家じまいとは?実家じまいとの違いと進め方

「家じまい」と「実家じまい」がどう違うのか、調べても書き方がまちまちで迷う。
結論として、違いは誰が・いつ手放すかだけで、手順と費用はほぼ同じ。片付けから引き渡しまで数十万円から数百万円、期間は半年前後が目安になる。判断が要るのは、売るか解体するか貸すかという出口の選び方の一点。2026年7月31日時点の制度で整理する。
この記事の目次
家じまいと実家じまいの違いは「誰が・いつ」だけ
編集部が確認した範囲では、家じまいも実家じまいも法令や国の統計に出てくる用語ではなく、公的な定義は置かれていない。空家等対策の推進に関する特別措置法は「空家等」、総務省の住宅・土地統計調査は「空き家」という語を使う。つまり、この2語の使い分けは民間の解説のなかで定着したもので、どちらが正しいという話ではない。
不動産・終活分野の解説では、おおむね次のように分かれている。
| 家じまい | 実家じまい | |
|---|---|---|
| 手放す人 | 家の所有者本人(親世代) | 子・孫の世代 |
| 時期 | 本人が元気なうち。終活の一部 | 親の施設入居や死亡のあと |
| 住んでいるか | まだ住んでいることが多い | すでに空き家であることが多い |
| 先に決めること | 本人の次の住まい | 相続人どうしの合意と名義 |
言葉が分かれていても、やることは共通している。①家族の合意 ②家財の整理 ③名義の確認 ④出口の決定 ⑤引き渡し、の5つ。全体像は実家じまいとは?進め方と費用の全体像を7ステップで解説にまとめてある。
この言葉が広がった理由は、空き家の数と相続登記の義務化
総務省の令和5年住宅・土地統計調査(住宅及び世帯に関する基本集計・確報、2024年9月25日公表)によると、2023年10月1日時点の空き家は900万2千戸で過去最多、空き家率は13.8%と過去最高になった。このうち、賃貸用・売却用・別荘などの二次的住宅を除いた空き家、つまり使う予定がないまま置かれている住宅は385万6千戸で、2018年から36万9千戸増えている。
もうひとつが期限のある制度変更。相続登記の申請は2024年4月1日から義務になり、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない場合に10万円以下の過料の対象になる(不動産登記法第76条の2第1項、第164条第1項)。この義務は施行前に発生した相続にもさかのぼって適用され、2024年4月1日より前に相続を知った未登記の不動産は2027年3月31日までに登記が必要とされている(法務省Q&A、2026年7月31日確認)。
名義が親や祖父母のままだと、売ることも解体費の補助を申請することもできない。家じまいの話が急に増えたのは、この期限が近づいているからでもある。
出口は4つしかない。どれを選ぶかで費用が決まる
家じまいの費用は「家の広さ」ではなく「どの出口を選ぶか」でほぼ決まる。選択肢は次の4つ。
| 出口 | 向くケース | 主にかかる費用 | 引っかかりやすい点 |
|---|---|---|---|
| 建物ごと売る | 建物がまだ使える/立地に需要がある | 家財処分、仲介手数料、譲渡所得税 | 古家付きだと買主が値引きを求めやすい |
| 解体して更地で売る | 老朽化が進んでいる/買主が土地を求めている | 家財処分、解体、測量、滅失登記 | 解体後に住宅用地特例が外れる |
| 貸す・活用する | 賃貸需要がある/手放す決心がつかない | 修繕、清掃、管理委託料 | 借り手がつかない期間の維持費 |
| 譲る・国に返す | 売れる見込みが薄い土地 | 贈与時の税、国庫帰属の手数料と負担金 | 建物があると国庫帰属は申請できない |
迷ったときの実務的な順番は、まず「建物ごと売れるか」を先に確かめること。解体は一度やると戻せず、更地にしても売れなければ、解体費を払ったうえに毎年の固定資産税が上がる状態が残る。編集部は相続した傾斜地の出口を売却・寄付・国庫帰属と順に検証したが、どれも成立せず、年約7万円の固定資産税を払いながら保有を続けている。売れない土地は、費用をかけた後ほど身動きが取りにくくなる。
費用の内訳と、幅で見るときの目安
金額は建物の構造・広さ・立地・道路付けで大きく動く。一点で見積もらず、幅で押さえる。
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 家財の処分・片付け | 10〜50万円 | 量と搬出のしやすさで変動 |
| 建物の解体 | 100〜400万円 | 木造30坪で90〜150万円という集計がある |
| 測量 | 10〜30万円 | 境界が不明なら確定測量が要る |
| 仲介手数料 | 売買価格に応じた法定上限まで | 売却を選んだ場合 |
| 譲渡所得税 | 長期は20.315% | 売却益が出た場合のみ |
上の片付け・解体・測量の幅は不動産情報サイトHOME4Uの集計(2026年7月31日確認)。民間の集計値なので、地域差を含んだ参考値として見る。
もう一本、公的な数字を当てておくと目安が締まる。宇都宮市の老朽危険空き家除却費補助金は、補助額の算定に「延べ床面積×11,000円/平方メートル」という単価を使っている。約99平方メートル(30坪相当)なら約109万円。これは補助金の計算上の上限単価であって実勢価格ではないが、木造戸建てで100万円前後という水準が公的な算定にも現れている、という読み方はできる。
譲渡所得の税率は、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得となり、所得税15%・住民税5%・復興特別所得税(所得税額の2.1%)で合計20.315%(国税庁タックスアンサーNo.3208、2026年7月31日確認)。相続した家は被相続人の所有期間を引き継ぐため、長期になることが多い。
使える制度は3つ。どれも期限と条件がある
以下は2026年7月31日時点で確認した内容。制度は年度で変わるため、動く前に必ず最新のページを見る。
1. 空き家を売ったときの3,000万円特別控除
相続または遺贈で取得した被相続人の居住用家屋とその敷地を売った場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる(国税庁タックスアンサーNo.3306)。主な要件は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、区分所有建物の登記がされていないこと、相続の開始から売却まで事業・貸付け・居住に使っていないこと、売却代金が1億円以下であること、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。適用期間は平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までの譲渡。なお、令和6年1月1日以後の譲渡では、相続人が3人以上の場合の控除額が1人あたり2,000万円になる一方、売却後の翌年2月15日までに買主が耐震改修または取壊しを行った場合も対象に含まれるようになった。
2. 自治体の解体(除却)補助金
老朽化して危険な空き家の解体費を補助する制度が多くの市町村にある。金額も要件も自治体ごとに違う。
- 松本市:老朽危険空家等の除却工事費の2分の1、上限50万円
- 宇都宮市:算定額の3分の2、上限70万円。世帯の所得要件あり
- 呉市:上限30万円。条件に該当する場合は上限50万円
- 松山市:令和8年度から補助対象経費の5分の4、上限100万円(島しょ部は上限160万円)
共通するのは、事前の調査申請が要ること、着工前に交付決定を受ける必要があること、年度の予算枠に達すると受付が終わることの3点。工事を先に契約してしまうと対象外になる。あなたの家がある自治体名と「空き家 解体 補助」で公式サイトを直接確認する。
3. 相続土地国庫帰属制度
相続や遺贈で取得した土地を国に引き取ってもらう制度で、2023年4月27日に始まった。審査手数料は土地一筆あたり14,000円、承認されると10年分の管理費相当額として負担金を納める(法務省の案内では宅地は原則20万円。市街化区域や用途地域内の宅地などは面積に応じて算定)。建物がある土地は申請できないため、家じまいで使うなら解体が前提になる。担保権の設定された土地、境界が明らかでない土地、管理に過分な費用がかかる崖のある土地なども対象外。
進め方の手順。親が元気なうちと、亡くなったあとで分岐する
共通の骨格は同じで、最初の2ステップだけが変わる。
親が所有し、本人が動ける場合(家じまい)
- 本人の次の住まいを先に決める。賃貸、子と同居、高齢者向け住宅などの選択肢を、費用と入居条件で比べる
- 家族に共有する。売却代金の扱いを含めて、後で揉める部分を先に言葉にしておく
- 家財を整理する。本人がいる状態でしか判断できないものが多い
- 不動産会社に査定を依頼し、建物ごと売れるかを確認する
- 出口を決め、必要なら解体・測量に進む
- 引き渡し。引っ越しと各種契約の解約
親が亡くなった、または施設に入った場合(実家じまい)
- 登記簿で名義を確認する。祖父母名義のままなら、そこから遡って相続人を確定する必要がある
- 相続人全員で方針を共有する。相続登記の3年の期限があるため、話し合いが長引くなら相続人申告登記という簡易な手続きで義務だけ先に果たす方法もある
- 家財を整理する。貴重品・書類・遺影や仏具の扱いを先に分ける
- 査定を取り、建物ごと売れるかを確認する
- 出口を決める。3,000万円の特別控除を使うなら、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日という期限から逆算する
- 引き渡し。解体した場合は取壊しから1か月以内に建物滅失登記を申請する(不動産登記法第57条)
家財の整理でつまずいて全体が止まるケースが多い。親が生きている場合の進め方は実家の片付けが進まないときの順番|親が生きている場合で扱っている。
あとから効いてくる、5つの引っかかり
更地にすると固定資産税の軽減が外れる
住宅が建っている土地には住宅用地特例があり、小規模住宅用地(200平方メートル以下の部分)は固定資産税の課税標準額が6分の1に軽減されている。建物を解体して更地にするとこの特例が適用されなくなる(宇都宮市の補助金ページでも解体の同意を得る際の注意点として明記されている)。評価替えの影響もあるため税額がそのまま6倍になるとは限らないが、負担が上がる方向に動くのは確かで、更地のまま売れない期間が長引くほど効いてくる。
放置しても軽減が続くとは限らない
2023年12月13日に施行された改正空家等対策特別措置法で「管理不全空家等」が新設された。そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがあると市区町村が認めた空き家は、指導・勧告の対象になる。勧告を受けると、その土地は住宅用地特例が解除される(地方税法第349条の3の2第1項)。建物を残して放置する選択にも、税の面でのリスクが生まれた。
解体は元に戻せない
更地にしてから買い手がつかないと、解体費を払ったうえで税負担が上がった土地が残る。売れる見込みの確認を先に済ませる。
境界が決まっていない
古い土地は境界標がないことがある。確定測量には隣地所有者の立会いが要り、日程調整だけで数か月かかることもある。売却を決めてから着手すると引き渡しが遅れる。
親族の合意が最後に崩れる
家財の思い出、売却代金の配分、誰が手を動かすかの3点で揉めやすい。金額が出る前に方針だけ合意しておく。
相談先の分け方と、編集部が判断しない範囲
家じまいは、ひとつの窓口で完結しない。役割で分けて当たる。
- 不動産会社:建物ごと売れるか、更地にすべきかの判断材料。複数社に査定を取る
- 解体業者:解体費と工期。補助金を使うなら交付決定前に契約しない
- 遺品整理・不用品回収業者:家財の量が多い場合。買取を併せて行う業者なら処分費と相殺できることがある
- 司法書士:相続登記、相続人申告登記、建物滅失登記
- 税理士:譲渡所得の計算、3,000万円特別控除の適用可否、相続税との関係
- 市区町村の空き家窓口:解体補助金、空き家バンク、管理不全空家等の判断
編集部は士業ではない。個別の税額計算、控除の適用可否の判断、遺産分割の内容についてはここでは扱わない。特に3,000万円の特別控除は要件が細かく、当てはまるかどうかで手取りが数百万円変わる。売却の契約を結ぶ前に税理士に確認する。
よくある質問
家じまいと実家じまい、検索するならどちらの言葉がいいか
手順や費用を知りたいだけならどちらでも同じ情報に行き着く。ただし所有者本人が主体の情報(次の住まいの選び方、住み替えの資金計画)は家じまいの記事に厚く、相続や名義の情報は実家じまいの記事に厚い傾向がある。知りたい側で語を選ぶ。
どのくらいの期間がかかるか
民間サイトの調査では、家じまいにかかった期間は約半年という結果が出ている(リハコ、2026年7月31日確認)。家財の量が多い場合、相続人が多い場合、境界が未確定の場合はこれより延びる。
売れない土地でも国が引き取ってくれるか
相続土地国庫帰属制度はあるが、建物がある、境界が明らかでない、管理に過分な費用がかかる崖があるなどの土地は対象外になる。制度があることと、自分の土地が通ることは別。申請前に法務局へ相談する。
まだ何も決まっていない段階で、先にできることは
登記簿で名義を確認すること。相続登記の3年の期限は、方針が決まらなくても進む。名義が親や祖父母のままなら、売却も解体補助の申請もそこで止まる。
