着物の仕立て直しの費用|直すか売るかの判断

箪笥から出てきた着物が、自分の寸法に合わない。
直すか売るかは、直し代が生地の値段と連動しない点で切れる。1か所だけの寸法直しは約7千円から2万7千円台、解いて仕立て直すと洗い張りと裏地を含めて約6万円から11万円になる。納期は解く場合で約5か月かかる(2026年7月31日確認)。
この記事の目次
寸法直し・洗い張り・仕立て直しは別の作業
店の料金表は、着物を解かない直しと、全部解いてから縫い直す直しに分かれている。呼び名が似ているので、見積もりを取る前にここだけ揃えておく。
| 作業 | 中身 | できること |
|---|---|---|
| 部分直し(寸法直し) | 直す箇所だけ縫い目を解いて縫い直す | 裄、袖丈、身丈、身幅を1か所ずつ調整する |
| 洗い張り | 全部解いて反物の形に戻し、水で洗って湯のしをかける | 縫い筋と汚れを落とす。この時点では着られない |
| 仕立て直し | 解いた生地を新しい寸法で一から縫い直す | 複数箇所をまとめて変える。裏地も替えられる |
洗い張りは仕上げではなく途中の工程になる。解いた時点で着物の形ではなくなるので、洗い張りを頼めば仕立て直しが必ず後ろに付く。京都のなをし屋は、寸法を二か所以上変える場合は部分直しではなく洗い張りからの仕立て直しが適していると説明している(なをし屋・洗い張りと仕立て直しの料金表、2026年7月31日確認)。
解かずに直す場合の料金
1か所だけなら解かずに直せる。詰めるより出す方が高い。出す側には、元の縫い目に残った筋を消す作業が入るためになる。
| 直す場所(袷の着物) | 詰める | 出す |
|---|---|---|
| 裄直し | 18,700円 | 27,500円 |
| 袖丈直し | 13,200円 | 16,500円 |
| 身丈直し | 27,500円 | 38,500円 |
| 身幅直し | 27,500円 | 38,500円 |
| 胴裏の交換(生地代込み) | 49,500円 | |
| 八掛の交換・精華(生地代込み) | 44,000円 | |
なをし屋の部分仕立直しの料金表(税込、2026年7月31日確認)から抜いた。同じ作業でも店で開く。着物のお直し.comの料金表では裄直しが訪問着8,200円、振袖8,500円、身幅直しが脇のみ13,000円で全体17,800円、仕立て直しの場合は解き代が別に3,400円からとなっている(2026年7月31日確認)。1か所の直しは、この幅の中で見ることになる。
解いて仕立て直す場合の料金
解く場合は、洗い張りと仕立て直しと裏地代の三つを足す。なをし屋の公開料金(税込、2026年7月31日確認)で並べると次のようになる。
| 品目 | 解き洗い張り | 仕立て直し(同寸・詰める) | 仕立て直し(出す) |
|---|---|---|---|
| 小紋・色無地・喪服 | 13,200円 | 46,200円 | 68,200円 |
| 訪問着・附下げ | 13,200円 | 46,200円 | 68,200円 |
| 振袖 | 15,400円 | 49,500円 | 71,500円 |
| 留袖(比翼付) | 17,600円 | 55,000円 | 82,500円 |
| 長襦袢 | 13,200円 | 27,500円 | 44,000円 |
裏地は別勘定になる。同店の生地代は胴裏が16,500円(振袖用は19,800円)、八掛が16,500円から19,800円、比翼が正絹で27,500円。訪問着を出す方向で直し、胴裏と八掛も替えると総額は10万円を超える。表地と一緒に裏地と八掛も洗うなら、洗い張りにも各2,200円が加算される。
納期も長い。同店は解き洗い張りに約2か月、仕立て直しに約3か月としている。合わせて約5か月になるので、着る予定の日から逆算しないと間に合わない。
部分直しと仕立て直しが逆転する箇所数
どちらが安いかは、直す箇所の数で入れ替わる。なをし屋は、部分的に解いて縫い直す作業を二か所以上行うと、全体を仕立て直すよりも合計が高くなる場合があると同店の説明に明記している(2026年7月31日確認)。
同じ表の数字で確かめる。袷の着物で裄を出す27,500円と身丈を出す38,500円を別々に頼むと66,000円。同じ着物を洗い張り13,200円と出す方向の仕立て直し68,200円で通すと81,400円になる。二か所ではまだ部分直しが安い。ここに袖丈16,500円が加わると82,500円になり、解いた方と並ぶ。
先に数えるのは箇所の数になる。1か所なら部分直し、3か所以上なら解く前提、2か所は生地の状態と裏地の傷み次第で見積もりが割れる、という順で見ていく。
比べるときは同じ店の表で通す。部分直しを安い店で、仕立て直しを別の高い店で拾って足すと、逆転の位置が実際とずれる。1軒に両方の見積もりを出させるのが早い。
料金表の前に決まっていること
金額を比べる前に、物理的に直せるかどうかで結論が出る着物がある。
- 出せる寸法の上限は、縫い込みに残っている生地の量で決まる。なをし屋は、丈を伸ばす場合は縫い込みの中の生地の幅によって出せる長さが変わるため、部分的に解いて確認する必要があるとしている(2026年7月31日確認)
- 希望の寸法に届かない着物がある。えり正呉服店のコラムも、生地の制限で希望寸法が出せない場合があること、裄を直すなら長襦袢も合わせて直す必要があることを挙げている(えり正呉服店・着物の仕立て直し、2026年7月31日確認)
- 裏地の変色は交換の判断に直結する。同コラムは、変色した裏地はカビの可能性があるため交換を勧めている
- 出す方向の直しには筋消しが要る。同コラムはスジ消しに5,000円から(税別)の追加が出るとしている。筋は薄くなるだけで、完全には消えない
この判断は現物を見ないと出ない。写真だけで直せると言い切る相手より、解いて確認してから金額を出す相手の方が、後から揉めにくい。
店に持ち込む前に手元で決めておくこと
店に着物だけ持って行くと、そこで採寸から始まる。先に手元で決まっていると、見積もりが1回で出る。
- 着る人を決める。誰の寸法に合わせるかが決まらないと、直す箇所も金額も出ない
- 着る人の裄と身丈を測る。着物クリーニングのきもの辻は、手持ちで寸法の合う着物や襦袢があれば、その寸法をもとに仕立てることもできると案内している(きもの辻・仕立てとお直し、2026年7月31日確認)。合う着物が1枚あるなら、それを一緒に持って行く方が早い
- 裏地の状態を見る。胴裏の裾や脇が黄色く変わっていないか、袖口の八掛が擦り切れていないか
- 長襦袢も一緒に出すかを決める。裄を変えるなら襦袢も揃える必要が出る
この4つを持って行くと、店で確認するのは縫い込みの量だけになる。何も決まっていない状態で相談すると、直す前提の話が先に進んでしまう。
母の振袖を娘の寸法に直す場合
譲り受けの中でも、振袖は料金と納期の両方で重い側になる。なをし屋の表で積むと、解き洗い張り15,400円、出す方向の仕立て直し71,500円、振袖用の胴裏19,800円で、合計106,700円(税込、2026年7月31日確認)。裄だけで着られるなら27,500円で収まる。差は4倍近い。
納期の逆算も要る。同店は解き洗い張りに約2か月、仕立て直しに約3か月。きものやまとは店舗持ち込みの見積もりを無料としながら、見積もり期間を20日前後、加工期間を内容により約60日と案内している(きものやまと・お直しと保管、2026年7月31日確認)。成人式が1月なら、前年の夏には現物を店に出している計算になる。
どこに頼むか、見積もりで何を聞くか
頼み先は三つに分かれる。
| 頼み先 | 特徴 | 向く場面 |
|---|---|---|
| 和裁所・和裁士に直接 | 小売店を通さないぶん加工料を抑えられる。生地の幅や長さをその場で測って見積もりを出す | 直す内容がもう決まっている |
| 呉服店の店頭 | 他店で買った着物や譲り受けた着物も持ち込める店がある。見積もりを無料にしている店が多い | 直せるかどうかから相談したい |
| 宅配専門店 | 全国から受ける。送料の条件と往復の日数が乗る | 近くに扱う店がない |
横浜の美どり和裁は、仕立ての専門店なので小売店より加工料金を抑えられること、反物の幅と長さをその場で測って見積もりできることを自社の利点として挙げている(美どり和裁、2026年7月31日確認)。きものやまとは、他店で買った着物や譲り受けた着物の持ち込みを受け付け、寸法直しや裏地の取り換えの見積もりを無料とし、金額に同意しなければそのまま返すと案内している(2026年7月31日確認)。見積もりを取るだけで費用が出るわけではない。
その場で確認するのは4点になる。出せる寸法の上限、裏地を交換するかどうか、筋消しの追加があるかどうか、仕上がりの期日。口頭の金額は後で動くので、紙に出してもらう。
直しの相談から販売の話になる場合がある
直しの窓口が、そのまま販売の窓口になっている店がある。国民生活センターの見守り新鮮情報第493号(2024年9月26日)は、呉服店の展示会に誘われた高齢者が次々と高額な契約を重ね、年金収入では払えない支払いが残った相談を紹介している(国民生活センター・展示会に誘われて…着物の次々販売に注意、2026年7月31日確認)。買った着物は未使用のまま箪笥に入っていた、という形が繰り返し出てくる。
親の着物を直す相談は、親を店に連れて行く場面になりやすい。防ぎ方は単純になる。
- 頼む作業を紙に書いてから行き、その日はそれ以外の契約をしない
- 契約者名義を親にしない。直し代を出すのが子なら、子の名義で頼む
- 展示会や催事の日を避けて、通常営業の日に持ち込む
- 困ったときの相談先は消費者ホットライン188になる
直すか売るかを決める4つの問い
直し代は、生地の値段と連動しない。仕立て直しの料金は品目と作業量で決まるので、量販の小紋も作家物の訪問着も同じ46,200円の行に並ぶ。判断の芯はここにある。
4つの問いを順に当てる。1つでも落ちたら、直す側から外れる。
- 着る人と着る場が決まっているか。いつか着るかもしれない、は決まっていない側に入る
- 直した後に何回着るか。訪問着の宅配レンタルは、きものレンタリエで19点フルセット9,800円から39,800円(税込、4泊5日、往復送料込、きものレンタリエ・訪問着レンタル、2026年7月31日確認)。1回きりなら、直すより借りる方が安く済む
- 物理的に出せる寸法か。縫い込みが足りなければ、金額の話は成立しない
- 直し代がその着物の値段を超えないか。買取で値が付く条件は素材や証紙や状態で決まる。実家の着物は売れる?買取価格が付く条件と相場に整理した
4つとも通るのは、着る予定が具体的にあり、寸法が出て、生地にも値段が付く着物になる。逆に、寸法が出ない着物と着る場が無い着物は、金額を比べる前に直す側から外れている。相続した着物の評価が要るほどの金額になる場合は、税理士に確認する範囲になる。編集部は士業ではないので、そこは判断しない。
直しても売っても行き先がない着物
どちらにも当てはまらない着物が必ず残る。行き先は三つある。
- 形を変える。羽織やコート、帯への仕立て替えを受ける店がある。ただし加工賃は仕立て直しと同じ水準で発生するので、費用の話は消えない
- 渡す。寸法が合わなくても、稽古用や舞台衣装として使う相手がいる
- 手放す。自治体の古布回収は、洗って乾いた状態で出すこと、汚れや破れがあるものは燃やすごみに回すことを条件にしている例がある(横浜市・古布、2026年7月31日確認)。地域で扱いが違うので、住んでいる自治体の案内を先に見る
箪笥ごと片付けている途中で出てきた着物なら、着物だけを別の窓口に出すより、家全体の片付けと同じ見積もりに載せた方が運び出しの回数が減る。順番は遺品整理とは?時期と費用、業者に頼む前の準備に置いた。
着物の仕立て直しで実際に来る質問
洗い張りと丸洗いは違うのか
丸洗いは着物の形のまま洗う作業、洗い張りは全部解いて反物に戻してから水で洗う作業になる。寸法を大きく変えるときや、縫い糸まで黄変しているときは、解く側が要る。
ミシンで仕立てた着物も直せるのか
直せるが、解く手間が増える。ミシンで縫った穴が残る、全体を解くのに時間がかかるという理由で、解き代の割り増しを求められる場合があると案内している店がある(きもの医、2026年7月31日確認)。
帯も直せるのか
袋帯と名古屋帯の仕立て直しは各16,500円、帯芯の交換も16,500円で、帯芯代が4,400円から別にかかる(なをし屋、税込、2026年7月31日確認)。帯を洗う費用は別になる。
袷を単衣に直せるのか
解いて仕立て直す扱いになる。なをし屋の表では単衣着物の仕立て直しが同寸で44,000円、出す方向で66,000円と、袷より2,200円ほど安い。八掛が不要になるぶん、生地代も減る(税込、2026年7月31日確認)。真夏に着る予定があるなら、直しの相談のときに一緒に聞いておく。
男物を女物に直せるのか
受ける店がある。着物のお直し.comは、男物の紬を女物に直す依頼や、男性用に直された浴衣を女性用に戻す依頼を実例として挙げている(2026年7月31日確認)。可否は縫い込みの量で変わるので、現物を見てからの返事になる。
