家系図の作り方|戸籍の取り寄せから自分で作る手順

家系図を作るのに、家に伝わる巻物も特別な家柄も要らない。材料は役所の戸籍で、費用は自分で集めるなら実費3,000〜20,000円ほど、業者に頼むと5万〜15万円が目安になる。
ただし2024年3月に戸籍の取り方が変わり、便利になった窓口と、そこでは埋まらない穴がはっきり分かれた。手順はこの順番で足りる。
この記事の目次
家系図の材料は戸籍。まず遡れる範囲を確かめる
家系図は、役所に保管されている戸籍を古い順に辿って作る。戸籍には出生・婚姻・養子縁組・死亡と、その人の父母の氏名が記録されているため、一枚ずつ前の戸籍へ乗り換えていけば親子関係の鎖がつながる。うまく遡れると、明治時代の初めに編製された戸籍まで届き、そこに江戸時代後期生まれの人物が記載されていることがある。
集める書類は次の3種類で、名前が違うだけで役割は「時代ごとの戸籍」だと考えてよい。
| 種類 | 中身 | 手数料(1通) |
|---|---|---|
| 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) | 今も使われている戸籍 | 450円 |
| 除籍謄本 | 全員が死亡・婚姻・転籍でいなくなった戸籍 | 750円 |
| 改製原戸籍謄本 | 法改正で作り直される前の古い様式の戸籍 | 750円 |
手数料は全国共通で、東京都北区の戸籍証明書の案内でも戸籍謄本450円、除籍謄本750円と示されている(2026年7月31日確認)。
遡れる限界は制度で決まっている。除籍簿・改製原戸籍簿の保存期間は戸籍法施行規則で150年。2010年(平成22年)の改正前は80年(改製原戸籍は種類により50年・80年・100年)だったため、その80年ルールの時代にすでに廃棄された戸籍は、今から請求しても出てこない。戦災や火災で焼失した地域もある。「江戸時代まで届く家系と、祖父母の代で止まる家系がある」のはここの差で、努力や費用の問題ではない。
2024年3月に取り方が変わった。広域交付でできること、できないこと
令和6年(2024年)3月1日、改正戸籍法が施行され、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書・除籍証明書を請求できる「広域交付」が始まった。法務省の案内では、本籍地が全国各地に散らばっていても1か所の窓口でまとめて請求できるとされている(2026年7月31日確認)。本籍地ごとに郵便でやり取りしていた時代と比べると、ここは大きく短縮できる。
ただし、家系図作成という目的から見ると制限が重い。法務省の案内にある条件は次のとおり。
- 請求できるのは、本人・配偶者・父母や祖父母など(直系尊属)・子や孫など(直系卑属)の戸籍だけ
- 請求できる本人が窓口へ行く必要があり、郵送や代理人による請求はできない
- コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は対象外
- 一部事項証明書・個人事項証明書は請求できない
- 顔写真付きの本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)の提示が必要
もう一点、窓口での実務も知っておくと予定が狂わない。東京都北区は、広域交付では本籍地へ電話確認を行う場合があり発行に時間がかかること、「複数人の過去にさかのぼる戸籍の請求の場合は当日のお渡しができず、後日交付となります」ことを公表している(2026年7月31日確認)。受付締切も通常の証明書より早い時間に設定されている。半日で全部持ち帰れる前提で動かないほうがいい。
郵送請求の手順。広域交付で埋まらない穴はここで塞ぐ
広域交付が始まった今も、郵送請求は消えていない。むしろ役割が「取りこぼしの回収」に変わった。郵送でしか埋まらないのは、傍系の戸籍、コンピュータ化されていない古い戸籍、そして戸籍が廃棄・焼失していたときに発行してもらう不存在の証明(廃棄証明・焼失証明)である。家系図としてどこで途切れたかを残すなら、この証明まで取って初めて記録が閉じる。
手順は次の反復になる。
- 自分の本籍地を確認する(住民票を本籍地記載ありで取る、またはマイナポータルで確認する)
- その市区町村へ、遡れる分の戸籍・除籍・改製原戸籍をまとめて請求する
- 届いた戸籍の「◯年◯月◯日 ◯◯より転籍」「◯◯で出生」の記載から、次に請求すべき役所を割り出す
- その役所へ同じ形で請求する。以降、辿れなくなるまで繰り返す
郵送に同封するものは、おおむね共通している。請求書(各市区町村のサイトから様式をダウンロードできる。全国統一の書式はない)、請求者の本人確認書類の写し、手数料分の定額小為替、返信用封筒と切手、そして自分がその戸籍の直系であることを示す戸籍のコピー。定額小為替はゆうちょ銀行・郵便局の貯金窓口で買い、料金は金種にかかわらず1枚200円、有効期間は発行日から6か月(2026年7月31日確認)。何通必要か読めないときは、多めに送って釣りを返してもらう形が結局早い。
請求書の「請求の理由」欄は、事実をそのまま書く。相続手続きに使うなら相続と書き、先祖調査なら先祖調査と書く。役所によって扱いに差があるという声もあるが、目的を偽って書く必要はない。
どこまで広げるか。1系統・2系統・4系統で費用と期間が変わる
費用が読めなくなる原因は、範囲を決めずに始めることにある。先に「どの名字の家系を辿るか」を決めると、通数も期間も見積もれる。
- 1系統:自分の名字の家(父方の直系)だけを遡る。最初の1本に向く
- 2系統:父方と母方
- 4系統:祖父母4人それぞれの家。満足度は高いが通数は跳ね上がる
実務の目安として、家系図作成会社の家樹は、1つの家系でおよそ5〜10通・2か月程度、全家系ではおよそ20〜40通・3〜4か月程度としている。自分で集めた場合の実費は、家系図作成ツールのxGrapherの試算で1系統3,000〜5,000円程度、両系統で5,000〜20,000円程度とされる(いずれも2026年7月31日確認)。ここに定額小為替の発行料と往復の郵便料金が上乗せされる。
編集部の見方としては、最初から4系統を狙うより、1系統を最後まで通して「戸籍を読む型」を体で覚えたほうが早い。2本目からは請求書の書き方も転籍の追い方も同じ作業の繰り返しになる。
届いた戸籍の読み方。多くの人がここで止まる
戸籍は集めた時点では家系図になっていない。読む段で詰まる箇所は決まっている。
- 縦書きと手書きの崩し字:明治・大正期の戸籍は手書きで、旧字体が使われている。読めない字は、同じ戸籍の別の箇所に出てくる同じ人物名と見比べると当たりが付く
- 和暦:明治・大正・昭和が混在する。西暦に直した対照メモを作ってから並べると、親子の年齢差の矛盾に気づける
- 戸主と家督相続:戦前の戸籍は「家」単位で、戸主の欄に前戸主からの相続の経緯が書かれている。ここが次の戸籍への案内板になる
- 養子・入夫・廃家などの用語:血のつながりと戸籍上のつながりが一致しない場合がある。図に落とすときは、実親と養親を分けて記録しておく
もう一つ、これから戸籍を見る人が混乱しやすい変更がある。令和7年(2025年)5月26日に改正戸籍法が施行され、戸籍に氏名のフリガナが記載されることになった。法務省の特設サイトによると、氏名の振り仮名の届出期間は令和8年(2026年)5月25日で終了しており、届出がなかった場合は市区町村から通知された振り仮名が順次戸籍に記載される(2026年7月31日確認)。新しく取った戸籍にフリガナが載っていて古い戸籍に無くても、それは制度上の差であって、別人ではない。
家系図の書き方。並べ方と線のルール
家系図に法定の様式はない。ただし読み手が迷わない書き方には慣習がある。
形は大きく2つ。古い世代を上に置いて下へ子孫を伸ばす縦系図は、家のつながりを一目で見せたいときに向く。左から右へ世代を伸ばす横系図は、人数が増えても紙の右側に足していけるので、これから家族が増える場合や記録として長く更新する場合に向く。
線の使い分けは次のとおり。
- 夫婦は横線でつなぐ
- 親子は縦線でつなぐ
- 養子縁組は二重線で表すのが一般的。普通養子縁組なら実親との線も残す
- 直系(自分の父母・祖父母・子・孫)を中心線に置き、傍系(おじ・おば・いとこ)は必要な範囲だけ枝として出す
各人に書き込む項目は、氏名・続柄・生年月日・没年月日が基本。ここに本籍地や職業を足すと、後から自治体史や墓を調べるときの手がかりになる。戸籍から読み取れない事柄(言い伝え、屋号、家紋)を入れる場合は、戸籍由来の情報と区別できるようにしておくと、次に見る人が混乱しない。
手書き・表計算・アプリ・作成ツールの選び分け
作図の道具は好みで選んでよい。判断材料は「あとで直すか」と「誰に渡すか」の2点になる。
| 手段 | 向く場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 手書き | 戸籍を読みながら下書きを作る段階 | 人数が増えると線が交差して破綻する |
| 表計算ソフト | 人物一覧(氏名・生没年・本籍)の管理 | 図としては見づらい。名簿と図を分けるのが現実的 |
| 家系図アプリ・作成ツール | 追加・修正を繰り返す前提の作図 | サービス終了時にデータが取り出せるか確認する |
| 業者の清書(和紙・巻物など) | 贈り物や仏間に飾る用途 | 内容が固定される。調査が終わってから |
先に人物データを表で作り、図はそこから起こす順番にすると、系統を1本足すたびに全部描き直す事態を避けられる。
相続で提出する図は家系図ではない。法定相続情報一覧図との違い
相続の手続き中に家系図を調べ始めた場合、目的地が違っている可能性がある。銀行や法務局へ出すのは、自作の家系図ではなく法定相続情報一覧図という別の書面になる。
法務局によると、これは相続人が作成した一覧図と戸除籍謄本の束を登記所に提出し、内容が民法に定められた相続関係と合っているかを登記官が確認したうえで、認証文を付した写しを無料で交付する制度(平成29年5月創設)。申出先は、被相続人の本籍地・最後の住所地・申出人の住所地・被相続人名義の不動産の所在地を管轄する登記所のいずれかで、写しは相続登記、預金の払戻し、相続税の申告、年金の手続きなどに使える。保存期間は申出日の翌年から5年間で、その間は申出人が再交付を受けられる(2026年7月31日確認)。
順番としては、期限のある手続きが先にある。相続登記の申請は令和6年4月1日から義務化されており、動く順番を間違えると期限だけが過ぎる。相続側の全体像は 相続手続きの流れ|期限がある順に並べた一覧 にまとめている。どの範囲の戸籍が必要か、遺産の分け方をどうするかといった判断は、司法書士や税理士など資格を持つ専門家に確認する領域で、編集部が代われる部分ではない。
業者に頼むか、自分でやるか
代行を扱っているのは行政書士事務所と家系図作成の専門会社が中心になる。費用の目安は、自分の名字だけを辿る1家系の調査で5万〜8万円ほど、父方・母方の2家系で8万〜15万円ほどとされる(小田急くらしサポートの解説、2026年7月31日確認)。現地調査や文献調査、巻物への清書まで含めると、これより上の価格帯になる。
判断材料は3つに絞れる。
- 時間:郵送請求は1往復に1〜2週間かかり、これを何度も繰り返す。平日に窓口へ行けるかどうかで負担が変わる
- 読解:明治期の手書き戸籍を読み切れるか。1通目の除籍謄本を見た時点でおおよそ判断できる
- 戸籍の先:戸籍で辿れる範囲を超えて、墓石・過去帳・自治体史まで調べたいかどうか。ここから先は自力の難度が跳ね上がる
費用を抑えたい場合、戸籍を自分で集めて業者には作図と調査の仕上げだけ頼む折衷案もある。依頼前に、戸籍の収集範囲・不存在だった場合の扱い・追加料金の条件を見積書で確認しておくと、後から揉めにくい。
実家を片づける流れの中で家系図が絡む場面
実家の片づけと家系図は、別々の作業に見えて一点で交差する。家の中から古い巻物、過去帳、位牌、寺の書付、法事の記録が出てくるからだ。これらは戸籍で辿れない範囲を補う数少ない材料で、処分してしまうと二度と戻らない。片づけの日程が先に決まっている場合、少なくとも写真に撮っておく。
もう一つ、期限があるのは物ではなく話のほうになる。誰がどこの生まれで、どの家から嫁いできたかは、戸籍の記載を読み解くときの補助線になる。年長の親族が健在なうちに聞いておくと、戸籍が途切れた地点から先へ進める場合がある。
家の片づけそのものの段取りと費用は 遺品整理とは?時期と費用、業者に頼む前の準備 にまとめている。仏壇や位牌の扱いは寺や宗派で作法が異なるため、処分の前に菩提寺へ確認する。
始める前に決めておく4つ
手を動かす前に、この4点だけ決めておくと途中で止まりにくい。
- 範囲:1系統か、2系統か、4系統か。広域交付で取れるのは直系だけで、傍系は本籍地への請求になる
- 親族への説明:戸籍には離婚、養子縁組、認知など、当人が触れてほしくない事柄も記載されている。家系図を親族に配る前に、載せる範囲を相談しておく
- 公開の可否:氏名と生年月日と本籍が並んだ図は、そのままインターネットに載せる性質のものではない。存命の人物は氏名のみに留めるなど、線を決めてから作図する
- 保存の形:戸籍の原本は相続手続きで使う可能性があるため、家系図用にコピーを取り、原本はまとめて保管する。デジタルで作った図は、書き出し形式も含めて残す
制度は動く。広域交付は2024年3月1日、戸籍のフリガナ記載は2025年5月26日に始まっており、この記事の内容は2026年7月31日時点で各公式ページを確認したもの。取りかかる時点で、請求先の市区町村と法務省のページを一度見ておくと確実になる。
