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農地転用を自分でやる場合の手順と、つまずく箇所

農地転用を自分でやる場合の手順と、つまずく箇所

農地転用を自分でやれるか調べようとして、手順の説明ばかり出てくるのは正しい状態ではない。先に決まるのは手先の器用さではなく、農地の条件のほうだ。

市街化区域内・白地・所有者本人の転用なら、届出は自分で出せる。受理通知はおおむね1週間。市街化区域外の許可は標準70日、青地なら前段の農振除外で半年から1年かかる。

この記事の目次
  1. 自分でやれるかは、3つの軸で先に決まっている
  2. 窓口に行く前に確認する4つのこと
  3. 届出(市街化区域内)を自分でやる手順
  4. 許可申請(市街化区域外)を自分でやる手順と、時間の構造
  5. 自分で取れる書類と、自分では作れない書類
  6. 費用は申請料ではなく、実費と時間で決まる
  7. 手が止まりやすい5か所
  8. 許可の後に残る手続き:工事完了届と地目変更登記
  9. 無許可で進めた場合に起きること
  10. オンライン申請(eMAFF)で自分でやれるか
  11. 自分でやるか、頼むかの分かれ目

自分でやれるかは、3つの軸で先に決まっている

農地転用の申請を自分でやれるかどうかは、書類を書く能力の話になる前に、その農地がどこにあり、誰が何のために使うかで決まっている。判断に使う軸は3つある。

  1. 市街化区域の中か外か。中なら農業委員会への届出、外なら都道府県知事等の許可。北海道農政部農業経営局農地調整課の案内では、市街化区域内の農地を転用する場合は事前に農業委員会へ届出をすることで許可は必要ないとされている(2026年7月31日確認)。
  2. 農用地区域(青地)か、それ以外(白地)か。青地なら農地転用の前に農振除外という別の手続きが挟まる。ここに当たると月ではなく年の単位になる。
  3. 農地法4条か5条か。所有者が自分の農地を自分で転用するなら4条で単独申請、売ったり貸したりして相手が転用するなら5条で連名申請。岐阜市の案内では、4条は申請者が転用事業者本人、5条は転用事業者と農地所有者の両者になるとされている(2026年7月31日確認)。
組み合わせ自分で出せるか目安の期間
市街化区域内・白地・4条(届出)自分で完結させやすい受理通知までおおむね1週間
市街化区域外・白地・4条(許可)書類次第。図面で外注が要ることが多い標準70日
市街化区域外・白地・5条(許可)契約書案が絡む。相手方との同時進行標準70日
青地(農用地区域内)転用申請の前に農振除外。実質、自力で完結しない半年〜1年+転用の期間

制度そのものの全体像は農地転用とは?費用と期間、許可が下りる条件をまとめて解説で整理している。

窓口に行く前に確認する4つのこと

農業委員会の窓口は、相談に行けば教えてくれる。ただし手ぶらで行くと、その場では何も決まらずに一度帰ることになる。先に手元で確定させておくのは次の4点。

  • 地番と現況。住居表示ではなく登記上の地番で特定する。登記事項証明書と公図は法務局で取れる。
  • 市街化区域か、市街化調整区域か、都市計画区域外か。都市計画課で確認できる。ここで届出か許可かが分かれる。
  • 農用地区域に入っているか。農政課や農業企画課の管轄。土地利用計画図は公開している自治体もあるが、上尾市は図面を参考利用に留めるよう案内し、事前相談の前に地番を特定したうえで農用地区域かどうか確認するよう求めている(2026年7月31日確認)。図面だけで判断しない。
  • 転用の目的と、使う範囲。誰が、何に、どのくらいの面積を、いつから使うか。ここが曖昧なままだと、書類を作る段階ではなく相談の段階で止まる。

この4点が揃っていれば、最初の相談でその日のうちに「届出でいけるのか、許可なのか、そもそも青地で先に別の手続きが要るのか」まで進む。逆に、農地の場所と目的だけを持っていくと、確認のために往復が増える。

届出(市街化区域内)を自分でやる手順

市街化区域内の農地であれば、自分で出せる可能性が最も高い。届出は許可と違い、農業委員会が受理するかどうかの手続きで、都道府県知事の審査には回らない。

  1. 農業委員会事務局で、市街化区域内であることと、届出の様式・添付書類一覧を受け取る
  2. 登記事項証明書、公図の写し、位置図、住宅地図、転用後の土地利用計画図を揃える
  3. 4条か5条かに応じた届出書を作る(5条は譲渡人と譲受人の連名)
  4. 提出する
  5. 受理通知書を受け取る

須坂市は、市街化区域内の転用の届出については随時受け付けており、届出書提出後おおむね1週間後に受理通知書を交付すると案内している(2026年7月31日確認)。許可申請のような月次の締切がない自治体が多いのは、届出が審査ではなく受理の手続きだからだ。

ただし、届出だから何を出しても通るわけではない。現況が農地でないと主張する場合や、面積が大きい場合、隣接地からの排水経路が変わる場合は、届出であっても補正を求められる。様式と添付書類は自治体ごとに違うので、他市のひな形を流用しない。

相談者相談者
届出なら書類を出すだけと聞いたのに、住宅地図に矢印を書き込めと言われた。
実家じまいナビ編集部実家じまいナビ編集部
現況写真がどの方向から撮ったものかを示すためのもので、多くの自治体が求めている。窓口で先に添付書類一覧をもらっておくと、この種のやり直しが減る。

許可申請(市街化区域外)を自分でやる手順と、時間の構造

市街化区域外の農地は許可が要る。申請先は転用予定地の農業委員会で、そこを経由して都道府県知事等に送られる。北海道の案内では、知事許可の場合、申請してから許可を受けるまでの標準的な期間は70日、そのうち受付窓口の農業委員会の経由期間は60日とされている(2026年7月31日確認)。

ここで自分でやる人がつまずくのは、書類の難しさより時間の構造のほうだ。許可申請には締切がある。須坂市は許可申請を毎月15日締切とし、15日が閉庁日になるときは直前の開庁日が締切日になると案内している(2026年7月31日確認)。

つまり、締切に1日間に合わなければ、次は翌月の締切になる。標準70日は締切に間に合った月から数えるので、実質的な待ち時間は締切を1回落とすごとに1か月ずつ伸びる。書類の補正で1回落とし、同意書の取得で1回落とすと、それだけで2か月が消える。自分でやる場合の最大のコストは報酬の差額ではなく、この落とした月の数になりやすい。

流れと必要書類そのものは農地転用の手続きの流れ|必要書類と申請先の一覧に一覧でまとめている。

自分で取れる書類と、自分では作れない書類

必要書類は数が多いが、性質は2種類しかない。役所で取れるものと、誰かが作らないと存在しないものだ。自分でやれるかどうかは、後者がいくつあるかで決まる。

種類自分で手配できるか
役所や機関で取得する登記事項証明書、公図の写し、住民票、農業委員会の各種証明できる。窓口かオンラインで取得
市販・公開のものを写す住宅地図、位置図、周辺土地利用図できる。図書館や地図サービスで入手
自分で撮る・書く現況写真、事業計画書、転用理由書、資金計画書できる。ただし書き方で差が出る
設計や施工の知識が要る土地利用計画図、排水計画図、建物の平面図・立面図、造成の見積書難しい。設計者や施工業者に頼む前提になる
第三者の押印が要る隣接地所有者や水利関係者の同意書、土地改良区の意見書自分では作れない。相手の都合で日程が動く

市街化区域内の届出で、駐車場や資材置場のように造成がほぼ不要な用途なら、下2段がほとんど発生しない。住宅を建てる、排水経路を変える、事業用地にする、といった話になると下2段が一気に増える。ここが自分でやれるかどうかの分水嶺で、資格の有無ではない。

費用は申請料ではなく、実費と時間で決まる

申請そのものに手数料はかからないか、かかっても少額とされている自治体が多い。自分でやる場合に実際に出ていくのは、書類を集める実費と、窓口に通う時間だ。

  • 登記事項証明書:不動産情報サイトの案内では1通480〜600円程度とされる。取得方法(窓口・オンライン・郵送)で額が変わるので、法務局の手数料表で確認する
  • 公図・住宅地図・残高証明などの発行手数料:合わせて数千円から1万円台になることが多い
  • 書類取得の実費合計:各媒体の案内では1万円から数万円程度という幅で示されている
  • 造成や設計を伴う場合:図面や見積書の作成が別費用になる。ここは案件ごとに桁が変わるので、目安として丸めない

行政書士に頼んだ場合の報酬は、各事務所や不動産情報サイトの公表値で、届出が4〜8万円程度、許可申請が10〜30万円程度という幅で案内されている(2026年7月31日確認)。金額そのものより、この幅がどこで動くかを見たほうがいい。届出か許可か、4条か5条か、農振除外や開発許可が絡むかで、同じ「農地転用」でも作業量が大きく変わる。

依頼するかどうかの判断材料は農地転用は行政書士に頼むべき?報酬相場と依頼の判断に分けて書いている。

手が止まりやすい5か所

自分で進めた人が止まる場所は、だいたい決まっている。

1. 青地だと分かって、農振除外から始まる

農用地区域内の農地は、農地転用の前に農用地区域からの除外が要る。広島市は農振除外の申出書の受付を年2回とし、手続には約6か月間かかると案内している。安中市は申出から容認まで概ね1年程度の期間を要しているとしている。小浜市は受付を年2回(3月と9月のみ)としている(いずれも2026年7月31日確認)。受付月を1回逃すと、半年待つことになる。

2. 農振除外の要件を満たさない

除外は申し出れば通るものではない。農業振興地域の整備に関する法律第13条第2項の要件をすべて満たす必要があり、代替地がないこと、農地の集団化や作業の効率化に支障がないことなどが審査される。福島市は要件のひとつとして、土地改良事業を実施済みの場合は事業が完了してから8年が経過していることを挙げている。上尾市は、農地転用許可や開発許可の見込みがない申出、代替となる土地がある申出は受け付けられない例として示している(2026年7月31日確認)。

3. 同意書と意見書が集まらない

隣接地の所有者、水利関係者、土地改良区。相手の都合で日程が動くうえ、土地改良区が絡むと決済金が発生することがある。ここは自分の作業速度では短縮できない。

4. 図面が要求水準に届かない

排水の経路、出入口の位置、寸法と面積。転用後にその土地をどう使い、雨水と汚水がどこへ流れるかを示せないと補正になる。手書きの概略図では通らないことが多い。

5. 順番を飛ばす

許可や受理の前に契約を進める、造成に着手する。これは補正で済まない。5条は許可を停止条件とした契約にしておき、許可が下りてから決済する形が実務では一般的とされている。

許可の後に残る手続き:工事完了届と地目変更登記

許可や受理は終点ではない。転用工事が終わったら工事完了届を提出し、登記上の地目を変更する。

宇城市は、農地転用許可を受けて農地を宅地などに転用した場合、農地転用後1か月以内に地目変更登記の申請を行う必要があり(不動産登記法第37条第1項)、期間内に申請をしなかった場合は10万円以下の過料に処せられる場合がある(同法第164条)と案内している(2026年7月31日確認)。

地目変更登記は、農地転用の中では自分でやりやすい部類に入る。登録免許税がかからず、添付書類も転用許可書などで足りるため、自分で申請すれば費用はほとんどかからないと案内する専門家サイトが複数ある。土地家屋調査士に依頼した場合の報酬は5万円前後という記載が多い(2026年7月31日確認)。

放置した場合の実害は過料だけではない。宇城市は、地目変更登記をしていないと登記上の地目が農地のままとなるため、数年後に土地を動かそうとしたときに容易に所有権移転ができない場合があり、現況が許可目的どおりでない場合は改めて農地法による手続きが必要になる場合があるとしている。売るときに気づくと、そこから半年が消える。

無許可で進めた場合に起きること

自分でやる話の裏側にあるのが、手続きをせずに使い始めてしまう選択だ。ここは費用の比較の対象にならない。

北海道の案内では、許可を受けなかったり、届出せずに農地を転用すると、売買などの法律行為が無効になり、所有権移転の登記もできない、また罰せられることがあるとされている(2026年7月31日確認)。

農林水産省の啓発リーフレットでは、許可を取らずに違反転用した場合、3年以下の懲役または300万円以下(法人は1億円以下)の罰金を科せられる場合があるとされている(農地法第64条、第67条)。加えて、農地法第51条に基づき、工事の中止や原状回復などの措置が命じられることがある(2026年7月31日確認)。

資材を置いた、砂利を敷いた、駐車場として使い始めた。この程度なら転用に当たらないと考えて始まる例が多いが、農地を農地以外のものにする行為である以上、面積が小さくても手続きの対象になる。事後の追認は原則として認められないと明記している自治体もある。

オンライン申請(eMAFF)で自分でやれるか

農林水産省は、所管する法令に基づく申請をオンラインで行える農林水産省共通申請サービス(通称eMAFF)を運用しており、農地法に基づく手続きも対象に含まれている。自宅や職場のパソコン、スマートフォン、タブレットから申請できるとされている(2026年7月31日確認)。

ただし、自分でやる人が期待するほど単純には使えない。

  • 利用にはGビズIDのアカウントが必要で、gBizIDプライムの取得には印鑑証明書と申請書の郵送が要り、審査に原則2週間ほどかかる
  • 提出先の農業委員会や市町村がeMAFFでの受付を開始していなければ、その自治体では使えない
  • eMAFFポータルでは、現行のeMAFFが令和9年3月中旬に稼働終了し、次期システムへ移行する旨が告知されている(2026年7月31日確認)

今から一件だけ申請するために準備するなら、窓口へ紙で出すほうが早いことが多い。オンライン申請は選択肢として存在するが、対応状況を農業委員会に確認してから決める。

自分でやるか、頼むかの分かれ目

費用差だけで決めると、期間で損をする。判断は次の形で分けられる。

状況向いている進め方
市街化区域内の届出、白地、4条、造成がほぼ不要自分で出せる。添付書類一覧を先にもらう
市街化区域外の許可だが、白地・4条・用途が単純自分で申請書まで作り、図面だけ外注する形が現実的
売買や賃貸を伴う5条、契約や融資の期限がある期限を落とすと契約が崩れる。専門家を入れる判断が優先
青地、第1種農地、開発許可も必要手続きの可否から検討が要る。自分でやるかの前に、そもそも通るかの相談
共有名義、相続登記が未了、複数筆権利関係の整理が先。転用申請はその後

編集部は士業ではないので、あなたの農地が許可の要件に当たるかどうかの判断はしない。区分の確認と、要件に当たるかの相談は農業委員会に、税額や遺産分割が絡む部分は税理士や司法書士に持っていくのが早い。

実家じまいナビ編集部 実家じまいナビ編集部の実体験

編集部が持ち続けている土地の話

編集部は沖縄の傾斜地を相続して保有している。売却、寄付、国庫帰属と出口を順に検証して、どれも成立しないまま維持している。固定資産税は年約7万円。額としては大きくないが、出口が決まらない期間、毎年出ていく。

この立場で農地転用の手続きを調べていて実感が変わったのは、費用の見方だ。自分でやれば10万円台が浮く。ただし締切を2回落とせば、その間も保有コストは出ていくし、売却や活用の話は止まったままになる。浮く額と、止まる期間。比べる対象はこの2つで、書類が書けるかどうかではない。

転用後にその土地をどう使うかが決まっていないなら

農地転用の申請には、転用後の利用計画と資金の裏づけが要る。使い道が固まっていないと、書類を作る段階ではなく相談の段階で止まる。活用の選択肢と概算を先に並べておくと、農業委員会での相談も具体的になる。

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実家じまいナビ編集部 |沖縄に売れない土地を持つ当事者が運営

実家じまいナビ編集部です。運営者自身が沖縄に売れない土地を相続し、出口が見つからないまま維持している当事者です。役所と業者を回って分かった順番、実際にかかる費用、先に知っておけば防げたことを記録しています。法令の解釈が必要な部分は断定せず、調べ方と相談先を示す方針です。

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