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山林の相続税評価|宅地や農地と違う計算の仕組み

山林の相続税評価|宅地や農地と違う計算の仕組み

相続財産に山林が入っていると、宅地や農地の計算式をそのまま当てはめても評価額は出ない。

区分は純山林・中間山林・市街地山林の3つ。純山林と中間山林は固定資産税評価額×倍率、市街地山林は宅地並みの価額から造成費を引く。さらに土地とは別に立木を評価し、相続で取得した立木は時価の85%で計算する。

この記事の目次
  1. 山林の相続税評価は3つの区分から始まる
  2. 純山林・中間山林は倍率方式で計算する
  3. 市街地山林は宅地に置き換えてから造成費を引く
  4. 宅地・農地と何が違うのか
  5. 立木は土地とは別に評価する
  6. 評価額を下げる制度と、納税を猶予する制度
  7. 評価額が低くても、手続きと費用は残る
  8. いらない山林の出口と、その費用
  9. 税理士に確認する範囲と、先に用意しておく資料
  10. よくある疑問

山林の相続税評価は3つの区分から始まる

山林の評価方法は、財産評価基本通達45で2通りに分かれている。純山林と中間山林は倍率方式、市街地山林は比準方式または倍率方式(国税庁「第4節 山林及び山林の上に存する権利」2026年7月31日確認)。

  • 純山林:市街地から離れ、宅地の価格の影響をほとんど受けない山林
  • 中間山林:純山林と市街地山林の中間にあたる山林
  • 市街地山林:市街地にあり、宅地の価格の影響を受ける山林

どの区分になるかを自分で決めることはできない。国税庁の財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)を開き、その土地がある市区町村のページで山林の欄に何が書かれているかを見る。倍率が数値で載っていれば倍率方式、「比準」「市比準」と書かれていれば宅地並みの計算に進む、という読み方になる。

相談者相談者
倍率表のどこを見ればいいのか分かりません。
実家じまいナビ編集部実家じまいナビ編集部
固定資産税の課税明細書で地番と地目を確認してから、財産評価基準書でその市区町村を開いて山林の欄を見る、の順番になる。地番が分からないと倍率表まで進めない。

純山林・中間山林は倍率方式で計算する

倍率方式は、通達47(純山林)と48(中間山林)に沿って計算する。

山林の相続税評価額 = その山林の固定資産税評価額 × 国税局長が定める倍率

倍率は、地勢・土層・林産物の搬出の便などが似た地域ごとに、売買実例価額や精通者意見価格を基にして定められる。宅地のように道路ごとの路線価が引かれているわけではないので、同じ市内でも地域で数字が変わる。

計算のもとになる固定資産税評価額は、毎年届く固定資産税の課税明細書で確認する。山林は評価額が低く、後述する免税点に届かないと課税明細書そのものが届かないことがある。その場合は市区町村役場で名寄帳(土地名寄帳)を取得すると、課税されていない土地も含めて評価額を確認できる。

評価単位は原則として1筆ごと(通達7-2(3))。宅地の1画地、農地の1枚とは数え方が違い、筆数が多いほど作業が増える。ただし市街地山林として本文の方法で評価するものは、利用の単位となっている一団の山林が単位になる。

市街地山林は宅地に置き換えてから造成費を引く

市街地山林の計算は通達49による。

評価額 =(その山林が宅地だとした場合の1平方メートル当たりの価額 - 1平方メートル当たりの宅地造成費)× 地積

造成費は、整地・土盛り・土止めに要する費用がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長が定めた金額を使う。傾斜地には傾斜度に応じた造成費が別に定められており、傾斜がきついほど差し引かれる額は大きくなる。

倍率が定められている地域では、固定資産税評価額×倍率で計算できることも通達49のただし書に書かれている。

実務で効いてくるのは後段のほうで、宅地への転用が見込めないと認められる市街地山林は、近隣の純山林の価額に比準して評価する。通達49の注2は、この「転用が見込めない場合」を、本文の方法で計算した価額が近隣純山林に比準した価額を下回る場合、または急傾斜地等であるために宅地造成ができないと認められる場合、と定めている。造成費が宅地並み価額を食い尽くすような斜面は、市街地にあっても純山林並みの評価に落ちる。

宅地・農地と何が違うのか

同じ土地でも、地目が変われば評価の組み立てが変わる。山林と宅地・農地の違いを並べると次のようになる(財産評価基本通達7-2・8・34・45・111、2026年7月31日確認)。

項目宅地農地山林
区分の数4区分3区分
評価単位1画地1枚1筆(市街地山林は一団)
主な計算路線価方式・倍率方式倍率方式・宅地比準方式倍率方式・宅地比準方式
土地以外の評価立木を別に評価
利用の規制建築基準法など農地法の転用許可森林法の届出・林地開発許可

農地は純農地・中間農地・市街地周辺農地・市街地農地の4区分(通達34)、山林は3区分(通達45)で、区分の数も判定の物差しも違う。

もう1つの違いが地積の扱いで、通達8は「地積は、課税時期における実際の面積による」と定めている。登記簿の面積と実測がずれる縄伸びは山林で珍しくなく、登記地積をそのまま使うと評価を誤る。

農地側の計算は農地の相続税評価額の出し方|区分ごとの計算で整理している。

立木は土地とは別に評価する

山林の相続で抜けやすいのが立木。地目としての山林(土地)と、その上に立っている木は別々に評価する。宅地や農地には無い工程になる。

杉とひのきは主要樹種として扱われ、通達113により、林業地帯ごとの標準価額に、地味級(地味の肥せき)・立木度(立木の密度)・地利級(立木の搬出の便否)に応じた割合を連乗し、その森林の地積を掛けて計算する。岩石やがけ崩れによる不利用地の地積は、この地積から除外する。

標準価額は樹齢別に定められている。標準伐期は通達116に地帯ごとの表があり、たとえば杉65〜70年、ひのき70〜75年といった年数が並ぶ。標準伐期を超え、その2倍の樹齢までの立木は年1.5%の利率による複利終価の額を基に定める、という決め方もされている。

そのうえで相続税法第26条により、相続または遺贈(包括遺贈と、被相続人から相続人への遺贈に限る)で取得した立木は、取得した時の時価に100分の85を乗じた金額で評価する。土地側には無い15%分の圧縮がここに入る。

杉・ひのき以外で国税局長が標準価額を定めていない樹種は、通達117により売買実例価額や精通者意見価格を参酌して評価する。手入れされていない雑木林がこちらに当たることが多い。

評価額を下げる制度と、納税を猶予する制度

伐採が制限されている山林には控除がある。通達123は、法令に基づいて定められた伐採関係の区分ごとに、次の割合を控除すると定めている。

伐採関係の区分控除割合
一部皆伐0.3
択伐0.5
単木選伐0.7
禁伐0.8

この割合は立木だけの話ではない。通達50により、土地(山林)の側も、同じ割合を乗じた金額を控除して評価する。保安林については、地方税法第348条第2項第7号で固定資産税が非課税とされている点も通達50の注に書かれている。

都市緑地法第12条の特別緑地保全地区にある山林と立木は、通達50-2と123-2により、評価した価額から100分の80を控除する。林業を営むために伐採が認められる純山林は除かれる。

林業を続ける場合は納税猶予の制度がある。特定森林経営計画が定められた区域内の山林を相続し、林業経営相続人が自ら山林の経営を行う場合、特例山林に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予され、その相続人が死亡した時点で免除される(国税庁 タックスアンサー No.4149、2026年7月31日確認)。経営を続けることが前提の制度で、やめれば猶予は続かない。

控除や猶予の要件に当たるか、先に確認する

保安林の指定、特別緑地保全地区、森林経営計画は、いずれも書類で要件を確かめる話になる。相続に強い税理士へ無料で相談できる窓口で、対象になりそうかどうかだけでも早めに当たっておくと、申告期限から逆算した動き方が決めやすい。

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評価額が低くても、手続きと費用は残る

山林の相続税評価額は低く出ることが多い。ただし評価が低いことと、負担が無いことは別の話になる。

  • 固定資産税:同じ市町村内にあるその人の土地の課税標準額の合計が30万円未満なら、固定資産税を課することができない(地方税法第351条の免税点)。裏を返せば、ほかの土地と合算して30万円以上になれば課税される
  • 相続登記:2024年(令和6年)4月1日から義務化された。相続で不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請せず、正当な理由もない場合は10万円以下の過料の対象(不動産登記法第76条の2第1項・第164条第1項)。施行日前に相続を知っていた不動産は2027年3月31日まで。遺産分割が成立した場合は、その日から3年以内に結果に基づく登記も必要(法務省、2026年7月31日確認)
  • 森林の土地の所有者届出:森林法第10条の7の2により、森林の土地の所有者となった日から90日以内に、その土地がある市町村長へ届け出る。相続では遺産分割が終わっていなくても、相続開始の日から90日以内に法定相続人の共有として届け出る(林野庁、2026年7月31日確認)。届出をしない、または虚偽の届出をしたときは10万円以下の過料が科されることがある(森林法第213条)

この届出は不動産登記とは別の制度で、登記をしたかどうかに関係なく必要になる。対象は都道府県が定めた地域森林計画の対象森林で、登記上の地目にかかわらず現況が森林なら該当する可能性が高い。

相続税そのものの期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内の申告・納税(国税庁 No.4205)。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数(同 No.4152)で、山林だけなら基礎控除に届かず申告不要になることも多い。手続きの流れ全体は山林を相続したときの手続きと売却の難しさにまとめている。

いらない山林の出口と、その費用

評価額が低いから簡単に手放せる、とはならない。

実家じまいナビ編集部 実家じまいナビ編集部の実体験

出口を順番に当たった結果

編集部が相続したのは沖縄の傾斜地で、山林ではない。それでも順番は同じだった。売却、寄付、国庫帰属と出口を1つずつ当たり、どれも成立せず、いまも保有したままにしている。手放せないあいだ、固定資産税は年約7万円出ていく。評価額の低さと出口の見つけやすさは、別々の話だった。

相続土地国庫帰属制度は令和5年(2023年)4月27日に始まった。相続または遺贈で土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たす場合に国庫へ帰属させられる制度で、申請すれば必ず通るわけではない。費用は2段階になる(法務省、2026年7月31日確認)。

  • 審査手数料:土地1筆あたり14,000円
  • 負担金:国有地の種目ごとに、管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して算定される。森林は面積に応じて額が変わる区分にあたり、一律ではない。負担金の通知が到達した日の翌日から30日以内に納付する

隣接する2筆以上の土地については、1つの土地とみなして負担金を算定するよう法務大臣に申し出ることができる(政令第6条)。森林のように面積で負担金が変わる土地は、申出をした2筆以上の面積を合算して算定される。要件の細目は法務省の申請の手引きで確認する。

相続放棄も選択肢に入るが、山林だけを選んで放棄することはできない。放棄すればほかの財産も引き継げなくなる。

売る方向に進める場合は、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡すると、取得費加算の特例が使える(国税庁 No.3267)。税金面の期限は相続した土地を売る税金|取得費加算と3年10か月の期限で整理している。

税理士に確認する範囲と、先に用意しておく資料

編集部は士業ではない。ここまでは通達と法令の枠組みで、個別の税額計算や遺産分割の判断はしない。次の点は税理士に確認する範囲になる。

  • その山林が純山林・中間山林・市街地山林のどれに当たるか(倍率表の記号の読み方を含む)
  • 市街地山林で宅地への転用が見込めないと言えるか、近隣純山林に比準してよいか
  • 立木を評価する必要があるか、樹種・樹齢・地味級などの判定
  • 保安林や特別緑地保全地区の控除、山林の納税猶予の要件に当たるか
  • 登記地積と実測面積が違う場合に、どの面積で評価するか

相談前に集めておくと話が早いのは、固定資産税の課税明細書または名寄帳、登記事項証明書、公図、森林簿や森林経営計画の写し(あれば)、保安林の指定の有無が分かる書類。筆数が多いときは、先に名寄帳で所有している土地を全部洗い出しておくほうが早い。

申告が必要かどうかから相談する

区分の判定と立木の評価が絡むと、基礎控除に収まるかどうかも自分では読みにくい。相続に強い税理士へ無料で相談できる窓口で、申告の要否と概算を先に確認しておくと、10か月の期限に追われずに済む。

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よくある疑問

固定資産税の通知が来ない山林も、相続税の対象になるのか

対象になる。免税点未満で課税されていないだけで、財産としては評価する。課税明細書が届かない土地は名寄帳で拾う。

登記の地目は山林だが、現況は原野や雑種地に近い

評価上の地目は、登記ではなく課税時期の現況で判定するのが原則とされている(相続税申告に特化した税理士法人トゥモローズの解説、2026年7月31日確認)。ただし現況の見立てが分かれる土地もあるため、評価単位の切り方とあわせて税理士に確認する。

登記の面積と実測が大きく違う

通達8は、地積は課税時期における実際の面積によると定めている。山林は縄伸びが起きやすく、登記地積をそのまま使えるとは限らない。

売れない山林でも評価額はつくのか

倍率方式は固定資産税評価額を出発点にするため、買い手がいなくても0にはならない。市場で売れないことと、相続税評価額が付くことは別に動く。市街地山林で急傾斜のため宅地造成ができないと認められる場合に、近隣純山林に比準して下がる、という道筋はある。

相続人が複数いる場合、山林はどう分けるのか

分け方は遺産分割の話になるため、ここでは判断しない。ただし共有のまま置くと、後で売却や国庫帰属を検討するときに全員の合意が要る。相続登記の期限(取得を知った日から3年以内)と、森林の土地の所有者届出の期限(90日以内)は分割の成否と関係なく走る点は押さえておく。

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実家じまいナビ編集部

実家じまいナビ編集部 |沖縄に売れない土地を持つ当事者が運営

実家じまいナビ編集部です。運営者自身が沖縄に売れない土地を相続し、出口が見つからないまま維持している当事者です。役所と業者を回って分かった順番、実際にかかる費用、先に知っておけば防げたことを記録しています。法令の解釈が必要な部分は断定せず、調べ方と相談先を示す方針です。

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