実家じまいにかかる期間の目安|工程別のスケジュール

実家じまいに何日かかるのかは、着手する前がいちばん見えません。
全体の目安は3か月から1年です。ただし実際に手を動かす日数は合計10日前後に収まることが多く、残りは待ち時間です。先に来るのは制度側の期限で、相続放棄3か月・相続税10か月・相続登記3年が動かせない枠になります。
この記事の目次
実家じまいの期間は3つの層でできている
実家じまいの期間を「片付けに何日かかるか」で考えると読み違えます。不動産会社や整理業者の解説では、全体の目安を6か月から1年程度、あるいは3か月から1年程度と置くものが多くなっています(2026年7月31日確認)。同じような家でも幅がここまで開くのは、作業量ではなく待ち時間の長さが家ごとに違うからです。
編集部が工程を分解して並べ直すと、実家じまいの日数は性質の違う3つの層に分かれます。
- 実作業の日数:家財の搬出、解体、立ち会い。合計しても10日前後に収まることが多い層です
- 待ちの日数:書類の取り寄せ、登記の完了、買い手が現れるまで。ここが数か月を占めます
- 制度の期限:相続放棄や相続税の申告など、こちらの都合と関係なく先に来る日付です
短縮できるのは1つ目だけです。2つ目は着手を前倒しする以外に縮まりません。3つ目は縮まらないどころか、遅れるほど選べる出口が減っていきます。期間の設計とは、この3層をどう重ねるかという話になります。
工程別の所要日数の目安
30坪程度の戸建てを想定した、工程ごとの目安です。費用と同じく幅で見てください。
| 工程 | 目安 | 性質 |
|---|---|---|
| 相続人での方針決め | 2週間〜数か月 | 待ち |
| 戸籍など書類の取り寄せ | 2週間〜1か月 | 待ち |
| 相続登記の申請から完了 | 数週間〜2か月 | 待ち |
| 家財の仕分けを自分でやる場合 | 数週間〜1年以上 | 作業 |
| 業者に依頼した搬出作業 | 1〜3日 | 作業 |
| 解体・整地 | 1週間〜10日 | 作業 |
| 建物滅失登記 | 取壊しから1か月以内 | 期限 |
| 仲介での売却 | 3〜6か月、長引けば数年 | 待ち |
| 買取での売却 | 1週間〜1か月 | 待ち |
「作業」「待ち」の行は不動産会社と整理業者各社の解説をそろえた目安で、業者の繁忙期や法務局の混み具合で前後します(出典は記事末尾、2026年7月31日確認)。動かせないのは「期限」の行だけです。
並行できる工程と、順番を飛ばせない工程
全体を短くする鍵は、作業を速くすることではなく、同時に始められるものを同時に始めることにあります。
並行して進めてよいもの
- 家財の片付けと、相続登記・名義変更の書類集め
- 電気・ガス・水道など各種契約の解約と、片付け
- 不動産会社への査定依頼と、家財の仕分け(家財が残っていても査定は受けられます)
順番を飛ばせないもの
- 遺産分割の合意 → 売却の意思決定。共有のままでは全員の同意が必要です
- 相続登記 → 売買契約・引渡し。名義が親のままでは決済ができません
- 家財の搬出 → 解体。家財が残ったままの解体は廃棄物の扱いが変わり、費用も日数も増えます
- 解体 → 建物滅失登記 → 更地としての引渡し
この4本が実家じまいの本線で、どこか1本が止まると全体が止まります。逆に言えば、片付けを1日も進めていない段階でも、戸籍の取り寄せと査定依頼は今日から動かせます。待ちの層を先に走らせるほど、全体は短くなります。
こちらの都合を待たない期限(2026年7月31日時点)
工程表を引くとき、最初に置くのは作業日数ではなく期限です。制度は年度で変わるため、着手する時点でもう一度確認してください。
| 期限 | 起算点 | 内容 |
|---|---|---|
| 3か月 | 自己のために相続の開始があったことを知った時 | 相続放棄・限定承認の申述期限(裁判所) |
| 10か月 | 被相続人が死亡したことを知った日の翌日 | 相続税の申告・納税期限(国税庁) |
| 3年 | 不動産を相続で取得したことを知った日 | 相続登記の申請義務。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料(法務省) |
| 3年目の12月31日 | 相続の開始があった日 | 空き家の3000万円特別控除を使う場合の売却期限(国税庁) |
| 約3年10か月 | 相続開始の翌日 | 取得費加算の特例の譲渡期限(相続税の申告期限の翌日以後3年)(国税庁) |
相続登記の義務化は令和6年4月1日に始まりました。施行前に相続したことを知っていた不動産も対象で、その場合の期限は令和9年3月31日です(法務省)。3年以内に遺産分割がまとまらない見込みなら、相続人申告登記という簡易な申出で義務だけ先に果たす方法があります。ただし申出をしても、売却する際には別途相続登記が必要です。
空き家の3000万円特別控除は、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡が対象です。令和6年1月1日以後の譲渡で、家屋と敷地を取得した相続人が3人以上の場合は控除額が2000万円になります。耐震改修または取壊しが必要な場合は、譲渡した年の翌年2月15日までに終える必要があります(国税庁タックスアンサーNo.3306、2026年7月31日確認)。要件が細かいため、適用できるかどうかの判断は売る前に税務署か税理士に当ててください。編集部は税額の計算や遺産分割の判断はしません。
片付けと遺品整理にかかる日数
搬出を業者に任せた場合、30坪程度の戸建てで実作業は1日から3日が目安です。一方、家族だけで仕分けから運び出しまで行うと、荷物の量によっては1年以上かかることもあると各社が書いています。差は運搬能力ではなく、1点ずつ判断するたびに手が止まる時間から生まれます。
日数を読むときは、次の順番で組み立てると見積もりやすくなります。
- 残すものだけを先に決めて持ち出す(半日〜2日)
- 通帳・権利証・保険証券・写真を探す(半日。搬出や解体の前に必ず終える)
- 残り全部を業者に渡す(1〜3日)
見積りの依頼から作業日までは1週間から2週間空くのが普通です。日程を押さえる連絡だけを片付けより先に済ませておくと、全体が2週間ほど前倒しになります。引越しと重なる3月と9月は業者が埋まりやすいので、その時期に当てるなら早めに動いてください。
解体を挟む場合に増える日数
解体そのものは1週間から10日程度ですが、前後に手続きの日数が乗ります。
- 着工の7日前まで:床面積80平方メートル以上の建築物の解体工事は、発注者から都道府県知事へ分別解体等の届出が必要です(環境省・建設リサイクル法の概要、2026年7月31日確認)。実務では業者が代行することが多いものの、この7日は工程に組み込まれます
- 見積りから契約まで:現地調査を挟むため2週間前後をみます
- アスベストの事前調査:結果によって工期と費用が動きます
- 取壊しから1か月以内:建物滅失登記の申請義務があります(不動産登記法57条)
滅失登記が済んでいない土地は売却の手続きが進みません。解体の完了報告を受けたら、そのまま登記へ動いてください。合計すると、解体を挟む実家じまいは、挟まない場合より1か月から2か月ほど長く見ておくのが安全です。
解体するかどうかは日数だけで決まりません。更地にすると住宅用地の特例が外れ、土地の固定資産税が上がります。解体せずに置く場合の管理負担は空き家の管理はどこまで必要?頻度と代行の相場で整理しています。
売却にかかる期間は仲介か買取かで変わる
実家じまいの期間の大半は、ここが占めます。
| 方法 | 期間の目安 | 価格 |
|---|---|---|
| 仲介 | 3〜6か月。地方や築古では数年 | 市場価格に近い |
| 買取 | 1週間〜1か月 | 仲介より下がりやすい |
期限と重ねると、この差は価格差以上の意味を持ちます。空き家の3000万円特別控除は相続開始から3年目の12月31日が売却の期限なので、仲介で1年以上動かない見込みが立った時点で、買取へ切り替えるかどうかの判断が要ります。売り出してから3か月反応が出なければ、価格か手法のどちらかを変える合図と考えてください。
査定は相続登記が終わる前でも受けられます。査定額が分からないままだと、解体するか現況で売るか、費用をいくらまでかけてよいかが決まらず、工程表そのものが引けません。
遠方に住んでいる場合、帰省は何日必要か
全体期間とは別に、あなたが現地にいる必要のある日数を数えておくと計画が立ちます。
- 相続人での話し合い:1日。オンラインで代替できることも多い
- 家財の仕分けと貴重品探し:1〜3日。ここは代替がききません
- 業者の現地見積り立ち会い:半日ずつ。鍵を預けて不在で受ける方法もあります
- 売買契約と決済:1〜2日。持ち回り契約や司法書士への委任で減らせます
合計すると、実際に帰省が必要なのは3日から5日程度に収まることが多くなります。裏を返せば、半年から1年という期間の大半は、あなたが動いていない待ち時間です。休みをどう確保するかより、待ちの層に入る前の着手を早めるほうが効きます。
期間が伸びる4つのパターン
1. 相続人の意見がまとまらない
最も長期化する原因です。売る・貸す・残すで割れると、片付けにも着手できません。方針が割れたまま3年の登記期限が近づいたら、相続人申告登記で義務だけ切り離す手があります。
2. 自力の片付けを始めて止まる
週末ごとに通う進め方は、移動時間で1回あたりの実作業が2時間から3時間まで削られます。数か月経っても半分も終わらない状態はここから生まれます。
3. 書類が揃わない
被相続人の出生から死亡までの戸籍を集める作業は、本籍が転々としていると1か月以上かかります。着手した初日に取り寄せを始める価値はここにあります。
4. 買い手がつかない
立地や築年数によっては、売り出しても反応が出ません。この場合は期間の問題ではなく、出口の問題に変わります。
親がまだ存命で、相続が始まっていない段階での進め方は実家の片付けが進まないときの順番|親が生きている場合にまとめています。
引き取り手がない土地が残った場合の時間軸
建物を処分できても、土地の引き取り手が見つからないことがあります。相続した土地を国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度がありますが、審査には時間がかかり、各地の法務局は承認申請の標準処理期間を8か月と定めています(東京法務局・松江地方法務局、2026年7月31日確認)。建物がある土地や境界が明らかでない土地は対象外で、承認された場合も負担金の納付が必要です。
売却も国庫帰属も成立しない土地は、工程表に終点が引けません。その間も固定資産税は毎年出ていきます。全体の順番と費用は実家じまいとは?進め方と費用の全体像を7ステップで解説で確認できます。
よくある質問
最短だと何日で終わりますか
相続人が1人で、家財の搬出を業者に任せ、買取で売る場合、着手から引渡しまで1か月から2か月というケースはあります。ただし相続登記の完了を待つ分は短縮できません。
親が施設に入った段階で始めると早く終わりますか
片付けと方針決めを先に済ませられる分、相続後の工程は短くなります。ただし所有者は親のままなので、売却には親本人の意思確認が必要です。判断能力に不安が出てからでは手続きが増えます。
片付けと相続手続きはどちらを先にやりますか
同時に始めてください。片付けは実作業、手続きは待ち時間なので、待ちのほうを先に走らせたほうが全体は短くなります。
期限を過ぎるとどうなりますか
相続登記は正当な理由なく3年を過ぎると10万円以下の過料の対象になります。税の特例は期限を過ぎると使えなくなり、これは後から戻せません。個別に適用できるかどうかは税務署か税理士に確認してください。
