仏壇の移動と引越しの手順|小さくする選択肢も

実家の仏壇を動かす話は、作法の説明が先に立って費用と順番が後回しになりやすい。
運搬費は依頼先と大きさで1万〜12万円台、法要のお布施は1万〜3万円が目安(2026年7月31日確認)。ただし最初にやるのは業者探しではなく、仏壇本体と搬出経路と新居の置き場所を測ることになる。
この記事の目次
実家から自宅へ仏壇を移す費用の全体像
仏壇を移すときの出費は、法要のお布施と運搬費の2本立てになる。仏壇店のはせがわは引越しにかかる総額を1万数千円から13万円程度とし、幅が出る理由をお布施の額と運搬の依頼先の違いに置いている(2026年7月31日確認)。上置きの小型を近所へ動かすのか、台付きの大型を県をまたいで運ぶのかで、同じ仏壇の引越しでも桁が変わる。
| 項目 | 目安 | 何で決まるか |
|---|---|---|
| 魂抜き(閉眼供養)のお布施 | 1万〜3万円 | 地域と寺の方針 |
| お車代 | 5,000円程度 | 僧侶に自宅へ来てもらう場合。お布施と封筒を分ける |
| 魂入れ(開眼供養)のお布施 | 1万〜3万円 | 新居で勤める場合 |
| 引越し業者のオプション | 1万〜2万円程度 | 通常の引越し料金への追加分 |
| 仏壇専門業者の運搬 | 2万5,000〜12万円 | 高さと距離。仏具の梱包と飾り付け込み |
| 一時預かり | 月2,000〜5,000円 | 新居が決まるまで預ける場合 |
お布施と御車代の目安は、はせがわとSUUMO引越しがほぼ同じ数字を出している。SUUMO引越しは、包む額として4万円のような数字は避ける習慣があるとも書いている(2026年7月31日確認)。運搬側の1万〜2万円という帯は、他の家財と一緒に運ぶときの追加分で、LIFULL引越しと小さなお葬式が同じ水準を示している。
金額の幅が広いのは、同じ運搬でも作業範囲が業者ごとに違うからでもある。仏具の取り外しと梱包、分解と組み立て、到着後の飾り付けまで含むのか、本体を積んで下ろすだけなのか。見積もりは総額ではなく作業範囲を並べて比べたほうが差が見える。
見積もりを頼む前に測る3か所と「号」の読み方
仏壇の移動でつまずくのは、作法よりも寸法であることが多い。実家の仏壇は仏間に合わせて選ばれているため、集合住宅や洋室中心の家に持ち帰ると入らない。依頼先を探すより先に、3か所を測っておく。
1. 仏壇本体
幅、高さ、奥行き。台付き(床置き)は上下に分かれるものが多いので、分割したときの上段と下段の高さも控える。扉を開いた状態の幅も要る。設置には扉の可動域が必要で、閉じた幅だけで置き場所を決めると開けられなくなる。
2. 搬出と搬入の経路
実家側は仏間の入口、廊下の曲がり角、玄関の有効幅。集合住宅側はエレベーターのかごの奥行きと扉の高さ、共用廊下の幅、階段の踊り場。お仏壇のやまきの料金表には、ベランダからロープで吊る作業に1万1,000〜2万2,000円の設定がある(2026年7月31日確認)。経路が通らなければ、その分は必ず金額に出る。
3. 新居の置き場所
置く予定の場所の幅と高さ。上置きなら、下に据えるチェストやサイドボードの高さを足した合計で考える。
料金表に出てくる「号」
業者の料金表やカタログは号で書かれていることがある。いい仏壇の解説では、1号は1寸でおよそ3cm、20号ならおよそ60cmにあたり、上置きの号数は高さを指す。台付きで47-16号のような表記なら高さ約136cm、幅約48cmになる(2026年7月31日確認)。やまきは25号以上で基本料金の10%、30号以上で20%の割増を設けているため、自分の仏壇が何号かを言えると見積もりが早い。
寸法と合わせて、動かす前に中を写真に撮る。SUUMO引越しも準備の1つに仏具の配置の記録を挙げている。宗派ごとの並べ方に家ごとの並べ方が重なっていることが多く、写真がないと元に戻せない。扉を開けた全体、各段の正面、引き出しの中の順に押さえておく。
動かす前の法要は必要か、誰に頼むか
仏壇を動かす前に閉眼供養(魂抜き、お性根抜き)を勤めるのが一般的とされる。ただし必ず要るという一点で揃っているわけではない。
- はせがわは、宗派や寺の考えによって移動の前後に魂抜きと魂入れが必要になる場合があるとし、独断で省くと後から寺との間で問題になりうるとしている(2026年7月31日確認)
- お仏壇のやまきは、原則としては必要としながら、仏壇本体に魂が宿るものではないという理由から省略する例が増えていると説明し、菩提寺への事前確認を求めている(同)
- アート引越センターは、運ぶ前に精抜きを済ませておくよう案内している(同)。運送を頼む側の条件になっていることがある
浄土真宗は呼び方から違う。浄土真宗本願寺派の正宣寺は、本尊を引越しや修復のために移すときに勤めるのが遷仏式であり、お性根や魂を抜くわけではないため閉眼法要や抜魂式とは呼ばないとしている。再び迎えるときは入仏式にあたる(2026年7月31日確認)。寺に連絡するときの言葉が変わるだけで、日を決めて読経を受けるという流れは変わらない。
お布施は1万〜3万円、僧侶に来てもらうなら御車代5,000円程度が目安で、封筒は分けて渡す(はせがわ、SUUMO引越し/2026年7月31日確認)。日程は、引越しのおよそ1か月前に寺へ連絡し、1週間前までに済ませておくと当日が楽になるという案内で両社が共通している。菩提寺が遠い、付き合いのある寺がないという場合は、同じ宗派の近隣寺院か、僧侶の手配を受けるサービスが窓口になる。
運搬を頼む先は3つ。公開料金表で桁を掴む
引越し業者にまとめて頼む
他の家財と同じ便で運ぶ形。追加分は1万〜2万円程度という数字をLIFULL引越しと小さなお葬式が示している(2026年7月31日確認)。手配が1本で済むのが利点で、仏壇の扱いに慣れているとは限らないのが弱み。仏壇だけの運搬は断る会社もある。
仏壇店・仏壇専門業者に頼む
料金表を公開している業者があるので、見積もりを取る前に桁が読める。
| 業者 | 区分 | 表示額 |
|---|---|---|
| お仏壇のやまき | 上置仏壇・10kmまで | 16,016円 |
| お仏壇のやまき | 上置仏壇・101〜120km | 33,000円 |
| お仏壇のやまき | 床置仏壇・10kmまで | 27,610円 |
| お仏壇のやまき | 床置仏壇・101〜120km | 59,290円 |
| 仏壇技巧やすらぎ工房 | 高さ40〜50cm未満 | 2万5,000〜4万円 |
| 仏壇技巧やすらぎ工房 | 高さ80〜90cm未満 | 6万〜10万円 |
| 仏壇技巧やすらぎ工房 | 高さ90〜100cm未満 | 8万〜12万円 |
| 仏壇技巧やすらぎ工房 | 高さ105cm以上 | 見積もり |
やまきは距離で段階が上がり、以降20kmごとに上置で2,750円、床置で5,500円を加算する。金仏壇は基本の2割増しとしている。やすらぎ工房は高さで段階が上がり、仏具の梱包から飾り付けまでを自社で行うと書いている(いずれも2026年7月31日確認)。経路が通らない場合に、その場での分解と組み立てで対応する業者もある。
自分で運ぶ
費用はほぼかからないが、条件が付く。本尊と位牌、りんなどの仏具は本体から出して手で持つ。本体は横倒しにしない。台付きは大人2人以上で、扉と引き出しを固定してから動かす。金箔や漆の面は手の脂で傷むため素手で触らない。破損したときの修理は自分で抱えることになる。
実家じまいの工程のどこで仏壇を動かすか
実家をたたむ場合、仏壇の移動は片付けと解体、売却の日程に挟まれる。順番を外すと待ちが出る。
- 法要が先、運搬が後。動かせるのは魂抜き(遷仏式)を済ませてからになるため、運搬日は法要より後に置く
- 旧居では最後に運び出し、新居では最初に運び入れるという慣習がある(メモリアル仏壇/2026年7月31日確認)。業者に一言伝えておくと当日の順番が組める
- 新居が決まっていないなら一時預かり。月2,000〜5,000円が目安(はせがわ、仏壇技巧やすらぎ工房/同)
- 実家が遠い場合は距離で上がる。やまきの表では20kmごとの加算になり、県外への移動は交通費が別途になる
解体の日が決まっているなら、そこから逆算して法要と運搬を並べる。逆に、家の出口(売る、貸す、解体する)がまだ決まっていないなら、仏壇だけを急いで動かす理由はない。寺の日程を押さえるのは家の方針が固まってからでも間に合う。
新居に入らないときの4つの分岐
測った結果、入らない、置く場所がないとなったときの道は4つある。
1. 小さくする
本尊と位牌を小型の仏壇に移す。上置きなら家具の上に載る。祀る形は残るので、寺には仏壇を替える旨で日程を相談する。
2. 本尊だけを移す
本体を持ち帰らず、本尊を小さな形で迎える方法がある。正宣寺は、置くスペースがない場合の選択肢として、飾り棚や家具の上に置ける本尊(高さ17.2cm×幅10.3cm×奥行2.9cm)と、縦90mm×横55mm×厚さ2mmの携行本尊を挙げている(2026年7月31日確認)。宗派で扱いが違うため、まず自分の寺に聞く順番になる。
3. 寺に相談して引き取ってもらう
同じ正宣寺は、遷仏式を勤めたうえで引き取りができる仏具店を紹介すると案内し、誰も住まなくなった家の本尊を手放すときにも遷仏式を勤めるとしている(同)。実家じまいそのものを想定した窓口が寺側にある。
4. 手放す
依頼先ごとの費用と手順は仏壇の処分方法と費用|魂抜きから引き取りまでの順番にまとめている。
判断の順番は、置ける寸法があるか、継ぐ人がいるか、費用が見合うか。寸法から入ると話が早い。
集合住宅と洋室での置き場所の条件
向きから決めようとすると止まる。はせがわは置く向きに絶対の決まりはないとし、南面北座説、西方浄土説、本山中心説など複数の説を並べたうえで、住宅の事情を優先してよいという立場を取っている(2026年7月31日確認)。階数にも決まりはないが、年を重ねてからの上り下りを考えると1階が無難とも書いている。
実務で効くのは向きより環境のほう。
- 直射日光と強い照明を避ける。木地と塗りが変色し、反りが出る
- 冷暖房の風が直接当たる位置を外す。乾燥と温度差で扉や引き出しが動かなくなる
- 床や台が水平であること。傾いていると扉が勝手に開き、本体の変形につながる
- 上置きは台の強度を見る。仏壇は小型でも重く、本尊と位牌と仏具の重さが加わる
- 座って手を合わせるなら、本尊が目線より上に来る高さに合わせる
扉を開いたときの余地も確認しておく。壁際や柱の脇に寄せると、正面の幅は足りていても扉が全開しないことがある。
誰が引き継ぐか、税はかかるか
兄弟のどこへ移すかで話が止まる場合、法律上の位置を知っておくと整理が付く。仏壇や位牌、墓は祭祀財産と呼ばれ、預貯金や不動産とは別の筋道で引き継がれる。民法897条は、系譜、祭具、墳墓の所有権について、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継すると定め、被相続人の指定があればその人が承継し、慣習が明らかでないときは家庭裁判所が定めるとしている(e-Gov法令検索/2026年7月31日確認)。遺産分割で分ける対象ではないため、移す先を決めるのは承継する人になる。
税については、国税庁が相続税のかからない財産として、日常礼拝している仏壇や仏具を挙げている。ただし骨とう的価値があるなど投資の対象になるものや、商品として持っているものには相続税がかかるとしている(タックスアンサーNo.4108/令和7年4月1日現在の法令等にもとづく記載を2026年7月31日に確認)。
誰が承継者にあたるか、手元の仏壇が非課税の範囲に入るかという個別の判定は、編集部は士業ではないので行わない。話がまとまらないときは家庭裁判所の窓口や弁護士、価値が大きい仏壇は税理士が相談先になる。
運ぶ当日までの段取り
- 1か月前:寺に連絡して法要の日を決める。並行して業者に寸法と経路、距離を伝えて見積もりを取る
- 2週間前:仏壇の中を写真に撮る。引き出しの書類と仏具を仕分け、持っていくものと手放すものを分ける
- 1週間前から前日:閉眼供養(遷仏式)。お布施と御車代を封筒を分けて用意する
- 前日:仏具を外して梱包。本尊と位牌は別にして手持ちにする
- 当日:旧居では最後に搬出し、新居では最初に運び入れて据える
- 到着後:写真を見ながら飾り付け。魂入れ(入仏式)を頼むなら日を決める
仕分けで出た不要な仏具を、お焚き上げに回せる業者もある。仏壇と仏具を製造販売するクマダは、引越しの作業に合わせて段ボール1箱あたり5,000円でお焚き上げ供養を受けると案内している(2026年7月31日確認)。同社のサイトには、引越しとクリーニングを同じ機会にまとめた利用者の声も載っている。動かすときは、仏壇を工房に運べる数少ない機会でもある。直す場合の費用と買い替えとの比べ方は仏壇のクリーニングと修理の費用|買い替えとの比較に置いている。
よくある質問
家の中で置き場所を変えるだけでも法要は要りますか
寺の考えによる。同じ部屋の中での移動なら供養は不要とする仏壇店の説明もある(メモリアル仏壇/2026年7月31日確認)。部屋をまたぐ移動やリフォームでの一時退避は、菩提寺に一度聞いておくと確実。
魂抜きをせずに運んでしまいました
はせがわは、独断で儀式を行わなかった結果として後から寺との間で問題が起きる可能性を挙げている(2026年7月31日確認)。気づいた時点で事情を伝えて相談するのが現実的な進め方になる。仏壇本体に魂が宿るとは考えないという説明を出している仏壇店もあり、判断は寺によって分かれる。
位牌と本尊も業者に任せていいですか
手で運ぶのが基本。専門業者は仏具の梱包と飾り付けまで含むところがあるので、任せる範囲は見積もりの段階で確認する。
引越し業者に断られたときは
仏壇店や仏壇専門の運搬業者、単発の作業を頼めるサービスが受け皿になる。断られる理由が経路や重量にある場合は、分解と組み立てができる業者を探す形になる。
この記事から繋ぐ先
- 仏壇の処分方法と費用|魂抜きから引き取りまでの順番:持ち帰らないと決めた場合の依頼先と費用
- 仏壇のクリーニングと修理の費用|買い替えとの比較:動かす機会に直すかどうかの判断材料
