確認したうえで、金額の判断は税理士に持ち込むのが順番になる。

出口1・借地人に買ってもらう

底地が最も高くなりやすい相手は、その土地を借りている本人だ。借地人が底地を買えば、土地と建物の権利が一本化して完全所有権になる。地代の支払いが消え、建て替えや売却に地主の承諾が要らなくなり、金融機関の担保にも入れられる。買い手にとっての価値が跳ね上がるため、第三者に売るより高い値が付きやすい。この、特定の相手にとってだけ成立する価格は限定価格と呼ばれる。

実務の目安として、借地人への売却は更地価格の50パーセント前後、あるいは40〜60パーセント前後を一つの基準とする解説が複数ある(センチュリー21中央プロパティー/イエコン/クランピーリアルエステート/2026年8月6日確認)。ただしこれは幅であって、地代の水準、契約の残り期間、借地人の資金力で上下する。

成立しない条件もはっきりしている。借地人に買う意思と資金がなければ話が進まない。戦後から地代が据え置かれている土地では、借地人にとって借り続けるほうが安上がりで、買う動機が生まれにくい。逆に、更新や建て替えが近づいて承諾料の話が出る局面は、借地人が買収を検討しやすいタイミングになる。

出口2・同時売却なら更地として売れる

底地と借地権を、地主と借地人がそろって同じ買主に売る方法がある。買った側から見れば、権利が割れていない普通の土地が手に入る。だから通常の土地の相場で取引でき、切り離して売ったときのような目減りが起きない。両者が受け取る合計額が最も大きくなりやすいのは、この形だ。

売却代金の配分は、路線価図の借地権割合(たとえば借地権60パーセント、底地40パーセント)を出発点にすることが多い。ただしこれはあくまで目安で、実際の配分は交渉で決まる(センチュリー21中央プロパティー「借地権と底地の同時売却とは?」/2026年8月6日確認)。建物の解体費を誰が負担するか、境界の確定を誰が進めるかも、同じテーブルで決める項目になる。

条件は1つで、売りたいタイミングが両者で一致することだ。借地人が建物に住み続けたい場合は成立しない。実家じまいの側から見ると、この機会は相続が起きたときにまとまって訪れることが多い。相続をきっかけに借地権を手放す判断が出た局面は、地主にとっても底地を現金化できる数少ない窓になる。

同時売却でいくらになるか、先に幅を知る

同時売却は、更地としての価格が分かって初めて配分の話ができる。まず土地そのものの査定額の幅を押さえておくと、地主と借地人のどちらの立場でも交渉の前提がそろう。

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出口3・等価交換で分ける

売らずに権利を整理する方法が等価交換だ。土地を分筆して、底地の一部と借地権の一部を互いに渡し合う。交換が済むと、地主も借地人もそれぞれ完全所有権の土地を持つことになり、あとは各自の判断で売るなり使うなりできる。

税金の扱いには、国税庁が明示的に触れている。固定資産の交換の特例(所得税法58条)は、固定資産である土地や建物を同じ種類の資産と交換したときに譲渡がなかったものとする制度で、借地権は土地と同じ種類に含まれる。したがって底地の一部と借地権の一部の交換も、その他の要件に当てはまれば特例の適用を受けられる(国税庁 No.3505 借地権と底地を交換したとき/2026年8月6日確認)。同ページには、時価1億円・面積800平方メートル・借地権割合60パーセントの地域で等価交換を行い、交換後の土地を互いに更地とする例が示されている。

逆に言えば、要件を外せば課税される。等価にならず交換差金が発生する部分には譲渡所得の課税が生じる。適用の可否は個別の事情で判断が分かれるため、交換の設計段階で税理士に当てるのが前提になる。

手続きの側の負担も小さくない。分筆には境界の確定が要り、隣地や道路の所有者との立会いが必要になる。境界で紛糾すると分筆自体ができず、交換の話が止まる。時間と実費を見込んでおく必要がある。

出口4・底地買取業者や投資家に売る

借地人と話がつかないとき、底地だけを買い取る専門業者や投資家に売る道がある。権利関係が複雑なままでも現況で売れること、借地人との交渉を自分でやらずに済むことが利点になる。

価格は低くなる。買い手は地代の利回りで採算を見るからだ。計算の考え方は収益還元で、年間の純収益を期待利回りで割って価格を出す。地代から固定資産税と都市計画税を差し引いた額が純収益になるため、地代が固定資産税を少し上回る程度の土地では、価格が更地価格の1割前後まで落ちることがある。売却先別の相場が更地価格の10〜20パーセントと示されるのは、この計算の結果としてだ(イエコン/センチュリー21中央プロパティー/2026年8月6日確認)。

売った後のことも考えておく必要がある。底地の買主は新しい地主になり、借地人との関係を引き継ぐ。地代の増額請求や、更新時の条件交渉が新地主から出る可能性はある。長く付き合ってきた借地人がいる土地では、誰に売るかが金額と同じくらいの重みを持つ。

相談者相談者
安いのは分かったが、他に買い手がいないなら仕方がない。
実家じまいナビ編集部実家じまいナビ編集部
売り先を1社に絞る前に、借地人に打診する順番だけは飛ばさない。値が倍以上変わる分岐点になる。

話を切り出す前に確認する4つ

底地と借地権の話は、書類がそろっていないと数字が出せない。相手と交渉する前に手元で確認しておく項目を挙げる。

  1. 賃貸借契約書の日付。平成4年7月31日以前か8月1日以後かで、適用される法律が変わる。書面が残っていないケースも実務では珍しくない。その場合は地代の領収書や送金記録が、契約の存在と条件を示す材料になる
  2. 地代の額と、固定資産税・都市計画税との比較。底地の収益性はここで決まる。長年据え置かれた地代は、価格を押し下げる要因になる
  3. 登記の状態。土地の登記事項証明書で所有者を確認し、建物の登記も見る。借地上の建物に借地人名義の登記があれば、借地権を第三者に対抗できる
  4. 更新料や承諾料の取り決め。契約書に定めがあるかを見る

更新料は、法律に定めがない

借地借家法には、更新料の支払いを義務づける条文がない。支払うかどうか、いくら払うかは契約の定めと当事者の交渉に委ねられており、支払義務の有無が争いになる論点として残っている。ここは決着した問題ではないため、当サイトは結論を書かない。契約書の記載を確認したうえで、争いになりそうなら弁護士に持ち込む範囲になる。

承諾料についても法律に金額の定めはない。借地借家法19条・20条は、地主の承諾が得られない場合に裁判所が承諾に代わる許可を与えられるとし、その許可を財産上の給付にかからせることができると定める。17条は借地条件の変更や増改築の許可を裁判所が扱えるとしている。金額は、この手続きの中で個別に決まる性質のものだ。

編集部が置いている判断の順番

底地と借地権は、どちらの側に立っていても打つ手の並び方は同じになる。価値が最も戻る順に試すのが基本だ。

  1. 借地人(または地主)に、売る意思・買う意思があるかを確かめる。同時売却が成立するなら、更地の相場で分けられる
  2. 相手が動かないなら、片側だけの売買を打診する。借地人への底地売却は更地価格の40〜60パーセント前後が目安として示される水準で、第三者売却より高くなりやすい
  3. 売買が難しく、権利を整理したいだけなら等価交換を検討する。分筆と境界確定の手間、交換の特例の要件確認が前提になる
  4. どれも成立しないときに、買取業者への売却を置く。更地価格の10〜20パーセント前後まで落ちるが、現況のまま手を離せる

この順番を飛ばして最後の選択肢から入ると、本来届いたはずの金額との差が大きく開く。逆に、相手との関係が既に悪化していて話ができない状態なら、順番どおりに進めること自体が現実的でない場合もある。

制度と割合は2026年8月6日時点で確認したものを載せている。相続税評価の細目や特例の適用は年度で変わるため、実際に動かす前に国税庁のページで日付を見直してほしい。個別の税額計算と遺産分割の判断は、税理士と弁護士の領分になる。

更地としての価格の幅から押さえる

底地の価格も、同時売却の配分も、出発点は更地としてその土地がいくらかという数字になる。複数社の査定額の幅を先に見ておくと、相手との話し合いで根拠を持てる。

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実家じまいナビ編集部

実家じまいナビ編集部 |沖縄に売れない土地を持つ当事者が運営

実家じまいナビ編集部です。運営者自身が沖縄に売れない土地を相続し、出口が見つからないまま維持している当事者です。役所と業者を回って分かった順番、実際にかかる費用、先に知っておけば防げたことを記録しています。法令の解釈が必要な部分は断定せず、調べ方と相談先を示す方針です。

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