墓じまいの役所手続き|改葬許可と埋葬許可の違い

墓じまいで役所に行く用事は、実はひとつだけです。
いま遺骨が納められている墓地がある市区町村で、改葬許可証を受け取る。それだけです。火葬のときに受け取る埋葬許可証とは別の書類で、申請手数料は無料の自治体が多く、交付は即日から1週間程度と幅があります。ただし書類をそろえる順番を間違えると、撤去工事の日程が止まります。
この記事の目次
役所でできるのは改葬許可証の交付だけ
墓じまいで役所に出す書類は、突き詰めると改葬許可申請の一式だけです。墓地、埋葬等に関する法律(以下、墓埋法)は、埋葬・火葬・改葬をしようとする者は市町村長の許可を受けなければならないと定め(第5条)、市町村長は許可にあたって改葬許可証を交付すると規定しています(第8条)。役所の窓口は、この許可証を出すための場所です。
逆に、次のことは役所では解決しません。どの供養先を選ぶか、親族の意見が割れているときにどうするか、離檀料をいくら払うか。これらは墓地管理者や親族との話し合いの領域で、窓口に持ち込んでも判断してもらえません。墓じまい全体の流れは墓じまいとは?費用と流れ、遺骨の行き先の決め方で整理しています。
もうひとつ、申請先を間違えやすいところです。申請するのはいま遺骨が納められている墓地・納骨堂がある市区町村で、あなたの住所地でも、遺骨の移転先でもありません。福岡市は、他の市町村の墓地や納骨堂に納めている遺骨を福岡市内に移す場合は、現在遺骨を納めている墓地や納骨堂がある市町村で改葬許可の手続きを行うよう明記しています(2026年7月31日確認)。
担当課の名前も自治体ごとに違います。戸籍の窓口が担当するところ(横浜市は区役所戸籍課、船橋市は戸籍住民課、大津市は戸籍住民課施設管理係)もあれば、衛生の部署が担当するところ(福岡市は区役所生活環境課)もあります。事前に申請先のサイトで担当課を調べておくと、電話一本で必要書類まで確認できます。
改葬許可証と埋葬許可証は別物
この2つは名前が似ていますが、使う場面がまったく違います。火葬のときに受け取った書類をそのまま持って行っても、墓じまいの手続きにはなりません。
| 書類 | 出すところ | 使う場面 |
|---|---|---|
| 火葬許可証 | 死亡届を出した市区町村 | 火葬場に提出する |
| 埋葬許可証 | 同じく死亡届を出した市区町村。実務では火葬済みの証明印が押された火葬許可証が、そのまま埋葬の際の許可証として扱われる運用が案内されている | 遺骨を初めて墓地・納骨堂に納めるときに管理者へ提出する |
| 改葬許可証 | いま遺骨が納められている墓地がある市区町村 | すでに納骨されている遺骨を、別の墓地・納骨堂へ移すときに使う |
大阪市旭区は、納骨の際には死体火葬許可書(裏面に火葬済み証明があるもの)を持参し、すでに納骨済みの遺骨を他の場所に移すときは改葬許可証の交付手続きをするよう案内しています(2026年7月31日確認)。福岡市も、火葬後に自宅で保管している遺骨を墓地や納骨堂に納める場合は改葬許可の申請は不要で、火葬の際に発行された埋火葬許可証を提出すればよいとしています。
判断の基準は、遺骨がいちど墓地や納骨堂に納められたかどうかです。納められていれば改葬、まだ自宅にあるなら初めての納骨です。墓埋法第2条は改葬を、埋葬した死体を他の墳墓に移すこと、または埋蔵・収蔵した焼骨を他の墳墓や納骨堂に移すこと、と定義しています。
火葬許可証を紛失している場合の扱いも決まっています。大阪市旭区では、発行後5年以内なら火葬許可証再発行申請書の提出で、5年以上経っている場合は火葬した斎場から火葬証明書を取り寄せたうえで再発行申請書と一緒に提出する、と案内されています。
役所に持っていく書類の一覧
基本は3点で、条件によって書類が足されます。名称は自治体により埋蔵証明・納骨証明・収蔵証明などと揺れますが、証明したい中身は同じです。
| 書類 | どこでもらうか | 補足 |
|---|---|---|
| 改葬許可申請書 | いま墓地がある市区町村の窓口、または公式サイトのダウンロード | 遺骨1体につき1枚が原則。大津市は焼骨1体につき1枚必要と案内している |
| 埋蔵(埋葬)証明 | いまの墓地・納骨堂の管理者 | 独立した証明書ではなく、申請書の証明欄に管理者が記入押印する形が多い。横浜市もつくば市も、申請書の欄で証明を受ける方式を案内している |
| 受入証明書 | 改葬先の墓地・納骨堂の管理者 | 大津市は、改葬先の使用許可証の写しや管理者が独自に発行する書類でも差し支えないとしている |
| 承諾書(条件付き) | 墓地使用者(名義人) | 申請者と名義人が違う場合。つくば市は任意の用紙でよいとしたうえで、名義人の住所と署名、申請者の住所氏名、埋葬されている人の氏名、承諾する旨の記載を求めている |
| 本人確認書類 | 申請者が用意 | 窓口では提示、郵送では写しを同封 |
| 戸籍謄本など(条件付き) | 本籍地の市区町村 | 船橋市は用意がなくても受付は可能だが交付に時間がかかる場合があるとし、大阪市旭区は続柄と死亡日が分かる戸籍・除籍謄本を必要書類に挙げている |
| 委任状(条件付き) | 申請者が作成 | 代理人が申請する場合 |
ここで詰まりやすいのが遺骨の数です。申請書が1体につき1枚である以上、古いお墓ほど何体納められているか分からないという問題に当たります。管理者にも記録が残っていないことがあるため、確認は工事日を決める前に済ませます。取り出しの実際は墓じまい当日の流れ|立ち会いから遺骨の受け取りまでで扱っています。
書類を取る順番(先に役所へ行くと空振りする)
受入証明書は改葬先が決まらないと出ません。埋蔵証明は現在の墓地管理者に伝えないと押してもらえません。役所はその2つがそろってから申請を受ける流れなので、順番はほぼ固定されます。
- 親族と墓地管理者に、墓じまいの意向を伝える
- 改葬先(納骨堂・樹木葬・永代供養墓など)を決めて契約し、受入証明書または使用許可証の写しをもらう
- いま墓地がある市区町村の公式サイトで、様式と必要書類を確認し、申請書を入手する
- 申請書の証明欄に、現在の墓地管理者から埋蔵(納骨)の証明をもらう
- 役所に提出し、改葬許可証の交付を受ける
- 改葬許可証を現在の墓地管理者に提示して、遺骨を取り出す
- 改葬許可証を新しい納骨先の管理者に提出して、納骨する
6の場面で見落とされがちなのが、許可証は元の墓地に渡してしまう書類ではないという点です。横浜市は、遺骨を取り出す際は改葬許可証を提示するだけで渡さず、新しい墓地で必要になると案内しています(2026年7月31日確認)。
3の様式確認を省かないでください。様式は改定されます。船橋市は改葬許可申請書の様式を2026年7月1日から変更しています。手元に古い用紙の写しがある場合は、必ず最新版を取り直します。申請書の記入内容そのものは改葬許可申請の手順と必要書類|遺骨を移す前にに分けて書いています。
自治体で違うところ(6市の窓口案内を比べる)
ここが墓じまいの役所手続きでいちばん誤解されている部分です。手数料も、交付までの時間も、求められる書類も、自治体ごとに違います。以下は各市の公式ページの案内を2026年7月31日に確認して並べたものです。
| 自治体 | 担当窓口 | 申請手数料 | 交付までの目安 | 郵送申請 |
|---|---|---|---|---|
| 大津市 | 戸籍住民課施設管理係・各支所 | 無料 | 窓口は受付後10〜30分、郵送は受付後1〜2日 | 可(返信用封筒・本人確認書類の写し) |
| 横浜市 | 区役所戸籍課 | 無料 | 案内なし(窓口で受け取り) | 可(返信用封筒・日中の連絡先を明記) |
| 船橋市 | 戸籍住民課ほか | 無料(埋蔵証明書は有料の可能性あり) | 即日発行はできず、1週間程度 | 可(切手付き返信用封筒) |
| つくば市 | 市民窓口課・窓口センター | 案内なし | 不備がなければ即日交付 | 可(返信用封筒・本人確認書類の写し) |
| 福岡市 | 区役所生活環境課 | 案内なし | 即日交付できない場合がある | 案内なし |
| 大阪市旭区 | 窓口サービス課(戸籍担当) | 案内なし | 案内なし | 可(事前の問い合わせを求めている) |
同じ手続きで、窓口30分で終わる市と1週間かかる市があります。工事日から逆算するときは、自分の申請先がどちらなのかを最初に確認します。全国共通の日数は存在しません。
役所の手続きにかかるお金
改葬許可申請そのものは、無料としている自治体が目立ちます。大津市・横浜市・船橋市はいずれも申請手数料を無料と案内しています(2026年7月31日確認)。ただし全国一律ではなく、手数料を設定している自治体もあるため、一点の金額で見積もらないでください。
- 改葬許可申請の手数料:無料の自治体が多いが、有料の自治体もある。申請先の案内で確認する
- 埋蔵(納骨)証明の発行手数料:役所ではなく墓地管理者が決める。無料のところも有料のところもあり、船橋市も埋蔵(収蔵)証明書の発行には手数料がかかる可能性があると注意している
- 受入証明書:改葬先の管理者が発行する。契約時に有無と金額を確認する
- 戸籍謄本・除籍謄本:必要とされる自治体では取得実費がかかる。金額は請求先の市区町村で確認する
- 郵送費:返信用封筒の切手代。書類が折れないサイズを指定されることがある
行政書士に申請の代行を依頼することもできます。費用は事務所ごとに設定が違うため、依頼前に見積書で範囲(書類の取得までか、寺院との交渉まで含むか)を確認します。編集部は士業ではないため、代行の要否や契約内容の適否をここで判断することはしません。
遠方のお墓を郵送で片づける
実家のお墓が遠いという理由で墓じまいを考えている場合、この項目が効きます。今回確認した自治体はいずれも郵送申請を受け付けており、求められるものはほぼ共通です。
- 記入済みの改葬許可申請書(埋蔵証明の欄に、墓地管理者の証明が済んだもの)
- 受入証明書、または改葬先の使用許可証の写し
- 申請者の本人確認書類の写し
- 返信用封筒(宛名を記入し、切手を貼ったもの)
- 日中に連絡が取れる電話番号。横浜市も大阪市旭区も、申請書への明記を求めている
郵送の前に窓口へ問い合わせるよう求めている自治体もあります(大阪市旭区)。返信用封筒のサイズを指定される場合もあるため、送る前に一度電話するほうが結局は早く終わります。大津市のように郵送受付後1〜2日で処理する自治体もあれば、船橋市のように1週間程度を見込む自治体もあります。
オンライン申請については、今回確認した6市ではいずれも案内がありませんでした。窓口か郵送のどちらかになります。
改葬許可が要らない場合、出ない場合
遺骨を動かせば必ず改葬許可、というわけではありません。当てはまるかどうかで必要な書類が変わります。
- 分骨:遺骨の一部を分ける分骨は改葬にあたりません。大津市は、分骨により納骨した遺骨は改葬元の墓地等管理者から分骨証明書を取得して扱い、市区町村での手続きはないと案内しています
- 自宅で保管している遺骨を墓地に納める:改葬ではなく初めての納骨にあたるため、火葬の際に発行された埋火葬許可証を使います(福岡市)
- 同じ墓地の中で区画を移す:これは改葬にあたります。大津市も船橋市も、墓地内の別区画への移動を改葬に含めています。ただし船橋市は、お墓の改修のため同じ区画内に埋葬しなおす場合は改葬ではないとしています
- 土葬の遺体が土に還っている:大津市は改葬許可は不要としています。一方、土葬されていた遺体を改葬先で骨壺に納める場合は火葬が必要で、つくば市は必ず火葬する必要があると注意しています
- 散骨・手元供養:墓埋法第2条の改葬の定義は、他の墳墓や納骨堂に移すことです。散骨や手元供養はこの定義に直接当てはまらないため、扱いは自治体によって異なります。窓口と現在の墓地管理者の両方に、遺骨の取り出しに何が必要かを先に確認してください
散骨や手元供養を選ぶ場合、役所が許可証を出さなくても、墓地管理者の側が許可証がなければ遺骨は出せないという運用をしていることがあります。役所と管理者の言い分が食い違うと工事が止まるため、管理者への確認を先に済ませておきます。
つまずく箇所は決まっている
手続き自体は難しくありません。止まるときは、だいたい次のどれかです。
- 工事日を先に決めてしまう:墓埋法第14条は、墓地の管理者は埋葬許可証・改葬許可証・火葬許可証を受理した後でなければ埋葬や焼骨の埋蔵をさせてはならないと定めています。書類が届く前に石材店の日程を押さえると、動かせない日程だけが残ります
- 名義人が親や故人のまま:申請者と墓地使用者が違えば承諾書が必要です。名義人がすでに亡くなっている場合の扱いは自治体で違うため、承継の手続きが先に要るかどうかを窓口に確認します
- 古い墓地で管理者がはっきりしない:埋蔵証明を出す相手がいない状態です。墓地の所在地と現況が分かる資料を用意して、まず窓口に相談します
- 遺骨の情報が分からない:氏名や埋葬年月日が不明な欄の書き方は自治体ごとにルールがあります。空欄のまま提出せず、記入方法を確認します
- 離檀料でもめている:役所の管轄外です。金額の妥当性を役所が判断することはありません
無許可で遺骨を移した場合の罰則も、墓埋法に定めがあります(第21条)。手続きを飛ばして工事を進める理由はありません。
役所の手続きが終わっても、費用は工事で決まる
ここまでの手続きは、無料か数百円で終わる自治体がほとんどです。墓じまいの費用が大きく動くのは役所ではなく、墓石の撤去工事と、遺骨の受入先です。
撤去工事の金額は、区画の広さ、墓石の量、重機が入れるかどうか、山間部や階段の多い霊園で人力運搬になるかどうかで変わります。同じ条件でも見積り額に開きが出るため、1社の金額だけで判断せず、複数の見積りを並べて内訳(解体・処分・運搬・整地)を比べます。
よくある質問
自分が住んでいる市で申請できますか
できません。申請先は、いま遺骨が納められている墓地・納骨堂がある市区町村です。福岡市も大津市も、市外の墓地の場合はその所在地の市区町村で手続きするよう案内しています。
遺骨が複数あるとき、申請書は1枚でよいですか
原則は1体につき1枚です。大津市は焼骨1体につき1枚必要と明記しています。1枚に複数を記載できる様式の自治体もあるため、申請先の様式で確認してください。
改葬許可証に有効期限はありますか
期限の扱いは申請先の案内で確認してください。実務上は、改葬先の使用契約に納骨の期限が定められていることがあり、そちらの条件のほうが先に効きます。
工事日の何日前に動き始めればいいですか
交付までの時間は、不備がなければ即日という自治体(つくば市)から1週間程度という自治体(船橋市)まで幅があります。さらに受入証明書と埋蔵証明は別々の相手からもらう必要があり、書類の取得先は役所・現在の墓地・受入先の3か所に分かれます。この3か所の日程を足し合わせて、工事日から逆算してください。
役所で墓じまいの相談はできますか
手続きの案内は受けられます。供養先の選び方、親族間の調整、離檀料の交渉は対象外です。
