抜根の費用と、切り株を残すと起きること

木を切ったあと、切り株をどうするかで、見積書の金額も数年後の庭の姿も変わります。
抜根の公開料金は幹の直径15cm未満で3,000〜15,000円。30cmを超えると重機が前提になり、同じ太さでも7,000円〜7万円台まで開きます。判定を分けるのは金額より樹種と土地の出口で、広葉樹の切り株は残せば芽が出て戻ります。
この記事の目次
抜根は伐採とは別の作業で、見積書でも別の行になる
伐採は地上に出ている幹と枝を切る作業、抜根(ばっこん)は地面を掘って切り株と根を取り除く作業です。同じ業者が続けてやっても、見積書の上では別の項目として並びます。
抜根の見積りは、おおむね次の4行に分かれます。
- 抜根の作業費(人力か重機か。幹の直径で段階が変わる)
- 掘り出した根の処分費
- 重機の使用料と運搬費
- 掘った穴を埋め戻す整地費
見落としやすいのが根の扱いです。東京都都市整備局の建設リサイクル法Q&Aは、伐採や抜根した樹木や草は建設資材ではないので特定建設資材廃棄物にはならない、としています(2026年7月31日確認)。大阪府の質疑応答集も同じ整理で、樹木や立木は建設資材ではないため伐採木・抜根材は特定建設資材廃棄物に該当しないと明記したうえで、廃棄物処理法に従った適正な処理は必要としています。
抜いた根は、家屋の解体で出るコンクリート塊や木材とは別の流れで処理されます。建物の解体見積りに自動では含まれず、庭木の抜根が別途と書かれやすいのはこのためです。
相場は幹の直径で決まる。ただし公開料金は同じ太さで3倍ひらく
抜根の料金は、幹の直径や幹回りで段階を設けている業者が多数です。料金表を公開している事業者の値を並べると、同じ直径でも幅がかなり広くなります。いずれも2026年7月31日に確認した公開値です。
| 幹の直径 | 解体の窓口の公開値 | グリーンデザイナーズの公開値 |
|---|---|---|
| 15cm未満 | 3,000〜5,000円 | 手作業5,000〜15,000円 |
| 15〜30cm | 4,000〜7,000円 | 手作業15,000〜30,000円/重機20,000〜40,000円 |
| 30〜50cm | 7,000〜25,000円 | 手作業30,000〜60,000円/重機40,000〜70,000円 |
| 50cm以上 | 25,000円〜 | 重機70,000円〜・要見積もり |
直径が太くなるほど上がる、30cmを超えると重機が前提になる、という順序は共通しています。一方で同じ15〜30cmの区分に4,000円と30,000円が並びます。相場表の数字ひとつで予算を決めると外れるので、幅の広いほうを見て組んでおくほうが安全です。
刻みの細かい例では、ミツモアが直径5cm以下2,500〜3,150円、5〜10cm4,500〜5,500円、10〜13cm6,650〜8,000円、13〜16cm9,000〜11,000円、16〜22cm20,000〜22,000円、22cm以上28,500〜33,000円としています。
作業費の外側にかかるもの
根の処分費は、解体の窓口が直径15cm未満で3,000〜10,000円、15〜30cmで7,000〜15,000円、30〜60cmで10,000〜20,000円。ミツモアは幹回り基準で15cm以下900〜1,000円から71cm以上9,500〜11,000円までとしています。抜根後の整地はミツモアの公開値で1平方メートルあたり1,500〜1,800円が目安です。
伐採まで含めた総額では、くらしのマーケットが3〜5m程度の木について、伐採と伐根と処分費を合わせて1.9万〜17万円、抜根をせず伐採と処分だけなら6,000円〜11万円としています。抜根を足すかどうかで下限が3倍ほど動く計算です。木を切る側の費用は庭木の伐採費用の相場に分けてまとめています。
金額を動かしているのは直径ではなく、人と重機の拘束時間
同じ太さで公開値が3倍ひらくのは、業者が儲けを乗せているからではなく、単価表という形式そのものが現場に合っていないからです。抜根の請求額は、実際には人と重機が何時間そこに拘束されるかで決まります。
重機の側から見ると桁が変わります。解体の窓口の公開値では、ショベルカー・ユンボの使用料が1日20,000〜50,000円、クレーンが1日100,000〜200,000円です(2026年7月31日確認)。切り株1本の作業費より重機の1日分のほうが高い場面が普通にあります。
人の側は、国土交通省が2026年2月17日に公表した公共工事設計労務単価が参考になります。令和8年3月から適用される値で、全国全職種の加重平均は1日25,834円、14年連続の上昇で初めて25,000円を超えました。これは公共工事の積算に使う数字であって民間の造園工事の請求額そのものではありませんが、作業員が1人1日そこに立つことの重さの目安にはなります。
次の条件が重なると、半日で終わる想定が1日仕事に変わり、そこで金額が跳ねます。
- 重機が入る通路がない(庭までの幅、門扉、段差)
- ブロック塀や基礎、コンクリートが切り株のすぐ横にある
- 根が想定より広く、掘る範囲が広がる
- 掘り出した根を運び出す距離が長い、トラックを離れた場所に停める
- 土を埋め戻したあとの整地・転圧まで求める
現地を見ずに電話で出た金額は、この5つのどれも織り込めていません。見積りは現地調査を挟んだものだけを比べてください。
切り株を残すと起きること(1)樹種によっては木が戻る
切り株を放置したときにいちばん先に現実になるのが、幹が生え直すことです。これは異常ではなく、樹木の通常の挙動です。
東京都福生市は雑木林の解説で、広葉樹の幹を切ると切り株からたくさんの芽が伸びだしてくる、この芽を育てる方法が萌芽更新であると説明しています。北海道立林業試験場の資料も、萌芽は主に広葉樹で見られる現象であり、薪炭材やしいたけ原木の生産で古くから利用されてきたと整理しています(いずれも2026年7月31日確認)。
林業では資源が勝手に再生する利点として使われている性質が、住宅の庭では放っておくと木が戻る現象として現れます。判断の目安は次のとおりです。
- 広葉樹(カシ、ケヤキ、サクラ、モチノキ、シマトネリコなど):切り株から芽が出る前提で考える。抜くか、生えてきた芽を毎年落とし続けるかの二択になる
- 針葉樹(スギ、ヒノキ、マツなど):萌芽は主に広葉樹の現象なので、幹が戻る心配は小さい。ただし切り株そのものは残り、腐るまでに年数がかかる
- 竹:地上の稈を切っても地下茎が残るため別問題として扱う。地下茎を断つ工事になり、面積単位の見積りになる
「切ったからもう終わり」と思って数年後に見に行くと、元の高さに近い株立ちになっていることがあります。実家を年に数回しか見に行かない状態なら、この差は大きくなります。
費用の側から見ると、解体の窓口は樹種別の目安として、シマトネリコ(直径30cm)4,000〜15,000円、コニファー(15cm)12,000〜25,000円、梅(30cm)15,000〜25,000円、桜(100cm)50,000〜100,000円、竹は100平方メートルの範囲で120,000〜150,000円を挙げています(2026年7月31日確認)。竹だけ本数ではなく面積で見積もられるのは、抜くのが株ではなく地下茎だからです。
切り株を残すと起きること(2)湿った木材を庭に置き続けることになる
切り株は、地面に接したまま水分を含み続ける木材です。公益社団法人日本しろあり対策協会のシロアリQ&Aは、シロアリが雑食性で加害力の強い昆虫であり、木柱、まくら木、木柵、杭木などの木材のほか、生きた樹木や農作物も加害すると説明しています(2026年7月31日確認)。
同協会の防除の解説では、木材はシロアリの食害だけでなく木材腐朽菌によって分解されること、シロアリの被害を受けやすい場所は一般に腐朽菌の被害も受けやすい場所であること、その理由は繁殖に必要な水分・養分・温度がほぼ共通していることが挙げられています。
切り株が家を壊すと断定はできません。ただ、協会が示す条件(湿った木材、地面との接触、日陰)が庭に揃った状態が続く、とは言えます。実家の建物を残して置いておくつもりなら、切り株の位置が建物の基礎からどれくらい離れているかは見ておく価値があります。
このほか、業者側が共通して挙げている放置のリスクは次の3つです。数値の裏取りができるものではないので、起きうる類型として扱ってください。
- 切り株や掘った跡でつまずく。草に隠れると見えなくなる
- 朽ちた切り株の空洞にハチが巣を作る
- 切り株が場所を占めるので、その位置に新しい木や家庭菜園を作れない
抜根を断られる場合がある。抜かないほうがいい場合もある
抜根は、頼めば必ずやってもらえる作業ではありません。プロが断る現場があります。
解体の窓口は、コンクリートの近くに植えられた木では根がコンクリートの下まで広がっていることがあり、それを引き抜くと上にある設備や構造物が倒壊・破損する可能性があるため断られることがある、と説明しています。造園業側の解説でも、地中に埋まった配管の状況を考えてあえて抜根を行わない判断をする例が挙げられています(いずれも2026年7月31日確認)。
断られやすい、または抜根以外の方法を勧められやすいのは次の場合です。
- ブロック塀、門柱、土間コンクリート、建物の基礎が切り株のすぐ横にある
- 給排水管やガス管が根と絡んでいる、または埋設位置が分からない
- 敷地に重機が入らず、人力では現実的な工期に収まらない
- 切り株が隣地との境界に近く、掘ると隣の敷地に踏み込む
この場合の代案は、地際で切り直して面を平らにする、周囲を掘って根を切り離し株だけ抜く、切り株を残したまま土を被せて位置を記録しておく、などです。どれを選ぶかは、次の章の出口で決まります。
抜くか残すかは、その土地の出口で決まる
抜根の要否は、木の状態ではなく、そのあと土地をどうするかで決まります。実家じまいで出てくる出口ごとに整理します。
| そのあとの使い道 | 抜根 | 理由 |
|---|---|---|
| 更地にして売る | 求められることが多い | 買主が次の工事を予定している。切り株が残ると引き渡し後の負担になる |
| 駐車場・物置・新築 | 要る | 基礎や舗装の下に根を残せない |
| 家庭菜園・植え替え | 要る | 切り株が場所を占め、新しい根が伸びる空間がない |
| 建物を残して貸す・住む | 建物との距離で判断 | 基礎や配管に近いなら優先度が上がる |
| 空き家のまま当面保有 | 急がない | ただし庭の管理状態は別の問題になる(次章) |
売るために更地にする場合でも、抜根を売主がやるか買主に任せるかは交渉の対象です。先に抜いてから売り出すと、その費用が価格に反映される保証はありません。買主が決まっていない段階で庭を全部きれいにするより、見積書だけ取っておいて条件交渉のカードにするほうが動きやすい場面もあります。庭全体を片付ける場合の順番は庭じまいの費用と手順にまとめています。
空き家のまま残す場合、庭木も法律上は空家等の一部になる
建物を残して当面保有する選択をしたときに、庭を対象外だと思っていると足をすくわれます。空家等対策の推進に関する特別措置法は第2条第1項で、空家等とは建築物またはこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの、およびその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう、と定義しています(e-Gov法令検索、2026年7月31日確認)。
敷地の立木が定義に入っている以上、庭の木や切り株の状態も空家等の一部として見られます。2023年12月13日に施行された改正法では管理不全空家等の区分が新設され、勧告を受けた場合に土地の固定資産税の住宅用地特例の扱いが変わる場合があります。
切り株が1つあるだけで管理不全空家等になる、という話ではありません。認定は自治体が敷地全体の状態を見て行うものであり、税額がどうなるかは個別の判断です。編集部は士業ではないので、税額の計算や適用の可否は述べません。実際にどう扱われるかは、その市町村の空き家担当窓口と税務担当窓口、必要なら税理士に確認してください。
実務的に効くのは、切り株そのものより、切り株から生えた芽が数年で樹高を戻し、隣地や道路にはみ出す流れのほうです。
補助金は自治体で割れる。建物の解体と同時かどうかが分かれ目
庭木の抜根に単独で出る補助金は、宅地ではほとんど見当たりません。ただし、老朽危険空き家の除却補助の中で立木の撤去が対象になるかどうかは自治体で割れています。ここは見積書の作り方が結果を変える部分です。以下はすべて2026年7月31日に各市の公開ページで確認した内容です。
| 自治体 | 立木・庭木の撤去費の扱い |
|---|---|
| 大分市 | 門扉、塀、立木等の撤去に要する経費が対象。ただし建築物の除却と同時に行う場合に限る |
| 岡山市 | 除却工事に加え、敷地にある門扉、塀、立木等の撤去に係る附帯工事が対象 |
| 松山市 | 庭木・庭石の撤去費用は補助対象経費から除く |
| 秋田市 | 諸経費のうち家財道具、車両、門、塀、立木などの除却に要する費用を除く |
| 下関市 | 塀や樹木などの付属物の撤去費用は補助対象経費にならない |
読み取れるのは3点です。第一に、抜根が補助に乗るかどうかは制度の名前ではなく要綱の一文で決まります。第二に、乗る自治体でも建物の除却と同時であることが条件になります。庭だけ先に片付けてから翌年に家を壊すと、同じ工事でも対象から外れます。第三に、大分市は補助金の交付決定前に工事着手した場合は対象外としています。順番を間違えると金額の問題ではなく資格の問題になります。
制度は年度で改定されます。松山市は令和8年度から補助上限を100万円(島しょ部160万円)に引き上げています。着工前に、その市町村の要綱本文で対象経費の行を読んでください。
抜根を含む見積りを、まとめて取る
庭木の抜根は、解体や外構の撤去と同じ業者がまとめて扱う範囲です。抜根を別行で出してもらった見積りを複数持っておくと、補助の対象判定にも価格交渉にも使えます。
無料で解体費用を比べる抜いた根の行き先。自分でやると止まるのは掘る工程ではない
自力の抜根は、道具さえあれば費用ゼロになると書かれがちです。実際に止まるのは掘る工程ではなく、抜いた株を捨てる工程です。自治体の受け入れ基準がはっきり線を引いています。
- 立川市:樹木の根は資源にならないため、燃やせるごみ・可燃粗大ごみとしてクリーンセンターへ持ち込む。安全な焼却処理のため直径20cm未満に切り揃えることが必要で、基準を超える場合は市では処理できず、専門の処理業者に依頼することになる
- 千葉市:可燃ごみ収集日に出す枝は1本あたり直径10cm・長さ50cm以内。資源収集日でも直径20cm・長さ100cm以内
- 鹿児島市:剪定業者やシルバー人材センター等が剪定した枝は事業系ごみとなり、戸別収集の対象外
いずれも2026年7月31日確認です。直径30cmの切り株は、根を落としても袋にも規格にも入りません。チェーンソーで割るか、業者に持って行ってもらうかの二択になります。鹿児島市の線引きが示すとおり、業者が切ったものは家庭ごみとして出せません。業者に伐採だけ頼んで根は自分で捨てる、という組み方も成立しないことがあります。
自治体ごとにこの基準は違います。数字はあなたの市町村のごみ分別ページで置き換えてください。自分でどこまでやれるかの線は庭木の伐採を自分でやる場合の道具と限界に分けています。
見積りの取り方と、よくある質問
抜根の見積りは、次の順で取ると比べられる形になります。
- 切り株の数、幹の直径(切り口を測る)、周囲2mに何があるか(塀・配管の点検口・建物)を写真に撮る
- 3社に現地調査を依頼する。電話だけの概算は比較材料にしない
- 作業費・処分費・重機と運搬・整地の4行に分けて書いてもらう
- 抜けなかった場合、壊した場合にどうするかを書面で確認する
- 建物の解体や外構の撤去を予定しているなら、同じ業者に同時施工の見積りも出してもらう
金額を下げる方向に効くのは、伐採と抜根を同じ業者にまとめること、根の処分や整地の一部を自分で引き受けること、業者の閑散期に当てることです。グリーンデザイナーズは閑散期を秋から冬としています(2026年7月31日確認)。ただし処分を自分で引き受ける前に、抜いた株が自治体の受け入れ基準に入る大きさかどうかを先に確かめてください。
切り株を薬剤で枯らせば、抜かなくていいですか
枯れることと無くなることは別です。枯らしても物理的な株は残り、朽ちて崩れるまでには年数がかかります。除草剤や薬剤は製品ごとに使える場所や樹木への適用が定められているので、容器の表示に従ってください。萌芽を止めたいだけなら選択肢になりますが、更地にする目的には届きません。
抜根せず、整地だけしてもらえますか
地際で切り直して土を被せる仕上げは受けてもらえます。ただし、そのあと駐車場や建物を作る予定があるなら二度手間になります。抜根の費用を後回しにしただけになるので、出口が決まっていない段階で選ぶ処理と考えてください。
隣の家の木の根がこちらに入ってきています
民法第233条第4項は、隣地の竹木の根が境界線を越えるときはその根を切り取ることができる、と定めています。根は催告なしで切れます。一方で枝は原則として竹木の所有者に切除させるもので、2023年4月1日に施行された改正で、催告しても切除されない場合など一定の要件を満たしたときに自ら切り取れるようになりました(2026年7月31日確認)。編集部は士業ではないので、あなたのケースで要件を満たすかどうかの判断はしません。切る前に弁護士か司法書士、自治体の無料法律相談に確認してください。
何本もある場合、まとめたほうが安くなりますか
重機の運搬費と職人の移動が1回で済むので、1本ずつ別日に頼むより下がる方向に働きます。ただし1日で終わらない量になると日数分の人件費が積まれるので、本数に比例して安くなるわけではありません。何日かかる見込みかを先に聞いてください。
抜いた穴はそのままですか
埋め戻しと整地が見積りに入っているかを確認してください。ミツモアの公開値では整地が1平方メートルあたり1,500〜1,800円です。入っていない見積りは、その分だけ安く見えます。
