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生前整理ノートの書き方|親に頼むときの伝え方

生前整理ノートの書き方|親に頼むときの伝え方

生前整理ノートは、項目を埋めることより先に決めるものがある。誰に読ませるか、どこに置くか、いつ書き直すか。この3つでノートが役に立つかどうかがほぼ決まる。

書く11項目と、書くと危険な情報、親に頼むときの伝え方を、公的データと制度の一次情報で整理した(2026年7月31日時点)。

この記事の目次
  1. 生前整理ノート・エンディングノート・終活ノートの違い
  2. 項目を埋める前に決める3つ
  3. 生前整理ノートに書く11項目
  4. ノートに書いてはいけない情報
  5. 実家と土地の欄が、いちばん後で効く
  6. ノートでできないこと(遺言書との線引き)
  7. 親に頼むときの伝え方
  8. 途中で止まったノートの直し方
  9. どこで手に入れるか(無料と市販)
  10. よくある質問

生前整理ノート・エンディングノート・終活ノートの違い

この3つに法律上の定義はない。同じ内容を別の名前で呼んでいることも多く、実際に市販されている「生前整理ノート」も中身はエンディングノートに近い。違いがあるとすれば、重心の置き方になる。

呼び名重心中心になる記載
終活ノート自分の考えを整理するやりたいこと、自分史、これからの計画
生前整理ノート物と財産を実務的に記録する家財の処分方針、財産の一覧、保管場所
エンディングノート家族へ情報と希望を引き継ぐ医療・介護・葬儀の希望、連絡先、メッセージ

この分け方は一般社団法人終活協議会の解説にほぼ沿っている(終活ノート・生前整理ノート・エンディングノートの違い/2026年7月31日確認)。

実家じまいの文脈で必要になるのは、生前整理ノート寄りの内容になる。家の中に何があり、不動産と口座がどこにあり、誰に連絡すればいいか。片づけと手続きが止まる原因は、気持ちではなく情報の所在が分からないことにある。ノート選びで迷うくらいなら、表紙の名前は無視して、財産と保管場所の欄が広いものを選べばいい。全体の順番は生前整理とは?親が元気なうちに決めておく5つのことにまとめている。

項目を埋める前に決める3つ

書き方の解説はどこにでもあるが、書いたノートが使われなかった理由はほとんどこの3つに集中する。先に決めておく。

1. 誰が読むか

読む人が決まると、書く粒度が決まる。同居している家族が読むなら住所や連絡先は省ける。遠方の子が読むなら、家の間取りや鍵の場所から書く必要がある。読む人を決めずに書くと、当たり障りのない一般論だけが残る。

2. どこに置くか

ノートは、必要なときに家族の手が届く場所にないと存在しないのと同じになる。厳重にしまい込むほど読まれない確率が上がる。置き場所そのものを家族に口頭で伝えておく、もしくは「この引き出しの中」と書いたメモを別の場所に残しておく。

3. いつ書き直すか

内容は必ず古くなる。口座を解約した、保険を切り替えた、引っ越した、入院した。各ページの隅に更新日を書く欄を作り、年に1回か、上の出来事があったときに見直す。静岡市が配布しているエンディングノートは、書き直しやすいようにページを切り離して差し替えられる仕様になっている(静岡市公式サイト/2026年7月31日確認)。紙のノートを使う場合も、鉛筆や貼り直せる付箋で書けば同じことができる。

生前整理ノートに書く11項目

市販ノートと自治体版に共通して入っている項目を、実務で必要になる順に並べた。上から埋めれば、途中で止まっても最低限は機能する。

#項目書くこと
1本人の基本情報氏名、生年月日、本籍、健康保険証・年金手帳・パスポートの保管場所
2連絡してほしい人親族・友人の氏名と連絡先、知らせる順番、知らせなくてよい人
3預貯金・証券金融機関名と支店名、通帳とカードの保管場所(残高は書かない)
4年金・保険年金の種類、生命保険・医療保険の会社名と証券の場所
5不動産所在、名義、共有者の有無、権利証・登記識別情報の保管場所
6負債・保証住宅ローン、借入、他人の連帯保証になっていないか
7デジタル関連携帯会社、プロバイダ、サブスク契約の一覧(IDのみ、パスワードは書かない)
8医療・介護の希望かかりつけ医、持病と常用薬、告知の希望、延命治療の考え
9葬儀・お墓の希望形式、宗派と菩提寺、遺影に使う写真、納骨先
10ペット託したい人、かかりつけの動物病院、性格と食べ物
11遺言書・メッセージ遺言書の有無と保管場所、家族へ伝えたいこと

項目の並びは葬儀社や終活団体の解説とおおむね共通する(小さなお葬式「エンディングノートの書き方まとめ」/2026年7月31日確認)。3と5で残高や評価額を書かないのは、金額が毎年変わるうえ、それ自体が漏れて困る情報だからで、必要なのは「どこにあるか」だけになる。

ノートに書いてはいけない情報

生前整理ノートは金庫ではない。読まれる前提で置くものなので、盗み見られた時点で被害になる情報は最初から入れない。

  • キャッシュカードの暗証番号、ネットバンキングのパスワード
  • クレジットカードの番号とセキュリティコード
  • スマートフォンやパソコンのロック解除コード
  • マイナンバー(求められる場面が限られるうえ、通知カード等の保管場所を書けば足りる)

暗証番号やカード番号をすべて書き込むと不正利用のおそれがある点は、葬儀社の解説でも注意事項として挙げられている(出典は前章と同じ)。代わりに書くのは「どの銀行に口座があるか」「通帳とカードがどこにあるか」までで、番号がなくても相続手続きは進む。

パスワードをどうしても残したい場合は、ノート本体に書かず、封をした別紙にして保管場所だけをノートに書く方法がある。ノートを見た人がそのまま操作できる状態にしないことが線引きになる。

実家と土地の欄が、いちばん後で効く

市販ノートの不動産欄は数行しかないことが多い。ところが実家じまいで手が止まるのは、片づけよりもこの数行の情報が足りないときになる。次の6点を、親が元気なうちに埋めておく。

  1. 所在(登記簿どおりの表記。住居表示と地番は違うことがある)
  2. 名義(親単独か、祖父母名義のまま残っていないか)
  3. 共有者がいるか、いるなら誰か
  4. 権利証・登記識別情報通知の保管場所
  5. 固定資産税の納税通知書がどこに届いているか
  6. 家屋以外の土地(畑、山林、原野、私道の持分)の有無

とくに2つ目が重い。名義が祖父母のまま止まっていると、いま生きている相続人全員をさかのぼって確定する作業から始まる。相続登記は令和6年4月1日から申請が義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内の申請が必要で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になる。施行日より前に相続したものも対象で、令和9年3月31日までに申請する扱いになっている(法務省「相続登記の申請義務化について」/2026年7月31日確認)。

財産の総額が気になる場合、相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算される(国税庁タックスアンサーNo.4152/令和7年4月1日現在の法令等・2026年7月31日確認)。ただし個別の税額計算や、どの特例に当たるかの判断は編集部の領分ではない。ノートに書くのは所在と名義までで、金額の判定は税理士に確認する。書き出す順番は生前整理のやることリスト|順番と親への切り出し方にまとめている。

ノートでできないこと(遺言書との線引き)

生前整理ノートに法的効力はない。誰に何を相続させるかを書いても、そのとおりに分けられる保証はなく、相続人が全員納得すれば別の分け方になる。財産の分け方を確定させたいなら遺言書が要る。

自筆証書遺言は、全文・作成日付・氏名を本人が自書して押印する。日付は「令和3年3月吉日」のような書き方では認められない。財産目録だけはパソコン作成や資料の添付が可能だが、その全ページに署名押印が必要になる(法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」/方式緩和は2019年1月13日施行・2026年7月31日確認)。

書いた遺言書を法務局に預ける自筆証書遺言書保管制度もある。用紙はA4、余白は最低で上5ミリ・下10ミリ・左20ミリ・右5ミリ、片面のみに記載し、複数枚でもホチキスで綴じない、といった様式が決まっている(法務省「遺言書の様式等についての注意事項」/2026年7月31日確認)。手数料は保管の申請が1件(遺言書1通)につき3,900円、モニターによる閲覧が1回1,400円、原本の閲覧が1回1,700円、遺言書情報証明書の交付が1通1,400円、保管の事実の証明書が1通800円(法務省「手数料」/2026年7月31日確認)。

役割を分けると迷わない。分け方は遺言書、それ以外の情報と希望はノート。そしてノートには「遺言書を作ったかどうか」「どこにあるか」を1行書いておく。遺言書の存在に気づかれないまま手続きが終わることを防げる。

親に頼むときの伝え方

頼み方の前に、数字を1つ置く。厚生労働省の令和4年度の調査(一般国民 n=3,000)で、人生の最終段階で受けたい医療・ケアについて家族等や医療・介護従事者と「話し合ったことはない」と答えた人は68.6%。「詳しく話し合っている」は1.5%、「一応話し合っている」が28.4%だった。

重要なのは、話し合っていない人(n=2,057)に理由を聞いた結果になる。

理由(複数回答)一般国民
話し合うきっかけがなかったから62.8%
知識が無いため、何を話し合っていいか分からないから31.0%
話し合う必要性を感じていないから21.8%
話し合いたくないから2.1%

出典は厚生労働省「令和4年度 人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査の結果について(報告)」(2026年7月31日確認)。同省は、こうした話し合いを人生会議(ACP)として普及啓発している

拒否している人は2.1%しかいない。多数は、嫌がっているのではなく、きっかけがなく、何を話せばいいか分からないまま来ている。頼み方の設計はここから逆算する。

相談者相談者
切り出したら不機嫌になられそうで、何年も言えていない
実家じまいナビ編集部実家じまいナビ編集部
拒否は2.1%。多くは「きっかけがない」側にいる。説得ではなく、きっかけの形にして渡すほうが通りやすい

通りやすい切り出し方

  • 自分の分を先に書いて見せる。自分のノートを1冊書き、埋まらなかった欄を見せる。頼む側が先に開示すると、話が親の終わりの話ではなく共同作業になる。
  • 医療の欄だけを頼む。入院したときに困るのは、かかりつけ医と常用薬と保険証の場所で、財産の話は後回しでいい。
  • 自治体の冊子を持っていく。市区町村が無料で配っている版なら、勧誘や商売の色がなく、子が用意したものという圧も薄くなる。
  • 期限を切らない。「今年中に」ではなく「思い出したときに1ページずつ」。更新前提のものなので、完成させる必要がない。

やめたほうがいい頼み方

  • 財産の一覧から入る。相続の取り分を測りに来たと受け取られやすい。
  • 「もしものときのために」を繰り返す。相手の年齢を根拠にした話に聞こえる。
  • 兄弟姉妹で示し合わせて一斉に頼む。囲まれた形になり、その場で話が終わる。
  • 書いた内容を後から批評する。1回でも直しを入れられると、次のページは埋まらない。

途中で止まったノートの直し方

買った翌週に止まるのが普通の経過になる。原因は分量で、最初から全部埋めようとすると必ず止まる。

相談者相談者
3ページ書いて、そこから半年動いていない
実家じまいナビ編集部実家じまいナビ編集部
空欄があるまま置いておいて構わない。埋まった3ページ分は、その時点でもう役に立っている

再開するときのやり方を3つ。

  1. 1回30分で区切る。1項目ずつ。書けなかった欄は空けたまま次へ進む。
  2. 調べないと書けない欄を分ける。権利証の場所や保険証券の番号は、探す作業であって書く作業ではない。付箋を貼って別日にまわす。
  3. 更新のきっかけを決めておく。引っ越し、入院、口座の解約、保険の切り替え、正月。この5つのどれかが起きたら開く、と決めるだけで数年放置を避けられる。

それでも書けない欄が残ることはある。医療の希望や葬儀の形式は、いま決めきれなくても不自然ではない。空欄のままにしておき、代わりに「この件はまだ決めていない」と1行書いておくと、家族が読んだときに書き忘れと区別できる。

どこで手に入れるか(無料と市販)

自治体の無料配布・PDF

市区町村が終活支援の一環で配っている版がある。静岡市は「エンディングノート~これからの人生を豊かにしていくために~」を作成し、自分のこと、これからの人生、医療・介護の希望、大切な人へのメッセージ、葬儀・お墓の希望、資産・遺言・相続、終活を進めるために、緊急連絡先一覧、の構成でWordとPDFを公開している。担当は地域包括ケア推進課になる(静岡市公式サイト/2026年7月31日確認)。

配布の有無や対象は自治体ごとに違う。「(市区町村名) エンディングノート」で検索するか、高齢福祉の窓口か地域包括支援センターに問い合わせるのが早い。地域の相談窓口が載っている点が、市販版にはない利点になる。

市販のノート

書店で買う場合、目次を見て決める。たとえば「弁護士が教える自分と家族の生前整理ノート」(文響社)は、基本情報と家族・親族、全資産、健康・医療情報、生前贈与・相続、お葬式とお墓、友人・知人とペット、歩いてきた道、の7部構成になっている(紀伊國屋書店の書誌情報/2026年7月31日確認)。資産と相続の欄が厚いか、医療と介護の欄が厚いかで、書きやすさが変わる。

アプリと手持ちのノート

アプリは書き直しが楽な一方、本人以外がログインできないと開けない。使うなら、紙で最低限の連絡先と保管場所だけ残しておく。決まった様式は不要なので、市販ノートを買わずに手持ちのノートへ上の11項目を書く形でも問題ない。

よくある質問

何歳から書くものか

年齢の決まりはない。入院や引っ越しなど、書く材料がそろう出来事のタイミングのほうが向いている。

書いた内容を家族に見せるべきか

全部を見せる必要はないが、ノートの存在と置き場所は伝えておく。伝わっていないノートは、探されないまま残る。

ノートと遺言書はどちらを先に書くか

分け方でもめる要素がないならノートが先でいい。共有名義の不動産がある、相続人の一人に多く渡したい、といった事情がある場合は、遺言書の検討を先に専門家へ相談する。

ノートを書いたら物も処分しないといけないか

書くことと捨てることは別の作業になる。まず所在を書き出し、処分は判断できるものから順に進めればいい。

親がどうしても書かない場合は

書式にこだわらず、聞いた内容を子の側でメモしておく方法がある。かかりつけ医、常用薬、保険証と通帳の場所、不動産の名義。この4つが分かっているだけで、いざというときの停滞がかなり減る。

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実家じまいナビ編集部です。運営者自身が沖縄に売れない土地を相続し、出口が見つからないまま維持している当事者です。役所と業者を回って分かった順番、実際にかかる費用、先に知っておけば防げたことを記録しています。法令の解釈が必要な部分は断定せず、調べ方と相談先を示す方針です。

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