農地転用をわかりやすく解説|4条と5条の違いから

実家の田や畑をどうするか調べていて、農地転用という言葉に行き着いた人は多い。
結論から書く。農地転用とは農地を農地以外にすることで、原則は都道府県知事等の許可が要る。市街化区域内なら農業委員会への届出で足りる。自分で転用するなら農地法4条、売る・貸す形なら5条に分かれる。
この記事の目次
農地転用とは、農地を農地以外にすること
静岡県の解説では、農地転用は「農地を農地以外の土地にすること」、言い換えれば耕作の目的に供される土地を耕作の目的に供さない土地にすることと定義されている(静岡県「農地転用許可制度とは」2026年7月31日確認)。
ここでいう農地には、いま実際に作物を作っている土地だけでなく、耕作されていなくても耕作しようとすればいつでも耕作できる土地、つまり休耕地や不耕作地も含まれる。何年も草だけが伸びている畑でも、扱いは農地のままになる。
もうひとつ見落とされやすいのが、土地の形を変えなくても転用に当たる場合があることだ。千葉県は、農地の形状を変更しない場合でも、資材置場や駐車場のように耕作目的以外に使用することは農地転用に含まれるとしている(千葉県「農地転用について」2026年7月31日確認)。草を刈って車を停める、農機具置場にする、といった使い方も手続きの対象になりうる。
なぜ許可が必要なのか(農地法が守っているもの)
農地転用に許可が要る理由は、農地法が食料生産の基盤である優良農地の確保と、住宅地や工場用地といった農業以外の土地利用との調整を図る仕組みだからだ。静岡県は制度の目的として、農地を立地条件等により区分し、農業上の利用に支障の少ない農地へ非農業的な利用を誘導すること、そして具体的な土地利用計画を伴わない資産保有目的または投機目的での農地取得は認めないことを挙げている(静岡県、2026年7月31日確認)。
神奈川県も同じ考え方を、市街地に近接した農地や生産力の低い農地等から順次転用されるよう誘導する、と説明している(神奈川県「農地転用許可制度」2026年7月31日確認)。
つまり制度は「転用させない」ためではなく、「どの農地から転用してよいかの順番を決める」ために置かれている。あなたの土地がその順番のどこに入るかで、許可の見通しは大きく変わる。
3条・4条・5条の違いを1枚で
農地の手続きでよく出てくる条文は3つある。何をしたいかで、どの条文の話なのかが決まる。
| 条文 | 場面 | 申請する人 |
|---|---|---|
| 3条 | 農地を農地のまま売る・貸す(権利移動のみで転用しない) | 売主・買主など権利を動かす当事者 |
| 4条 | 所有者が自分の農地を自分で農地以外にする(自己転用) | 転用を行う者本人 |
| 5条 | 転用目的で農地を売る・貸す(権利移動+転用) | 売主または貸主と、買主または借主の両者 |
4条と5条の切り分けは静岡県の整理に沿っている。4条は権利移動を伴わない場合で申請者は転用を行う者、5条は農地に権利を設定して転用する場合で申請者は売主または貸主と買主または借主、とされている(静岡県、2026年7月31日確認)。
実家の畑に自分の家を建てるなら4条、そのままハウスメーカーや事業者に売って建ててもらうなら5条、というのが最も多い分かれ方になる。
許可がいるか、届出で済むか(市街化区域かどうか)
手続きの重さを決める最初の分岐は、その農地が市街化区域内にあるかどうかだ。
- 市街化区域内:農業委員会へあらかじめ届出を行えば許可は要らない(静岡県、2026年7月31日確認)
- 市街化区域外:都道府県知事等の許可が必要(千葉県・神奈川県、2026年7月31日確認)
許可権者は原則として都道府県知事だが、権限移譲を受けた市町村では市町村長または農業委員会会長が許可を出す。神奈川県では横浜・川崎・相模原・横須賀の各市内は各市長が許可権者になる(神奈川県、2026年7月31日確認)。埼玉県のように、農林水産大臣の指定を受けた指定市町村(同県では蓮田市)では許可できる面積の上限がない、という運用もある(埼玉県「農地転用許可制度の概要」2026年7月31日確認)。
面積が大きい場合の扱いも整理されている。農林水産省の資料では、4ha超の農地転用に係る権限は国との協議を付した上で都道府県(指定市町村にあっては指定市町村)に移譲され、2ha超4ha以下の転用に係る国との協議は廃止されたとされている(農林水産省「農地転用許可に係る権限の移譲」2026年7月31日確認)。
申請でも届出でも、窓口は農地のある市町村の農業委員会で共通している(千葉県、2026年7月31日確認)。まずそこへ行けばよい。
許可が下りるかは、まず「場所」で決まる(立地基準)
審査は立地基準と一般基準の2段構えになっている。立地基準では農地を5区分し、区分ごとに許可の方針が決まっている。神奈川県の整理が具体的で分かりやすい(神奈川県、2026年7月31日確認)。
| 区分 | どんな農地か | 許可の方針 |
|---|---|---|
| 農用地区域内農地 | 市町村の農業振興地域整備計画で農用地区域とされた区域内の農地 | 原則不許可 |
| 甲種農地 | 市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等、特に良好な営農条件を備えている農地 | 原則不許可 |
| 第1種農地 | 10ha以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象となった農地等 | 原則不許可 |
| 第2種農地 | 市街化が見込まれる農地、または生産性の低い小集団の農地 | 周辺の他の土地に立地できない場合等は許可 |
| 第3種農地 | 鉄道の駅が300m以内にある等、市街地の区域または市街化の傾向が著しい区域内の農地 | 原則許可 |
立地基準を満たしたうえで、一般基準として事業実施の確実性や被害防除に関する要件を満たす必要がある。一時的な転用の場合は、事業終了後にその土地が耕作の目的に供されることが確実と認められることも求められる(神奈川県、2026年7月31日確認)。また神奈川県は、農地法では土地の造成のみを目的とする農地転用は原則として許されていないとしている。
自分の農地がどの区分かは、農業委員会で確認できる。ここが農用地区域内なら、まず農業振興地域整備計画からの除外(いわゆる農振除外)の話が先に立つ。
手続きの流れと、どれくらい待つか
市街化区域外の許可申請は、農業委員会が受け付け、意見を付けて知事等へ送り、許可書が交付される流れになる。期間は自治体が標準処理期間として公表している。宇都宮市は、市街化区域以外の許可申請は毎月月末(閉庁日ならその前の開庁日)が締切日で、受け付けから許可書交付までの標準処理期間は42日間としている(宇都宮市「農地の転用」2026年7月31日確認)。月1回の締切に間に合わなければ次の月の便を待つ、という進み方になる。
市街化区域内の届出はこれより短い。相続専門税理士法人レガシィの解説では、届出後1〜2週間程度で受理通知書が交付され、許可の場合は少なくとも6週間程度としている(レガシィ「農地転用(農地転用許可制度)とは?」2026年7月31日確認)。自治体の公表値と大きくずれない範囲だが、実際の日数は農業委員会に直接確かめたほうが早い。
近年の追加手続きにも注意がいる。宇都宮市は、地域計画の策定に伴い、令和7年4月1日以降に申請地が地域計画区域内である場合は、農地転用許可申請の前に地域計画の変更手続き(対象農地を地域計画から除外)が必要になるとしている(宇都宮市、2026年7月31日確認)。段取りが1つ増えるため、着工日から逆算する人ほど早めに聞いておきたい。
費用の目安(幅で押さえる)
農地転用そのものには、税金のような定額の手数料が全国一律で決まっているわけではない。実際に出ていくのは、行政書士など専門家に手続きを頼む場合の報酬と、添付書類を集める実費が中心になる。
相続専門税理士法人レガシィの解説では、市街化区域内の届出で3万〜5万円程度、市街化区域外の許可申請で7万〜15万円前後という目安が示されている(2026年7月31日確認)。ここに、登記事項証明書や公図、住民票などの取得実費が加わる。
大きいのはむしろ、転用したあとの工事費のほうだ。宅地にするなら造成・地盤改良・上下水道の引き込み、駐車場にするなら整地と舗装がかかる。田だった土地は水が抜けにくく、盛土や地盤対策が必要になることも多い。手続き費用だけを見て判断すると、総額を読み違える。
金額は土地の状態と地域で大きく動くため、一点で見積もらずに幅で持っておく。総額の内訳は農地転用の費用はいくら?坪数別の総額と誰が払うかで分解している。
転用したあと、その土地で何ができるかを先に知る
許可が下りるかどうかと同じくらい、転用したあとに何を建てて回るのかで判断は変わる。複数社の活用プランを取り寄せて、想定される収支と初期費用を並べて見ると、手続きに進む価値があるかどうかの当たりがつく。
無料で活用プランを取り寄せる転用したら終わりではない(工事完了報告と地目変更登記)
許可が出て工事が終わったあとにも、やることが2つ残る。
1つは工事完了報告だ。宇都宮市は農地転用許可後の工事完了報告の書式を用意しており、許可どおりに転用したことを届け出る運用になっている(宇都宮市、2026年7月31日確認)。
もう1つが法務局での地目変更登記になる。宇城市は、農地転用許可を受けて農地を宅地などに転用した場合、転用後1か月以内に地目変更登記の申請を行う必要があり(不動産登記法第37条第1項)、期間内に申請しなかった場合は10万円以下の過料に処せられる場合がある(同法第164条)と案内している(宇城市「農地転用工事終了後は法務局に地目変更登記を申請してください」2026年7月31日確認)。
同市は、地目変更登記をしていないと登記上の地目が農地のままになり、数年後に土地を動かそうとしたときに容易に所有権移転ができない場合がある、現況が許可目的どおりでなければ改めて農地法の手続きが必要になる場合がある、とも書いている。実家じまいで一番困るのは、この「登記が昔のまま」の状態だ。
なお、地目が変われば固定資産税の評価の考え方も変わる。税額がどう動くかは土地ごとに違うので、市町村の資産税担当課に確認する。
相続で農地を受け取ったとき、先にやる届出がある
転用を考える前に、期限のある手続きが1つある。相続や遺産分割、包括遺贈などで農地の権利を取得した人は、農地法第3条の3により、その農地のある市町村の農業委員会へ届け出る義務がある。上越市は、権利取得をしたことを知った時点からおおむね10か月以内とし、届出をしなかったり虚偽の届出をした場合は10万円以下の過料に処せられることがあるとしている(上越市「農地の相続等に関する届出(農地法第3条の3)」2026年7月31日確認)。
小平市は根拠条文を明示している。農地法第69条に「第三条の三第一項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する」とある(小平市「農地法第3条の3第1項の届出」2026年7月31日確認)。
この届出は所有権移転登記の代わりにはならない。登記は別に必要になる(九度山町「相続等による農地取得の届出」2026年7月31日確認)。相続登記と農業委員会への届出は、別々の窓口の別々の手続きだと考えておく。
使わない土地は、放っておいても静かに費用が出ていく
編集部は沖縄の傾斜地を相続し、売却・寄付・国庫帰属といった出口を順に検証したが、どれも成立せず、いまも保有したままでいる。固定資産税は年約7万円。金額としては小さくても、出口が決まらないまま毎年出ていく費用は、判断を先延ばしにするほど積み上がる。農地についても同じで、転用できるのか、できないならどう持つのかを早い段階で確かめておくと、選べる手が減らずに済む。手続きをせずに使うとどうなるか
許可や届出を経ずに農地を農地以外に使うと、違反転用になる。神奈川県は違反転用の罰則を、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、法人の場合は1億円以下の罰金と記載している(2026年7月31日確認)。静岡県も農地法第64条・第67条を根拠に、3年以下の懲役や1億円以下の罰金と説明している(2026年7月31日確認)。表記の違いは刑法改正に伴う呼称の差で、いずれも重い。
罰則より現実的に効いてくるのは、原状回復を求められうることと、土地が動かせなくなることだ。資材置場や駐車場として使い始めるだけでも転用に当たりうる以上、「まだ何も建てていないから大丈夫」という自己判断は危うい。使い方を変える前に農業委員会へ一報を入れる、が最も安い保険になる。
どこに聞くか、どこから先は専門家か
最初の窓口は、農地のある市町村の農業委員会で固定してよい。区分(農用地区域内か第何種か)、市街化区域内かどうか、地域計画区域内かどうか、締切日と標準処理期間は、そこで確認できる。都道府県の農地担当課や、農林水産省の相談窓口(農村振興局・地方農政局・沖縄総合事務局)も相談体制を取っている(農林水産省「農地転用許可制度について」2026年7月31日確認)。
編集部は士業ではない。個別の農地が許可される見込みがあるか、税額がいくらになるか、相続人の間でどう分けるかといった判断はしない。申請書類の作成代行は行政書士、地目変更登記は土地家屋調査士、相続税は税理士、遺産分割でもめているなら弁護士と、担当が分かれる。
費用と期間をまとめて見たいなら農地転用とは?費用と期間、許可が下りる条件をまとめて解説、金額の内訳と誰が払うかは農地転用の費用はいくら?坪数別の総額と誰が払うかを見てほしい。制度は年度で変わる。この記事の内容は2026年7月31日時点で各自治体・官公庁のページを確認したものなので、動く直前にもう一度一次情報を当て直すことをすすめる。
