墓じまいから永代供養へ|費用と手続きの順番

墓じまいと永代供養を同時に調べると、どちらを先に決めるのかで手が止まります。
先に決めるのは受け入れ先です。改葬の許可は、新しい納骨先が決まっていないと下りません。費用は閉じる側と受け入れる側の2つに分かれ、公営の合葬・樹林墓地なら遺骨1体あたり3万8000円から13万5000円、民間を含めた総額は50万〜150万円が目安です。
この記事の目次
先に決めるのは受け入れ先。順番を1つ入れ替えると役所で止まる
墓じまいの手順を並べた記事は、たいてい親族への相談から始まります。それは正しいのですが、実務で最初に詰まるのはそこではありません。改葬の許可を出す役所が、新しい納骨先の確定を前提にしているからです。
武蔵野市は、改葬手続きの際に新しい墓地の受入証明書または使用許可書等が必要になるため、新しい墓地が決まっていない場合は改葬手続きができない、と案内しています(2026年7月31日確認)。横浜市の手順も1番目が「新たに埋・収蔵する墓地を決める」です(同日確認)。府中市も、改葬先の墓地等から受け入れを証明する書類を発行してもらう工程を手順に入れています(同日確認)。
| 順番 | やること | 止まりやすい点 |
|---|---|---|
| 1 | 親族に話し、今の墓地の管理者に意向を伝える | 撤去後に反対が出ると戻せない |
| 2 | 受け入れ先を決めて契約し、受入証明書をもらう | ここが未定だと3以降が全部止まる |
| 3 | 今の墓地の管理者に埋蔵の事実を証明してもらう | 離檀の話がこじれると出てこない |
| 4 | 今の墓地がある市区町村に改葬許可を申請する | 遺骨1体につき1枚必要な自治体がある |
| 5 | 閉眼供養と出骨、墓石の撤去と使用権の返還 | 撤去業者が指定されている墓地がある |
| 6 | 改葬許可証を添えて新しい納骨先へ納める | 許可証がないと納骨させてもらえない |
6の理由は法律に書かれています。墓地の管理者は改葬許可証を受理した後でなければ焼骨を埋蔵させてはならず、納骨堂の管理者も同じ扱いです(墓地、埋葬等に関する法律第14条)。許可証は最後の関門ではなく、通行証だと考えたほうが順番を間違えません。
全体の地図がまだ頭に入っていない場合は墓じまいとは?費用と流れ、遺骨の行き先の決め方を先に見てください。申請書そのものの書き方は改葬許可申請の手順と必要書類にまとめています。
墓じまい・永代供養・改葬。3つの言葉が指している場所が違う
この3語は同じ場面で使われますが、指しているものは別々です。
- 改葬は法律上の用語です。「埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すこと」と定義され(墓地、埋葬等に関する法律第2条第3項)、行うには市町村長の許可が必要です(同法第5条第1項)。
- 墓じまいは法令用語ではありません。墓石を撤去して区画を更地に戻し、使用権を管理者へ返すまでの一連の作業を指す通称です。
- 永代供養は受け入れ側の管理方式を指します。承継者の代わりに寺院や霊園が管理と供養を続ける形のことで、墓じまいの結果として必ず選ぶものではありません。
だから墓じまいの行き先は永代供養に限りません。手元供養や散骨を選ぶ人もいます。ただし、いったん墓地や納骨堂に納めた遺骨を動かす以上、行き先が自宅であっても改葬の手続きが要るのが原則です。福岡市は、火葬後に自宅で保管していた遺骨を墓地や納骨堂に納める場合に限り改葬許可の申請は不要で、火葬の際に発行された埋火葬許可証を提出すればよいと案内しています(2026年7月31日確認)。墓地から引き取る段階の扱いは自治体で分かれるため、先に窓口で確認してください。
編集部は士業ではありません。誰が費用を負担するか、親族間の合意をどう取るかといった法律上の判断には踏み込まず、法令と自治体が公開している手順、公開されている金額の幅、確認先を並べる形で整理します。
費用の財布は2つある。閉じる側と受け入れる側を分けて足す
総額が読めなくなるのは、閉じる側と受け入れる側を1本の相場で語ってしまうときです。先に分けます。
閉じる側にかかるもの
| 項目 | 公開されている目安 |
|---|---|
| 墓石の撤去(1㎡あたり) | 約8〜15万円 |
| 閉眼供養のお布施 | 約1〜10万円 |
| 離檀料 | 約3〜20万円 |
| 出骨の作業(遺骨1体につき) | 約4〜5万円 |
| 遺骨の移送(遺骨1体につき) | 約2〜3万円 |
| 改葬許可申請の手数料 | 無料としている自治体が多い |
撤去から移送までは、永代供養墓や墓石を扱う事業者が自社サイトで公開している幅です(2026年7月31日確認)。手数料については、横浜市、船橋市、福井市がいずれも改葬許可申請または改葬許可証の交付を無料と明記しています(同日確認)。ただし、今の墓地の管理者が出す埋蔵証明の発行に手数料がかかる場合があるとする自治体もあります。
金額を動かすのは区画の広さと、重機が入るかどうかです。斜面にある墓地や参道が細い墓地では人力作業になり、同じ広さでも上に振れます。相見積もりを取るときは、区画の面積と、車が墓所のそばまで入れるかどうかを最初に伝えると、比較できる見積書が返ってきます。
受け入れる側にかかるもの
| 形式 | 公開されている目安 | 遺骨の扱い |
|---|---|---|
| 合祀墓・合葬墓 | 約3〜30万円 | 最初から他の人と一緒に埋蔵 |
| 集合型の永代供養墓 | 約20〜60万円 | 一定期間は個別、その後に合祀 |
| 個別の永代供養墓 | 約50〜150万円 | 期間の満了まで個別 |
| 樹木葬 | 約20〜80万円 | 個別型と合祀型がある |
| 納骨堂 | 約30〜150万円 | 契約期間の定めがある |
こちらも複数の事業者が公開している幅を並べたものです(2026年7月31日確認)。閉じる側と受け入れる側を足した全体では、50万〜150万円という幅を示す事業者が複数あります。合祀を選べば数十万円台に収まり、個別や納骨堂を選べば100万円を超えることもある、という開き方です。形式ごとの選び分けは永代供養の費用相場と、合祀か個別かの選び方で整理しています。
公営の合葬墓は額が条例で決まっている。相場の物差しになる
民間の幅が広すぎて位置が分からないときは、条例で額が決まっている公営の施設を物差しに置くと見当がつきます。東京都立霊園の使用料は一覧表で公開されています(令和8年4月1日現在)。
| 施設 | 区分 | 使用料(遺骨1体あたり) |
|---|---|---|
| 合葬埋蔵施設 | 多磨 直接 | 38,000円 |
| 合葬埋蔵施設 | 多磨 一定 | 61,000円 |
| 合葬埋蔵施設 | 八柱 直接 | 53,000円 |
| 合葬埋蔵施設 | 八柱 一定 | 131,000円 |
| 合葬埋蔵施設 | 小平 1号基 | 64,000円 |
| 樹林型合葬埋蔵施設 | 多磨1号基 遺骨/粉状遺骨 | 96,000円/32,000円 |
| 樹林型合葬埋蔵施設 | 小平 遺骨/粉状遺骨 | 135,000円/45,000円 |
| 樹木型合葬埋蔵施設 | 小平 | 200,000円 |
いずれも最初に1回払う額で、年間管理料の欄がありません。一般埋蔵施設を持ち続けた場合は管理料が1年1㎡あたり810円かかるので、この差が毎年出ていくかどうかの分かれ目になります。粉状遺骨は粉骨してから納める区分で、遺骨のまま納めるより低く設定されています。
民間の合祀墓が3万円から30万円という幅で語られる理由も、この表を見ると読めます。同じ合葬でも、最初から一緒に埋蔵する区分と、一定期間は個別に置く区分では2倍以上違います。安いほうを選んだつもりで、戻せない側を選んでいることがあります。
都立霊園の募集は年1回で、申込資格や受付期間は霊園と年度によって変わります。公営を狙う場合は、募集時期と受付条件を先に押さえてから墓じまいの日程を組んでください。
合祀すると遺骨は戻せない。契約書のどこを読むか
永代供養の説明でいちばん取り返しがつかないのが、合祀(共同埋蔵)です。都立霊園の合葬埋蔵施設は、遺骨の扱いを2つの区分で公開しています(使用の手引・令和4年11月改訂)。
- 一定期間後共同埋蔵:使用許可日から起算して20年間は地下の埋蔵室に骨壺の状態で埋蔵し、その後は納骨袋に移して共同埋蔵室に共同埋蔵する。
- 直接共同埋蔵:骨壺で預かった後、納骨袋に移して共同埋蔵室に共同埋蔵する。
そのうえで、埋蔵された後の遺骨の引取りは原則としてできず、共同埋蔵された後の引取りはできない、と明記されています。納骨の当日には、20年経過後に共同埋蔵することを承諾する書面、または納骨後に共同埋蔵することを承諾する書面に記名押印します。民間の施設でも構造は同じで、期間が13回忌、33回忌、50回忌などの形で書かれていることがあります。
分骨して一部を手元に残す、という選択肢は共同埋蔵の前にしか使えません。取り出す可能性を残したいなら、期間の定めがある個別型を選ぶか、分骨を先に済ませるかのどちらかになります。
あわせて確認しておく実務条件もあります。都立霊園の合葬埋蔵施設は、火葬した遺骨でないと埋蔵できず、土葬した遺骨を改葬する場合は火葬が必要とされています。骨壺の大きさにも幅と奥行き25cm以内、高さ28cm以内という制限があり、副葬品は納められません。古い墓所から出した遺骨ほど、この条件で引っかかります。
改葬許可の申請書に何を書き、何を添えるか
申請書の中身は法令で決まっています。墓地、埋葬等に関する法律施行規則第2条第1項が求めているのは次の7点です。
- 死亡者の本籍、住所、氏名及び性別
- 死亡年月日
- 埋葬又は火葬の場所
- 埋葬又は火葬の年月日
- 改葬の理由
- 改葬の場所
- 申請者の住所、氏名、死亡者との続柄及び墓地使用者等との関係
7の墓地使用者等とは、墓地の使用者または焼骨の収蔵を委託した人のことです。名義が親のままになっている墓では、ここで申請者との関係を書くことになります。
添付書類は同条第2項です。1つ目が墓地または納骨堂の管理者が作成した埋葬もしくは埋蔵または収蔵の事実を証する書面、2つ目が、申請者が墓地使用者等でない場合の承諾書、3つ目が市町村長が特に必要と認める書類です。多くの自治体は、この1つ目を申請書の管理者証明欄で兼ねられるようにしています。
5の「改葬の理由」は、後継者がいない、遠方で管理できない、といった記載で足ります。実務で手間がかかるのは1と2で、明治や大正に埋葬された遺骨だと本籍や死亡年月日が分からないことがあります。分かる範囲で記載して窓口に相談する扱いをしている自治体があるので、書けないから申請できないと決めつけないでください。
遺骨が複数ある場合の枚数も自治体で違います。武蔵野市は申請書が遺骨1体につき1枚必要で、2体以上あるときは別紙を使うよう案内しています。長野市は、証明書は故人1人につき1通必要としたうえで、焼骨等一覧を添付すれば1通にまとめられるとしています(いずれも2026年7月31日確認)。何体入っているか分からない古い墓では、開けてみるまで枚数が確定しません。
埋蔵証明を出してもらえないと言われたときの扱い
手続きが止まる典型が、今の墓地の管理者が埋蔵証明を書かない場合です。ここは感情論ではなく、法令の条文に例外が置かれています。
施行規則第2条第2項第1号は、管理者が作成した証明書面を求めつつ、括弧書きで「これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」と定めています。つまり、管理者の証明が取れない事態は制度として想定されています。全日本墓園協会が平成28年度の厚生労働科学研究費研究に伴って公開しているFAQも、昭和30年2月28日衛環第22号の通達を引いて、墓地管理者が納骨の事実の証明を拒んだ場合はこれに代わる立証の書面で取り扱って差し支えない、という趣旨を示しています(2026年7月31日確認)。
実務上の注意は2つです。1つは、何を「これに準ずる書面」として受け付けるかは市町村長の判断で、自治体ごとに違うこと。もう1つは、証明が出ない事情を説明する書面や墳墓の写真などを求められる場合があることです。いきなり書類を作り込むより、今の墓地がある市区町村の担当窓口に先に事情を伝えて、何を出せば受け付けられるかを聞くほうが早く進みます。
離檀料の金額が妥当かどうか、支払う義務があるかどうかの判断は編集部の領分ではありません。金額の交渉や法的な評価が必要な段階に来ているなら、弁護士に相談してください。
公営墓地には、現金給付ではない形の支援がある
墓じまいの補助金は全国どこにでもあるものではありません。ただ、公営墓地を使っている場合は、返還を促す仕組みが用意されていることがあります。いずれも2026年7月31日時点で各自治体と管理者が公開している内容です。
| 実施主体 | 内容 | 自己負担として残るもの |
|---|---|---|
| 東京都(施設変更制度) | 承継者がいない都立霊園の使用者が墓所を返還し、遺骨を都の合葬式墓地へ改葬する。使用料と年間管理料は不要 | 今の墓を更地にする費用 |
| 千葉県市川市 | 市川市霊園一般墓地の原状回復費用を助成(芝生墓地75,000円から、普通墓地は区画に応じて最大440,000円)。返還を条件に合葬式墓地の特例許可(1体71,000円、2体142,000円) | 助成の限度額を超えた分 |
| 群馬県太田市 | 八王子山公園墓地の返還時、墓石撤去に係る支払額の総額または200,000円のいずれか低い額を助成 | 祭祀に関わる費用は対象外 |
市川市はさらに、納付済みの一般墓地使用料の一部を返還する制度も設けています。使用許可から3年以内に未使用のまま返還した場合は2分の1、それ以外は4分の1です。太田市の助成は、返還届の提出と墓石撤去の完了、管理料の滞納がないことが条件になっています。
都の施設変更制度は現金が出る制度ではなく、新しい納骨先の費用が消える形の支援です。年度によって実施の有無や受入霊園、受付期間が異なるため、毎年4月以降に使用中の霊園へ問い合わせる運用になっています。
寺院墓地や民営霊園を使っている場合、こうした制度は基本的に対象外です。予算に達し次第終了とする自治体もあるので、公営墓地なら先に管理事務所へ確認してください。
決めずに置いた場合に、実際に起きること
改葬は増え続けています。厚生労働省の衛生行政報告例によると、2024年度(令和6年度)の全国の改葬数は176,105件で、前年度の166,886件から1万件近く増えました。同じ表には、無縁墳墓等の改葬が3,006件と別掲されています。
この3,006件が、決めないまま時間が過ぎた先にある処理です。縁故者がいない墳墓の改葬について、施行規則第3条は、墓地使用者や縁故者に1年以内に申し出るよう官報に掲載し、あわせて墳墓の見やすい場所に立札を1年間掲示して公告し、その期間に申出がなかったことを記載した書面を添えるよう求めています。手続きは1年がかりで、判断する主体は遺族ではなくなります。
金額の面でも、待っていて安くなる要素は見当たりません。管理料は毎年発生し、墓石は古くなるほど撤去の手間が増えます。決めるのが早いか遅いかで変わるのは、選べる形式の数です。
よくある質問
墓じまいと永代供養、申し込むのはどちらが先ですか
永代供養先が先です。改葬許可の申請に受入証明書や使用許可証の写しを求める自治体が多く、受け入れ先が決まっていないと申請できないと明記している自治体もあります。今の墓地の管理者への相談は、行き先の候補を絞った段階から並行させる形になります。
離檀料は払わなければいけませんか
法律に離檀料という制度はありません。実務上は布施として扱われています。金額の妥当性や支払い義務の有無は法律上の判断になるため、編集部としては断定しません。埋蔵証明の交付が止まっている場合は、施行規則第2条第2項第1号の括弧書きに基づく取り扱いがあるかを、市区町村の窓口に確認してください。
古い墓で、土葬の遺骨が出てきたらどうなりますか
受け入れ先が火葬した遺骨しか受け付けない場合、火葬が必要になります。都立霊園の合葬埋蔵施設も、土葬した遺骨を改葬する場合は必ず火葬するよう案内しています。八王子市は、土葬骨で改葬先が市内の場合は一度火葬が必要で、発行された改葬許可証で火葬できると案内しています(2026年7月31日確認)。
遺骨が何体入っているか分かりません
開けるまで確定しないことがあります。申請書の枚数、出骨と移送の費用、受け入れ先の使用料はいずれも体数で変わるため、見積もりの段階で体数が未確定であることを伝え、増えた場合の単価を書面でもらってください。
合祀したあとで、やはり取り出したくなったら
共同埋蔵の後は取り出せません。可能性を残したい場合は、個別の安置期間がある形式を選ぶか、共同埋蔵の前に分骨を済ませておく必要があります。契約前に、個別期間、満了後の扱い、期間中の取り出し可否の3点を書面で確認してください。
