墓じまいの挨拶状の例文|親族へのはがきと手紙

墓じまいの挨拶状は、決まった書式がないぶん手が止まりやすい書き物です。
入れる項目は実施日・旧墓地・新しい納骨先・理由・感謝の5つだけで、はがきなら3〜5行に収まります。事前に出す案内状と、済んでから出す挨拶状のどちらが必要かを先に決めると、文面はほぼ機械的に埋まります。
この記事の目次
案内状と挨拶状は別物。先に決めるのは「立ち会ってもらうか」
案内状は「これから墓じまいをします」という予告と、閉眼供養に立ち会う人への日程の案内。挨拶状は「墓じまいを終えました」という事後報告と、これまでお参りいただいたことへの御礼にあたる。両方を出す家もあれば、親族が少なく事前の話し合いが済んでいる家では挨拶状だけで足りることもある。
迷ったら、判断の分かれ目は1つだけになる。その相手に立ち会ってもらうかどうか。立ち会ってもらう相手には案内状(日時・場所・服装・香典の扱い)を、立ち会わない相手には挨拶状(結果の報告)を出す。ここが混ざると、日時だけ書いて納骨先が抜けた文面や、報告のつもりが招待状に読める文面になる。
墓じまい全体の流れと費用の目安は墓じまいとは?費用と流れ、遺骨の行き先の決め方にまとめている。
挨拶状に入れる5項目と、書かない方がいい3つ
形式は自由だが、抜けると必ず問い合わせが来る項目は決まっている。次の5つを埋めれば、はがき1枚で成立する。
- 実施日(閉眼供養の日、または墓石の撤去を終えた日)
- 元の墓地の名称と所在地(引っ越しでいう旧住所にあたる。市区町村まで書く)
- 遺骨の行き先(新しい納骨先の名称・所在地・連絡先。散骨や手元供養ならその旨)
- 墓じまいに至った理由(1文でよい。承継者がいない、遠方で管理が難しい、など)
- これまでお参りいただいたことへの御礼
このうち相手が一番知りたいのは3番。お参りに行けるのか、行けるならどこへ行けばいいのかを伝えるのが、挨拶状の実務的な役割になる。名称だけでなく所在地と電話番号まで書いておくと、後から個別に聞かれずに済む。
逆に、書かない方がいいものが3つある。
- 費用の内訳。金額を書くと、負担の按分の話に読み替えられることがある。
- 親族間の経緯。誰が反対した、誰が協力しなかった、は書面に残さない。読み手が増えるほど独り歩きする。
- 他家の個人情報。共同の墓地を使っていた場合、相手方の氏名や住所を断りなく載せない。
文面が書けるのはいつからか(改葬手続きと情報が揃う順番)
挨拶状の手が止まる最大の理由は、文才ではなく納骨先がまだ確定していないことにある。ここは行政手続きの順番で決まっている。
遺骨を別の場所へ移すには、いま遺骨が納められている墓地のある市区町村から改葬許可証の交付を受ける必要がある。船橋市の案内では、手順は次の順に固定されている(同市ページ・2026年7月31日確認)。
- 改葬先を決め、受入れ証明書を発行してもらう
- 現在の墓地使用者の承諾を得る
- 現在の墓地管理者から埋蔵(収蔵)証明書を発行してもらう
- 市区町村へ改葬許可を申請する
- 改葬許可証の交付を受ける(同市では約1週間程度)
- 遺骨を改葬先へ納める
つまり、挨拶状の3番目の項目が確定するのは手順1の時点になる。受入れ証明書が出た日から、文面は書き始められる。逆に行き先を決める前に「近く墓じまいをいたします」とだけ書いて出すと、ほぼ全員から行き先を聞かれて二度手間になる。
周辺の扱いも自治体で差がある。同じ墓地の中で別の区画へ移す場合も改葬にあたるとして手続きを求める自治体があり(八王子市・2026年7月31日確認)、申請先は現に遺骨が納められている墓地の所在地の役所で、石材店などが代行するときは委任状がいる(大阪市旭区・2026年7月31日確認)。手数料の扱いも一律ではなく、船橋市は改葬許可申請そのものを無料としている一方、埋蔵証明書の発行に墓地管理者側の手数料がかかることがある。申請先の案内で確認してから日程を組む。
出典:船橋市・改葬許可の手続き/八王子市・改葬に関する手続き/大阪市旭区・改葬許可書の申請方法
誰に、どの時期に出すか
相手によって、必要な書面と適した時期が変わる。目安は次のとおり。
| 相手 | 書面 | 時期の目安 |
|---|---|---|
| お参りの可能性がある親族 | 案内状+挨拶状 | 案内は日程が固まった段階、報告は作業を終えてから早めに |
| 遠縁・年賀状だけの間柄 | 挨拶状のみ | 作業を終えてから。年末年始にかかるなら寒中見舞いで代える |
| 菩提寺・墓地管理者 | 書面より先に対面か電話 | 親族の意向が固まった直後。書面は後追いの御礼として |
| 墓地の近隣・自治会 | 短い周知文 | 石材店や葬祭事業者の解説では施工の10〜14日前が目安とされる |
| 友人・知人 | 挨拶状のみ | 作業後。香典を辞退するなら文中に明記する |
順番は、親族への相談を先に済ませてから寺院へ、というのが実務上まわりやすい。寺院に先に伝えると、親族が「聞いていない」となりやすい。お盆と彼岸の前後は寺院も墓地も繁忙で、返信も届きにくくなるため、その時期を外す。
反対されている相手がいる場合は、書面より前に説明の順番を組み直す必要がある。手順は墓じまいを親族に反対されたときの説明の順番で扱っている。
離檀にあたって高額な費用を求められた場合の金額の妥当性や交渉は、編集部が判断できる範囲を超える。弁護士など専門家に相談する。
例文|親族へのはがき(墓じまいを終えた報告)
はがきは3〜5行が収まりのいい分量になる。そのまま書き写して、◯の部分を差し替えれば使える。
拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
このたび、◯◯家墓所(◯◯県◯◯市◯◯町 ◯◯霊園内)につきまして、令和◯年◯月◯日に閉眼供養を営み、墓じまいをいたしました。
遺骨は◯◯(◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番◯号 電話◯◯◯-◯◯◯-◯◯◯◯)へ改葬し、今後は同所にてご供養いただくことといたしました。お参りの際は同所へお運びいただけますと幸いです。
長年にわたりお参りをいただきましたこと、心より御礼申し上げます。略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます。 敬具
令和◯年◯月 ◯◯◯◯
事前の案内として出す場合は、3行目を「令和◯年◯月◯日に閉眼供養を営み、墓じまいを執り行う運びとなりました。当日は午前◯時より◯◯霊園にて相営みます。ご都合がつくようでしたらお立ち寄りください」に差し替える。日時を書いた時点で案内状になるため、服装(喪服か平服か)と香典の扱いも同じ面に書いておく。
例文|親族への手紙(封書・経緯まで伝えたいとき)
近い親族や、経緯を丁寧に伝えたい相手には封書を使う。6〜10行が目安になる。
拝啓 ◯◯の候、皆様にはご健勝のこととお喜び申し上げます。
先般よりご相談申し上げておりました◯◯家の墓所につきまして、このたび墓じまいをいたしましたので、ご報告申し上げます。
◯◯霊園(◯◯県◯◯市◯◯町)の墓所は、令和◯年◯月◯日に◯◯寺ご住職により閉眼供養を営み、同月中に墓石を撤去いたしました。私どもが遠方に暮らしており、今後の管理と承継の見通しが立たないことから、無縁となる前に整えるべきと判断した次第です。
遺骨は◯◯(◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番◯号 電話◯◯◯-◯◯◯-◯◯◯◯)に改葬し、永代にわたりご供養いただくことといたしました。ご命日やお彼岸のお参りは、同所にてお受けいただけます。
ご先祖のお墓に長らくお参りをいただき、また折に触れお心遣いを賜りましたこと、あらためて御礼申し上げます。今後とも変わらぬお付き合いを賜りますようお願い申し上げます。
まずは略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます。 敬具
令和◯年◯月◯日 ◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番◯号 ◯◯◯◯
事前に相談として出すときは、2段落目を「つきましては、◯◯家の墓所について墓じまいを考えております。理由と今後の供養について申し上げますので、お考えをお聞かせいただけますと幸いです」に差し替える。相談の手紙は、返事の宛先と期限の目安(◯月◯日頃までにお電話をいただけますと)を添えると、そのまま止まりにくい。
例文|菩提寺・墓地の近隣・友人知人
菩提寺への手紙(離檀の御礼)
電話か対面で意向を伝えたあと、書面で残す形が角が立ちにくい。
謹啓 平素より格別のご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。
先日お話し申し上げました◯◯家墓所の件につきまして、令和◯年◯月◯日に閉眼供養を賜り、無事に墓じまいを終えることができました。◯代にわたりご供養を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。
遺骨は◯◯へ改葬いたしましたが、◯◯家として賜りましたご厚恩は変わることがございません。今後ともご縁を頂戴できましたら幸いに存じます。 謹白
墓地の近隣・自治会への周知文
重機や車両の出入りがある場合に出す。掲示や回覧に載せられるよう、短くする。
◯◯霊園◯区◯番の墓所につきまして、令和◯年◯月◯日から◯日まで、墓石の撤去工事を行います。車両の出入りと作業音でご迷惑をおかけいたします。施工は◯◯石材店(電話◯◯◯-◯◯◯-◯◯◯◯)が担当いたします。何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。 ◯◯◯◯
友人・知人への挨拶状(香典を辞退する場合)
拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。このたび◯◯家の墓所を整理し、遺骨を◯◯へ改葬いたしました。生前より故人にお心を寄せていただきましたこと、あらためて御礼申し上げます。誠に勝手ながら、御香典およびお供えの儀はご辞退申し上げます。 敬具
散骨や手元供養を選んだ場合は、行き先の欄を「◯◯沖にて散骨いたしました」「自宅にて手元供養といたしました」に置き換える。お参りする場所がなくなるぶん、命日にどう手を合わせるか(自宅にお参りいただける、合同供養が年◯回ある、など)を1文添えておくと、相手が戸惑いにくい。
はがきか封書か、句読点、費用の実務
体裁で迷いやすい点をまとめる。
- はがきと封書:丁寧さを出したい相手や経緯を書く相手は封書、通数が多い相手は私製はがき。混在させても差し支えない。
- 句読点:葬儀の案内状では句読点を省く流儀があるが、墓じまいの挨拶状では読みやすさを優先して打って構わないとする解説が石材店側にもある。家の流儀に合わせる。
- 縦書きと横書き:年配の親族が多い場合は縦書きが無難。近隣への周知文は掲示に向く横書きでよい。
- 差出人:墓地使用者(施主)の氏名と住所を入れる。連名にする場合も、連絡がつく1名の電話番号を添える。
費用も先に見ておく。日本郵便の国内料金表では、通常はがきが85円、定形郵便物は50g以内で110円(2026年7月31日確認)。20通をはがきで出せば1,700円、30通を封書で出せば3,300円が郵送分の目安になる。私製はがきの印刷を業者に頼む場合は、この上に印刷代が乗る。
宛先が分からない親族がいる場合、通数を無理に増やす必要はない。連絡がつく人に近況を尋ねて、届く範囲に出す。届かなかった分は、次に会う機会に口頭で伝えれば足りる。
避けたい言い回しと、迷いどころの整理
同じ内容でも、語の選び方で受け取られ方が変わる。書き換えの目安を挙げる。
| 避けたい | 言い換え |
|---|---|
| お墓を処分しました | 墓所を整理し、◯◯へ改葬いたしました |
| 墓石を撤去しました | 閉眼供養を営み、墓所を更地に戻しました |
| 費用がかさむため | 今後の管理と承継の見通しが立たないため |
| ご理解ください | ご理解を賜れますと幸いに存じます |
| お墓がなくなります | お参りは◯◯にてお受けいただけます |
時候の挨拶は必要か
入れるのが一般的とされる。「時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます」で通年使えるため、季節語に悩む必要はない。
メールやLINEで済ませてよいか
日常的にその手段でやり取りしている相手なら差し支えない。ただし納骨先の住所と連絡先は、後から見返せる形で残るようにする。書面のほうが確実に残る。
年末に重なったら
年賀状に報告を書き込むのは避け、松の内が明けてからの寒中見舞いに回す形が扱いやすい。
もう終わってから時間が経っている
遅れて出しても差し支えない。「ご報告が遅れましたこと、お詫び申し上げます」を1文足せば、そのまま同じ型で書ける。改葬から年数が経っていても、行き先が伝わっていない相手がいるなら出す価値はある。
なお、改葬の件数は厚生労働省の衛生行政報告例で毎年度集計されており、統計に載るだけの手続きが全国で動いている(厚生労働省・衛生行政報告例・2026年7月31日確認)。文面に悩むのはあなただけの事情ではない。
家屋や土地も含めて整理する場合の挨拶は、宛先も内容も変わる。文例は実家じまいの挨拶文テンプレート|親戚と近所への例文にある。
